カテゴリー「映画音楽」の60件の記事

2021年6月18日 (金)

これまでに観た映画より(263) アルフレッド・ヒッチコック監督作品 「サイコ」

2021年6月16日

録画してまだ観ていなかったBSプレミアムのプレミアムシネマ「サイコ」を観る。アルフレッド・ヒッチコック監督の代表作の一つで、興行成績は最高。知名度においても一二を争う。

「サイコ」は有名作なので、これまでにテレビで放送されたものを何度か観ている。一番最初に観たのは、まだ二十代前半だった頃で、テレビ東京で日曜の昼下がりに放送されていた映画劇場においてだった。当時のテレビ(地上アナログ放送)では、深夜を除いて洋画を放送する際は必ず吹き替え版であり、最初に観た「サイコ」も当然ながら吹き替えであった。余談であるが、京都ではテレビ東京系の地上波放送を見ることは基本出来ない。テレビ東京の関西準キー局であるテレビ大阪とKBS京都テレビとの放映権争いによるものである。


今でこそサイコサスペンスの名作は数多いが、ヒッチコックの「サイコ」はその先駆けであり、全てのサイコサスペンスがヒッチコックの「サイコ」の影響を受けているといっても、決して過言ではない。

出演:アンソニー・パーキンス、ジャネット・リー、ヴェラ・マイルズ、ジョン・ギャビンほか。原作:ロバート・ブロック、脚本:ジョセフ・ステファノ。音楽:バーナード・ハーマン。

バーナード・ハーマンは映画音楽の巨匠で、ヒッチコック映画の音楽もいくつも手掛けているが、「サイコ」の音楽は、彼が書いた作品の中でも最高の部類に属すると思われる。シャワーシーンの音楽が特に有名だが、その他の音楽も素晴らしい。オープニングテーマも心の動揺と焦燥感や不安定さ、車の疾走感などを音楽で見事に描き切っており、それでいてどこかエレガントである。

映画史上最も衝撃的な音楽としても知られるシャワーシーンの音楽であるが、シャワーシーンは音楽のみならずカット割りも有名で、ヒッチコックを取り上げた書籍によくシャワーシーンのカット割りの写真が載っている。

今はサイコサスペンス作品も珍しくないので、若い人が「サイコ」を観てもそれほどの衝撃を受けないかも知れないが、公開時にはこの手の映画はほとんど存在しなかった。また押さえておかねばならないのは、ジャネット・リーが当時の人気女優だったということである。そのため観客は最初のうちは、「サイコ」が彼女を主人公とするクライムスリラーだと信じて疑わなかった。ところが……、という点が衝撃だったのである。

今の大都市の映画館は完全入れ替え制が基本だと思われるが、私が若い頃はまだそれほど厳しくなく、途中から入って何度も映画を観るということも可能だった。だが、ヒッチコックは全ての映画館に途中入場を禁じる旨を言い渡したという。有名な作品なので、ストーリー展開を全て知っている人も多いと思うが、少しだけ内容を明かすと、主役と思われたジャネット・リーの出演シーンは、映画が半分にもたどり着かないうちに終わってしまい、その後二度と現れない。途中から映画館に入った客が、「なんでジャネット・リーが出ていないんだ?」と不審がるのを防ぐための措置であった。

これまた有名な話であるが、「サイコ」は便器がスクリーンに映る映画史上初の作品である。検閲があり、日常生活で隠されている部分は撮影しないという決まりがあった。当然ながら検閲に引っかかりそうになったが、「どうしても必要なシーンだから」という説得が成功し、カットされることなく上映されている。

ノーマン・ベイツを演じたアンソニー・パーキンスは、これが出世作となり、日本でも人気が出てCMにも出演している。アイビーリーグのコロンビア大学卒というインテリであり、ノーマンがしょっちゅう飴をなめているというのは、パーキンスが出したアイデアである。コロンビア大学在学中にフランス語をマスターしており、「サイコ」がヒットした後は、ノーマンのイメージに固定されるのを嫌い、パリに移住してフランス映画への出演を続けた。だが、結局は彼はノーマンから逃れることは出来ず、人気に翳りが見えてからはヒッチコック以外が手掛けた「サイコ」シリーズに出演せざるを得なかった。同性愛者であったことも彼を苦しめたという。1992年、エイズが原因の合併症により他界。

 

