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2025年11月18日 (火)

観劇感想精選(501) M&Oplaysプロデュース「私を探さないで」

2025年11月8日 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて観劇

午後6時から、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで、M&Oplaysプロデュース「私を探さないで」を観る。作・演出・出演:岩松了。出演:勝地涼、河合優実、富山えり子、篠原悠伸、新名基浩、小泉今日子。

対岸に観光地の無人島がある、本町という街が舞台である。対岸の無人島は、昼間は観光地で本町から渡った人がいるが、滞在する場所がないため、夕方に帰りの便が出てからは文字通り無人島となる。だが、最近では、数件、滞在出来る場所が出来ているそうだ。

タイトルの「私を探さないで」の「私」は、具体的には河合優実演じる三沢晶(みさわ・あきら)のことである。この町の高校に通っていた晶は、17歳の時に突然失踪する。その直前に高校の教師である大城ユイ子(小泉今日子)が小説を発表。自身が勤める高校をモチーフにした話で、相手役のモデルは古賀アキオ(勝地涼)であるが、「橘」という名になっていた。だが、三沢晶は、三沢エミリと苗字はそのままであった。大城の小説はモデルがいるフィクションとして発表され、高校生にしては衝撃的な内容であり、話題になったが、三沢晶は小説中でも苗字が一緒であり、すぐに誰がモデルなのが分かってしまう。ということで三沢晶は姿を消さざるを得なかったのだ。大城は小説家に転身した。

古賀がこの町に戻ってきた。高校の同級生と再会し、今は小説家となった大城とも顔を合わせるが、高校の制服を着た晶を見かける。すぐにそれは幻影だと分かるのだが、町に一つしかない映画館で、晶と二人で「(スター・ウォーズ)ジェダイの復讐」(現在の邦題は、「ジェダイの帰還」)を観た記憶が蘇る。古賀の記憶では、大城先生からチケットを譲られて、晶と二人で観に行き、上映後に晶と目を合わせて決まりが悪くなった、なのだが、大城先生からチケットを譲られたという記憶も怪しい、更に晶と二人で観に行ったのかどうかも記憶のねつ造によるところが大きいのではないかと思い始める。
ただ最終的には、チケットを誰から譲られたのかは分からないが、古賀と晶の二人で映画を観に行ったという記憶は正しいのではないかと思われる。古賀と晶は親しかった。古賀はバスケットボール部であったが、部室かどこかで余り公には出来ないことをしていたのも確からしい。一方、大城も古賀には目を掛けていた。
晶はサプライズ好きな性格で、大城先生の誕生日に手焼きのクッキーをプレゼントして驚かせた。晶も大城も同性間での行いには余り抵抗がなく、やはりそうした関係になるのだが、ここで大城が裏切った。三沢晶の苗字そのままに三沢エミリというキャラクターを創造し、バイセクシャルで奔放な少女として描いた。フィクションではあるため、高校生という立場もあって何も言い出すことは出来ない、というよりも何か言ったらモデルであることが確定してしまう。のんびりとした街で起きた残酷な情念の物語である。現在の晶がどうしているのかは不明。大城の前にも姿を現す晶だが、大城は「本物のわけない」と晶がこの町にいるわけがないことを知っている。だが、晶の生死に関しては情報を得ていないだろうから、あくまで「幻覚」と見なしているということだ。あるいは亡くなっているのかも知れないがその情報はない。

話題作への出演が続く河合優実。舞台にも何度か出演している。独特のムードを持った人で、演技も巧みだが、声は鼻に引っかかり気味の高いものであるため、舞台よりもやはり映像に向いているかも知れない。
ステップも独特だが、大きく向きを変える時は、バレエ経験者でしかもかなり巧い人でないと出来ないと思われるターンを見せていた。

キャリアは長いが、私は初めて舞台で見る小泉今日子。彼女は女優や歌手、書評家よりも 何よりもまず「アイドル」であると思われる。その証拠にスペースの作り方が上手い、ソロのアイドルとして数々のステージやテレビ番組をこなしてきた結果、自分だけの見せ場を作る技術が身についたのかも知れない。セリフに関しては計3回言い間違えるなど安定感には欠けたが、演技スタイル自体は確立されているため、「誰だって言い間違いはある」という風に受け取ることが出来る。ポッと出の人が力が足りずに言い間違えた訳ではない。

 

岩松了の芝居は比較的分かりにくいと言われているが、今回は対立の構図が明白だったため、核の部分はつかめたように思う。

カーテンコールでは、多くの人が大阪のグルメについて挙げる。河合優実は、一昨日、昨日と大阪グルメを堪能したが、明日しっかり食べるため、今日は揚子江ラーメン(他の俳優が何人も名を挙げていた)は食べないという話をしてから、緊張していたのか「よろしくお願いします」と場違いな挨拶をしそうになり、慌てて止めていた。

岩松了は、マチネー公演で3つ下がっている短冊状のカーテンの1つがどうしても下りてこず、仕方ないので2本でやったという話をする。この公演もどうかと思ったが、幸い、きちんと3本下りてくれたようである。

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