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2022年9月12日 (月)

コンサートの記(804) 三ツ橋敬子指揮 京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2022「ザ・フォース・オブ・オーケストラ」第2回「2-ウェイ・ミュージシャンズ」

2022年9月4日 京都コンサートホールにて

午後2時から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2022「ザ・フォース・オブ・オーケストラ」第2回「2-ウェイ・ミュージシャンズ」を聴く。指揮はお馴染みの三ツ橋敬子。ナビゲーターはガレッジセールの二人。


曲目は、レナード・バーンスタインのオーケストラのためのディヴェルティメントと「オン・ザ・タウン」から「3つのダンス・エピソード」、武満徹の「乱」組曲から第4楽章と「海へⅡ」(アルト・フルート、ハープ、弦楽オーケストラのための。フルート独奏:上野博昭、ハープ独奏:松村衣里)、ニーノ・ロータのトロンボーン協奏曲(トロンボーン独奏:岡本哲)、久石譲の「魔女の宅急便」とオーケストラのための「DA・MA・SHI・絵」


バトンテクニックに長けた三ツ橋敬子は、現代音楽を得意としている。なお、今回は三ツ橋が「演奏に専念したい」ということでガレッジセールとの絡みはなし。ガレッジセールの二人が進行を引き受ける。


今日のコンサートマスターは、「組長」こと石田泰尚(やすなお)。泉原隆志は降り番で、フォアシュピーラーに尾﨑平。ドイツ式の現代配置での演奏である。管楽器の首席奏者は、前半はホルンの垣本昌芳を除くほぼ全員が出演。垣本は後半に登場。クラリネット首席の小谷口直子は前半のみの出番となった。


レナード・バーンスタインのオーケストラのためのディヴェルティメント。死後に作曲作品の再評価が進むレナード・バーンスタイン。指揮者の弟子が非常に多く、彼らが頻繁に師であるレナード・バーンスタイン(愛称:レニー)の作品を取り上げるということもあるだろう。三ツ橋もレニーの愛弟子である小澤征爾に師事しており、レニーの孫弟子ということになる。
三ツ橋の指揮する京都市交響楽団であるが、非常に良く鳴る。今日は1階席で聴いたのだが、やはり音楽専用ホールを持つアドバンテージは非常に大きいようである。以前は1階席の鳴りが悪かった京都コンサートホールであるが、京響の成長と、舞台をすり鉢型にする工夫により、「良いオーケストラは良く鳴り、そうでないと良く鳴らない」という素直で演奏家には怖い響きの音響へと変わった。
レニーの多様な作風が窺えるオーケストラのためのディヴェルティメント。三ツ橋による表情の描き分けも巧みであった。

演奏が終わってガレッジセール登場。ゴリは今日は前髪を下ろしている。まず川田広樹が、京響と三ツ橋敬子を紹介。今回のテーマである「2-ウェイ・ミュージシャンズ」の意味が、「クラシック音楽ともう一つ。つまり二刀流」であると明かす。ゴリは、「二刀流と言えば大谷翔平選手」ということで、「ベーブ・ルースの持っていた二桁勝利二桁本塁打の記録を104年ぶりに破った」「今、全国の女子アナ、女性タレントが彼を狙っています。もうすぐ三刀流に」というところで川田に止められていた。

レナード・バーンスタインは、クラシックやミュージカルの優れた作曲家であり、同時に世界最高峰の座をカラヤンと争う大指揮者でもあった。作曲と指揮の二刀流である(同時に名ピアニストにして名教師でもあったが、ややこしくなるので今日は紹介されなかった)。
ゴリは、「バーンスタインも子どもの頃にお父さんとオーケストラを聴きに行き、そこでオーケストラの魅力に目覚めた。だから今日もここに将来のバーンスタインがいるかも知れない。大人になったらどうなるか分かりません。でも吉本興業に来るのは止めましょう」と言って川田に「何でよ」「素敵な会社よ」と突っ込まれていた。ちなみにゴリは、「給料がめちゃくちゃ安い」と語っていた。

「オン・ザ・タウン」は、レニーが最初に作曲したミュージカルで、映画化もされている(邦題は「踊る大紐育」)。「オン・ザ・タウン」はオペラ形式で上演されることもあり、日本でも佐渡裕が半オペラ半ミュージカルというスタイルで上演している。
「3つのダンス・エピソード」は、1945年にレニー自身が編曲したショーピースで、アメリカ的なノリが楽しい曲である。三ツ橋と京響も雰囲気豊かな演奏を繰り広げた。

続く武満徹は、クラシック音楽と映画音楽の二刀流である。がレッジセールの二人にとっては、映画音楽というと、「スター・ウォーズ」、「インディ・ジョーンズ」といったジョン・ウィリアムズの楽曲が印象深いようである。ゴリは、「インディ・ジョーンズ」には多分に影響を受けており、大学受験時に勉強をやる気が起こらず、東京の予備校でダラダラ二浪していて「もう諦めて沖縄帰ろうかな」と思っていたのだが、ある日、予備校の仲間から「何が好きなの」と言われて、「『インディ・ジョーンズ』のような世界が好きでああいうのやりたいんだよね」と答えたところ、「だったら日大藝術学部に映画学科があるからそこ受けてみたら。真田広之とか有名な人が出てるよ」と言われて初めて日芸を知り、途端に勉強にもやる気が出て合格出来たという話をする。
ゴリは、「ロッキー」シリーズも好きなようで、「絶対勝てないよ」と言われたロッキーが頑張っていいところまで行く。「人生何があるか分からないですよ。でも吉本興業に来るのは止めましょう」
ちなみにゴリは、中学生の時に彼女と二人で「ロッキー」シリーズを観に行って、見終わった後、シャドーボクシングをしながら「彼女を守る」というポーズを取っていたが、向こうからヤンキー五人組が来るのを見て、「肩こりの人」に変えたという話をしていた。

黒澤明の映画「乱」は、シェイクスピアの「リア王」を翻案したもので、黒澤の晩年の代表作である。黒澤映画のラッシュフィルムには、あらかじめクラシックの音楽が付けられていて、「これによく似た曲を書いて欲しい」と作曲家に頼むのが常だったようだ。「乱」のフィルムにも、マーラーの「巨人」などの音楽が付けられていたことが窺える。最終的にはこの「乱」で、武満と黒澤は喧嘩別れしてしまうことになるのだが、フィルムミュージック「乱」は今でも武満の代表作として世界中で演奏されている。光と影の明滅するような「タケミツトーン」はこの曲でも発揮されている。
三ツ橋と京響はこの曲の「抑えたドラマティシズム」を巧みに描き出していた。


武満徹の「海へⅡ」(アルト・フルート、ハープ、弦楽オーケストラのための)。
メルヴィルの小説「白鯨」に着想を得た作品で、「夜」「白鯨」「鱈岬」の3部からなる。武満は晩年に、「鯨のような優雅で頑健な肉体を持ち、西も東もない海を泳ぎたい」と語ってたそうだが、武満本人は若くして結核を患うなど、かなり病弱な人であり、65歳という、作曲家としては比較的若い年齢で亡くなっている。

生前、フランスの音楽評論家から、「タケミツは日系フランス人音楽家である」と評された武満徹であるが、この「海へⅡ」を聴くと、武満がドビュッシーなどから受けた影響がよく分かる。
余り関係ないが、「海へⅡ」は、私にとっても重要な作品である。ここでは説明はしないが。


ニーノ・ロータのトロンボーン協奏曲。それほど有名な曲ではないのだが、何故か2ヶ月連続で聴くことになった。先月末に、東大阪文化創造館 Dream House 大ホールで、愛知室内オーケストラの演奏で聴いているが、京都コンサートホールで聴く京響の演奏の方がオーケストラとしての馬力や色彩感に優れている。
ソリストの岡本哲(京響トロンボーン首席奏者)も、余裕を持って旋律を吹いていた。

ゴリは、ニーノ・ロータについて、「『ゴッドファーザー』などの映画音楽を書いた人」と紹介するが、映画の内容を考えて「大人になってから観て下さい」と伝えていた。


映画音楽とクラシック作品の二刀流のもう一人である久石譲。ゴリは、「久石譲は元々はミニマル・ミュージックという音楽を書いていた人」と紹介。エッシャーのだまし絵に着想を得た「DA・MA・SHI・絵」におけるミニマル・ミュージックの手法について説明する。

「魔女の宅急便」の愛らしさ、オーケストラのための「DA・MA・SHI・絵」の爽快さなど、いずれも優れたオーケストラ演奏であった。

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2022年8月18日 (木)