ちなみに「サイコ」は、脚本、音楽などはそのままに1998年にカラー映画としてリメイクされている。監督はガス・ヴァン・サントが担当し、製作側もかなり力を入れたことが窺われるが、大コケに終わり、ヒッチコックの偉大さが改めて浮かび上がる結果となった。

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2021年6月17日 (木)

サラ・ハツコ・ヒックス指揮デンマーク国立交響楽団 バーナード・ハーマン 「サイコ」組曲

東京生まれ、ホノルル育ちのサラ・ハツコ・ヒックスが指揮するヒッチコック映画「サイコ」の音楽。作曲はバーナード・ハーマン。演奏はデンマーク国立交響楽団。

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2021年5月31日 (月)

B・J・トーマス 「雨にぬれても」(映画「明日に向かって撃て!」挿入歌)

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2021年5月30日 (日)

これまでに観た映画より(261) 「戦場のメリークリスマス」

2021年5月27日 京都シネマにて

京都シネマで、「戦場のメリークリスマス」を観る。大島渚監督作品。日本=イギリス=ニュージーランド合作作品で、撮影は主にニュージーランドで行われている。出演:デヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけし、トム・コンティ、ジャック・トンプソン、内田裕也、ジョニー大倉、内藤剛志ほか。オール・メイル・キャストである。結構よく知られた話だが、無名時代の三上博史も日本軍の一兵卒役で出演しており、比較的目立つ場面に出ていたりする。脚本:大島渚&ポール・マイヤーズバーグ。製作はジェレミー・トーマス。2023年に大島渚の作品が国立機関に収蔵される予定となったため、全国的な大規模ロードショーは今回が最後となる。4K修復版での公開となるが、京都シネマの場合は設備の関係で、2Kでの上映となる。

映画音楽の作曲は坂本龍一で、略称の「戦メリ」というと通常では映画ではなく坂本龍一作曲のメインテーマの方を指す。おそらく映画よりも音楽の方が有名で、大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」は観たことがなくても、坂本龍一作曲の「戦場のメリークリスマス」は聴いたことがあるという人も多いだろう。サウンドトラック盤の他に、ピアノアルバムとして発表した「Avec Piano」も有名で、坂本龍一本人の監修による楽譜などが出版されている。私は坂本龍一本人の監修ではなく、許可を得て採譜され、kmpから出版された楽譜を紀伊國屋書店新宿本店で買ってきて、よく練習していた。「戦場のメリークリスマス」メインテーマよりも、「Last Regrets」という短い曲の方が好きで、これまでで一番弾いた回数の多い曲であると思われる。
私のことはどうでもいいか。

ローレンス・ヴァン・デル・ポストの小説『影の獄にて』を原作としたものであり、インドネシアにおける日本軍の敵国兵捕虜収容所が舞台となっている。捕虜収容所を舞台とした映画としては「大いなる幻影」が有名であるが、「戦場のメリークリスマス」も「大いなる幻影」同様、戦争映画なのに戦闘シーンが全くないという異色作で、おそらくであるが、「大いなる幻影」はかなり意識されていると思われる。

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1942年、ジャワ島レバクセンパタにある日本軍の捕虜収容所。収容所所長はヨノイ大尉(坂本龍一)である。部下のハラ軍曹(ビートたけし)と、捕虜であるが日本在住経験があるため日本語も操れるジョン・ロレンス(トム・コンティ)は敵であり、時には一方的にハラがロレンスに暴力を振るう関係でありながら、友情のようなものも築きつつあった。

当時日本領だった朝鮮半島出身の軍属であるカネモト(ジョニー大倉)が、オランダ兵俘虜のデ・ヨンに性行為を働いたかどで捕縛され、ハラから切腹を強要されそうになるというところから始まる。実はこの同性愛の主題がずっと繰り返されることになるのがこの映画の特徴であるのだが、単なるホモセクシャルの話で終わらないところが流石は大島渚というべきだろうか。戦場には男しかいないため、洋の東西を問わず同性愛は盛んに行われたのだが、この映画では、それが単なる性欲という形で終わることはない。

ヨノイは、バタビヤ(現在のジャカルタ。長年、インドネシアの首都として知られたジャカルタだが、首都移転計画が本格化しており、ボルネオ島内への遷都が行われる可能性が高い)で行われる軍律会議に参加したのだが、そこで被告となったジャック・セリアズ(デヴィッド・ボウイ)に一目惚れする。ここで流れる音楽は「The Seed(種)」というタイトルで、メインテーマ以上に重要である。

