カテゴリー「ハイテクノロジー」の6件の記事

2018年10月21日 (日)

観劇感想精選(262) 京都国際舞台芸術祭 KYOTO EXPERIMENT 2018 ウースターグループ 「タウンホール事件」

2018年10月14日 京都芸術劇場春秋座にて観劇

午後2時から京都芸術劇場春秋座で、ニューヨークの前衛劇団であるウースターグループの「タウンホール事件」(クリス・ヘジダスとD・A・ペネベイガーによる映画「タウン・ブラッディ・ホール」に基づく)を観る。英語上演日本語字幕付。上演時間約65分の中編である。演出:エリザベス・ルコンプト。

1971年にニューヨークのタウンホールで行われたフェミニズムのためのパネルディスカッションの様子を収めたドキュメンタリー映画「タウン・ブラッディ・ホール」の映像を流しながら演劇も同時に上演される。

開演の15分前開場であったが、開演するまでの間、ヘッドホンを装着した若いアジア系スタッフ役の若い女性が舞台と客席の間をうろうろするなど臨場感を演出している。

パネルディスカッション(討論会)出席者の後ろにモニターがあり、そこに1971年のタウンホール内での模様が映し出される。

1971年の討論会に出席したのは、自称フェミニストだが実際は男性至上主義的なノンフィクション作家、ノーマン・メイラー、ウーマン・リブ運動の王道を行くような思想の持ち主である作家のジャーメイン・グリア、レズビアンである作家のジル・ジョンストン、女性という言葉で一括りにされるのを嫌う文芸評論家のダイアナ・トリリングらである。

今回の上演では、アリ・フリアコスとスコット・シェパードという二人の男優がノーマン・メイラーを交互に演じる。どちらかが出演出来なくなる可能性を考えて、二人に台本を送ったのだが、二人とも出演可能になったため二人一役にしたそうである。もっとも、男優一人対複数の女優という構図にした場合、誤解を招く恐れもあったため男優二人システムを採用したとも考えられる。男優二人が取っ組み合いの喧嘩をする挿話(ノーマン・メイラーが手掛けた映画のワンシーンらしい)を入れているが、これも男優二人でないと成立しないことだろう。

女性達はウーマン・リブだのフェミニズムだので一括りにされがちだが、主張や立場はそれぞれ異なる。

芝居はまずジルの一人語りで始まるのだが、これはジルが書いた『レズビアン・ネーション』に出てくるタウンホールでの討論会の記憶に忠実に基づいているようだ。ジルは自分がいかにアピール出来るかに掛けており、最初から場の空気を乱す気満々である。
「女は全員レズビアンだ」という主張を繰り広げる。

ジャーメイン・グリアは『去勢された女』という本で成功を収めたのだが、彼女を引き立てようとしたのが他ならぬノーマン・メイラーだったようである。
男性の詩人と女性の詩人を比較し、男性詩人はその活動が名誉に繋がるが、女性詩人の場合は逆に男性から敬遠されるということで、成功する女性詩人が生まれるためには女性の立場の向上が必須であると考えている。
また女は聖女か侍女のどちらかにしかなれないことを問題視している。

ノーマン・メイラーは、女性の人権を認めてはいるが、それは天賦のものではないと考えているようで、「努力で勝ち取るべき」としている。

ダイアナ・トリリングを演じているのは男優のグレッグ・マーテン。ダイアナは、オーガズムが一人一人違うように同じ女性でも思想が個々に異なるとして、安易に女性の立場を代表するようなスタンスを取ってはならないと考えている。また彼女は左翼思想の持ち主だが、ノーマンは「左翼全体主義は地獄」と考えており、思想面でまず対立している。

俳優のみが見られるモニターが3つほどあり、そこに流れる映像や字幕、俳優がつけているイヤホンなどを通して聞こえるセリフなどの情報の中から俳優が適宜選択をして表現していくという手法を取っている。効果的なのかどうかは見た限りでは判然としない。
ドキュメンタリー映画の映像と目の前にいる俳優が同じ仕草をしたり、声が重なったりするのは視覚的には面白いが、それだけといえばそれだけのような気がする。今目の前で起こっているという感覚にはどうしてもなれなかった。


