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2026年5月18日 (月)

コンサートの記(957) 「びわ湖の春 音楽祭」2026 初日

2026年4月25日 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール大ホール、中ホール

びわ湖ホールで、「びわ湖の春 音楽祭」2026に参加する。

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「ラ フォル ジュルネ びわ湖」、「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭」を経て、阪哲朗芸術監督の下、「びわ湖の春 音楽祭」としてスタート。「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭」の時には、沼尻竜典芸術監督により、オペラの上演を目玉にしていたが、「びわ湖の春 音楽祭」になってからはオペラの全曲上演はなくなっている。

オーケストラ、室内外、ピアノ曲、民族音楽など多くの種類の音楽が、大ホール、中ホール、小ホール、メインロビーに分かれて奏でられる。メインロビーで行われる演奏は、全て無料である。

今日はまず大ホールでの阪哲朗指揮京都市交響楽団によるオープニング・コンサートを聴き、それからやはり大ホールでの沖澤のどか指揮京都市交響楽団の演奏を聴く予定で、合間に時間が出来るので、無料公演を回ることにした。

 

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阪哲朗指揮京都市交響楽団によるオープニング・コンサート。今年のテーマは「誘い(いざない)」である。

曲目は、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番(ピアノ独奏:ヤスミンカ・スタンチュール)、モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より、“シャンパンの歌”(歌唱:大西宇宙)、“恋人よ、さあこの薬で”(歌唱:石橋栄実)、“お手をどうぞ”(石橋栄実&大西宇宙)

今日のコンサートマスターは泉原隆志、フォアシュピーラーに尾﨑平。管楽器には客演奏者多めである。阪哲朗指揮によるコンサート1回と沖澤のどか指揮によるコンサート2回をこなさなければいけないため、リハーサルに時間が掛かりそうである。どのコンサートも上演時間1時間ほどだが、曲調が必ずしも揃っているわけではないので(縦糸はモーツァルトになっている)時間が掛かりそうではある。ただ、沖澤は今年の3月4月と京響の定期演奏会を指揮し、ローム ミュージック フェスティバルでもタクトを執るなど常に帯同しており、そのまま次のリハーサルにすんなり進めた可能性は高い。

阪哲朗は、よく採用する古典配置を選択。ティンパニもバロックタイプのものが選ばれているが、今日は中山航介は降り番である。

ピアノ独奏のヤスミンカ・スタンチュール。旧ユーゴスラヴィア出身で、ウィーン国立音楽大学(ウィーン音楽・舞台芸術大学)とジュネーヴ音楽院に学び、1989年のベートーヴェン国際ピアノコンクール・ウィーンで優勝。現在はウィーン国立音楽大学ピアノ科教授。2024年より同科の代表を務めている。

阪哲朗はいつもながらのノンタクトで指揮する。総譜は用意されているが、暗譜したまま進め、通り過ぎた分をまとめて繰ったりする。
バロックティンパニを用意しているため、当然ながらピリオドを意識した演奏である。ビブラートに関しては掛けるところと掛けないところがあるが、ボウイングは明らかに末尾の部分で弓を弦から放すという、ピリオドの仕草を見せる。ちなみに第1ヴァイオリン8のサイズである。
ピリオドにしたことで、よりモーツァルトが紡いだ音の陰影がクッキリ浮かび上がるような気がする。

ヤスミンカ・スタンチュールのピアノは透明度が高く、弾くというよりは、その時その時に適した手の形を置いていくようなピアニズムで、「高潔」という印象を受ける。
モーツァルトの哀しみや安息を望む心が自然に伝わってくるかのようだ。一歩下に死が待ち受けていることを悟っているような、シリアスなピアノである。

 

続いてモーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より。
オーケストラが序奏を初めてすぐに大西宇宙(おおにし・たかおき)が、下手袖から駆け込んできて歌い始める。大西宇宙はバリトン歌手。武蔵野音楽大学及び大学院を経て、ニューヨークのジュリアード音楽院の大学院を修了。シカゴ・リリック・オペラにデビュー。2019年には、「エフゲニー・オネーギン」のタイトルロールを歌って日本デビューしている。豊かな声量が持ち味だ。