死刑を宣告されたセリアズであったが、ヨノイによって日本軍捕虜収容所に入れられることとなる。

「戦場のメリークリスマス」は、まだ千葉にいた二十代の頃に、セルビデオ(VHSである。懐かしいね)で観たことがあるのだが、スクリーンで観るのは今回が初めてとなる。日本公開は1983年。当時、私は小学3年生で、まあ10歳にもならない子どもが観るような映画ではない。


大島渚は京都大学在学中に学生運動に参加し、左派思想からスタートした人だが、坂本龍一も都立新宿高校在学中から学生運動に加わり、芸大在学中も、――当時は学生運動は盛りを過ぎていたが――、美術学部の学生を中心に(音楽学部の学生は純粋なお坊ちゃんお嬢ちゃんばかりで、政治には全く興味を示さなかったとのこと)自ら学生運動の団体を興していたということもあって、大島渚に憧れていたという(この辺りの記述は坂本龍一の口述による著書『Seldom Illegal 時には、違法』が元ネタである)。大島渚は学生劇団でも活動していたが、坂本龍一も芸大在学中はアンダーグラウンド演劇に参加しており、吉田日出子などとも知り合いで、舞台音楽を手掛けたほか、舞台に立ったこともあるというが、この映画での演技はかなり酷いもので、本人も自覚があり、坂本龍一のお嬢さんである坂本美雨によると、「試写後、たけしさんとフィルムを燃やそうかと話していたそうですからね(笑)」(「戦場のメリークリスマス/愛のコリーダ」有料パンフレットより)とのことである。日本語のセリフは切るところも変だし、感情と言葉が一致していなかったりする。ビートたけしは、喋りを仕事としているので、癖は強いが聞ける範囲であるが、坂本龍一はあのYMOの坂本龍一でなかったら降板もやむなしとなっていたとしてもおかしくない。ただ、大島渚は演技の巧拙ではなく、人物の持つエネルギーを重視する映画監督であり、当時、時代の寵児と持て囃されていた坂本龍一の佇まいは、やはり印象に残るものである。実際、坂本龍一の姿がメインで映っているが、坂本が喋っていないという場面が最も効果的に撮られている。
なお、当時の坂本龍一は「美男子」というイメージで女子学生のファンが多く、坂本龍一目当てで観に来ている女の子も多かったそうである。

敵味方や性別といった境界全てを超える「愛」というものを、変則的ではあるが思いっ切りぶつけてくる大島の態度には清々しさすら感じる。また、主役にデヴィッド・ボウイと坂本龍一という二人のミュージシャンを配しながら、ボウイ演じるセリアズは歌が苦手で、頭脳明晰でありながら自己表現が不得手であることにコンプレックスを感じているという設定なのが面白い。

余り指摘している人は見かけないが、デヴィッド・ボウイが担っているのはイエス・キリストの役割だと思われる。十字架への磔に見立てられたシーンが実際にある。物語の展開を考えれば、むしろない方が通りが良くなるはずのシーンである。そして何よりタイトルにメリークリスマスが入っている。


坂本龍一へのオファーは、最初は俳優のみでというものだったようだが(今日BSプレミアムで放送されたベルナルド・ベルトルッチ監督の「ラストエンペラー」も同様である)「音楽をやらせてくれるなら出ます」と答え、自身初となる映画音楽に取り組む。デヴィッド・ボウイが出るなら、ボウイのファンと音楽関係者はみんな「戦場のメリークリスマス」を観るから、映画音楽を手掛ければ世界中の人に聴いて貰えるという計算もあったようだ。映画音楽の手本となるものをプロデューサーのジェレミー・トーマスに聞き、「『市民ケーン』を参考にしろ」と言われ、書いたのが「戦場のメリークリスマス」の音楽である。インドネシアが舞台ということでアジア的なペンタトニックで書かれた音楽で、試写会を終えた後にジェレミー・トーマスから、“Not good,but Great!”と言われたことを坂本が自慢気に書いて(正確に書くと「語って」)いたのを覚えているが、かなり嬉しかったのだろう。坂本はその後も数多くの映画音楽を手掛けており、一時は本気で映画音楽の作曲に専念しようと思ったこともあるそうだが、処女作である「戦場のメリークリスマス」は、今でも特別な音楽であり続けている。

