これまでに観た映画より(412) 黒沢清監督作品「トウキョウソナタ」
2025年11月15日
Amazon Prime Videoレンタルで、黒沢清監督作品「トウキョウソナタ」を観る。日本、香港、オランダ合作映画。出演:香川照之、小泉今日子、役所広司、井川遥、津田寛治、土屋太鳳、児嶋一哉(アンジャッシュ)、井之脇海、小柳友ほか。
舞台はトウキョウ。どうも我々が住む世界の東京とは少し異なる場所のようである。
タニタ(あのタニタで間違いないようである)の総務課長の佐々木(香川照之)は、会社の「日本人一人の給料で、若い中国人を三人雇える」という人件費削減政策により、総務部が中国の大連に移ることを知る。遠回しであるが他の部署に移るか会社を辞めるかどちらかを選ぶようにいわれた佐々木は退社を選んだ。
このトウキョウには露骨に失業者が溢れているようであり、失業者が隊列を作って歩いていたりする。またハローワークもシュールで、階段をいくつも昇った上の階に3人ほどの対面スペースがある。階段は行列。東京のハローワークというと飯田橋や、職安通りのある新宿のものが有名だが、勿論、こんなおかしな仕組みにはなっていない。トウキョウのハローワークはカフカ的である。妻の恵(小泉今日子)や、息子の貴(小柳友)と健二(井之脇海)には内緒で、タニタに勤め続けているふりをしてハローワークや炊き出しに通う佐々木だったが、ある日、高校の同級生である黒須(津田寛治)と公園で出会う。最初は誤魔化そうとする二人だったが、炊き出しを行う公園に昼間からいるため、共に失業者であることは一目で分かった。ある日、黒須の家に招待された佐々木であるが、黒須の一人娘である美佳(土屋太鳳)は、佐々木の正体が父親同様、失業者であることを見抜く。おそらく黒須は誰かを家に招いたことがなく、急に佐々木が呼ばれたことから、父が失業者であると気付いていた美佳から同じ失業者だと見抜かれたのだろう。その後、黒須と妻は、ガス心中を図り、この世から去る。恵は佐々木が黒須と炊き出しをやっている公園にいるのを目にしており、夫が失業者だと気付いた。
一方、長男の貴の大学生活が上手くいっていないことに気付いていた佐々木と恵であるが、貴が米兵に志願しようとしていることを知る。トウキョウでは法律が変わり、日本人でも米兵として採用されるようになったのだ。
貴を自由放任主義で育てたのが間違いだったと考えている佐々木は、次男の健二は厳しく育てようとする。その健二は、ある日、美人のピアノ教師を見て、ピアノを習いたいと思うが、両親に反対される。それでもゴミ捨て場の中から、キーボード(音は出ない)を見つけ、給食費をレッスン代に回すことで、美人のピアノ教師、金子薫(井川遥)にピアノを教わることになるのだが、金子は健二のピアニストとしての才能が尋常ではないものであることに気付く。曰く「天才クラス」。音楽大学付属の中学校に行った方が良いというアドバイスも貰った。実は幼いときに「プロのピアニストを目指せる」と言われた人は結構いて、松たか子もそうだし(練習のしすぎで血を吐いて断念)、アナウンサーの内田恭子もそうだったような記憶がある。あの世界は天才同士の争いである。
だが、結局、ピアノは辞めさせられてしまう。
佐々木は、結局、スーパーマーケットの清掃業に就くのだが、「人生やり直したい」と思う。同じ頃、恵は自宅で強盗(役所広司)に襲われる。その後、車を走らせた恵と強盗。恵は途中でトイレに寄るが、スーパーマーケット内で清掃夫の格好をした夫と鉢合わせしてしまう。恵もまた「人生やり直したい」と思う。その時は、強盗だった相手とと思ったはずだが、強盗は恵が目を離している隙に、車を走らせて海の中へと消え去ってしまう。やり直すことなんて無理だ。
長男の貴が無事に戻ってこれそうだというニュースを聞いてしばらくして佐々木と恵は、白山音楽大学付属中学校(文京区白山に音楽関係の学校はないため、モデルとなった学校は存在しないと思われる)の入試に立ち合う。健二はドビュッシーの「月の光」を弾く。これが、合格するのか不合格なのか微妙な演奏が用いられている。ミスタッチはなくちゃんと弾けているのだが、サラサラと進みすぎで味は薄い。他の保護者達を注目させ、金子先生も納得の演奏だったが、合格出来るかどうかは実は微妙である。
だが、そんなことはどうでもいい。ここまで弾けるとは思っていなかった佐々木は演奏に涙し、これによって家族の環が閉じた。この家族でやり直す。
黒沢清監督の人間ドラマは分かりにくいということもあって、評価もサスペンスやスリラーに比べると低めなのだが、家族それぞれの状況が描かれ、環が閉じるという手法は比較的分かりやすく、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞、第10回アジア・アラブ映画大賞、シカゴ国際映画祭審査員大賞、第3回アジア・フィルム・アワード作品賞、脚本賞などを受賞している。
実力派俳優として活躍してきた香川照之だが、複数のバーでのセクハラとパワハラにより失脚。歌舞伎俳優、市川中車としてのみ活動してきたが、ネット配信番組で香川照之として復帰する予定があるようだ。
小泉今日子は、女優として安定した活動を続けてきたが、これまた不倫により一時女優活動を休止したことがあった。現在は復帰している。
若い頃からよく目にする人だったが、この映画の暗がりのシーンでは、顔がヨーロッパの女性のように見える場面がある。
役所広司演じる強盗は、元鍵屋で、錠前の天才。鍵に関する器用さや知識なら負けないが、人間関係が不得手であり、成功出来なかった。中盤以降からの登場だが、哀感漂う演技が見物である。
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