無明の日々(14) 「ぶっちゃけ・問答 『あなたの故郷とは』」
京都人は京都タワーが嫌いだそうだが、旅行などで京都を離れて帰ってきた時に京都タワーが見えると「京都に帰ってきたと実感する」そうである。これは私もそうで、京阪電車で大阪からの帰りに京都タワーが見えるとホッとするし、長距離バスで高知から帰ってきた時、京都タワーが見えた瞬間、「やった。京都に着いた」と心躍った。
そのように「帰ってきた」と思える場所は東京にもある。JR総武線の両国駅と浅草橋駅の間に車窓から見える隅田川である。両国付近の隅田川を見ると「東京だ」としみじみ思う。残念ながら千葉市にはそうした場所はない。千葉市というのは本当に人口が多いだけで特に何もない場所である。歴史だけは東京の倍以上あるのだが近世においてさほど栄えていなかったのが痛い。
千葉県出身ということで、私は日蓮聖人の話をしたのだが、日蓮聖人が今の千葉県出身だということは知られていないようである。日蓮聖人は安房国小湊で漁師の子として生まれている。日蓮聖人の誕生を祝って鯛が集ってきて踊ったという伝承があり、今でも小湊にある鯛の浦という場所は鯛の群生地となっており、特別天然記念物に指定されている。またそれに因んで、鯛は「千葉県の魚」となった。
日蓮宗と浄土系宗教は反対方向を向いているという話になったのだが、日蓮聖人は『立正安国論』において、今の世が乱れているのは「法然坊源空のせいだ」と名指しで批判しており、「浄土宗への布施を止める」ことを提案している。
ただ現在では立正大学(東京にある日蓮宗の大学)と大正大学(東京にある浄土宗、真言宗豊山派、天台宗の総合仏教大学)は協定を結んでおり、因縁はないと思われる。
また日蓮聖人の強気な面が強調されていることについては、井上ひさしの「イーハトーボの劇列車」で宮沢賢治の口を借りて語られた言葉がそのまま役に立った。
不思議なことなのだが、私の場合、「故郷」と思えるのはまだ行ったことのない場所なのだ。石川県松任市、今は合併により白山市となっている場所である。私の先祖がそこにいたのだ。一応、遡れる最も確実な先祖が住んでいた場所である。私に至るまでの起源となる場所である。
ほぼ先祖と考えて間違いない人も更に古い時代におり、他の場所にいたのだが、確定ではないため保留としておく。
私が訪れて「ただいま」と言いたくなる場所は、実は千葉でも東京でも京都でもなくて、数えるほどしか行ったことのない金沢市である。金沢城石川門、近江町市場、尾山神社、更には石川県立音楽堂や泉鏡花記念館など、一度しか訪れたことのない場所でも「私の場所」のように思えた。私の「観念上の故郷」は石川県にあるようだ。
来るときには気がつかなかったが、帰りに長徳寺の門前に石碑が建っていることに気がつく。「会津藩洋学所跡地」の碑。のちに京都府顧問となる山本覚馬が元治元年(1864)に会津藩洋学所を開いて講義を行ったのが、ここ長徳寺だったという。
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