1992年頃に、坂本龍一が、日本人として初めてハリウッドで成功した俳優である早川雪洲役で大島渚の映画に主演するという情報が流れたが、予算が足りずにお蔵入りになってしまったようで、代わりに「御法度」という、これもまた同性愛を描いた大島渚の映画に坂本は音楽担当として参加している。


ラストのクローズアップでの笑みが、「仏の笑顔」、「これだけでアカデミー助演男優賞もの」と海外で騒がれたというビートたけし。たけしのイメージに近い役を振られているということもあって、演技力は余り感じられないが、ハラ軍曹その人のように見える。

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2021年3月23日 (火)

これまでに観た映画より(252) スピルバーグ製作「SAYURI」

2008年6月17日

DVDでアメリカ映画「SAYURI」を観る。スティーヴン・スピルバーグ製作、ロブ・マーシャル監督作品。主演:章子怡(チャン・ツィイー)。出演は、鞏俐(コン・リー)、ミシェル・ヨー、桃井かおり、役所広司、工藤夕貴、大後寿々花、渡辺謙ほか。アメリカから見た日本が描かれているため、実際の日本や日本文化とは異なるところが多くある。

第二次世界大戦前後の、京都・祇園を舞台にした作品である。主役である「さゆり」は芸者。京都なので芸妓が正しいが、“GEISHA”や“MAIKO”は英語で通じても、“GEIKO”は通じないので、芸者でもいいだろう。

京都が舞台であるが、セリフの大半は英語。ただ、背景で時々日本語が聞こえてくる。

映像もセットも美しく。話も美しい。全てが「美しい」の一言で済んでしまうところが惜しいが。

舞いの名手である章子怡の舞いは、怖ろしいほどの美しさを持つ。

それにしても、さゆりの子供時代を演じる大後寿々花の演技の上手いこと上手いこと。これだけの子役を良く見つけてきたものである。

音楽はジョン・ウィリアムズ。ヴァイオリン演奏はイツァーク・パールマン、チェロ演奏はヨーヨー・マ。実に豪華な顔ぶれだ。旋律がたまに中国しているのが気になるが、章子怡と鞏俐という中国の二大女優の共演でもあり、中国風の音楽であっても文句はいえないだろう。

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2021年2月12日 (金)

コンサートの記(694) 加古隆コンサートツアー2007「熊野古道」@いずみホール

2007年7月1日 いずみホールにて

午後4時30分より、大阪・京橋にある、いずみホールで、加古隆コンサートツアー2007「熊野古道」を聴く。前半は加古がこれまでに作曲した有名曲の演奏、後半は加古の最新アルバムである「熊野古道」の音楽をメインとしたプログラム。
今回の加古隆のコンサートは、臨時編成の室内オーケストラ、そして、東京と大阪では人気サキソフォン奏者の須川展也(すがわ・のぶや)をゲストに迎えて行われる(名古屋、札幌など、その他の地域では室内オーケストラのメンバーでもある番場かおりがゲストである)。

加古隆は、1947年、大阪生まれ。東京藝術大学と同大学院で作曲を専攻した後、パリ国立音楽院に留学し、オリヴィエ・メシアンに作曲を師事。一方、パリではジャズピアニストとしてもデビューしている。現代音楽とイージーリスニング、ジャズの要素を取り入れた独自の作風を持ち、NHK「映像の世紀」、映画「大河の一滴」、「阿弥陀堂だより」、「博士の愛した数式」、テレビドラマ「白い巨塔」(2003-2004。唐沢寿明主演版)など話題作の音楽を数多く手がけていることでも知られる。

加古隆の特徴は、ミニマルミュージックの影響を受けた反復の心地よさと、やや感傷的だが美しいメロディーラインにある。ピアノは左手で同型のモチーフが繰り返され、その上に優美な旋律が右手で繰り出される。
時に曲がセンチメンタル過ぎる場合もあり、私も「大河の一滴」のテーマなどは余り好きになれない。一方で「パリは燃えているか」(NHK『映像の世紀』テーマ曲)などは大好きで、千葉にいる頃はピアノソロ版の楽譜を手に入れてよく弾いていた。
ちなみに私が加古隆の音楽を初めて聴いたのは、藤子・F・不二雄原作の映画「未来の想い出」(森田芳光監督作品。主演:清水美砂、工藤静香、和泉元彌。何だか凄いキャストである)において。映画の音楽を手がけていたのが加古隆であった。