笑いの林(129) よしもと祇園花月 「祇園ネタ」&祇園吉本新喜劇「茂造の、三兄弟は鬼に金棒」 2022.8.15

2022年8月15日 よしもと祇園花月にて

午後3時から、よしもと祇園花月で「祇園ネタ」と祇園吉本新喜劇「茂造の、三兄弟は鬼に金棒」を観る。

「祇園ネタ」の出演は、スーパーマラドーナ、ザ・プラン9、和牛、テンダラー、西川のりお・上方よしお。


スーパーマラドーナは、武智が「刑事ドラマに憧れる」と言い、殉職シーンを演じることにする。田中は、「何の役にも立たない後輩刑事」を演じる。武智が田中の盾になって殉職するという設定なのだが、武智が「あーぶーなーい!」とスローモーションになったのを、田中が「急に遅くなった」と指摘。「スローモーションになるの分かるやろ!」と武智に怒られた田中はスローモーションを意識して演技することになるのだが、いきなり「せーんーぱーい」と自分の演技もスローモーションにしてしまう。結局何度やっても上手くいかないので、舞台となる倉庫の管理人やそこら辺に這ってる芋虫を演じることになるのだが、芋虫は勝手に孵化して蝶となって飛び立つなど、いらない演技ばかり。そこで、殉職する刑事以外の役を全部やったり、逆に殉職する刑事を演じたりしていた。


ザ・プラン9。見るのは久しぶり、6人体制になってから見るのは初めてである。今回のコントは、グループ名の由来となったエド・ウッドの映画的な要素も意識して入れているように見えた。
臨終の床にある父親とそれを見守る息子と医師(お~い!久馬)。やがて父親がぶつくさ何かを言い始め、医師はその言葉に応えるよう息子に勧める。「血が繋がってるか?」と父親は聞き、「チョコレートが食べたい」「キットカットが食べたい」と言うが、突然、心電図のブザー音を発し、自ら臨終を告げてしまう。そこへ葬儀屋二人組(浅越ゴエと爆ノ介)が棺桶と担ぎながら入ってきてしまい……。
ウエルメイドなネタをするザ・プラン9もいいが、こうした破綻の多い奇妙なテイストのネタをやるザ・プラン9もまたいい。


和牛。水田信二が子どもの頃に学芸会で「シンデレラ」をやり、なぜかシンデレラ役をやることになったのだが、本当は別の役がやりたかったとぼやく。川西賢志郎が、「何の役?」と聞くと、「シンデレラ以外の役全部」ということで川西がシンデレラを、水田がシンデレラ以外の役全部を演じることになる。たまたまだがスーパーマラドーナと少しかぶった。

シンデレラが掃除をしていると、水田演じるシンデレラの姉が、「シンデレラ、ちゃんと掃除してるの?」と意地悪そうに聞くが、シンデレラ以上に熱心に掃除を始めてしまう。

水田演じる姉は、カボチャをお土産として舞踏会に持って行こうとしたり、ネズミを踏み潰したりと、童話「シンデレラ」のストーリーを知っていると川西に指摘される行動に出る。

王子役も当然ながら水田が演じるのだが、やたらとチャラかったり、ガラスの靴のはずがガラスの入れ歯になっていたりと、「シンデレラ」を破壊していた。


テンダラー。浜本広晃が、「お盆休みということで沢山の方にお越し頂きましてありがとうございます。前の回では、遠くから来た方もいらっしゃったようで。今回もいらっしゃるんでしょうか? それはそれとして」と聞かずに進行してしまったり、「お客さんの雰囲気でネタを決めるわけですが、今日はあれですね。『最近、チンチンがね』」と言って相方の白川悟実に「下ネタかい!」と突っ込まれたり、「もうお時間で」とそのまま帰ろうとしてしまったりする。
メインは、「必殺仕事人」ネタの変奏版で、スパイが敵のアジトに侵入する様子を「ミッション・インポッシブル」のテーマを浜本が歌いながら演じる。しかし、アジトに侵入するまでのドアがやたらと多かったり、壁を乗り越えて侵入した際に足をくじいてしまったりと、スパイがドジで、白川に突っ込まれていた。


西川のりお・上方よしお。
のりおが「津川雅彦です」と自己紹介。その後、二人のことを「PCR検査と抗原検査です」「デルタとオミクロンです」「陽性反応者と濃厚接触者です」「ファイザーとモデルナです」と新型コロナに絡めて延々と紹介していた。


祇園吉本新喜劇「茂造の、三兄弟は鬼に金棒」。出演は、辻本茂雄、島田一の介、安尾信乃助、高井俊彦、平山昌雄、大島和久、もじゃ吉田、玉置洋行、永田良輔、浅香あき恵、五十嵐サキ、たかおみゆき。辻本茂雄が抗原検査で新型コロナ陽性と判定されたことから2日間休止していたが、11日から再び上演が行われている。

旅館「睦」が舞台。オーナー役の安尾信乃助が、「オーナーの安尾信乃助と申しますか?」とボケて突っ込まれるシーンも当然ながらある。
茂造こと茂爺シリーズということで、即興重視。MYプロダクションの吉田(もじゃ吉田)が「つまらないものですが」と差し出した箱の中に入っているはずのラ・フランスが入っていなかったのでその理由を茂造がもじゃ吉田に求めたりする。吉田は、「余りに美味しいのでキューピーちゃんが食べちゃった!」と意味不明のボケ。全く受けなかった。その後、キユーピーの「3分クッキングのテーマ」(イエッセルの「おもちゃの兵隊の観兵式」)が流れるが、例によって茂造の携帯の着信音だったりする。
タイトルにある三兄弟というのは、大島和久、永田良輔、五十嵐サキの3人のことだが、年齢を考えると「三姉弟」が適当のような気がする。劇中の年齢は事実とは異なる上に展開上一癖あるようだが。その場合も「三兄妹」が適当だと思われる。

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2022年6月16日 (木)

コンサートの記(782) 沖縄復帰50周年記念 大友直人指揮琉球交響楽団大阪特別公演

2022年6月5日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後3時から、大阪・福島のザ・シンフォニーホールで、沖縄復帰50周年記念 琉球交響楽団大阪特別公演を聴く。指揮は琉球交響楽団音楽監督の大友直人。

2001年に創設された琉球交響楽団。沖縄初にして唯一のプロオーケストラである。ちなみに沖縄交響楽団という団体も存在しているが、米統治下の1956年に結成されたアマチュアオーケストラである。

NHK交響楽団の首席トランペット奏者を務めていた祖堅方正が、沖縄にクラシックのプロ音楽家が活動する下地がないのを嘆いて設立したのが琉球交響楽団である。
沖縄には、1986年開学の沖縄県立芸術大学があり、音楽学部も1990年にスタートしている。しかし、沖縄県立芸大の音楽表現コース(器楽科に相当)を卒業しても、沖縄県内にはクラシック音楽を演奏する場所がほとんどなく、県外に出て行くしかなかった。そこで祖堅が、N響時代に知り合った大友直人を指揮者として招いて琉球交響楽団を発足させる。
大友の著書『クラシックへの挑戦状』によると、沖縄は伝統芸能や音楽が生活に根付いており、「とても感性豊かな人々の暮らす地域」なのだが、一方で沖縄県や自治体は「西洋クラシック音楽に対しては、慎重なスタンスが取られている」そうで公的な助成が見込めない、また大企業も少ないため、経済的援助も受けることが出来ない、そもそも沖縄では「民間企業がクラシック音楽事業を支援するという土壌」がないということで、設立当初から常設化を目指していた琉球交響楽団であるが、未だに目標達成には至っておらず、定期演奏会も年わずかに2回。学校での音楽鑑賞会などで年間80回程の演奏会を開いているが、団員の全員が他に仕事を持ちながら演奏活動を続けている。

琉球交響楽団は、創設から間もない頃にデビューCDを発売しており、実は私も持っていたりする。沖縄民謡をオーケストラ編曲で奏でるものであった。


曲目は、ブラームスの大学祝典序曲、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(ピアノ独奏:清水和音)、萩森英明の「沖縄交響歳時記」

今日のコンサートマスターは、客演の田野倉雅秋。ドイツ式の現代配置での演奏である。
なお、沖縄県立芸術大学音楽学部の出身者が多いと思われるが、沖縄県立芸術大学音楽学部のみならず、音大の学生は約9割が女子ということで、それを反映してか琉球交響楽団も女性楽団員が大多数ということになっている。今日のような客演ではなく所属のコンサーマスターは2人とも女性。今日の第1ヴァイオリンは12人中9人が女性、第2ヴァイオリンは10人中9人が女性。今日大活躍した打楽器奏者も全員が女性である。琉球交響楽団のホームページにある楽団員紹介を見ても大半が女性であることが分かる。