この作品は基本的にジルの視点を主体に描かれており、女対男、女対女、急進派対伝統主義の構図で争いが起こってる間にもジルは女性同士で愛し合うなど、一人だけ上のステージにいるような立場にあるのは当然ともいえる。ジルにだけは自己愛でない愛があるようだ。実際にどうだったのかはわからないが。

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パネルディスカッション「About The Wooster Group」@ロームシアター京都

2018年10月8日 ロームシアター京都3階共通ロビーにて

午前11時から、ロームシアター京都3階共通ロビーで、パネルディスカッション「About The Wooster Group」に参加する。今週末に京都芸術劇場春秋座で上演される京都国際舞台芸術祭「タウンホール事件」のプレイベントである。事前申し込み制無料。

午前10時10分頃にロームシアターに到着し、今後の公演のチケットを受け取ってから、3階にあるミュージックサロンへ。今日は新国立劇場オペラの映像が流れている。


「About The Worcester group」の出演者は、ウースターグループの創設者であるエリザベス・ルコンプトと創設メンバーのケイト・ヴァルク。モデレーターは、パフォーマンス研究者・劇評家の内野儀(ただし)。

ウースターグループは、1975年創設のアメリカ・ニューヨークのパフォーマンス団体。独自の演劇観を持った作品を上演し続けている.

「タウンホール事件」は、1971年にニューヨークのタウンホールで行われたウーマン・リブの討論会での騒動を記録した映画「タウン・ブラッディ・ホール」の映像を使いながら行うパフォーマンスである。


インターネットで申し込みをした人にはパスワードが送付され、ウースターグループが配信している映像を見ることが出来る。
ただ、未見の人のことを考えて、最初の20分間は、同じ映像をモニターで視聴することに費やす。

まずは、2004年に上演された「Poor Theater」という作品について。この作品から、デジタル技術が本格的に導入され、ドキュメンタリー映像の編集速度が格段に速くなったため、表現が広がったという。グロトフスキーの「アクロポリス」を題材にしたものだが、過去の様々な映像を鏤められるようになったそうだ。

ウースターグループの俳優達は、事前に台本を読んでセリフを暗記してくるのだが、上演中にイヤホンから流れてくるセリフを耳にしながら、イヤホンの声をなぞるかなぞらないかの選択から始まり、流れてくる声の抑揚に近づけるか否かといった選択肢をその場その場で選ぶという即興性が重視されているようである。今では演者のみが見ることの出来るモニターも使用しているそうで、動きに関しても選択が行われるようである(「チャネリング」や「トランスダクティング」と呼ばれるようだ)。
日本にも書道などで同じ字を何度も練習して身につける技法があるが(型のことのようである)それに通じるものがあるという。

「ハムレット」を上演したときには、リチャード・バートン主演の映画「ハムレット」を流し、ハムレット役の俳優がバートンに近づけるのか近づかないのかという試みを行ったという。

その他、コンテンポラリーダンスの鬼才、ウィリアム・フォーサイスの動きを研究したり、西部劇などの影響を受けながらモダリティ(即興技術)の表現を拡げる試みを行ったそうだ。

またテレビの模倣も取り入れ、映像では可能な一回でそれそのものに成り切る表現(舞台の場合は稽古を重ねる必要があるので不可能である)を追求し、その場その場で「ゲームのように」「ノンロジカル」な取捨選択を行うという。その場で流れる映像や音声であるが、稽古場で録られたものが任意に選ばれるそうで、そのために稽古の模様は全て録画しているそうである。
勿論、稽古場でNGを出すこともあるのだが、これは「神聖な事故」(なんかジャン・コクトーみたいだな)として採用テイクに加えることもあるという。
意識と動きを乖離させる行為は、岡田利規とニューヨークで一緒に仕事をしたときに興味を覚えて取り入れたそうである。

テクノロジーとニューメディアアートの導入については、虚仮威しの意図は全くない。
最初は、エリザベスは学生時代には演劇に特に興味を持っていたわけではなく、共にウースターグループを立ち上げたスポルティング・グレイが、母の自殺をきっかけに、父親や祖母へのインタビューを試みて、視覚と聴覚のデザイニングを行い、作品にまとめ上げたことに端を発するという。
スタニスラフスキーやストラスバーグのリアリズム演劇と違った「奇妙さ」を追求した結果だそうだ。
アジアの演劇、能などがそうだが、西洋の演劇とは焦点の置き方が異なっており、目の前にいない人に話しかけることがる。それを理解してかみ砕くためにも映像やメディアを使うことが有効だそうだ。

