観劇感想精選(518) フリードリヒ・シラー原作 ロバート・アイク翻案「メアリー・ステュアート」
2026年5月14日 西宮北口の兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールにて観劇
午後6時から、西宮北口の兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールで、フリードリヒ・シラー原作、ロバート・アイク翻案の「メアリー・ステュアート」を観る。シラーの原作を翻案したものとしては、2015年に、ダーチャ・マライーニが二人芝居に翻案したものを梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで観ている。出演は、中谷美紀と神野三鈴であった。
今回のロバート・アイク翻案版は、それに比べると登場人物は多い。演出は栗山民也。テキスト日本語訳:小田島則子。メアリー・ステュアートとエリザベス1世は何年か前に映画にもなっているはずだが、未見である。
出演:宮沢りえ、若村麻由美、橋本淳(あつし)、木村達成(たつなり)、犬山イヌコ、谷田歩、大場泰正、宮﨑秋人(しゅうと)、采澤靖起(うねざわ・やすゆき)、阿南健治、久保酎吉、伊藤麗(れい)、上野恵佳(あやか)、松本祐華、段田安則。途中休憩20分を含み、上演時間が3時間を超えるという大作であった。
今回は、メアリー・ステュアートの幽閉から死までが描かれる。
メアリー・ステュアートは数奇な運命を辿った人で、生後6日でスコットランド王に即位。摂政にはジェームズ・ハミルトンが就くが、後に戦に敗れている。メアリーは、フランスに亡命。フランスのフランソワ王太子と婚約し、将来的にはフランス王妃となる。
一方、エリザベス女王(エリザベス1世)は、父親が離婚したいがためにイギリスの国教をカトリックからプロテスタント(英国国教会となる)に変えたヘンリー8世、母親はヘンリー8世が離婚後に再婚したアン・ブーリンである。アン・ブーリンは複数の罪で処刑された人として有名で、エリザベスが女王として即位後も「庶子」という理由から「相応しくない」との声が上がった。そしてフランス王フランソワ2世が16歳で亡くなったため、スコットランド王として即位したメアリーにもイングランド王となる権利があったことから事態はややこしくなる。当時はイングランドとスコットランドは別の国であるが、緩やかな連合体をなしていた。「メアリーの方が英国の王に相応しい」という声もある。メアリーはダーンリー卿ヘンリーと再婚。一児を設ける。この子どもであるジェームズが、ステュアート朝の祖であり、メアリー・ステュアートはステュアート朝の生みの親とも言うべき存在である。よく知られている通り、エリザベス女王は子をなさなかったため、敗れたはずのステュアート家が、イギリスの正統な王家を占めたこともあったのだ。諍いには敗れたが血統と歴史で勝ったというべきか。
そんなメアリー・ステュアートも、スコットランドで起こった暴乱により、イングランドに亡命。エリザベス女王はメアリーをイングランド内の城に軟禁状態に置く。
ここからが今日の「メアリー・ステュアート」の物語である。分かろうと思ったらそれなりに知識がいる。メアリーの幽閉先と、エリザベスの王宮の一室のみが舞台だ。
メアリー(宮沢りえ)と乳母のケネディ(犬山イヌコ)は、城の中で比較的自由に暮らしている。看守のポーレット(阿南健治)がいるが、さして厳しくない。
メアリーは処刑を恐れているが、続くエリザベス1世(若村麻由美)の場では、エリザベス女王が様々な理由で、メアリーの処刑を渋っている。
メアリーを演じている宮沢りえが黒いドレスを着たしなやかな身のこなしなのに対し、エリザベス女王は座っていることが多く、堂々とした王の装いで胸を張っている。これだけで二人の性質が分かるが、エリザベスはかなり演じている部分がありそうだ。
それでも処刑を避けることが出来ないと、エリザベスは、死刑執行書に署名をした。しかし、それを持って行かないよう命じる。エリザベスとメアリーは短い時間であったが面会していた。
ただこれは明らかにエリザベスのミスなのだが、死刑執行書に署名してしまったがために、最終的にはメアリーは処刑される。エリザベスの王宮は権謀術数が渦巻き、裏切りが多発していた。セリフの多くはそうした謀だ。
緋色のドレスになり、処刑場へと向かうメアリー。ケネディが手を取る。
役者陣はかなり充実。完璧に近い。
今日は2階席で観たのだが、舞台上には白の×があるのが見える。スコットランドの国旗の色である。栗山民也なりのメアリーへの追悼であった。
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