ブラームスの大学祝典序曲。
音に洗練度が不足しているが、燃焼度の高い演奏であり、音楽を聴いているうちに技術面は余り気にならなくなる。
21世紀に入ってからは常に押し相撲のような音楽作りを行うようになった大友直人であるが、今日はのびのびとした音運びで、若い頃の大友が蘇ったような印象を受ける。
前述した大友の著書『クラシックへの挑戦状』には、師である小澤征爾への複雑な思いが述べられているが、最近の大友の音楽作りには小澤への対抗心が現れているのかも知れない。小澤も90年代以降はフォルムで押し切るような演奏が目立っている。
大友直人は、海外でのキャリアはほとんど築いておらず、「世界で最もクラシック音楽の演奏が盛んな街」と見なしている東京を絶対的な拠点としているが、これも小澤の「とにかく海外に出なくては駄目だ」というポリシーの真逆を行っている。30歳になった時に、大友は小澤と久しぶりに会ったのだが、「君、まだ日本にいるのか。もう手遅れだな」と突き放されたそうで、そうしたことも最近の大友の音楽性に反映されているのかも知れない。


チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。
冒頭から弦に厚みがなく、大地を揺るがすような響きは聞こえないし、管楽器の安定度も今ひとつだが、これらも曲が進むにつれて気にならなくなってしまう。ザ・シンフォニーホールの響きがプラスに働いているということもあるだろうが、音楽をする喜びが技術面でのマイナスを覆い隠してしまうのだろうか。不思議な感覚である。
実演を聴くことも多い清水和音のピアノは、堅実かつ堅固で、音の透明度もなかなかである。

清水のアンコール演奏は、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」。叙情味豊かな演奏であった。


萩森英明の「沖縄交響歳時記」の演奏の前に、芸人で作家の又吉直樹による自作テキストの朗読がある。
沖縄出身の父と奄美大島出身の母の下、大阪で生まれた又吉直樹。自らのルーツを辿るテキストを朗読していく。

又吉直樹の父親が沖縄から大阪に出てきたのは、「競輪選手になるため」だったそうだが、後年、又吉が、「で、競輪選手になったん?」と聞くと、「試験会場まで行けんかった」と返ってきたそうで、又吉は「競輪選手になるには、自転車を乗りこなす前に、大阪の複雑な電車網を乗りこなす必要があった」と読み上げて、客席からの笑いを誘う。
奄美大島出身の母親についてだが、奄美大島から大阪の寝屋川市に出てきて看護師として働いていたそうだが、当時、母親が住んでいたボロアパートの隣の部屋に住んでいたのが又吉の父親だったそうである。壁が薄く、隣の部屋の声が聞こえたそうだが、沖縄と奄美大島は距離が近く言葉も似ているということで、又吉の母親は又吉の父親も奄美大島の人だと勘違いしていたそうである。ある夜、又吉の父親が酔っ払って嘔吐していたのを又吉の母親が介抱したのが二人の馴れ初めだそうである。

又吉は幼い頃は貧しく、寝屋川市にある文化住宅という長屋のようなところに住んでいたという。ここも壁が薄く、隣のKさん一家の声や、Kさんが掛けている音楽がはっきり聞こえてきたそうだ。Kさんの家に音楽が掛かっている日は、又吉家はテレビを見るのを諦めたという。

又吉という苗字は、沖縄ではありふれたものだが、寝屋川にはほとんどいない(大阪市大正区には沖縄の人が集団で移住してきており、ここには又吉さんも多いかも知れない)ということで、学校の先生や同級生との初対面時に、「またきち」君と呼ばれることも多かったようだが、間違いを直すのも気が引けたので、数ヶ月「またきち」君だった時代もあるという。小学校時代に2階建ての駐車場で勝手に遊んでいた時に、怖そうなおっちゃんに怒られ、名前を聞かれる。「田中とか中村とかありふれた名前」に偽ろうかと思ったが、素直に「又吉です」と答えたところ、「そんな苗字あるか!」と怒鳴られた経験もあるそうである。

お笑いに関するエピソードとしては、沖縄にある父親の実家に行った時に、カチャーシを付けて踊ったところ、爆笑を取ったそうで、それがお笑い芸人への道に繋がっているようである。なお、その直後に台所で麦茶を飲んでいたところ、父親が入っていて、褒められるのかと思いきや、「おい、あんま調子に乗んなよ!」と言われたそうで、それが芸人としてのスタイルに結びついているそうである。

貧しいながらも一家で焼肉店に行くこともあったそうだが、お金がないために肉を多く注文することが出来ず、母親はカルビ2枚で「あー、もうお腹いっぱい」と言って食べるのをやめたそうである。隣の席では焼き肉がジュージュー焼かれて煙がたくさん出ているのだが、又吉一家の席の煙は蚊取り線香のものと同じような細さだった、といったような話が続く。こうしたやせ我慢というか、遠慮の精神なども又吉に影響を与えているそうである。なお、又吉が売れてからは、両親ともにカルビ2枚でお腹いっぱいどころか、バクバク食べるようになったとのこと。

又吉の話ばかり長くなったが、「沖縄交響歳時記」も沖縄の青い空と青い海が眼前に広がり続けるのが見えるような、爽快な音楽である。
第1楽章「新年」、第2楽章「春」、第3楽章「夏」、第4楽章「秋」、第5楽章「冬」、第6楽章「カチャーシ」の6楽章からなり、基本的には調性音楽であるが、特殊奏法を用いて神秘感を生むシーンがあったり、沖縄の伝統楽器が生かされたりと、多様な表情も持っている。
沖縄の民謡がちりばめられており、音楽としても分かりやすい。
萩森英明は東京出身の作曲家であるが、テレビ番組のための編曲なども数多く手掛けているようで、それがこの曲の分かりやすさに繋がっているように思う。

指揮する大友直人もいつになく楽しそう。若い頃はビビッドな感性を生かした爽快でしなやかな音楽作りを特徴とした大友。琉球交響楽団の技術が万全でなくフォルムで押せないということもあったのかも知れないが、彼本来の音楽性が今日は前面に出ていたと思う。東京や京都、大阪などの強者揃いのオーケストラ相手よりも、琉球交響楽団のようなこれからの団体相手の方が、大友の長所が出やすいのかも知れない。

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2022年5月14日 (土)

観劇感想精選(434) 加藤健一事務所 「サンシャイン・ボーイズ」

2022年5月3日 京都府立府民ホールアルティにて観劇

午後2時から、京都府立府民ホールアルティ(ALTI)で、加藤健一事務所創立40周年・加藤健一役者人生50周年記念公演第1弾「サンシャイン・ボーイズ」を観る。
本来は一昨年に予定されていた公演であるが、コロナ禍により延期となり、本年に改めて上演されることとなった。

出演:加藤健一、佐藤B作、佐川和正(文学座)、田中利花、照屋実、加藤義宗、韓佑華。声の出演:清水明彦(文学座)、加藤忍。テキスト日本語訳:小田島恒志、小田島則子。
演出は、堤泰之が手掛ける。

「サンシャイン・ボーイズ」は、ニール・サイモンの代表作であり、ニール・サイモンに憧れて演劇を志した三谷幸喜(彼は本来は映画監督志望であったため、最初から演劇を目指していたという訳ではないのだが)が、自身が日大藝術学部時代に旗揚げした劇団に、東京サンシャインボーイズという名を与えたことでも知られる。
私が東京サンシャインボーイズの公演に接した経験は一度だけで、東京・新宿の紀伊國屋ホールで行われた「ショウ・マスト・ゴー・オン ~幕をおろすな!」の1994年再演版がそれなのだが、実はその時、座長である宇沢萬役で出演していたのが佐藤B作であった。当時の東京サンシャインボーイズは、看板俳優であった西村雅彦(現・西村まさ彦)が、三谷の脚本である「振り返れば奴がいる」への出演や、フジテレビの深夜音楽特集の一つである「マエストロ」に主演するなどして知名度を急速に高めていたが、知名度自体では客演の佐藤B作が最も高かった。

サンシャイン・ボーイズと佐藤B作が繋がったということで、個人的な原点回帰のようで嬉しくなる。


出演者は比較的多めだが、実質的には、かつて「サンシャイン・ボーイズ」の名でヴォードヴィル界を沸かせた、ウィリー・クラーク(今回演じるのは加藤健一)とアル・ルイス(同じく佐藤B作)の二人が軸であり、本道ではないが一種のバディものとなっているのが特徴である。時折、バディもの映画の代表的存在である「明日に向かって撃て!」のオープニング&エンディングテーマ(“Not Goin' Home Anymore” バート・バカラック作曲)が流れ、以前の二人の関係がノスタルジックに浮かび上がる。この音楽による演出はとても良い。