ヨーロッパの男性演出家は、一般にだが、台本を理詰めで読み解き、理屈で演出を構築することが多い。ただ、「タウンホール事件」の演出はそれとは異なり、解釈は行わず、そこにあったことだけを再現するよう努めたそうだ。「タウンホール事件」に関してはウースターグループのモーラ・ティアニーの提言によってプロジェクトとして進められたものだが、最初はケイトなどは「タウン・ブラッディ・ホール」を舞台化することに難色を示したそうである。ただ当初取り上げる予定だったハロルド・ピンター作品の上演がボツになってしまったことで、「やりたい」という気持ちになって作り上げたという。

アジア系の学生から何人か質問があったが、Me too運動などが起こったから「タウンホール事件」を上演するのではなく、「タウンホール事件」のプロジェクトがスタートしてしばらくしてからMe too運動が盛り上がってきたのだそうで、シンクロシティのようなものかも知れないが、ウースターグループとしては「やりたいものをやる」を信条としており、時代に流されたりはしないそうである。

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2018年9月24日 (月)

2346月日(2) KYOTO CMEX10周年記念講演会 角川歴彦&荒俣宏

2018年9月14日 ホテルグランヴィア京都・古今(こきん)の間にて

午後3時30分から、京都駅ビルの一角を占めるホテルグランヴィア京都で、京都商工会議所主催のKYOTO CMEX10周年記念講演会に参加する。
KADOKAWAの取締役会長である角川歴彦と作家の荒俣宏の講演がある。

角川歴彦の講演は、「コンテンツの価値の劇的変化」と題されたものである。

21世紀に入ったばかりの頃、角川は当時のマイクロソフトの社長から「4スクリーンのイノベーションが起こる」と聞かされる。当時はなんのことか想像出来なかったそうだが、スマートフォン、パソコン、ダブレット、テレビの4つのスクリーンにより革命のことで、今ではこれらは定着した。当時はまだスマートフォンやタブレットは存在しない頃で、マイクロソフト社はその頃からそれらの登場を予見していたことになる。

これら4つのスクリーンの時代に覇権を争うのは、GAFAという4つの企業である。Google、Apple、Facebook、Amazonの4社だ。

これに動画配信で軌道に乗ったNetflixが加わる。これらの会社は、コミュニケーション、コミュニティ、メディア、コンテンツの4つを駆使して世界を拡げる。また、コミュニケーションがコミュニティを生み、コミュニティからはメディアやコンテンツが生まれるといった具合に相関関係がある。
Appleは、動画には自社が認めたコンテンツしか載せないという姿勢を見せており、「中国のようなところのある会社」だと角川は言う。
一方、Amazonは、提携する多くの会社が倒産に追い込まれている。ボーダーズ、トイザらス、タワーレコードなどで、これらの企業は顧客データがAmazonに使われたことで倒産しており、Amazonとの提携は「悪魔の契約」とも呼ばれているという。だが、Amazonの影響力は多大で無視出来ないため、KADOKAWAもAmazonと直接提携関係を結んでいるそうだ。KADOKAWAがAmazonと直接提携したことで、角川も散々に言われたことがあるという。

そして、イギリスのダ・ゾーンがJリーグの放映権を2100億で円買ったことから、日本のコンテンツが海外から重視されるようになったことがわかったという。ダ・ゾーンはスカイパーフェクTVの何倍もの金額を提示して、コンテンツをものにしているのである。
そして、動画配信を手掛けてきた企業が自社で映像コンテンツを作成するようになってきている。Netflixは映像コンテンツの制作に8500億円を掛け、Amazonは5000億円を計上。
中国のテンセントという企業は自社のゲーム利用者が全世界に1億3000万人いるという。コンテンツ作成にこれだけの金を使われ、利用者数を確保されたのでは、日本の企業には全く勝ち目はない。

更に映像関連会社の合併や買収も目立つ。ディズニーはFOXを7兆8千億円で買収。FOXのこれまで制作した全ての映像を使用する権利を得たため、その影響力は計り知れない。それはディズニーはFOXの全ての映像には7兆8千億をつける価値があると認定したことでもある。
AT&Tはtimeワーナーと合併。AT&Tは電話の会社であり、日本で例えるとNTTが映画会社と合併したようなものである。Webコンテンツにおける勝利を目指したものだろう。

