« コンサートの記(927) ジャン=エフラム・バヴゼ ピアノ・リサイタル「モーリス・ラヴェル生誕150年記念 ピアノ独奏曲全曲演奏会」@京都 | トップページ | これまでに観た映画より(409) 東野圭吾原作「ある閉ざされた雪の山荘で」 »

2025年10月26日 (日)

NHKスペシャル「シミュレーション昭和16年夏の敗戦前後編・ドラマ×ドキュメント」

2025年8月20日

NHK+で、NHKスペシャル「シミュレーション昭和16年夏の敗戦前後編・ドラマ×ドキュメント」を見る。ドキュメントの部分は比較的短く、ドラマが中心になる。ベースとなっているのは猪瀬直樹著の『昭和16年夏の敗戦』。
出演:池松壮亮、仲野太賀、岩田剛典、二階堂ふみ(語り兼)、北村有起哉、國村隼、佐藤隆太、三浦貴大、別所哲也、嶋田久作、中野英雄、松田龍平、奥田瑛二、江口洋介、佐藤浩市ほか、仲野太賀と中野英雄は親子共演となる。

連続テレビ小説「虎に翼」で、岡田将生演じる星航一の話に登場して話題になった総力戦研究所を描いたドラマである。星航一のモデルとされた三淵乾太郎は、実際に総力戦研究所で司法大臣として演習に当たっていた。
最初から日本が不利であることは大多数の人が気付いていた気がするが、それを覆すための研究所でもある。軍部としては「勝機はある」との言葉を待っていたのだと思われるが、結論としては、「開戦すべきでない」「日本はアメリカに何もかも劣る」であった。
しかし、時代の流れは止められず、日本は地獄を見ることになる。

永田町にあった総力戦研究所に集められたのは、身心知力ともに健康な、様々な分野から集った35人の男性。平均年齢は三十代である。いわば日本の最高水準の知力が集結したことになる。
池松壮亮演じる宇治田洋一は、東京帝国大学首席卒という設定だ。そのインテリ達が様々なデータなどを駆使してシミュレーションした結果は日本必敗であった。宇治田は日本の軍部高官が考えていることが「ごっこ遊び」に過ぎないと陸軍省の高官である西村(江口洋介)に考えを吐露するが、現地に赴くことの絶対にない軍の高官達にとっては、戦争はごっこ遊びと感覚的に似通っていることは確かだと思われる。私は村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』を大学の卒業論文で取り上げた際に同様の内容を記している。
だが、油田の獲得を目的とした南部仏印侵攻は続いており、「船の数が不足している」としても戦いを続けるしかない。
すでにABCD包囲網により、資源が不足していたが、オランダに次いでアメリカも石油禁輸。これにより、日本国内には全国民が使うための石油が2年しかもたないことが判明する。
頭脳明晰な壮年の男達は、太平洋戦争が辿る経緯をかなり正確に見抜いていた。集合知の力である。しかし結論を軍部に聞き入れられることはなかった。

東条英機は、開戦を避けようとするも、もはや自分の力ではどうにもならないと呻吟する人物として描かれる。ハゲヅラをかぶり、一目では誰だか分からない風貌になった佐藤浩市が熱演している。

仲野太賀と岩田剛典は、「虎に翼」のオマージュとしての抜擢かも知れない。岩田剛典は、海軍でありながら、「開戦に反対」という立場を取るが、長州閥のある陸軍では開戦派、薩摩閥のある海軍では、「負ける戦いはするべきではない」との慎重派が多かったとされる。ただ、実のところ藩閥が1941年時点でどれだけ働いていたのかはよく分からない。
その陸軍のトップに立ったのが盛岡藩士の家系である東条英機である。同じく陸軍の軍人であった東条英機の父親は、藩閥によって出世出来なかったが、東条英機は藩閥を超えている。彼が「戊辰の仇」である長州に対してどんな思いを抱いていたのかは不明である。

近衛文麿を演じる北村有起哉は、出番は余り多くないが、見た目が近衛文麿そっくりになっており、笑ってしまうくらいの良い出来である。
摂関家筆頭の近衛家から出た近衛文麿。お公家さん出身だからか、京都帝国大学卒のインテリながら、ちょっと不思議な人だったらしい。
摂関家出身でも駄目なら宮家からということで、東久邇宮稔彦が近衛の次の首相として推されるが、昭和天皇(松田龍平)は首を縦に振らず、東条英機が首相になる。
東久邇宮稔彦は、戦後処理のためだけの内閣総理大臣として、短期間政務に就いた。首相在任期間は、羽田孜に抜かれるまで明治以降最短であった。

佐藤隆太とは、もう大分前になったが、舞台上でハグや握手をしたことがある。そういう人がテレビに出ていると不思議な気がする。

京都でもロケが行われており、龍谷大学本館や京都府京都文化博物館別館(旧・日本銀行京都支店)などが使われていた。

| |

« コンサートの記(927) ジャン=エフラム・バヴゼ ピアノ・リサイタル「モーリス・ラヴェル生誕150年記念 ピアノ独奏曲全曲演奏会」@京都 | トップページ | これまでに観た映画より(409) 東野圭吾原作「ある閉ざされた雪の山荘で」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« コンサートの記(927) ジャン=エフラム・バヴゼ ピアノ・リサイタル「モーリス・ラヴェル生誕150年記念 ピアノ独奏曲全曲演奏会」@京都 | トップページ | これまでに観た映画より(409) 東野圭吾原作「ある閉ざされた雪の山荘で」 »