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2026年5月24日 (日)

観劇感想精選(517) 広田ゆうみ+二口大学 別役実 「湯たんぽを持った脱獄囚ーー求むな、されど与えられんーー」

2026年4月21日 木屋町のアバンギルド京都にて観劇

午後7時30分頃から、木屋町のアバンギルド(XでUrBANGUILDとアルファベエット表記にすると、南米かどこかにある同じ名前の店に飛んで行ってしまう)で、広田ゆうみ+二口大学による「湯たんぽを持った脱獄囚 ーー求むな、されど与えられんーー」を観る。ちなみに副題は、聖書の「求めよ、さらば与えられん」のパロディである。そして湯たんぽを持った脱獄囚は現れない。作:別役実、演出:広田ゆうみ&二口大学。出演:広田ゆうみ、二口大学。通常は、演出:広田ゆうみとなっている場合が多かったが、今回は演出家の名前は無いので、二人で共同演出したのだと思われる。

開場時の音楽は、mama!milkのものだったが、どうも今後、アバンギルドでmama!milkの伴奏でダンスをする人がいるようだ。「your voice」が流れたところで開演。

別役実の信奉者である広田ゆうみが文章を書いているが、別役実の文章に間違いがある。「我が国には古来より(中略)、三度すすめられて、二度遠慮し、最後のすすめを断りかねてもらってしまう(中略)作法」という文章が引用されているが、「三度すすめられて、二度遠慮」するのは中国の風習である。煙草などを勧められても二度は断り、三度目に「仕方ないなあ」と受け取る。今はどうか知らないが、1990年代まではこの風習はあった。日本にもあったのかも知れないが、寡聞にして知らない。日本は相手から好意を持って与えられたものを素直に受け取るのが礼儀である。好意を持って与えられたものを断ったら、それは明らかに礼儀に反する。
別役は満州生まれで、ある程度の年齢まで満州にいたので、幼い頃に身についた習慣を覚え続けて、それが日本の習慣だと思っていたのかも知れない。ただ劇中ではそれとは異なる展開となっている。
別役作品は「不条理」という言葉で語られるが、極めて高い論理構成力が光る作家であり、頭を使えばほぼ全てが分かる。同時代の文学や映画の「不条理」に似てると、論理構成力に目が行かずに思ってしまった人が多かったのかも知れない。

 

西町というバス停が舞台である。ここから舞台が動くことはない。バス停に女(広田ゆうみ)が立っている。やがてバスが来る(音のみで表現)。乗り遅れそうになった男(二口大学)が駆けてくる(客席通路を使用)が、バスは行ってしまう。そして女もバスに乗らなかった。
男は、女に「少し待たせても」と文句を言うが、女の気が強そうなので続く言葉を飲み込んでしまう。
今のが今日の最終便であった。というわけで、男は「歩いたら何分?」、「宿はある?」といったようなことを聞くが、女は無視して自分のことばかり話す。女はこれからの旅に必要なものとして、シガレットケースやウィスキーのボトル、灰皿(まだ携帯灰皿がない時代であるため小型の丸い灰皿を渡す)、コート、湯たんぽ、空気枕などを男に与える。空気枕というと、どうしても小津安二郎の「東京物語」を連想してしまうが、一切、関係がない。
女の夫が失踪したこと、暗い性格なのに冗談ばかり言っていたこと、初めて会った時に、「俺は脱獄囚だ」と打ち明けたことなどを女は語る。本当に脱獄囚だったのかは分からない。そして男は興信所の調査員で、女の夫を探しに来たが、見つからないので帰ろうとしていたところだった。
女は拳銃を取り出し、夫を殺したことを明かす。男は衣服を受け取っていたが、それは女の夫が着ていたもので、血痕が付いていた。女は夫に二発の銃弾を浴びせて殺害したが、男には三発銃撃する。一発多いのは意味があるかも知れないし(念押し、恨み、全ての銃弾を使ってしまうため)、ないかも知れない。
しかし前の道路を一台も車が通らない田舎である。銃声も民家までは届かないのだろう。これで男の死体を処分すれば、もう夫のことを嗅ぎ回る人もいない。とにかく田舎なので埋めようが焼こうがバレる心配はないだろう。
女は男を待ち受けてバス停にいたのである。何らかの情報を得ていたのかも知れないし、たまたま男を見かけたのかも知れない。だが無事男を葬ったのなら完全犯罪成立である。

明かされていない情報があるのかも知れない。ただ、エッセイの内容とは異なり、男は与えられたものを全て受け入れている。これは日本と日本人の戯画なのかも知れない。明治維新になると西洋の文物を特に抵抗なく全て受け入れる。それ以前にも大陸渡来のものを受け入れて、軍事、文化に反映させてきた。ただ20世紀になると受け入れてはいけないものを受け入れて、日本は破滅への階段を下ることになる。

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