日本のコンテンツに目を向けると、アニメ映画「君の名は。」は世界125カ国で公開、東野圭吾の小説『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は中国で日本以上に売れ、バーチャルYouTuberキズナアイは北欧でヒット。crunchyrollという日本のアニメ・ドラマ・漫画配信サービスはワーナーの傘下に入ることになったという。

また、出版は不況で右肩下がりが続いているが、日本映画は逆に絶好調である。大半はアニメ映画の急成長によるものだが、日本のコンテンツ価値は高まっており、キャラクターを輸出することで勝負が可能な状況だそうである。

続いて、荒俣宏と角川歴彦による対談「日本のコンテンツが世界に広がる~妖怪からみるクールジャパン~」が行われる。

角川が、最近、ライトノベルで「異世界もの」というジャンルが流行っているという話をする。ライトノベルではないとした上で、宮部みゆきの小説が典型的な異世界ものの系譜にあるとする。

荒俣は、「化ける」が日本社会のキーワードであるとする。野球などで「大化け」という言葉は使われる。日本では変わるのが当たり前だと思われているが、日本以外ではそうとは限らない。妖怪などの「化ける」文化が最も良く残っているのが日本だそうである。

日本人の文化根源をたどっていくと、縄文人は山奥に住んでいて、そのため長野県の奥部などから縄文土器などが出てくるという。なんで縄文人は長野の山奥にいたのだろうと疑問に思った荒俣は、長野まで縄文土器の発掘に出かけたことがあるそうだ、行ってみたら「縄文人がここにいて当然」だと思ったそうで、「山があって川があって色々なものがある。逃げようと思えば逃げられる」と、縄文時代の文化に適した環境だったそうだ。さて、縄文時代の終わりに里人が出て、徐々に両者に関わりが発生するようになる。里人を代表する大和朝廷が、縄文人のいる山へと進出するようになるのだが、縄文人は「刃向かってこない。穏やか」な人たちであり和の精神があった。そこで融和政策が行われるようになる。
その中で、「タブーを犯さない」「変化(へんげ)する」ということが重要になる。タブーについては、「鶴の恩返し」が典型だそうで、「なんでもしてあげますけど、機を織ってるところは覗かないで下さい」と求め、そのタブーを犯してなにもかも失うことになる。

「変化(へんげ)」に関しては、貨幣の「貨」自体に「化」という字が入っており、貝の直接交換のシステムからリアリティーをなくした貨幣に化けていくという過程があるそうだ。

京都はヘンゲの話に事欠かない場所であるが、土蜘蛛と酒呑童子が典型的な例であり、山奥で京の都へのアンチテーゼを唱える人たちが滅ぶ姿がそこにはあるという。
平安末期。それまでの妖怪を陰陽道で封じ込めていた時代が終わり、武士が妖怪を退治する時代になる。土蜘蛛や酒呑童子の退治でも武士が活躍する。力と力で対峙するようになるのだ。

荒俣や角川が少年だった時代にはファンタジーは抑圧されていた。ファンタジーは教育上良くないとされ、漫画が学校内に持ち込み禁止になったりしていたそうだ。私が子供だった頃にも、教科書に「マンガを読むのは悪いか」という教材が載っていたことを覚えている。
荒俣はファンタジーや漫画への抑制の最前線で戦った人物であり、文化的な多様性や豊かさの擁護者でもあった。

日本のゲームについてであるが、角川はこれも内容が良いんだか悪いんだかわからないものであり、そういう意味ではヘンゲの特徴を持っているとする。

また、日本のSF映画の傑作である「ゴジラ」もいわば怨霊を描いたものであり、荒俣によると、ある勢力が権力と和解したか否かでその後の扱いがわかれるという。例えば、鴨氏は元々は奈良の葛城の豪族であり、京都に出て賀茂神社に祀られるようになるが、一方で、土蜘蛛は和解しなかったがために滅ぼされ、化け物になっている。出自自体は大して違わないのに、現在の扱いは180度違う面白さがあると述べた。

また、日本を代表する怨霊として平将門と菅原道真がおり、平将門については荒俣はもう『帝都物語』で書いた。そこで、角川は菅原道真の怨霊を題材にした小説を荒俣に書くように勧めるが、荒俣は「書いてもいいのですが、自分はもう2、3年しか生きられないと思っているので」他のことに時間を使いたいという希望があるそうである。



