コンサートの記(930) mama!milk “Musica Moschata(ムジカ・モスカータ)”
2025年10月4日 三条高倉の京都文化博物館別館ホールにて
午後6時から、京都文化博物館別館ホールで、mama!milkの公演“Musica Moschata(ムジカ・モスカータ)”を聴く。
京都を拠点に日本、そして世界各地で演奏を行っているmama!milk。アコーディオンの生駒祐子とコントラバス(ダブルベース)の清水恒輔のデュオだが、今回はマルチプレーヤーである曽我大穂(そが・だいほ)を迎えてのトリオでの演奏である。曽我が演奏するのは、ウクレレ、フルート、ブルースハーモニカ、自作の鉄琴、アコーディオンなど数多い。また、ノイズを入れる役割も受け持つ。
mama!milkは、アルゼンチンタンゴ、コンチネンタルタンゴ、ミニマル・ミュージック、アンビエント系など様々な音楽を取り入れて自分たちのものとしている。舞台音楽を手掛けることも多く、白井晃演出の舞台で音楽を担当したり、今はなきアトリエ劇研で行われたダンス公演に生駒のみが音楽担当として参加したりしている。
音楽は時に官能的、時に詩的、時にドラマティック、時にセンチメンタルと幅が広く、好きな人はかなりのめり込みたくなるタイプの作品群である。
音楽専用ホール以外でも演奏することは多く、特に今日演奏する京都文化博物館別館ホール(旧・日本銀行京都支店。国指定重要文化座)は、内装とmama!milkの音楽性がマッチしているため、たびたび演奏会場として選ばれている。
京都文化博物館別館ホールの他に定期的に演奏している場所として左京区の法然院が挙げられる。谷崎潤一郎など有名人の墓が多いことで、鎌倉の東慶寺と共に知られている法然院で毎年のように演奏を行っている。収容人数は限られているが、そこでライブを行ったり、コロナが流行ってからは、演奏の同時配信などやライブラリー化にも力を入れている。
また金沢21世紀美術館で、初めて演奏を行ったのがmama!milkだったはずである。
今回はネットで受付を行う(基本QRコードを読み取ることになるのでスマホでの購入となる)のだが特に整理券配布などはなく、来た順で入れる。ただし、スマホに記された名前などは名簿で確認される。ということでやはりスマホ必須である。空間自体が狭いので遅めに入ったとしてもそれほど不満はないはずである。
名簿を確認して、名前があったら、丸く包まれ、リボンを掛けられた紙が渡される。招待状を模しているが、これがこの公演のチケットで、何らかの事情で会場を出る必要があるときは、再入場する際に、この招待状スタイルのチケットを提示する必要がある。
開演5分前に客演である曽我大穂が現れ、自家製の鉄琴などをチェック。紙をグランドピアノのチェアに置き(今回はグランドピアノが使われることはない)、下手端にすぐ崩れそうな木製の案山子を組み立てるが崩して大きな音を立ててしまう。
その間に、上手端に生駒祐子が現れ、聴衆に背を向ける形でアコーディオンを弾き始める。途中からメロディーが、ヘンリー・マンシーニの「ひまわり」のものに変わる。
清水恒輔が現れてからは、生駒は舞台の真ん中に近いスツールに場を移し、本編の演奏が行われる。生駒は客席に何度か話しかけたが、声が小さいので私の席からは何を言っているのか聞き取れなかった。
曲目は、1部「Azul 蒼、夜明けの」、「Bosa Moschata 麝香バラ」、「Gala de Caras ガラ・ドゥ・カラス」、2部「Waltz,Waltz とっておきのワルツ」、「Anise アニス」、第3部タイトル「J.S.Bachへの手紙」、「Farther 12 sighs 12の軌道」、「an Ode アン・オード とある歌」、「Veludo 天鵞絨」、「the moon 月影」、第4部「Ephemera エフェメラ」、「Shijima 静寂」、「Kujaku 孔雀」、第5部「ao 蒼」、「Azul 蒼。未明の」、「Sanctuary 3つのサンクチュアリよりⅡ残像」、第6部「Charade シャレード 逃避行のワルツ」、7部はラストの定番曲でもある「your voice ユア・ボイス」が演奏された。
生駒と清水のデュオ曲の時は、曽我はチェアに腰掛けて羽根ペンで何かを書いている。筆を走らせた数枚は最終盤に上に向かって放り投げられ、演奏会終了後に聴衆も読むことが出来るようになっていたが、音符などではなく、日本語による作況の文章が書かれてあった。
本格的な秋の到来と、精神面も含めて大人しか楽しめないミュージック。曲も会場も他の場所の一般的な庶民からは遠く、西洋の楽器を使った音楽なのであるが、これで実は「秋の京都」にジャストフィットな音楽である。
イメージ喚起力に長けた演奏から、「音で聴く映画」との賛辞を得ているmama!milk。ただ映画とすると聴き手が好むジャンルによって受け取り方が異なりやすいので、個人的には何と呼ぼうかと考えていると、「記憶の底で繋がる流れ」という言葉が浮かぶ。mama!milkの音楽を聴いていると様々なシーンが浮かび、ノスタルジックな心境となる。実体験にフィクションの場面、それらが浮かぼうとしては流れ、あるいは何かに手が触れる。いつかどこかで見た風景が、現れては去る。現実か虚構かは分からない。ただその曖昧さを表すのに音楽は適した手段であるように思う。
アンコール演奏は、「your slumber まどろみに」。この曲は生駒が演奏しながらスキャットを行う。インティメートな演奏であった。
| 固定リンク | 0
« 観劇感想精選(498) 広田ゆうみ+二口大学 別役実 「眠っちゃいけない子守歌」@アバンギルド | トップページ | 観劇感想精選(499) 「市川團十郎特別公演」昼の部「伊達競阿國戯場 三升先代萩」 令和七年十月十一日 »





































































コメント