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2025年12月28日 (日)

観劇感想精選(506) 佐々木蔵之介ひとり芝居「ヨナ -Jonah」

2025年11月23日 大阪城公園内のCOOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて観劇

正午から、大阪城公園内のCOOL JAPAN PARK OSAKA TTホールで、佐々木蔵之介ひとり芝居「ヨナ -Jonah」を観る。原作:マリン・ソレスク、翻訳・修辞:ドリアン助川。演出:シルヴィウ・プルカレーテ。東京芸術劇場×ルーマニア・ラドゥ・スタンカ国立劇場 国際共同制作作品である。

ヨナというと韓国人女性にありがちな名前だが、本作は韓国とは一切関係がなく、「旧約聖書」のヨナ書に描かれた聖人のことである。クジラに飲まれたという話があることから、この作品のモチーフとして用いられている。

プルカレーテを発見したのは野田秀樹で、野田は自身が1992年に潤色した「真夏の夜の夢」の演出をプルカレーテに託しているが、プルカレーテは佐々木蔵之介との仕事も好んでおり、「リチャード三世」(正統派ではなく独自のテキストによる演出)、「守銭奴 ザ・マネー・クレージ」を上演している。

佐々木蔵之介は以前に、ほぼひとり芝居となる「マクベス」を演じている。ほとんどの時間は蔵之介一人が舞台にいて、セリフを話すのも蔵之介だけなのだが、精神病院の閉鎖病棟にいるという設定で、医師役と看護師役の二人が出ていた。

今回もひとり芝居とのことだが、歌手として歌だけをうたう役が一人(佐々木奏音。ささき・かのん)。座っているだけで特に何もしない「黒子」と呼ばれる若手俳優が二人(小林宏樹と吉田朋弘)出演している。

開演前から佐々木蔵之介は、緞帳代わり(演劇対応ホールで劇場ではないので緞帳はないと思われる)のセットの前に座り込んでいる。

海を見つめ、網を打つヨナ。
しかしあるときからクジラに丸呑みにされたことに気付く。クジラの体内で、ヨナは刃物を取り出すのだが……。

飲み込まれているという状況と抜け出すという行為が、メタ的に無限に広がっていく可能性を帯びた芝居である。
途中で英国風の一室が現れるのだが、ヨナはそうしたものに余り興味は示さず、ただ服装は英国風にして去って行く。なぜ英国風の一室が出てきたのかは分からないが、植民地主義の否定を意味していたのだろか。ちなみにヨナは、古代イスラエル国と関わりの深い聖人のようである。そしてイギリスは中東問題において最大の悪役である。

なお、今回の公演は、日本での上演に先立ち、東ヨーロッパでのツアー公演を行っており、ルーマニアのシビウ、ハンガリーのブダペスト、ルーマニアのクルージュ・ナポカ、ルーマニアのブカレスト、モルドバのキシナウ、ブルガリアのソフィア、再度ルーマニアのシビウで上演を行っている。
東ヨーロッパの人々がこの芝居に何を見出したのかは興味深い。勿論、人がクジラの体内から出るという単純な話ではなく、あるいは社会、常識とそれに附随する文脈、戦争、経済的苦境、差別と偏見など多層に解釈は及ぶであろう。

上演時間1時間25分と、一人芝居としては長めの作品であるが、余裕を持って乗り切った佐々木蔵之介の表現力も優れていた。

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