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2025年10月 7日 (火)

これまでに観た映画より(404) 田中美佐子初主演映画「ダイアモンドは傷つかない」

2025年9月2日

Amazon Prime Videoで、東映映画「ダイアモンドは傷つかない」を観る。田中美佐子の映画初主演作であるが、同時に映画初出演作でもある。その後、アイドルや歌手が映画初出演にして初主演を飾るケースが出てくるようになるが、この当時は映画初出演にして初主演というのは異例のことだったようだ。早稲田大学第一文学部出身の三石由起子が「早稲田文学」に発表した同名小説が原作。三石自身の体験が大きく盛り込まれていると思われる。作風的には「早稲田文学」よりもライバルの「三田文学」に掲載されるような内容であるが、自身の経験を赤裸々に述べたとしたなら、それは「早稲田文学」に相応しいとも言える。
藤田敏八(としや)監督作品。主演:田中美佐子(新人)。出演:山崎努、朝丘雪路、石田えりこ、小坂一也、趙方豪、北詰友樹、大林宣彦(特別出演)、高瀬春奈(特別出演)、新井康弘(特別出演)、金田明夫ほか。

越谷弓子(こしや・ゆみこ。田中美佐子)は、早稲田大学に通う大学1年生。一浪(当時は受験戦争が始まりかけた頃で、一浪で「ひとなみ」と呼んだ。「人並み」という意味である)であり、予備校に通っている時に古文の講師である三村一郎(山崎努)と恋仲となって、今も付き合いを続けている。
弓子が受験勉強に励んでいる様子がたまに差し挟まれるが、世界史の教科書を一言一句暗記しようとしたりと、余り要領の良い人ではないこいことが分かる。
早大生になった現在は予備校でアルバイトをしており、教壇に立つこともある。古文の先生だが整然とした教え方で語呂遊びによる記憶法なども上手く、このまま続けていたら「マドンナ古文」はこの人の授業を指す言葉だったかも知れない。
弓子の相手の三村は、山崎努が演じているということからも分かる通りもういい年である。それなりの年の男と若い女の恋愛は、フィクションではよく見られ、現実でもたまにあるが、女性の方が精神年齢が高い場合が多いので、相手より年齢が下でも話が合ったりするのだろうか。
三村の授業であるが、数式を操るかのようであり、文法問題中心で情趣面には触れない。教師としての才能は弓子の方が上のように思われる。
ちなみにこれから10年ほど後に、連続ドラマ「予備校ブギ」で、田中美佐子は予備校の英語教師を演じているが、「大学の先生にも高校の先生にもなれなかったから、こんな仕事してるんじゃない!」という手厳しい指摘を受けている。

弓子のキャンパスライフに関しては余り触れられていない。おそらく第一文学部に在籍していると思われるのだが、第一文学部と第二文学部のあった戸山キャンパスが映されることはなく(見所がないということもあるが)、大隈重信像や大隈講堂など、早稲田キャンパスの名所ばかりが映される。
早稲田大学の第一文学部は、入学時には専攻が決まっておらず、1年次の成績によって進路が決まるという進振り制度を導入しており、英語が出来ないので人気のない英文学専修に進むという悲喜劇が繰り返されたりもしたのであるが、弓子は勉強熱戦であることが窺えるため、おそらく日本文学専修に受かり、日本の古典文学を学ぶのだと思われる。なお、今はなき第二文学部は受ける前から専攻を決めて受験するというスタイルで、同じ早稲田の文学部でも同一内容ではなく、演劇専修を希望する者が極端に多いという特徴があった。

三村には牧村という帽子デザイナーの女(加賀まりこ)がおり、三村は弓子に「夫婦のようなもの」と告げていた。


性に奔放な女子大生を描いた作品であるが、今これを観ても訴えかけられるものは余りないように思う。田中美佐子もわざわざ(新人)と銘打たれているだけあって、演技も後年の方がずっと上手いし(仕草はこの時から変わっていないものもある)、田中美佐子ファン以外は特に観る必要もないように思える。ちなみに同時上映は田中裕子主演の「ザ・レイプ」だったそうで、濃い上映内容であった。

田中美佐子は、この作品で日本アカデミー賞新人賞を受賞しているが、彼女が人気を得るのは同じ浅井企画所属の欽ちゃんのバラエティに出演してからである。当時は嬉々としてコメディー番組に出る女優は少なかった。アラサーではあったが、「面白い人」として庶民派を代表する女優となっている。

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