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2025年9月14日 (日)

これまでに観た映画より(399) 「ゴジラ」1984年版

2025年9月8日

Amazon Prime Videoで、「ゴジラ」1984年版を観る。ゴジラの死滅を描いたことで知られる作品である。
原水爆という重い問題を抱えて登場したゴジラ。しかし、その後、大衆化路線が図られ、ミニラが登場するなど親しみやすいキャラクターになっていく。ゴジラが子どものものになったのだ。しかし今のままでは第1作のメッセージが忘れ去られてしまうのではないかとの危惧から、「ゴジラは恐ろしいものでなくてはならない」との号令の下、再び恐怖怪獣ゴジラが復活したのが1984年版である。当時私は、小学校4年生であったが、テレビで大々的に宣伝されていたのを覚えている。
この「ゴジラ」1984年版は、第1作から30年ぶりにゴジラが現れたという設定になっており、その間に作られたゴジラシリーズとは無縁ということになっている。

「ゴジラ」1984年版は、千葉市の中央三丁目にあった千葉松竹という映画館で母親と一緒に観ている。今はもう存在しない映画館だ。実写の映画を映画館で観るのは2度目であった。初となったのは「南極物語」で、これは今の京成千葉中央駅の場所にあった京成ローザという映画館で、満員なので階段に座って観ている。今はもう消防法で駄目かも知れない。京成ローザという映画館は今もあるが、一度取り壊されてから再建されたシネマコンプレックスであり、名は同じだが別物である。

監督:橋本幸治。出演:田中健、沢口靖子、宅麻伸、夏木陽介、加藤武、鈴木瑞穂、織本順吉、村井國夫、橋爪功、江本孟紀(カメオ出演)、かまやつひろし(カメオ出演)、佐藤慶、森本毅郎(本人役での出演)、石坂浩二(カメオ出演)、武田鉄矢(特別出演)、小林桂樹ほか。音楽:小六禮次郎。

伊豆諸島の先端にある島、大黒島(架空の島)で噴火がある。付近で漁業を営んでいた第五八幡丸が遭難。何者かが第五八幡丸を大黒島へと引き寄せたらしい。
数日後、新聞記者の牧吾郎(田中健)がヨットを帆走させていた時に、幽霊船のようになった第五八幡丸を発見。中に入ってみる。船内からはミイラ化した死体などが発見されたが、ロッカーの奥に身を潜めていた若い男はまだ生きていた。男の名は奥村宏(宅麻伸)実家が貧しいのか、他に理由があるのか、妹で大学生である尚子(なおこ。沢口靖子)の学費を稼ぐために、賃金は高いが身の保証はない漁業のアルバイトを行っていたらしい。
船内には巨大化したフナムシがおり、ミイラ化した死体はフナムシに体液を吸われたものだと思われる。牧は何とかフナムシを倒す。
第五八幡丸を襲ったのが、ゴジラである可能性が高いことが分かる。巨大なフナムシはゴジラに付着していたため肥大化したのだ。
その後、ソ連の原子船が太平洋沖でゴジラに襲われる。大黒島から南に下がったことになり、「ゴジラが日本に来ないのではないか」という予想も立てられるが、専門家はゴジラは核や原子力を餌にしていると分析。最寄りの原発のある島国、日本にやって来るのは必定であった。
内閣はゴジラの日本上陸の可能性を報道規制するが、ゴジラに打撃を受けたソ連や、同盟国のアメリカがゴジラを核爆弾で迎撃する計画を立案。冷戦時代であり、当然ながら東西の盟主国である両国は仲が悪い。状況によっては、第三次世界大戦の引き金になることも否定出来ない。

日米露の会談がもたれ、ソ連は「ゴジラが日本を縦断したら、次に攻めてくるのはウラジオストックの原子炉だ」と懸念を表明。アメリカ側は日米同盟を打ち出すが、「作らず持たず持ち込ませず」の非核三原則により、結論としては、日本一国で戦うことに決める。