かつてアル・ルイスとコンビを組み、サンシャイン・ボーイズの名で一世を風靡したウィリー・クラーク。サンシャイン・ボーイズとして43年活躍したが、12年前にウィリーとアルの間で諍いが生じ、11年前にサンシャイン・ボーイズは解散。アルはヴォードヴィルでやっていける自信がないとして株式仲買人へと転身したが、ウィリーは、芸能の仕事を続けている。だが、すでに老境に達しつつあるウィリーの下に舞い込む仕事はほとんどない。
甥であるベン・シルバーマン(佐川和正)がマネージャーを務めているが、仕事を取ってくることは少なく、ウィリーは、経年劣化の進むホテルの一室に暮らし、通俗的な昼メロをぼんやりと見続けるような無為な日々を送っている(一応、仕事の依頼がいつ来てもいいよう、電話のそばにいる必要があるとの理由があるらしい)。本当にやる気があるのなら、映画館に出掛けて前衛的な作品を鑑賞したりもするのだろうし、テレビ映画は当時でもそれなりのものが放送されていたと思うが、そうしたものを観る気力ももう失せているようである。「サンシャイン・ボーイズ」というタイトルを付けながら、こうした黄昏の日々を舞台としているところがいかにもニール・サイモンらしい甘悲しさである。

そんな時、ベンがCBSからの仕事の依頼を持ってくる。往年のアメリカコメディーを特集する番組にウィリーにも出て欲しいというのだ。だが、11年前に解散したサンシャイン・ボーイズ再結成という形で、というのが条件であった。
喧嘩別れをしたということもあってウィリーは乗り気ではなかったが、ベンがようやく取ってきた「金メダル」級の仕事、またアルの方も、「孫にヴォードヴィルスターとしての自分の姿を見せたい」ということで、ニュージャージーからニューヨークへと出てきていた。

久しぶりに再会するウィリーとアル。過去のしこりは残っているものの、得意芸だったコント「診察室へどうぞ」のリハーサルを始めることにするのだが・・・・・・。


ビターな味わいのある大人のためのコメディであり、若き日の栄光と、そうではなくなった今の対比が、滑稽と悲哀を生む。

華々しさを取り戻すことはないという、リアルでシビアな展開なのだが、「近い将来実は」という救いになりそうな話を持ってくるところが憎い。あるいはサンシャイン・ボーイズはとある場所で、大成功こそしないかも知れないが……という希望が見える。日没前後のマジックアワーは人生にもあるのかも知れないと、強くではないが背中を押されたような気分になる素敵な作品であった。

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2022年4月 3日 (日)

笑いの林(128) よしもと祇園花月 「祇園ネタ」&祇園吉本新喜劇「諸太郎の惚れたあの子は名子役」2022.2.23

2022年2月23日 よしもと祇園花月にて

午後3時から、よしもと祇園花月で、「祇園ネタ」と祇園吉本新喜劇「諸太郎の惚れたあの子は名子役」を観る。吉本興業内でもコロナは流行っており、今日もコロナ陽性からの復帰者や、濃厚接触者認定を受けて仕事から遠ざかっていた者も出演する。
なお、よしもと祇園花月では現在、京都・滋賀割というものが行われており、京都府内と滋賀県内に在住もしくは通勤・通学者は通常3800円のところを500円引きの3300円で入ることが出来る(証明出来るものが必要)。


「祇園ネタ」の出演者は、コロコロチキチキペッパーズ、ライス、あべこうじ、アキナ、西川のりお・上方よしお。


コロコロチキチキペッパーズ。
西野が相方のナダルの紹介をするのだが、あばれる君や市川海老蔵などナダルと同じ坊主頭の有名人の紹介を始めてしまう(海老蔵は最近は坊主頭を止めたようだが)。
その後、「合わせるゲーム」を二人で行う。お題を出して、思いつくものを同時に言い、重なったらポイントになるというもの。「お茶」というお題にはナダルが「緑茶」と言うが、西野は「マテ茶」と言う。西野は基本的に横文字の入った言葉を選んで、ナダルから「格好つけようとしている」などと突っ込まれる。
「住みたい街」では、西野が中目黒というのだが(東京都内でもお洒落で人気の街である)、ナダルは「巣鴨」という。関東だと巣鴨は「おばあちゃんの原宿」としてかなり有名なのだが、関西で巣鴨と言われてもピンとこない人の方が多いと思われる。巣鴨から「熟女」に寄せてると、西野からナダルは突っ込まれるのだが、多分、こっちの人は意味が分からない。という訳で受けは今ひとつである。二人とも関西出身なのだが。


ライス。喫茶店を舞台にしたコントなのだが、正直、どこで笑っていいのか分からない。ということで内容は書かないが、なぜこの内容でコントに出来ると思ったのだろうか。


あべこうじ。基本的に先月と同じネタであるが、歌のネタはやらず、「状況によって笑いになるケース」を増やしている。電車の中で音漏れしている人には近くに寄ってリズムを取って踊ってみる、というのは私の好きなネタだが、先月はやらず今回は入れていた。
あべこうじも若い頃は、「あべこうじってうざいんですね」という自虐フレーズを定番としていたが、最近は封印しているようである。
祖母が101歳で大往生した際、親戚の高校1年生の女の子が、「天国に行った時に食べられるように」と何故かケンタッキーフライドチキンを選んだという話から、「お骨になった時に、多分、ケンタッキー入ってますよね」と繋ぐネタが面白かった。


アキナ。山名がコロナ陽性判定を受けたため、漫才を行うのは17日ぶりだそうである。
山名が出典不明の四字熟語を言うネタ、ニューヨークの証券会社で働いた時の想定(山名はカタカナ英語を使っていたが、実際は名古屋外国語大学出身であるため、英語は堪能だと思われる)、行列の出来るラーメン屋で並んでいるときに割り込まれたらというネタを行う。


西川のりお・上方よしお。
のりおが、「最近お笑いを見に来る女性は美人が多い。昔は漫才師より面白い顔をした女性が多かった。美人の前では照れて漫才が出来ないが、今日は出来ます」というネタから、「最近のお笑い芸人は美男子が多い。チュートリアル・徳井とか、ロンドンブーツ・田村亮とか。この間、二人で挨拶に来ましてん。『これから頑張ります。ゼロからのスタートです』。なんかあったの?」、「FUJIWARAの藤本も凄い顔してます。全てはタピオカから始まりました」と不祥事ネタを絡めていた。


祇園吉本新喜劇「諸太郎の惚れたあの子は名子役」。出演は、諸見里大介、信濃岳夫、鵜川耕一、今別府直之、伊丹祐貴、若井みどり、浅香あき恵、いがわゆり蚊、重谷ほたる、湯澤花梨。

花月ホテルが舞台。このホテルで子役のオーディションが行われるという設定である。ホテルのオーナー・若井みどりの子供で、小学校1年生の諸太郎(諸見里大介)が主人公である。このオーディションには名子役として有名な浅香花梨(湯澤花梨)も参加の予定。花梨の母親である浅香あき恵がいわゆるステージママという設定である。
吉本新喜劇は役者の魅力で見せる軽演劇だけに、やはり座長クラスがいないとどうにも締まらない。ラストも上手く着地出来ずにドタバタしている間に終わってしまっていた。

伊丹祐貴が、空港ネタ(伊丹空港、通称は大阪空港)で、「関西国際」、「神戸」(関西には無駄に空港が多い)などと間違われ、更に同じ兵庫県内の「尼崎」、「西宮」、「宝塚」、大阪府の「富田林」などと地名でいじられるネタが一番面白かった。

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2022年2月 6日 (日)

コンサートの記(763) 高関健指揮 京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2014「VIVA!オーケストラ」第3回「オーケストラってなぁに?」

2014年11月30日 京都コンサートホールにて

午後2時から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2014『VIVA!オーケストラ』第3回「オーケストラってなぁに?」を聴く。
「~こどものためのオーケストラ入門~」という副題の付いているコンサートであるが指揮者も曲目も本格的であり、大人でも十二分に楽しめる。というより、正直、このプログラムは子供には理解出来ないと思う。
今日の指揮者は京都市交響楽団首席常任客演指揮者の高関健。ナビゲーターは「ぐっさん」こと山口智充。

曲目は、前半がハイドンの交響曲第90番より第4楽章、モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」より第4楽章、ブラームスの交響曲第4番より第1楽章、後半がベートーヴェンの交響曲第1番より第2楽章、マーラーの交響曲第5番より第4楽章&第5楽章。オーケストラの弦楽の配置は前半と後半で変わり、前半はドイツ式の現代配置、後半は古典配置による演奏が行われる。

今日のコンサートマスターは渡邊穣。泉原隆志は降り番でフォアシュピーラーは尾﨑平。オーボエ首席奏者の髙山郁子は今日は全ての演目に登場。定期演奏会で前半にオーボエトップの位置に座ることの多いフロラン・シャレールは今日は後半のみの登場で次席として吹いた。小谷口直子はクラリネットが編成に加わるブラームスの曲から登場。フルート首席の清水信貴は後半のみの出演である。