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2017年3月13日 (月)

コンサートの記(281) 爆クラ!presents「ジェフ・ミルズ×東京フィルハーモニー交響楽団×アンドレア・バッティストーニ クラシック体感系Ⅱ -宇宙と時間編-」

2017年2月22日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて

午後7時から、大阪・中之島のフェスティバルホールで、爆クラ!presents「ジェフ・ミルズ×東京フィルハーモニー交響楽団×アンドレア・バッティストーニ クラシック体感系Ⅱ -宇宙と時間編-」というコンサートを聴く。

東京フィルハーニー交響楽団首席指揮者を務めるアンドレア・バッティストーニは主要指揮者としては現役最年少。1987年生まれでまだ誕生日を迎えていないため29歳という若い指揮者である。「ロミオとジュリエット」の舞台として有名なイタリア・ヴェローナ出身。2015年4月より東京フィルハーモニー交響楽団の首席客演指揮者に抜擢され、2016年10月に同楽団の首席指揮者に就任している。東フィルとのCDの他、パルマ・レッジョ劇場でのオペラ「ファルスタッフ」の映像が出ており、2017年3月にはRAI国立交響楽団を指揮したチャイコフスキーの交響曲第5番のCDがリリースされる予定。キャッチフレーズは「未来のトスカニーニ」である。
現役最高齢主要指揮者であるスタニスラフ・スクロヴァチェフスキの訃報を聞いた日に、現役最年少主要指揮者の演奏会を聴くというのは何かの因縁なのかどうか。

米・デトロイト出身で、パリとマイアミを本拠地とする、DJ、ミュージシャンのジェフ・ミルズがクラシック音楽用に書いた曲の日本初演と、現代音楽の演奏が行われる。

曲目は、ジョン・アダムスの「Short Ride in a Fast Machine」、ドビュッシーの「月の光」の管弦楽編曲、リゲティの「ポエム・サンフォニック(100台のメトロノームのための)」、黛敏郎の「BUGAKU(舞楽)」より第二部、ジェフ・ミルズの「The Bells」、20分の休憩を挟んで、上演時間約1時間というジェフ・ミルズの大曲「Planets」


フェスティバルホールで初めて聴いたオーケストラが東京フィルハーモニー交響楽団だったと思うが(純粋なクラシック音楽演奏会ではなく、「坂本龍一 プレイング・ジ・オーケストラ」)、東京フィルは昔から、セミクラシックや新曲の演奏会などによく出演する。NHKとのパイプがあるため、名曲アルバムや他のNHKの番組でも劇伴演奏を行ったりしているのだが、新星日本交響楽団を吸収合併して後は、編成が倍になったということもあり、かつてのレニングラード・フィルハーモニー交響楽団のように別働隊として同日に別の場所で演奏することも可能である(約半分のメンバーは、東京で指揮者のミハイル・プレトニョフと共に別の公演のリハーサルを行っているようである)。
ポピュラーでの演奏が多いということは、フェスティバルホールのような大型ホールでの経験も豊富ということで、上手く鳴っていたように思う。またバッティストーニはオーケストラを鳴らす術に長けており、バランス感覚も優秀である。


まずは、ジョン・アダムスの「Short Ride in a Fast Machine」。ミニマル・ミュージックである。切れ味鋭い爽快な音楽。バッティストーニは若いだけに機敏な動きによる指揮を行う。ただ、若さに任せて音を振り回すという感じはほとんどせず、丁寧な仕上がりが印象的である。


爆クラ!プロデューサーの湯山玲子がマイク片手に登場し、「爆クラ!」と楽曲について紹介する。湯山は日本のホールの中ではフェスティバルホールの響きが一番好きだそうである。湯山が「爆クラ!」の企画を思いついたのは、ニューヨークのクラブにいた時だそうで、クラブで流れていたグルーブなミュージックが、クラシックのミニマルミュージックと相性が良いのではないかという発想が浮かんだそうである。現在では東京・代官山の〈晴れたら空に豆まいて〉というライブハウスを本拠地に、月1ペースで爆クラ!の公演を行っているという。これまでのゲストには、坂本龍一、冨田勲、岡村靖幸、島田雅彦、西本智実、岩井俊二、菊地成孔、小西康陽、コシミハルらが名を連ねている。