一方、奥村は恩師で生物学者である林田信(まこと。夏木陽介)に牧とともに接近。妹の尚子が林田の助手をしていることもあり、4人のチームでゴジラ撃退法を探る。

ゴジラは静岡の井浜原発(モデルはあるが架空の原発)を襲い、エネルギーを蓄積する。現地に赴いた林田は、渡り鳥に対するゴジラの反応から、ゴジラに帰巣本能があるとの仮定を立て、自殺の名所としても知られる伊豆大島の三原山火口にゴジラを落とすという作戦を立てる。

ゴジラは東京湾を北上、航空自衛隊も攻撃に出るが、それを突破して東京に上陸する。東京湾に浮かぶソ連の貨物船には核ミサイル発射装置が密かに設けられていたが、ゴジラに襲われた際に誤作動を起こし、ゴジラを標的としたミサイルが発射されてしまう。

そしてゴジラは、第1作同様、築地から銀座、有楽町というコースを取る。
今回は銀座の和光は破壊されなかったが、前回破壊された日本劇場の跡地に建つ有楽町マリオンは壊され、前回は在来線の車両を持ち上げていたが、今回は新幹線の車両を持ち上げる。第1作との連続性を強調する意味もあるだろう。ゴジラに新幹線を捕捉出来るだけの俊敏性があるのかどうか疑問だが、とにかく持ち上げている。
その後、ゴジラは永田町に向かうが、永田町の風景のシーンは今回はない。そして行き着いたのは、新宿副都心(まだ都庁移転前である)。

西新宿のビルでは、林田がゴジラを三原山へと誘導する超音波装置を完成させるが、ゴジラが西新宿に来たため、停電やビルの一部破壊などが起こり、身動きが取れなくなってしまう。

ゴジラがなぜ西新宿に現れたのかは謎だが、政府は特設戦闘機「X」でゴジラを迎え撃つ。
高層ビルにゴジラの吐いた放射熱戦による丸い穴が空き、その穴を通してゴジラとXとが撃ち合う様は、この映画が公開される少し前に流行ったインベーダーゲームの名古屋撃ちのようである。おそらく意識はされているのだろう。
Xはカドミウム弾でゴジラを倒すが、気絶させただけ。息を吹き返したゴジラとXは戦わねばならないが、カドミウム弾はすでに尽きており、標準装備のみで乗り切らねばならず、ゴジラの敵足りえなかった。

その間、高層ビルの上階から自衛隊のヘリコプターに乗り込んだ林田は、三原山へとゴジラを導く。ソ連の核ミサイルはアメリカの迎撃ミサイルが落とし、西新宿での核爆弾破裂は避けられる。

林田の目論見は当たり、ゴジラは、伊豆大島・三原山へと向かい、自ら火口に落ちるのだった。

 

第1作では原水爆が生み出したゴジラということになっていたが、1984年版では、冷戦下における核の問題が浮かび上がる。アメリカもソ連も核を持ち、唯一の被爆国である日本も時代の流れから原子力発電所を所有するようになっている。
おそらく今回はゴジラは地震により目覚めているので、原爆や原爆実験は問題ではない。というよりもあるのが当たり前の社会になっている。
日本は非核三原則があるので、核は持てないが、アメリカの傘の下でソビエトの脅威におびえるという状態。そうした危機意識が1984年版「ゴジラ」には込められているように思う。「わからない」とは書いたが、1984年時点で高層ビル群があったのは、日本では西新宿だけで、文明に対する警告という意味も込められていたように思われる。

三原山の火口に落ちたゴジラを、首相の三田村清輝(小林桂樹)ら内閣は、哀悼の面持ちで見つめる。原子力に守られた日本の終わりを原子力によって眠りを覚まされたゴジラの終わりに重ねたのか。

実力派を揃えたキャストが並ぶが、新人同然の沢口靖子の台詞回しが余りにも素人じみていて笑ってしまう。東宝シンデレラ出身だけに早めにヒロイン役に抜擢したかったのだと思うが、まだ早かったようだ(日本アカデミー賞新人賞は受賞している)。彼女も90年代に入ると安定した力を見せ、そして「科捜研の女」という彼女でなければ主役は務まらなかったであろう番組を、断続的に四半世紀以上に渡って務めるという偉業を成し遂げている。

なお、加藤武演じる笠岡通産大臣が、「わからない!」と言われる場面があるのだが、おそらく加藤武の名ゼリフ「よしっ! わかった!」(わかった例しがないが)のパロディであると思われる。

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