開演前に京都コンサートホールのホワイエで、金管五重奏によるミニコンサートが行われる。出演者は、トランペットの早坂宏明(次席奏者)と稲垣路子、トロンボーンの岡本哲(首席指揮者)、ホルンの澤嶋秀昌、テューバの武貞茂夫。

曲は、ジョン・アイヴソンの編曲による「クリスマス・クラッカーズ」(「ジングルベル」、「Deck the halls(ひいらぎ飾ろう)」、「A Carol Fantasy」、「We wish a merry Christmas」)、モーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」の金管合奏編曲版、ルロイ・アンダーソンの「そりすべり」金管五重奏版という、いずれもクリスマスを意識した曲目であった。


午後2時開演。

まず、ハイドンの交響曲第90番より第4楽章の演奏。今日の高関はマーラーの交響曲第5番第5楽章のみ指揮棒を用い、他は全てノンタクトで指揮した。
ピリオド・アプローチを取り入れた快活な演奏。今日は、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンはピリオドによる演奏である。
曲が終了して、拍手が起こる、と、高関は客席の方を振り向いて指を振り、「まだ終わりじゃない」と告げる。演奏再開。そして終わって拍手、と思いきや曲はまだ終わっておらず、高関が再び客席を振り向いて人差し指を左右に振る。3度目でやって演奏は終了した。実はこの曲はハイドンが聴衆に「演奏が終わった」と勘違いさせるためにわざと疑似ラストを書いたという冗談音楽なのである。疑似ラストというとチャイコフスキーの交響曲第5番の第4楽章が有名だがチャイコフスキーは勘違いさせようとして書いたわけではない。だが、ハイドンはわざとやっているのである。ハイドンは「驚愕」交響曲を書いていたりと、ユーモア好きでも知られている。


ここで、ぐっさん登場。グレーの背広に同じ色の帽子姿である。ぐっさんは、クラシック音楽を聴く習慣もないし、オーケストラの演奏をコンサートホールで聴くのも初めてだという。
京都コンサートホールはステージの後方にも客席があるのだが、それがぐっさんは不思議だという。高関が「あれは合唱の席なんです。合唱が入る時はあそこに合唱が入るんです。今日は合唱は入らないので客席になっています」と説明する。京都コンサートホールのいわゆるP席(ポディウム席)は基本的に合唱が入ることを想定して設計されたものであり、合唱が大勢入れるように客席は可動式になっている。3席で1ユニットで、そのまま取り外し可能である。というわけで少し薄くて背もたれも低く、たまに軋むという欠点もある。
P席のあるホールでも、ザ・シンフォニーホールやサントリーホールなどは席は固定式である(合唱が入ることを想定して作られたものではない)。
元々は、P席は、ベルリン・フィルハーモニーが再建される際に、当時のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督であったヘルベルト・フォン・カラヤンが、「カラヤンがホールの中心にいるようにする」というプランを取り入れて建設した際に生まれたものであり、合唱用に特別にあつらえられたものではない。

高関は、「あそこの席(P席)は(私から)良く見えるんです。あ、あそこのお客さん寝てるな、とか」と言う。ぐっさんが「逆にノリノリのお客さんなんかもいるわけですか?」と聞くと、高関は「それは迷惑です」と答える。ぐっさんは「ほどほどということで」とこの話題を締める。

ぐっさんは、オーケストラというものの成り立ちについて高関に聞く。高関は「昔、芝居などの時に、ステージの前の方にで歌ったり踊ったりする声を掛けたりする(その人達のことをコロスといってこれはコーラスの元となった言葉である)場所があったそうで、そこをオルケーストラと呼んだのが始まりだそうです。昔は下で演奏していましたが、ステージに上がって演奏を始めたのが大体、1700年頃といわれています(日本でいうと元禄時代である。1701年に浅野内匠頭と吉良上野介の松の廊下刃傷事件が起こり、翌1702年に赤穂浪士達の吉良邸討ち入りがあった)」と述べた。

ぐっさんは、「高関さんも、京都市交響楽団の方々も凄い方なんです。プロフィールに凄い経歴が書いてある。ですが、私のプロフィールはたった3行ってこれなんですか? 吉本興業、もっと良い情報持ち合わせていなかったんでしょうか? 『趣味は、散歩、ものまね、ギター』ってこれどうでもいい情報ですよね」と言う。


モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」。緻密な演奏である。弦楽のビブラートはハイドンや、この後に演奏されるベートーヴェンに比べると多めだった。
この曲が始まる前に高関はフーガについての説明を行った。


ブラームスの交響曲第4番第1楽章の演奏の前に、高関はソナタ形式についての説明を行う。第一主題、第二主題、展開部、再現部、終結部からなるのだが、これを高関はプレートを使って説明する。第一主題は「A」、第二主題は「B」、展開部は「サビ」と書かれたプレートである。「A」のプレートは黄色、「B」のプレートは緑、「サビ」のプレートはピンク色をしている。展開部はサビとは違うのだが、わかりやすくサビと呼ぶことにしたらしい。まず予行として高関は「A」のプレートを掲げながら、第一主題を指揮し、いったん指揮を終えて、第二主題に入るちょっと前から演奏を始め、チェロが第二主題を奏でたときに「B」のプレートを掲げる。それからプレートはないのだが、もう一つの主題を演奏する。

本番の演奏でも、高関は「A」のプレートを掲げてから指揮を始め、第二主題に入ると「B」のプレートを取り出す。展開部では「サビ」と出し、その後、再現部でも「A」と「B」のプレートを掲げた。
なかなか白熱した演奏である。
今日は1階席の18列18番目の席で聴いたのだが、良い音で聞くことが出来る。京都コンサートホールの1階席は音響が今一つなのだが、高関はオーケストラを鳴らすのは得意なので問題はない。


後半、弦楽は配置を変えてヴァイオリン両翼の古典配置となる。ぐっさんは、配置が変わったことについて高関に聞く。高関は「元々は今のような配置で演奏していたようですが、第二次大戦後に前半のような配置も生まれたようです」と答える。現代配置が生まれたことについて高関は「諸説あるのですが、録音の際に前半のような配置にした方が良かったのではないかとも言われています。ステレオで録音する際に、こちら側(下手側)からは高い音、こちら側(上手側)から低い音と分けて聞こえるのが効果的だったのではないかと」と推測した。
現代配置の生みの親は実はわかっている。イギリスの指揮者であるレオポルド・ストコフスキーである。現代配置と呼ばれているのは彼がフィラデルフィア管弦楽団の常任指揮者だった時代に始めたものだ(そのため、アメリカ式の現代配置は「ストコフスキー・シフト」とも呼ばれる)。ただ配置を変えた理由については明確になっていないようだ。また、チェロが指揮者の正面に来るドイツ式の現代配置は誰が始めたのか正確には不明のようである。

配置換えを担当したステージマネージャーの日高成樹がステージ上に呼ばれるが、日高は内気な性格のようで、高関からもぐっさんからもマイクを向けられたが、結局、一言も発することなくステージを後にした。

ぐっさんは、配置が正反対に変わったコントラバス奏者の石丸美佳にインタビューするが、ぐっさんの「どちらが弾きやすいですか?」という質問に石丸は「どちらでも同じぐらい」という無難な返答をした。


ベートーヴェンの交響曲第1番より第2楽章。フレッシュな演奏である。聴覚的にもそうだが、視覚的にも音の受け渡し方がよりわかりやすくなる。


ラストの曲目であるマーラーの交響曲第5番より第4楽章&第5楽章。大編成での演奏。高関によると「83名か84名による演奏」だそうである。ぐっさんが「一番編成の大きい曲は何人ぐらいで演奏するんですか?」と聞くと高関は「実はマーラーの曲でして、交響曲第8番『千人の交響曲』という曲で、合唱を含めて全1033名で演奏したという記録があります。実は朝比奈隆先生が、フェスティバルホールで同じ人数で再現されたことがあります」と答えた。高関も「千人の交響曲」は指揮したことがあるが、流石に千人には到達せず、850人編成での演奏を3回指揮したことがあるという。

ぐっさんは客席で聴いてみたいということで、ステージを降りて、空いている前の方の席に座る。

有名な第4楽章アダージェットは京響の弦楽が艶やかであり、第5楽章はスケールが大きい(先に書いた通り、第5楽章だけは高関は指揮棒を手にして指揮した。指揮棒を使った方が大編成のオーケストラを操りやすいからだと思われる)。ただ、京都コンサートホールの音響は第5楽章を聴くには余り効果的ではない。この楽章では、管楽器奏者が朝顔を上げて、下ではなく真横に向けて音を出すようマーラーが楽譜に書き込んでいるのだが、トランペットの直接音などは強すぎて全体のバランスが悪くなってしまうのである。弦楽の音がもっと前に飛ぶホールだと良かったのだが。

とはいえ、充実した演奏を楽しむことが出来た。

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2022年1月25日 (火)