アルバム「熊野古道」では、須川展也がサキソフォンで参加、金聖響(きむ・せいきょう)が指揮を担当しているが、今日のコンサートには金聖響は出演せず、加古本人が指揮も行う(指揮といっても拍子を刻むのが主で、本格的なものではない)。
三重県からの委嘱で作曲され、丁度1年前、2006年7月1日に津市で初演されたという、「熊野古道」は全4楽章からなり、第2、第3、第4楽章でサキソフォンが活躍する。弦楽とピアノ、サキソフォンという編成、ミニマルミュージック風作風ということで、少し弱腰のマイケル・ナイマンの音楽のようにも聞こえる場面もあったが、日本的な旋律は紛れもなく加古隆のものであり、特に第4楽章は感動的であった。

アンコールは須川展也をフィーチャーし、「パリは燃えているか」のピアノ&サキソフォン特別版、そして「黄昏のワルツ」(NHK『にんげんドキュメント』テーマ曲)が演奏される。聴衆は熱狂し、拍手は長いこと鳴りやまなかった。

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2021年2月 7日 (日)

これまでに観た映画より(246) 「ハサミ男」

2007年6月3日

DVDで日本映画「ハサミ男」を観る。池田敏春監督作品。原作:殊能将之。出演は、豊川悦司、麻生久美子、阿部寛ほか。音楽担当:本田俊之。

日活ロマンポルノの監督として一時代を築いた池田敏春によるサイコホラーサスペンス。なお、本多俊之は、「ハサミ男」のラッシュフィルムを観ながら即興でサックスを吹いており、ルイ・マル監督の「死刑台のエレベーター」と同じ手法が取られている。

2004年の作品だが、冒頭から古い感じの映像と、学生の自主製作映画のような脚本と演出に違和感を覚える。わざとやっているとしか思えず、「どうしてなのかな?」と思っていたが、途中でその理由がわかった。それらは観る者の意識をそちらへと引きつけるための罠だったのである。

豊川悦司の怪しい魅力が生きているが、実質的な主役は麻生久美子。この映画での麻生久美子の演技には女優魂を感じる。「時効警察」の麻生久美子しか知らない人は、三日月クンと同じ女優がやっているとは気付かないかも知れない。

和製ホラー映画というと「リ×グ」(×は伏せ字です)のように、ショッキングな映像が頼りのちょっと情けないものが多いが、この映画はじんわりと来る怖さを持つ。何でもないようなラストも実は怖かったりする。

殊能将之が書いた原作の評価は極めて高く、原作好きの人からは「がっかり」という意見が聞かれたというが、純粋に映画作品として観ると良い作品だ。

(後期)その後、池田敏晴監督は三重県志摩市で投身自殺を遂げ、原作者の殊能将之も不可解な突然死を迎えるという因縁の作品となった。殊能将之は覆面作家であったが、死後に正体が明かされ、本名は田波正といい、高校生の頃からSF・ミステリー小説界では「福井の神童」といわれるほどの逸材であったことが明らかとなった。

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2020年12月24日 (木)

コンサートの記(674) 「京都市交響楽団 クリスマスコンサート」2020

2020年11月20日 京都コンサートホールにて

午後3時から京都コンサートホールで、「京都市交響楽団 クリスマスコンサート」を聴く。
メインはレイモンド・ブリッグズ原作の無声アニメーション「スノーマン」(1982年制作)のフィルムコンサートであり、主に子ども向け、親子向けのコンサートである。「スノーマン」のフィルムコンサートは、以前にも京都市交響楽団のオーケストラ・ディスカバリーで園田隆一郎の指揮によって上映されたことがあり、好評を受けての再演ということになったのだと思われる。

今日の指揮者は広上淳一門下の関谷弘志。知名度はそれほど高くないが、「三度の飯よりクラシック音楽が好き」という人なら名前ぐらいは知っているという指揮者である。
関谷弘志は、元々はフルート奏者で、パリのエコール・ノルマルでのフルート科を卒業し、大阪センチュリー交響楽団(現・日本センチュリー交響楽団)のフルート奏者として活躍した後に東京音楽大学の指揮科に入学し、広上淳一と三石精一に師事している。
これまでに仙台フィルハーモニー管弦楽団副指揮者、オーケストラ・アンサンブル金沢の専属指揮者などを経て、現在は同志社女子大学学芸学部音楽学科講師(吹奏楽担当)を務めている。