湯山は、ジョン・アダムズの「Short Ride in a Fast Machine」について、「『湘南爆走族』のような、もっと笑いが来るかと思ったんですけど。あるいは『ビー・バップ・ハイスクール』のような」と語り、「ジョン・アダムスが高級スーパーカーに試乗して、気分が良いんだか悪いんだか分からなくなった状況を作曲したもの」と解説する。

「月の光」。今回はフィラデルフィア管弦楽団のライブラリアンの方による編曲だそうである。

リゲティの「ポエム・サンフォニック(100台のメトロノームのための)」。爆クラ!では毎回、聴く者を驚嘆させるような音楽を演奏するそうで、ジョン・ケージの「4分33秒」もやったことがあるという。リゲティの音楽がどのようなものなのかは聴いてお楽しみとのこと。

黛敏郎の「BUGAKU(舞楽)」より第二部。以前から、黛の涅槃交響曲をやってみたいという希望を湯山は持っていたそうである。黛は鐘の音を解析して、それをオーケストラに置き換えて演奏させ、初演は大成功している。
なお、小野光子の『武満徹 ある作曲家の肖像』(音楽之友社)によると、武満は黛からピアノを借りたお礼に、天台声明の譜面と音源を渡したそうで、武満によると「それであの人(黛)はね、《涅槃交響曲》を書いたんです、と思いますよ。僕の記憶に間違いがなければ(笑)」だそうである。


ドビュッシーの「月の光」。まずクラリネットが主題を奏で、それが弦楽へと移り、フルートに受け渡されてラストを迎える。ハープの使い方も効果的。非常に美しいオーケストラ編曲である。


リゲティの「ポエム・サンフォニック(100台のメトロノームのための)」。バッティストーニがメトロノームを持って登場。譜面台の上に置いて、楽団員に促すと、全員が椅子の下からメトロノームを取り出し、いっせいに鳴らし始める。最初はテンポはバラバラで、ガタガタいう音が間断なく続く。雨音のようにも聞こえるが、私は昔の映写機がカタカタいう音を連想した。バッティストーニはずっと腕組みをして待機している。やがて、譜面台の上にあるものからテンポが離れたメトロノームから先に電気が落ちてゆき、拍子は「カツカツ」という二拍子に近くなる。指揮台の上を同じテンポのメトロノームだけが残り、やがてそれらも止まって譜面台上のものだけが生き続ける。譜面台上のメトロノームも息絶えて曲は終わる。

ホワイエでは、演奏で使われたセイコーインスツル株式会社製のメトロノームが売られていた。


黛敏郎の「BUGAKU(舞楽)」より第二部。「雅楽をオーケストラ用に置き換えたクラシック音楽」として真っ先に思い浮かぶのがこの「BUGAKU」である。木管や弦が笙や篳篥の響きを模し、フルートが龍笛のように鳴り渡る。
バッティストーニはダイナミックな音楽を東フィルから引き出す。「BUGAKU」を日本人以外の指揮者で聴くのは録音も含めて初めてだが、音楽は国境や言葉の違いを超えて指揮者にも聴衆にも届くのだということがわかる。


ジェフ・ミルズの「The Bells」。作曲者であるジェフ・ミルズがステージ上に呼ばれ、湯山からのインタビューを受ける。通訳が湯山のいうことを上手く伝えられなかったようだが、ミルズは、「まずエレキ音で全曲を作ってからオーケストラに置き換えます」と言っていた。バッティストーニはジェフ・ミルズの音楽について、「ポピュラーやジャズのミュージシャンがクラシック音楽に挑戦した場合、素人っぽいものになりやすいんですけど、この曲は大変充実した作品だと思います」と述べる。

その「The Bells」。まずチューブラーベルズが鳴らされるのだが、その後、ジェフ・ミルズ(ステージ上手端に陣取る)のDJが入り、ノリノリのダンス音楽が始まる。舞台の両端ではミラーボールが回り、ダンサブルな雰囲気を作っていた。


メインのジェフ・ミルズの「Planets」。演奏開始前に湯山玲子が登場し、「オランダのアムステルダム・コンサルトヘボウでのこの曲の演奏も聴いたのですが、さっきリハーサルでチェックした限りではフェスティバルホールの方が上です」と断言する。世界三大コンサートホールの一つであるアムステルダム・コンセルトヘボウであるがクラシック専用であるため、今日の電子音の大きさだと、壁や天井などが軋んでしまうだろう。フェスティバルホールはポピュラー対応なのでその点は万全である。