笑いの林(127) よしもと祇園花月!年末年始特別興行「祇園ネタ」&祇園吉本新喜劇「もうダメだ!修羅場の撮影現場!?」2022年1月10日

2022年1月10日 よしもと祇園花月にて

午後3時から、よしもと祇園花月で、「よしもと祇園花月!年末年始特別興行」、「祇園ネタ」&祇園吉本新喜劇「もうダメだ!修羅場の撮影現場!?」を観る。

久しぶりに訪れた祇園花月。お笑いは観劇やコンサート鑑賞とは違って笑い声を上げるので、飛沫の影響が出やすいということもあるが、単純に行く機会がなかったということもある。


「祇園ネタ」の出演は、ゆにばーす、金属バット、あべこうじ、テンダラー、大木こだまひびき。金属バットは人気急上昇中のようだが見るのは初めてである。

ゆにばーす。はらちゃんが小学生の頃は橋本環奈に似ており、中学校の頃は榮倉奈々で高校の頃は新垣結衣と嘘を付き、実際はと打ち明けるが、小学校の頃は浅野忠信、中学校の頃は古田新太、高校の頃は女装したビートたけしと、性別が男になってしまう。
「女子アナに似ている」と言われたこともあるという話になるが、女子アナは女子アナでも北朝鮮の女性アナウンサーである。
パチンコネタでは、はらちゃんが、北野武、武田鉄矢の真似をして、最後は「ダンカンなんですかあ」と二人で一人になってしまうというネタを行う。
これを読んで笑える人はいないと思うので、笑いたい人は劇場まで足を運んで下さい。


金属バット。成人の日ということで、泉南地方で行われた成人式に呼ばれたという話をする。二人は和泉地方の中心都市で地理的には一番北にある堺市の出身であるが、和泉地方は南へ行けば行くほど治安が悪くなる(「腕白な子が多くなる」と言い換えていた)ということで二人ともこわごわ楽屋入りしたそうである。ラニーノーズの二人も同じ楽屋だったそうだが、ラニーノーズは、「いっても成人なんで大丈夫ですよ」と語るも場内アナウンスで、「昨年は警察が出動する騒ぎとなってしまいましたが、今年はそうならないよう気をつけていきましょう」というような言葉が流れたため、金属バット二人は戦々恐々。ステージに出て行くと、ステージ上のやや下手側にヤンキーがしゃがんでいたそうで、金属バットはその横で漫才をする羽目になったそうだ。ヤンキーは二人が漫才をしている最中、「面白いこと言えよ、こら!」などと暴言を吐いていたそうだが、ステージ上手側を見るとおばちゃんがいる。何かと思ったら手話通訳士で、ヤンキーの暴言を一々手話に直していたそうである。

漫才の内容は、知り合いの漁師のおっちゃんから大トロを貰ったのでちらし寿司にした、ホタテを貰ったので水着にしたという内容で、漁師のおっちゃんから怒られるも、漁師のおっちゃんも的外れなことを言うというものであった。


あべこうじ。約10分間、一人で立て板に水の喋りを行い、実力の高さを感じさせる。アイドルの高橋愛と結婚しているが、ネタの中には奥さんも一度だけ登場する。
昨日は、愛知県の豊田市の近くにある小さな町に呼ばれ、1時間ほど話すという仕事を受けたのだが、終わってから新成人の女の子に「なにか面白こと話して下さい」と言われてぶち切れそうになったという話をする。
ネタは複数あるが、失敗のリカバリーの仕方(階段で躓いたらそのまま躓き続ければ、周りも「ああ、ああいう昇り方をする人なんだと思ってくれる」? など)が一番笑える。


テンダラー。浜本(私と同じ1974年生まれであるが、早生まれなので同学年ではない)が、「今日は先輩に当たるお客さんが多いということでそれに合わせたネタを」と言いつつ「最近、安楽死が」と縁起でもないことを言う。
白川が料理が得意なので料理番組に出たいという話になり、浜本が「キユーピー3分クッキング」のテーマ「おもちゃの兵隊のマーチ」)を鼻歌で歌いながら料理を行うが、手を丹念に洗っただけで終わってしまったり、鼻をほじったり、あちこち触ったりとやたら不潔な振る舞いをしたりするため料理番組にならない。
今度は自動車保険の話になるが、オペレーターである浜本が白川に怪我がないと知ると安心して電話を切ってしまうため先に進めない。
ちなみに白川は軽トラックを愛車としているが、移動公演の多い「ジ・白川バンド」という何故「ジ」なのか良く分からないバンドの主宰者であるため、常に軽トラに楽器を積んで運んでいるのである。


大木こだまひびき。
こだま師匠が、「コーラは安い」「それに比べて目薬は高い。あんなに小さいのに800円ぐらいする」と日常を題材にした語りを行っていく。「結婚したばかりの妻と今の妻は全然違う」「妻が途中で入れ替わっている」「昔は遅く帰っても起きて待っていてくれたが、今は帰るといつも寝ている」「何か食べたいので、『何か作って』というと、『カップ麺作って食べなさいよ』と目が語っている」と言うと、ひびき師匠が、「目は口ほどに物を言う」と返すが、「目は何も言わんよ。目が何か言っていたら、目医者はうるさくて敵わん」というようなやり取りが続く。


祇園吉本新喜劇「もうダメだ!修羅場の撮影現場!?」。出演は、酒井藍(座長)、信濃岳夫、タックルながい、佐藤太一郎、桜井雅斗、瀧見信行、若井みどり、末成映薫(末成由美から改名。読みは同じ)、川筋テイラ、佐藤美優。

撮影所が舞台であり、信濃岳夫が監督、酒井藍演じる酒井藍五郎が助監督である。詐欺姉妹を描いたサスペンス映画なのであるが、キャスティングされた若井みどりと末成映薫は若い頃から共演NGとなっている。酒井藍五郎が共演の約束を取り付けたという断言するが、実際は台本を読んでおらず、誰が出演するのかも把握していなかった。佐藤という苗字で「た」で始まる名前の俳優が主演するというので、酒井藍五郎は「佐藤健」主演だと思い込んでいたが、実際は新人の佐藤太一郎の主演ということでがっかりする。
やがて若井みどりと末成映薫が時間差で現場に到着。スタッフ達は二人が鉢合わせしないよう画策するが……。

吉本新喜劇も若手が中心だと今ひとつである。まだ独自の味がないので(酒井藍は茂造が何度も繰り出す音楽ネタをやっていたが、今ひとつ合っていない)くどさを感じてしまったりする。

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2021年8月24日 (火)

笑いの林(126) よしもと祇園花月 「祇園ネタ」&吉本新喜劇「茂造の親の心、子知らず」2012年2月5日

2012年2月5日 よしもと祇園花月にて

午後4時から、よしもと祇園花月で、「祇園ネタ」と吉本新喜劇「茂造の親の心、子不らず」を観る。

「祇園ネタ」の出演者は、桜 稲垣早希、キングコング、麒麟、ティーアップ、笑福亭仁鶴。


桜 稲垣早希。おなじみになった紙芝居「桃太郎」。アスカの格好で登場した早希ちゃんは端の席のお客さんに気を使って、「(紙芝居の絵が)見えますか?」と聞くが、お客さんが「見えない」というので、どんどん、舞台の後ろの方に移動することになってしまった。これ以上下がると、奥の席の人も見えなくなるということで、「こんな後ろの方でやったの初めてや」と言い、おまけにやる前に、紙芝居が上下逆さまなのに気付いて笑いを取る。今日は親子デーということで、ちびっ子も沢山会場に来ており、早希ちゃんの紙芝居は子供達にも好評であったようだ(子供達は「エヴァンゲリオン」についてはよく知らないだろうけれど)。


キングコングは、本編よりも枕の方が面白かった。キングコング梶原が昔、悪だったという話になり、いかにも不良という髪型をして、竜男という仲間とともに暴れて、「拳を入れたり」、「チンピラとやりあったりした」と語り、「隣町のシュウという奴と張り合った」というが、相方の西野に「それ何歳の時やった?」と聞かれ、「19まで」と答えたはいいものの、西野に「俺とお前、18の時に知り合ってたやん、お前、普通の髪型やったし、ヤンキーやなくてパシリだったやん」と突っ込まれる。
西野に「拳を入れてたのはいつ?」と聞かれて、梶原は「拳じゃなくて、昆布だしです」と言い訳をし、「チンピラじゃなくて金平ゴボウです」と言って、張り合っていた、シュウというのも「周富徳です」と料理の話にしてしまっていた。