 

曲目は、第1部「ファンタジック・メロディ」が、ルロイ・アンダーソンの「そりすべり」、「忘れられた夢」、「フィドル・ファドル」、J・S・バッハ/グノーの「アヴェ・マリア」(オーケストラ編曲者不明)、チャイコフスキーのバレエ組曲「くるみ割り人形」から“花のワルツ”。第2部が、ハワード・ブレイクの音楽による「スノーマン」フィルムコンサートだが、途中休憩はなく、上演時間約1時間に纏められている。

今日のコンサートマスターは泉原隆志、フォアシュピーラーに尾﨑平。ドイツ式の現代配置による演奏だが、「スノーマン」の上映のため、ステージは管楽器奏者が一段高くなっているだけで、高さは抑えられている。

今日も客席は前後左右1席空けのソーシャルディスタンス対応布陣となっていた。見切れ席は販売されていないため、集客も抑え気味であるが、それに指揮者の知名度などを加えて勘案すると入りはまあまあといったところである。

関谷弘志の指揮するルロイ・アンダーソン作品は、色彩豊かではあるが表情はやや堅め。昔、ドイツのオーケストラが演奏したルロイ・アンダーソン作品のCD(正確に書くと、ピンカス・スタインバーグ指揮ケルン放送交響楽団のCDである)を聴いたことがあるが、それに少し似ている。もう少し洒落っ気が欲しいところである。

関谷弘志は、マイクを両手に持って自己紹介と京都市交響楽団の紹介をし、客席に向かって「コロナ禍にお集まり下さったことに感謝致します」と述べた。

J・S・バッハ/グノーの「アヴェマリア」は、沼光絵理佳のピアノ・チェレスタでバッハ作曲の伴奏(元々は伴奏ではなく、平均律クラーヴィアのプレリュードという独立した楽曲である)が奏でられた後に泉原のヴァイオリンがグノー作曲のメロディーをソロで奏で始めるという編曲で、弦楽合奏にホルンとファゴットが加わり、フルートがソロを奏でて全楽合奏に到るというものである。

チャイコフスキーのバレエ組曲「くるみ割り人形」より“花のワルツ”も華やかさには欠け気味だったがきちんと整った演奏になっていた。

 

第2部「スノーマン」。映写は京都映画センターが行う。上映時間は約26分。映像に演奏を合わせるのは難しく、時折、音楽が先走ったりする場面もあったが、全般的には状況によく合ったテンポと描写による演奏を行っていたように思う。関谷の指揮する京響の音色もアニメーションの内容にピッタリであった。「ウォーキング・イン・ジ・エア」のボーイソプラノを務めるのは京都市少年合唱団の谷口瑛太郎(一応、カヴァーキャストとして稲葉千洋が控えていたようである)。美しくも幻想的な歌声を聴かせ、「スノーマン」の空中飛行の場面を彩った。
「スノーマン」はキャラクターはよく知られているものの、内容は誰でも知っているという類いのものではないが、男の子が雪の日に自分で作り上げたスノーマン(雪だるま)と共に空を舞いながら冒険の旅に出掛けるという物語である。レイモンド・ブリッグズの絵のタッチが愛らしく、雪景色の描写の美しさとファンタスティックな展開(子どもの頃に映画館で「大長編ドラえもん」シリーズを観た時の心持ちが思い出される)、そしてラストなどが印象に残る。

 

アンコール演奏は、藤岡幸夫司会の音楽番組「エンター・ザ・ミュージック」(BSテレ東)のオープニング楽曲としても知られるようになった、ルロイ・アンダーソンの「舞踏会の美女」。関谷もフィルムコンサートの指揮という大仕事を成し遂げた後であるためか、今日聴いたルロイ・アンダーソン作品の演奏の中でも最もリラックスした感じのチャーミングな仕上がりとなっていた。

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2020年12月 3日 (木)

