これまでに観た映画より(407) 原作:小泉八雲、監督:小林正樹、音楽音響:武満徹 映画「怪談」
2025年10月14日
Amazon Prime Videoで、日本映画「怪談」を観る。小泉八雲ことラフカディオ・ハーンがまとめた著書の中から、「黒髪」「雪女」「耳無芳一の話」「茶碗の中」を選び、オムニバス映画としているが、4つの作品に共通するものは特にない。
2007年にも私は観ていて、記録を残しているが、大したことは書いていない。
原作:小泉八雲。監督:小林正樹。脚本:水木洋子。音楽音響:武満徹。出演:新珠三千代(なんとIMEで変換されず)、渡辺美佐子、三國連太郎ほか(以上「黒髪」)、仲代達矢、岸惠子、望月優子、浜村純ほか(以上「雪女」)、中村賀津雄、志村喬、丹波哲郎、田中邦衛、林与一、北村和夫ほか(以上「耳無芳一の話」)、中村翫右衛門、滝沢修、杉村春子、中村鴈治郎、仲谷昇、佐藤慶、奈良岡朋子、神山繁(こうやま・しげる)、天本英世ほか(以上「茶碗の中」)。
かなり豪華な面子である。新珠三千代、岸惠子(彼女が出ている「雪女」の舞台は雪国ではなく、意外にも現在の東京都調布市である)などは、今の時代でも美人女優として通用しそうである。ただ歳月が流れたと言うこともあり、かつての大女優もIMEでは一発変換出来なくなった。
耽美的な演出が特徴。日本画を意識した、別世界のような背景が広がる中で、この世とあの世との境のドラマが展開される。
美術が凝っている一方で、演出はオーソドックス。余計なことはせずとも伝わるよう、カット割りを綿密に行っている。芸術映画なので客を楽しませようというようなサービス精神はなしだが、誠実に作品と向かい合っている。もし今のような優れたテクノロジーがあったら、より優れた作品になっていたと思われるが、それは仕方ない。
若き日の三國連太郎は佐藤浩市に似ているが、その佐藤浩市の息子である寛一郎が現在、連続テレビ小説「ばけばけ」に、山根銀二郎改め、松野銀二郎役で出ている。祖父と孫とで「怪談」絡みの話に出演しているということになる。山根銀二郎という名前は大物音楽評論家であった山根銀二を連想させる。山根銀二は、武満徹のピアノ曲「二つのレント」を「音楽以前である」と酷評したことで有名だが、その山根銀二に似た名前の役を演じている人がいる。更に映画「怪談」の音楽担当は武満徹。ということで繋げているのだと思われる。
その武満の音楽であるが、音楽のみならず音楽音響とされているように、金属音を出したり、プリペイドピアノを使ったり、風の音で場を作ったり、三味線などの邦楽器が掻き鳴らされたり、読経を音楽として持ち込んだりしている。メロディーらしきものはラストにしか出てこないが、意欲的な映画音楽であると言える。
セリフが極端に少ないのが特徴だが、話すと説明ゼリフになってしまっているため、もっとセリフを入れればそれは避けられたかも知れない。ただ無言で行われることで恐怖やただならぬ雰囲気を生めているのも事実だ。
小泉八雲の『怪談』であるが、やはり魅力的という他ない。単に怖いだけでなく、人間の機微のようなものが伝わってくる。人間の悪い面をも浄化していくようだ。そして幽霊は美人であればあるほど怖いように(幽霊ではないが、貞子役は小説での設定もあってほぼ全て日本の女優の中でも上位の美人女優が演じている)美と恐怖の関係を再確認させてくれたりする。泉鏡花も怪異譚を多く書いているが、文章は抜群に美しい。
3時間強の大作だが、途中で休憩の時間があったことが今日の配信映像を見て分かった。
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