麒麟は、川島の「麒麟です」の美声で、まずは沸く。
まずは以前も見たことのある、「だるまさんが転んだ」ネタ。川島が「だるまさんが転んだ」を言うのだが、「だーーーーーーーーるーーーーーーまーーーーーあーーーーさん、だるまさんが足を怪我しました、しかしだるまさんは痛み止めを打ってマラソンに挑みました、愛する妻のため、子供のため、そして何よりも自分のために、42.195キロに挑みます。ゴール目前、だるまさんがトップに躍り出ます。誰もがだるまさんの優勝を確信した時に、ゴール直前で痛み止めが切れて、だるまさんが転んだ」と長々とやって、相方の田村を戸惑わせるという内容である。
次は、田村が「ぶらり途中下車の旅」に出演して、川島がそれを解説するというネタ。川島が、「田村さんが、朗らかな笑みを浮かべて、電車から降り立ちました、ですが、田村さん、ズボンとパンツは穿いて下さい」と言い、「あそこが『ぶらり旅』じゃないわ」と田村に突っ込まれる。
更に川島が、温泉饅頭屋に扮し、「創業当時以来の、1個80円を守っています」と言い、買い求めた田村に、「1個おまけします」と言いながら、「160円です」と言って、「2個分の値段になってるやがな」と突っ込まれるが、「2個ですから160円です」と開き直ってみせる。
最後は、田村が、猿も入る温泉につかるという設定。川島が、「田村さん、猿をかき分けて温泉に入ります」とやって、田村が「どんだけ猿おんねん」と言って終わる。


ティーアップは、阿蘇で漫才をした時に、お客さんが二人しかいなくて、互いに目が合うのでやりづらかったという話から入り、オレオレ詐欺の話になる。ティーアップ前田が、オレオレ詐欺の電話を受けたという話になり、「明日までに10万円振り込まないと大変なことになります」という内容だったが、前田はそれを無視したそうだ。しかし電話主はアパートの大家だったということで、「振り込まんと本当に大変や」と長谷川に突っ込まれる。
前田は更に、「お母さんや、大変なので5万円振り込んでくれる」と電話を受けてたが断り、長谷川に「それはいいやないか」と言われるが、前田は「実の母親からの電話だった」と言い、長谷川は逆に「早く振り込めや」と突っ込む。
次いで、押し売りネタ。長谷川が押し売りの役をやるのだが、前田は押し売りをしている男の家内を演じたり、押し売りを歓迎したりして噛み合わない。
最後は、以前も見た宗教ネタ。前田が宗教を興したいというのだが、長谷川のことを「アーチャリー」と呼んだり、自分のことを「尊師」と言い、長谷川に「平田」と呼びかけるなど、パクリまくりである。
宗教の説話として、「狸と五兵衛どん」、「水の神と火の神」をやるのだが、いずれも相手に「どんな女が好きなの?」と聞くネタで一緒だったというオチで終わる。


トリは笑福亭仁鶴。
大阪弁と京都弁は似ているが、京都人は京都弁が大阪弁と似ていると言われることを嫌うという。「仁鶴はん、川と言葉は下るほど濁るんでっせ」と京都の人に言われたとのこと。
その他、年をとって小用の勢いがなくなったという話をし、夜中に用足しをしたくなったが、トイレまでは遠いので、裏庭でしようと思ったが、裏庭に通じる扉が凍っていて開かない。こういうときは、ぬるいお湯で氷を溶かすのが一番だが、お湯がないということで、「ご想像の通り、お小水で氷を溶かしまして、裏庭に出ましたが、もうすることがない」などと言う。
更に、東京の人から「大阪は独立国ですよね。パスポート要りますか」と言われたという話をし、大阪では、「どうでっか」「いまいちでんな」というやり取りが日常茶飯事なのだが、「何がどうで、何がいまいちなのかわからん」と話す。
更には、大阪人がケチだという話をし、隣の家に釘を打つための金槌を借りに行ったのだが、隣の家人は、「釘を打つと金槌が痛む。貸せん」と言われ、「ケチやな。仕方ない、うちの金槌を使おう」というオチで締めた。



吉本新喜劇「茂造の心、子不らず」。出演は、辻本茂雄(座長)、西川忠志、伊賀健二、平山昌雄、小米良啓太、佐藤太一郎、前田真希、たかおみゆき、末成由美。

伊賀健二と結婚が決まった前田真希。真希の養母である末成由美。だが、真希の実家である祇園旅館の横で営業している花月ラーメンという屋台の主、平山昌雄は、実は真希の実父である。以前は暴力団・吉本組の組員であった平山であるが、今は前田から平山昌雄に名前を変え、堅気となり、ラーメン屋として生きている。だが、真希にはそれを告げることが出来ず、隣のラーメン屋として接してきた。だが、祇園旅館の佐藤太一郎や、ラーメン屋のアルバイトである辻本茂雄に「真相を打ち明けるべきだ」と言われ、みなで一芝居打つことにする。

前半は、辻本茂雄が蹴飛ばしたバッグが、祇園旅館の書き割りを超えて飛んでいくなど(辻本茂雄は「俺が一番、びっくりしたわ」とアドリブを入れた)はちゃめちゃであるが、後半はしんみりとして、泣ける展開。新喜劇であるが、実際に泣く人もいたようだ。こうした吉本新喜劇もいいと思う。

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2020年11月12日 (木)

コンサートの記(667) 沼尻竜典指揮 京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2020「オーケストラを聴いてみよう!」第3回「オーケストラ・オリンピック!~主役はだぁれ?」

2020年11月8日 京都コンサートホールにて

午後2時から京都コンサートホールで、京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2020「オーケストラを聴いてみよう!」第3回「オーケストラ・オリンピック!~主役はだぁれ?」を聴く。指揮は京都市交響楽団にもたびたび客演している沼尻竜典。ナビゲーターを務めるのはガレッジセール。

オーケストラ・ディスカバリー2020の第3回目であるが、新型コロナの影響により第1回目は中止、第2回目も指揮台に立つ予定だったジョン・アクセルロッドが外国人入国規制により来日出来なくなったため広上淳一が代役を務めるなど波乱含みのスタートとなっている。第3回目は予定通り沼尻竜典の指揮で行われるが、曲目は変更になっている。

ほぼ完売状態だったシリーズチケット(4回通し券)を全て払い戻し、前後左右1席空けのソーシャルディスタンス対応1回券再発売となった今年のオーケストラ・ディスカバリー。ナビゲーターがポディウムに立って進行を行うため、ポディウム席と2階ステージサイド席の奥側は未発売、通常は自由席となる3階席も前後左右1席空けの指定席となっている。

 

今日は1階席17列の18番という、通常なら1階席の中でも最も良い音のする席の一つで聴いたのだが、聴衆が通常の半分以下、配置も不自然ということで残響過多であり、アンサンブルが粗く聞こえるという難点があった。やはり聴衆が隙なく席を埋めているというのは重要なようだ。

 

曲目は、ビゼーの歌劇「カルメン」前奏曲(「闘牛士」の前奏曲のみ)、ラヴェルの「ツィガーヌ」(ヴァイオリン独奏:豊嶋泰嗣)、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」から第3楽章、ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」(1919年版。演奏前に沼尻竜典によるレクチャー付き)。

びわ湖ホールの芸術監督として関西でもお馴染みの沼尻竜典。指揮以外にピアニストとしてもCDデビューしたり、作曲したオペラ「竹取物語」が高い評価を受けるなど、多彩な活躍を見せている。2022年4月からは、川瀬賢太郎の後任として神奈川フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督に就任する予定である。今日は眼鏡を掛けての登場。

今日のコンサートマスターは、京響特別名誉コンサートマスターである豊嶋泰嗣。第2ヴァイオリンの客演首席には大阪交響楽団コンサートマスターである林七奈(はやし・なな)が入る。泉原隆志は、豊島がヴァイオリンソロを務める「ツィガーヌ」だけコンサートマスターを務め、その他はフォアシュピーラーを受け持つ。フルート首席の上野博昭とファゴット首席の中野陽一朗は降り番。首席クラリネット奏者の小谷口直子、首席オーボエの髙山郁子、ホルン首席の垣本昌芳は全編に出演する。トランペット首席のハラルド・ナエスは「火の鳥」だけに出演。ドイツ式の現代配置による演奏である。

 

ビゼーの歌劇「カルメン」前奏曲は快速テンポでの演奏。通常の京都コンサートホールでならシャープな演奏に聞こえたと思われるが、前述した理由により残響過多であるため、ガサガサした響きとなってしまっていた。

 

ガレッジセールの二人が登場し、テーマが「オーケストラ・オリンピック~主役はだぁれ?」で、オリンピックのように誰が主役かを決めるものだと説明。そもそもオリンピックって主役を決めるものだっけ? という疑問は置くとして、コンサートには主役が一杯いて、ソリストだけでなく、オーケストラメンバーも、客席のみなさんも主役という説明を行う。