これまでに観た映画より(230) 村上春樹原作 市川準監督作品「トニー滝谷」

2006年8月21日

DVDで映画「トニー滝谷」を観る。村上春樹の短編小説の映画化。脚本・監督:市川準、音楽:坂本龍一、イッセー尾形&宮沢りえ主演。

村上春樹の小説は映像化は難しいが、市川準監督は、小説の地の文をナレーション(ナレーター:西島秀俊)として読ませることで、映像詩のような作品に仕上げた。

地の文は西島秀俊だけでなく、イッセー尾形や宮沢りえも(それも敢えて不自然なタイミングで)読み上げる。他にも場面転換は全て画面右から左へのスクロールで処理するなど、独特の手法が用いられている。

トニー滝谷と結婚する英子を演じる宮沢りえが好演だ。明るいが影のある女性を見事に演じてみせる(暗いことと影があることは違う)。

染みとおるような孤独感。不在ゆえに引き立つ存在感。空白を埋めるための強迫行為(OCD)。描かれていることは切実だが、市川準監督の視線は優しい。

坂本龍一の音楽も空漠とした雰囲気作りに大いに貢献している。

傑作ではないかも知れないが、愛すべき佳作である。

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2020年10月26日 (月)

コンサートの記(664) 村治佳織ギター・リサイタル2006@いずみホール with シャーリー富岡

2006年5月12日 大阪・京橋のいずみホールにて

午後2時から大阪・京橋の「いずみホール」で、ギタリスト村治佳織のコンサートを聴く。昨年の12月22日に予定されていたコンサートだが、村治の右手の故障で延期となったものである。

今回のコンサートは、前半がランス音楽をギター用に編曲したものが中心、後半は映画音楽をアレンジしたものが並ぶ。

村治は前半は鮮やかなターコイスブルーの衣装で登場。右手の故障は治ったようだが、長くギターの練習が出来なかったわけで、その影響からか、たまに妙な音を発したりする。「亡き王女のパヴァーヌ」では一瞬、「止まるか?」と心配になる箇所があったが、何とか切り抜ける。

後半は、FM802「SATURDAY AMUSIC ISLAND」のパーソナリティーを務めるシャーリー富岡と村治による映画音楽に関するトークが入る。
シャーリー富岡は前半の村治の衣装を意識したのか、やはりターコイスブルーの上着で登場。村治は後半は白い衣装に着替えていた。

シャーリー富岡、名字と顔から、マイケル富岡と関係があるのかな? と思っていたら、中盤で、やはりマイケル富岡の姉であることが判明。シャーリーの口から、弟がマイケル富岡であることが発表されると、客席から一斉に「あー」という声が起こる。
シャーリーは年間150本から200本の映画を観ているそうで、映画音楽にも詳しいことからゲストとして呼ばれたようだ(昨年予定されていたコンサートでは、作曲家の大島ミチルがゲスト参加する予定だった)。

『ディアハンター』の「カヴァティーナ」、『サウンド・オブ・ミュージック』から「マイ・フェイヴァリット・シングス」(JR東海の「そうだ! 京都行こう」のCMで使われている曲。京都では当然のことながら「そうだ! 京都行こう」のCMは流れていない)。『バグダッド・カフェ』より「コーリング・ユー」、『思い出の夏』より「夏は知っている」(原題の“Summer of 42”でも知られている)、『シェルブールの雨傘』より「アイ・ウィル・ウェイト・フォー・ユー」が演奏される。
ちなみにマイケル富岡の舞台デビュー作が『シェルブールの雨傘』だったそうで、その時、シャーリー富岡がマイケルの姉であることを打ち明けたのだった。

村治の演奏はどの曲もテンポが速めで、抒情味に欠けるきらいはあったが、テクニックは安定していて(一箇所怪しいところはあったが)楽しめる演奏であった。

ちなみにシャーリー富岡が生まれて始めてみた映画は「ウエストサイド物語」で、4、5歳の頃、映画好きだった祖母に連れられて観に行ったそうだ。村治の方は最初に観た映画はよく憶えていなくて、「多分、『ドラえもん』シリーズかなんかだったと思う」とのことだった。

最後の曲は、大島ミチルの「ファウンテン」。村治の依頼で大島が書き下ろしたギター曲である。「ファウンテン」とは「泉」という意味だそうだが、いずみホールとは無関係で、大島が故郷・長崎の平和公園内にある「平和の泉」をイメージして作った曲であるという。
爽やかな佳曲であった。

アンコールは、「アルハンブラの思い出」と「タンゴ・アン・スカイ」を演奏。これは文句なしの出来であった。

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