カテゴリー「ソビエト映画」の2件の記事

2018年1月10日 (水)

「戦艦ポチョムキン」よりオデッサの階段

ロシア暦1898年1月10日(グレゴリオ暦1月23日)、モンタージュ理論の大成者として知られるセルゲイ・エイゼンシュテイン監督がラトヴィア(当時はロシア帝国の領土)のリガに生まれる。

エイゼンシュタイン監督の代表作として知られるのがポチョムキンの反乱を題材とした「戦艦ポチョムキン」である。小林多喜二の「蟹工船」にも似たストーリーを持つということもあり(両者は完全に無関係である)、日本人にもわかりやすい内容ということもあるのか、歴代名画の上位にランクされる作品として知られている。その「戦艦ポチョムキン」に中でも最も有名なシーンが「オデッサの階段」。

ロシアの都市、オデッサでの虐殺劇(史実ではないそうだ)を描いたもの。ショスタコーヴィチの交響曲第11番「1905年」第3楽章(モスクワでの血の日曜日事件を描いた音楽)が流れる中、逃げ惑う人が大階段(プリモスキーの階段と呼ばれるようです)を駆け下りて行くシーンがまず印象的である。

子供に怪我を負わされた女性が迫りくるコサック兵たちに抗議に向かい、銃殺される(女性の遺体にコサック兵の影が映るのが印象的である)。この後で、音楽はショスタコーヴィチの交響曲第5番第3楽章に切り替わり、ジェノサイドが続く中、ベビーカーに赤ん坊を乗せた女性が階段の上で射殺される(5分57秒付近)。女性が後ろに倒れると同時にベビーカーが押し出され(6分43秒付近)ここからクライマックスである階段落ちが始まる。

画像の切り替え、ストーリー運び、影の用い方、エキストラのみによる演技、悲惨さを訴えかけるメッセージ性などいずれもがサイレント映画として「完璧」の域に達しており、わずか7分程度の映像でありながら、極めて濃密な時間であり、映画史の中で最も有名なシーンの一つに数えられている。

このシーンは後世の作品に様々な影響を与えたことで知られている。

最も有名なのは、ブライアン・デ・パルマ監督の映画「アンタッチャブル」。ケビン・コスナーの出世作として知られるこの作品では、シカゴ駅での階段落ちのシーンがオマージュとして登場する。こちらは著作権が切れていないので映像が載せられないのが残念だが、当時はまだ駆け出しの俳優だったアンディ・ガルシアの演技が実に格好良く(「完璧です」のセリフがいい)、一見の価値ありである。

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2008年6月22日 (日)

『蟹工船』と『戦艦ポチョムキン』

プロレタリア文学の最高峰であり、最近再び注目を浴びている小林多喜二の『蟹工船』。カムチャッカ(作品中ではカムサツカ)沖で蟹漁を行うオンボロ工場船における労働者の悲惨としかいいようのない待遇と、上官(特に浅川監督)の人を人とも思わない非人間性を渾身の筆で描き抜いた作品です。

小林多喜二 『「蟹工船」「一九二八・三・一五」』(岩波文庫) 蟹工船には即戦力になるよう、農村から学のある真面目な若者を労働者として雇っていましたが、若者は学があるために「ストライキ」なるものを漁夫に教え、広め、船員達はストライキを敢行。一応の成功を見ます。しかし……。

岩波文庫に併録されている「一九二八・三・一五」では、共産主義のために活動している個々や団体に焦点を当てて書いた小林多喜二ですが、「蟹工船」は、それとは真逆の群衆劇であり、労働者側の個々の個性がなるべく目立たないように工夫されています。

附記という形で語られるストライキの顛末が楽天的に過ぎるのではないかという弱点はありますが、執筆当時25歳だった小林多喜二としては会心の出来だったと思われます。資本家のみならず、帝国主義の軍隊、全体主義の大日本帝国の国策、更には「献上品」の蟹という形で出てくるトップへの批判など、相当の勇気を持って書かれた作品であり、視野の広さという点において、私小説的なものから抜け出せなかったそれまでのプロレタリア文学から一歩進んだ小説であるといっていいでしょう。

『蟹工船』とよく似た設定を持った映画として多くの人が思い浮かべるのが、世界映画史上屈指の名作として知られる『戦艦ポチョムキン』。実際にあった事件を基にして作られた映画であり、監督は「モンタージュ理論」の完成者として知られるセルゲイ・エイゼンシュタイン。1925年のサイレント作品ですが、本国であるソビエトでも検閲に次ぐ検閲で満足に上映されないという状態でした。日本で上映されたのは第二次大戦が終わってから。ということで、設定は似ていますが、小林多喜二が『蟹工船』のモデルとしたという事実はありません。

DVD『戦艦ポチョムキン』 しかしエイゼンシュタインもソ連のプロレタリア芸術協会の会員であり、世界中で資本階級と労働者階級の軋轢が露見しつつある時代であったということもあり、『蟹工船』と『戦艦ポチョムキン』のシンクロニシティは必然として起こったと見ることも出来ます。

『戦艦ポチョムキン』は、1905年に起こった「ポチョムキンの反乱」を題材として撮られた映画であり、ウジのわいた肉を食べさせられるなどした水兵達が不満を爆発させ、ストライキを決行。上官達は水兵達を抑えつけようとし、銃殺までしようとしますが、最後は水兵側が勝利。
映画のラストでも水兵の勝利が描かれていますが、これは史実ではなく、実際は、反乱を起こした水兵達は死罪に処せられました。

IVCから出ている「戦艦ポチョムキン」のDVDには、なつかしの淀川長治による解説が収められています。

小林多喜二 『蟹工船 一九二八・三・一五』(岩波文庫) 紀伊國屋書店BookWeb

Antonov / Eizenstein/戦艦ポチョムキン Bronenosets Potyomkin

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