川田 「じゃあ、我々も主役ということで良いんですね?」
ゴリ 「あらら」

という話になるが、場面転換のためヴァイオリン奏者が退場したりするのを見てゴリが、「随分、抜けちゃってますけれど、骨粗鬆症のような」とボケる。
今日はハープがヴァイオリンソロのすぐ後ろに来て弾くのだが、ハープを一人で担いで運んでいたステージマネージャー(京響の場合は日高茂樹)の話になる。川田が「我々にもマネージャーがいますけれど、縁の下の力持ちのような」と述べ、沼尻が「45キロあるハープを一人で運ぶので力持ち。ただ、それだけじゃない。コントラバスの後ろの方から指揮者がちゃんと見えるか確認したり、音楽のセンスもいる。我々もステージマネージャーがいないと演奏出来ない」という意味のことを語っていた。

 

豊嶋泰嗣がソロを務めるラヴェルの「ツィガーヌ」。カルメンがジプシー、「ツィガーヌ」もジプシーの音楽ということで、ジプシー繋がりである。なお、現在ではジプシーという言葉は差別語の一つとなっているため、無料パンフレットにも「ロマ(ジプシー)」とロマを先に出し、ジプシーはその説明語となっている。

ゴリが、「あれれ変ですよ、豊嶋さんはコンサートマスターですよね。コンサートマスターがソリストになることってあるんですか?」と聞き、沼尻は、「そう珍しいことじゃない。でもコンサートマスターが全員ソリストが出来るわけじゃない。出来る人と出来ない人がいる」と返し、
ゴリ 「プレッシャー掛けますね」
川田 「豊嶋さん、段々苦笑いになってきましたよ」

というやり取りの後で演奏開始。コンサートマスターがソロをやると、本当に「コンサートマスターがソロをやってます」という音楽になってしまうことも多いのだが、豊嶋はソリストの経験も多いだけに、技巧やスケールのきっちりと計算された妙演を聴かせる。

 

チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」から第3楽章。
豊嶋泰嗣がコンサートマスターの席に戻っているのを見てゴリが、「豊嶋さん、またコンサートマスターに戻りましたね」
沼尻 「普通はソリストをやるときは前半休みになったりするんですが、今日は全部出て貰ってます」
ゴリ 「ブラック企業へようこそ」

チャイコフスキーは21世紀に入ってから最も演奏解釈の変わった作曲家と見て間違いない。ソ連時代は情報統制によって西側には伝わらなかった様々な資料が、ロシアになってから次々と公になっていることも当然ながら影響している。
「悲愴」交響曲についても沼尻は、「以前は景気が良いので、全曲終わったと勘違いして、お客さんが拍手したり、『ブラボー!』と言ったりすることも多かったのですが」と語るが、沼尻本人は「狂気を感じる」「怖い」と思うそうである。「企画の方から、『格好いい曲をやって下さい』と言われたので選んだんですが、格好いいことは格好いいけどそれだけじゃない」

沼尻は、「悲愴」交響曲自体が、第1楽章も変だし、第2楽章は「4分の5拍子によるワルツでこれも変、狂気を感じる」、第3楽章を経て第4楽章も他に例のない音楽で死に絶えるように終わるという、異例ずくめの作品であることを語る。
今日は第3楽章のみの演奏ということで、演奏終了後に「拍手をしてもブラボーしても、ブラボーはまだ駄目なんですけど(コロナ対策として劇場内で大きな声を出すことは禁止である)良い」と語り、最後に「弦楽器と管楽器の追いかけっこ」を聴いて欲しいと述べた。
ガレッジセールの二人は退場しようとしたが、沼尻が「良かったら聴いてって」と言ったため、ポディウムに腰掛けて(今日は座椅子は取り払われている)聴くことになった。

「悲愴」の第3楽章は、弦楽器が先に出て、管楽器がそれを追うような形になっているところが多い。曲調は明らかに行進曲で、交響曲の中に行進曲が入るケースはベートーヴェンの「英雄」など、いくつかあるが、チャイコフスキーとしてはベルリオーズの幻想交響曲を意識しているのではないかと思える箇所がいくつかある。
堂々とした進行だが、所々でベートーヴェンの運命動機を思わせる「タタタターン」という音型が前を遮る。演奏会場では録音ほどはっきりと運命動機は聞こえないのだが、管楽器が弦楽器を追い抜いてハッキリと運命動機を奏でる場面があり、ゾッとさせられる。
フォルムで聴かせるタイプの沼尻竜典。整った外観を時折荒々しくすることでチャイコフスキーの狂気を炙り出している。

 

休憩を挟んで後半、ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」(1919年版)の沼尻によるレクチャーと本番。

まずナビゲーターのガレッジセールがポディウムに登場し、ゴリが、「前半、色々と驚くことがあったと思いますけれど、何よりも驚いたのは、本番前に楽屋にご挨拶に伺ったところ、沼尻さんから『えーっと、どちらがゴリさんで、どちらが川田さんでしょう?』と聞かれたことです」
川田 「テレビとか見ないんですよ。ずっと音楽やってるから」
ゴリ 「我々も沼尻さんから、どちらがどちらかわかって貰えるよう、頑張りたいと思います」

沼尻がレクチャーで話す時間が長いというのでマスクをして登場し、まずガレッジセールの二人に、「先程は失礼しました」と詫びる。

沼尻によるレクチャーであるが、バレエ「火の鳥」の物語を京響に部分部分演奏して貰いながら解説するというスタイルである。冒頭を演奏した後で、大太鼓だけにトレモロを弾いて貰ったり、火の鳥の羽ばたきを表すところで振り向いて、右手をバタバタさせたりと、ユーモアにも満ちた分かりやすい解説が続く。ちなみにその直後のクラリネットのソロは火の鳥が「呼んだ?」と言って振り向くという解釈だそうである。
「13人の王女を描いた場面では」「13人の綺麗な王女、綺麗かどうかはわからないんですが」と言って笑いを取っていたが、京響に演奏して貰ってからは、「こういう音楽だからやはり綺麗なんでしょうね」と結論づけていた。
特別首席チェロ奏者の山本裕康の美しいチェロのソロがあると紹介したり(山本、かなり照れ気味)、ファゴットのソロがあるところでは、副首席奏者で今日はトップの位置にいる東口泰之にファゴットを掲げて貰ったりする。

バレエ組曲「火の鳥」全編の演奏。リューベック歌劇場音楽総監督を務め、オペラ、バレエといった舞台音楽の経験も豊富な沼尻。手慣れた演奏を聴かせる。パワー、輝き、瞬発力などいずれも狙った所に嵌まっていくような爽快さがある。

「全員が主役」ということではあるが、沼尻は、ソロを取った東口には演奏終了後に特別に立たせて拍手を受けさせ、山本の方にも手をかざした。

 

アンコール演奏は、ビゼーの「アルルの女」より“ファランドール”。堂々として推進力に富み、スケール豊かにして熱狂的な演奏。南仏を舞台にした作品ということで特別に用いられているプロヴァンス太鼓を演奏した福山直子が喝采を浴びていた。

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2020年9月10日 (木)

これまでに観た映画より(205) 周星馳監督・主演「少林サッカー」

2005年11月23日

周星馳(チャウ・シンチー)監督・主演の香港映画「少林サッカー」を観る。レンタルDVDでの鑑賞。

周星馳は香港コメディ界の帝王。日本の場合はお笑いをやるなら不細工であればあるほど有利という風潮もあるが、香港ではお笑いをやるにしても容姿最優先であり、周星馳も男前である。周星馳自身が「香港では見た目が良くないとコメディアンとして人気は出ないと」と日本人記者に向かって断言している姿をテレビで見たことがある。

ちなみに「不夜城」などで知られる作家の馳星周は周星馳のファンで、ペンネームは周星馳を逆にしたものだ。
それは余談として、「少林サッカー」はどこまで本気なのかわからない、サッカー・アクション・コメディ。
笑うべきなのかどうなのか微妙なシーンが多いのが難点だが、スポ根ものの王道は行っている。

セリフは広東語だが、中国の女優である趙薇(ヴィッキー・チャオ)だけは北京語。周星馳も、趙薇と話すときは北京語を用いている。昔は香港映画といえば広東語オンリーだったが、英国から香港が返還された1997年前後から北京語も取り入れた作品が増えている。
今や香港スターは北京語必須である。とはいえ、広東語に比べると北京語の方がずっと簡単なのは間違いない(声調も北京語が4つであるのに対して広東語は9つあり、習得は難しい)。

漫画のような映画だが、映像の迫力は漫画には出せないもので、漫画を映画にしたという以上のものを感じる。真面目に観るべきではない映画だが、いかにも香港というテイストで、痛快ではある。

私はあまり好きになれなかったけれど、あまりの馬鹿馬鹿しさに笑ってしまう場面も多かったし、そういうものが好きな人も多いだろう。
そもそも、サッカーと少林寺拳法を結びつけようという発想が凄い。映画としては好みが分かれるだろうが、発想は天才的である。

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