続いて、ソプラノの石橋栄実(いしばし・えみ)による独唱。まず石橋は手を叩いて客席に座っているに男性にステージに上がるよう命じる。仕込みの客で、明日、石橋は「フィガロの結婚」ハイライトに出演するため、歌手仲間だと思われる。一番の武器である澄んだ声による歌唱を行った。彼女は東大阪市生まれで、豊中市の大阪音楽大学と専攻科に学び、堺市でオペラデビュー。そして今は大阪音楽大学の教授と、一貫して大阪を拠点としてきた人である。インタビューでも「大阪生まれなので大阪を活動の拠点にするのは自然」と答えていた。勿論、東京など日本の各都市や海外で歌うこともある。

二人による“お手をどうぞ”。大西が思ったよりも体を近づけたようで、石橋が一瞬、本能的にひるんだように見えたが、すぐに仲良く歌い始めた。

 

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中ホールで、第2回びわ湖ホールピアノコンクール受賞者コンサートがある。無料・整理券等不要である。次の大ホールでのコンサートまで時間があるため、入ってみることにする。びわ湖ホールに来さえすれば誰でも聴けるコンサートとあって、長蛇の列が出来ていた。それでもびわ湖ホール中ホールのキャパは比較的大きいので、所々に開いた席が出来ていた。

出演者と曲目は、
井上心晴(いのうえ・こはる。小学生以下1位)ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第1番より第1楽章。
矢賀部光夏多(やかべ・ひなた。高校生以下2位)シューマンのピアノ・ソナタ第1番より第1楽章。
益成一葉(ますなり・いちは。高校生以下2位)シューマンの幻想小曲集より第1曲「夕べに」、第4曲「気まぐれ」、第5曲「夜に」
大同理紗(だいどう・りさ。一般1位)プロコフィエルのピアノ・ソナタ第6番「戦争ソナタ」第4楽章。

びわ湖ホールの中ホールは主に演劇向けで、オペラを上演することもあるが、残響よりも音の通り重視である。ここでピアノの演奏を聴くのは初めてだが、思いのほかピアノに向いた音響である。ただ今後もピアノの演奏は大ホールか小ホールで行われることが多いと思われる。
全員、コンクールの上位に入っただけに、メカニックはしっかりしている。ただ年下の子は譜面に忠実で、年が上がるにつれて、その人ならでは個性がにじみ出てきているように思う。自分なりの作曲家像がはっきりしてくるということもあるだろう。
まだ無名の奏者達だが、無料にしては良い企画である。なお、大同理紗がいち早くプロオーケストラのコンサートにデビューすることが決まったそうで、大阪交響楽団とプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を弾くと自ら宣伝していた。人気の上がっている曲だけにアピールのチャンスである。

 

コンサートがやや押したので、メインロビーでの藤木大地(カウンターテナー)と阪哲朗の伴奏ピアノによる歌曲の無料コンサートが始まっていた。「花の街」などが歌われていたが、食を優先し、駐車場などに設けられたフードブースに行ってホットドッグを買って食す。
他の曲はいいけれど、「琵琶湖就航の歌」(三高寮歌)は聴きたいなと思っていたら、アンコールとして「初めて歌ううたをやります」と言って「琵琶湖就航の歌」を歌い始めた。“今津か長浜か”の後は、“びわ湖誘い楽しんで”と聴衆へのメッセージになっていた。

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その後、メインロビーでは、チェリストのゲオルギー・ロマコフによるチェロ独奏のコンサートがあったが、チェロ独奏を聴く気分ではなかったので、10分ほど聴いて大ホールの中へと入る。
ロマコフは、ベンジャミン・ブリテンの無伴奏チェロ組曲から「カント・プリモ」と実妹が作曲した「マリーゴールド幻想曲」を弾いていた。ドイツ人だが、ウクライナ人の家系だという。