ジェフ・ミルズはやはり舞台上手でDJを行う。

ダンサブルなミニマルミュージックであるが、「The Bells」よりは描写的な音楽である。ホルストの組曲「惑星」とは違い、具体的にどこかの星を描いているということはなく、あたかも宇宙衛星から眺めた惑星群の印象を音にまとめているかのような趣が感じられる。曲が進むにつれて照明も赤からオレンジ、緑、青へと変わっていく。

途中で金管奏者達が集団で下手へと退場。続いて、フルート奏者とバスクラリネット奏者も下手へとはけていく。彼らは客席に現れ、バンダとして演奏する。

金管奏者達がバンダの役目を終えてステージへと戻ったところで、バッティストーニは指揮棒を譜面台に起き、片手または両手で数字を示して演奏させる。何らかの特殊奏法の指示であるのは確かだが、具体的にどう違うのかまではわからなかった。

変拍子の多い曲であるが、ラストは3拍子系から4拍子系という馴染みのあるリズムへと戻って終わる。

バッティストーニの指揮はジャンプを繰り出すなど、躍動感溢れるものだったが、強引な音運びは行わず、最後まで端正な造形美を守った。
良い曲ではあるが、もう一度聴きたいかというとそうでもないような。面白かったのだが記憶には残りにくい。


考えてみれば、黒人の作曲したフルオーケストラのための作品を聴くのは、今日が生まれて初めてなのだった。

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2016年5月 9日 (月)

冨田勲作曲 大河ドラマ「徳川家康」オープニングテーマ

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2013年11月 7日 (木)

観劇感想精選(103) うめきた・グランフロント大阪ナレッジシアターこけら落とし公演 大阪大学ロボット演劇プロジェクト×吉本興業「銀河鉄道の夜」

2013年5月2日 うめきた・グランフロント大阪ナレッジシアターにて観劇

午後7時から、うめきた・グランフロント大阪 ナレッジキャピタル4階にオープンした、ナレッジシアターこけら落とし公演、大阪大学ロボット演劇プロジェクト×吉本興業「銀河鉄道の夜」を観る。ロボットと人間が演じる、大阪大学ロボット演劇プロジェクトの最新作。原作:宮沢賢治、台本・演出:平田オリザ(大阪大学)、ロボット・アンドロイド開発者:石黒浩(大阪大学&ATR)、出演:桜 稲垣早希、紙本明子、山本裕子、片桐慎和子、ロボビー(RobovieR3)。平田オリザがフランスの子供達のために書いたロボット演劇の日本初上演。ロボットのロボビーがカンパネルラを演じ、紙本明子がジョバンニに扮する。その他の女優達は一人で複数の役を受け持つ。桜 稲垣早希は学校の先生、ジョバンニの同級生、鳥を捕る男、銀河鉄道に乗り合わせた男を演じ、山本裕子はザネリ、乗り合わせた客、片桐慎和子はジョバンニの同級生、ジョバンニの母、車掌役を演じる。上演時間約1時間の中編である。

背後はスクリーンになっており、様々な映像が流れる。

うめきた・グランフロント大阪ナレッジシアターこけら落とし公演ロボット演劇版「銀河鉄道の夜」

独自の作風で賛否両論ある平田オリザだが子供向けの劇ということで今回はオーソドックスな本。ロボットが出ていなければ特別な劇にはならなかっただろうが、ロボットがいることで不思議な印象が残る。

ロボビーは動線はレーザーで完璧にコントロールされており、セリフは千分の一秒単位で補正が可能だという。

京都の演劇界ではおなじみの紙本明子が熱演。ものまね芸人でもある桜 稲垣早希は声音を変えて、男性役も見事に演じて見せた。桜 稲垣早希は単独公演では演技力不足を感じることもあるが、今回は十分満足のいく演技をしていたように思う。

大阪大学ロボット演劇プロジェクト×吉本興業「銀河鉄道の夜」

終演後、平田オリザと石黒浩によるアフタートーク。ロボビーは今では400万円ぐらいで買えるという。その代わりプログラミングは自分でしなければならないが。

大阪大学はロボット工学では世界最先端を行っており、あと10年もすれば、危険な場面を演じるスタントマン演劇ロボットも出来るのではないかとのことだった。

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