 

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大ホールでの京都市交響楽団のコンサート。指揮の沖澤のどかは、女性としても背が低い方だが、びわ湖ホールには高めの指揮台はないようである。ということで普通の高さの指揮台に上がって指揮することになる。

曲目は、シュニトケの「モーツァルト・ア・ラ・ハイドン」とハイドンの交響曲第45番「告別」

まず沖澤が一人で登場し、「びわ湖デビュー、滋賀県デビューとなります」と話した後で、「自己紹介をしていませんでしたね」と言って姓名と肩書きなどを語る。
「琵琶湖の水を止められないよう心して」とお決まりのネタも言っていた。ちなみに琵琶湖疎水の使用権は京都市にあるので、滋賀県側は止めたくなっても止める権利がない。止めると逆に滋賀県が水没するというシミュレーションもあり、「翔んで埼玉 琵琶湖より愛を込めて」では、実際に滋賀県全体が水没するシーンがある。
沖澤はハイドンの「告別」交響曲についてもレクチャー。ニコラウス・エステルハージ候が避暑のための別荘に出掛けたとき、様々な条件が重なって、なかなか本宅に帰ることが出来なくなってしまった。楽士達は、家に妻や子どもを残しての単身赴任で辛い。そこでハイドンは、音楽家が一人ひとり帰るという趣向の交響曲を作曲。エステルハージ邸の人々も事情を察して本邸に帰ることにしたという。

シュニトケの「モーツァルト・ア・ラ・ハイドン」。井上道義指揮する京都市交響楽団の定期演奏会で聴いたことがある。その時は井上の演技付きだったが、沖澤は軽く仕草で表す程度だった。
弦楽のみによる演奏。横に一列になって広がり、端の方は緩やかに客席に近づくようにして並ぶ。指揮者に向かって鶴翼の陣を敷いているとも言える。コンサートマスターの泉原隆志ともう一人の奏者の二人だけが指揮者に近い場所にいる。なお、今日は沖澤は2曲ともノンタクトでの指揮。指揮棒を持っているときよりも腕の振りが鋭いように見える。
シュニトケらしい直線的で鋭い響きが空気を震わせた後で、モーツァルトの作品を擬した旋律が奏でられる。その後、奏者達は指揮者に近づく。
一番はっきりと分かるのは、交響曲第40番の冒頭で、これはほぼそのまま奏でられる。井上は、「ん?」という風に客席の方を振り返る仕草をしていたが、沖澤は特に芝居はせずに通す。
他に指揮者がコンサートマスターの譜面をめくるという妙なシーンあり。
その後、ハイドンの「告別」を模して、奏者達が次々にステージを後にする。沖澤は、顔を動かして「あれ? あれ?」といったように軽く演技していた。

 

ハイドンの交響曲第45番「告別」。この曲も第4楽章のみ井上道義指揮する京響の演奏で聴いたことがある。
ドイツ式の現代配置での演奏に見えたが、ヴィオラと第2ヴァイオリンの位置が逆の変形対向配置。この曲でも第1ヴァイオリン8のサイズである。
モーツァルトの交響曲第40番がこの曲の影響を濃厚に受けていることが分かる。ピリオド援用による演奏だが、それがこの曲の荒らぶりを際立たせる。
この曲は、ハイドンが楽長として演奏していたため、それを考慮して指揮者は最後まで残っているのが普通だが、沖澤はまだ奏者が何人か演奏しているのに、何食わぬ顔してそそくさと退場。客席から笑いが起こる。コンサートマスターともう一人のヴァイオリン奏者の二人だけが残り、曲が終わると会場は完全に溶暗した。
その後、沖澤は旅のためのキャリーバッグを引きずって登場。他の京響のメンバーも日傘を差したり、箒で床を掃いていたりと、思い思いに旅立ちの儀式を行っていて、聴衆を楽しませた。

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