カテゴリー「楽興の時」の33件の記事

2019年10月13日 (日)

楽興の時(33) 「テラの音 Vol.27 ~洋楽と邦楽の世界~」

2019年10月4日 京都市中京区の真宗大谷派浄慶寺にて

午後7時から、御所の南にある真宗大谷派小野山浄慶(じょうきょう)寺で「テラの音(ね) Vol.27 ~洋楽と邦楽の世界~」を聴く。タイトルにある通り、クラシックと邦楽のジョイントが行われる。出演者は、「テラの音」共同主宰兼企画担当ででヴァイオリニストである牧野貴佐栄(ヤマハ音楽教室ヴァイオリン講師)、ピアニストの森麻衣子、歌・三絃の佐藤文岳晶(本名と作曲家・編曲家としての名前は佐藤岳晶)。

曲目は、シューベルトのヴァイオリン・ソナタ第3番、木ノ本屋巴遊作曲の地歌「葵の上」、クライスラーの「愛の喜び」、玉岡検校作曲の地歌「鶴の声」(ヴァイオリンパート作曲:初代中尾都山。改訂:佐藤岳晶)、佐藤岳晶の「黒髪」、湖出市十郎作曲の地歌「黒髪」、幸田延のヴァイオリンソナタ第2番ニ短調。

幸田延のヴァイオリン・ソナタニ短調は最近、医師免許を持つプロヴァイオリニストとして知られる石上真由子がCDをリリースしており、まだ買っていないがいずれは買って聴いてみようと思っている。

 

牧野貴佐栄は、名古屋市立菊里高校音楽科を経て同志社女子大学音楽学科を卒業しているが、森麻衣子も同じ名古屋市内にある愛知県立明和高校音楽科を経て同志社女子大学音楽学科を卒業という似た経歴を持っている。前回に「テラの音」に出た時は、富山市にある桐朋学園大学院大学(2017年に東京の調布市にある桐朋学園大学の本部にも大学院が出来たのでややこしいことになっている)に在学中だったが、現在は修了しており、関西での音楽活動や音楽教室での指導を行っているようだ。ピアノを田部京子や岡田博美に師事、室内楽を藤原浜雄や川久保賜紀に師事している。来年の2月には上桂にある青山音楽記念館バロックザールでリサイタルを行う予定である。

佐藤文岳晶/佐藤岳晶は、地歌箏曲を二代米川文子に指示しているが、幼少時から西洋音楽を学び、桐朋学園大学ピアノ専攻卒業、パリ国立音楽院エクリチュール(作曲理論)科を修了しており、西洋音楽を学んでいた時間の方が長いようである。現在は京都女子大学准教授、桐朋学園大学院大学ほかの非常勤講師を務めている。

 

シューベルトのヴァイオリン・ソナタ第3番。シューベルトが愛用してた眼鏡は今丁度大阪の国立国際博物館に展示中なのでタイムリーである(?)。
典雅さと毒々しさの両方を持つシューベルトの個性は、この曲でも良く発揮されている。この曲の調性はト短調で、モーツァルトがキラーコンテンツとしてきた調性であるが、モーツァルトよりもベートーヴェンに近く聞こえるのは、第3楽章の旋律のせいもあるだろう。

 

地歌「葵の上」は、カットを入れたバージョンでの上演である。葵の上に嫉妬した六条御息所の心情が語られる。

 

牧野貴佐栄によると、日本の洋楽の黎明期には、西洋の音楽と邦楽が同じ演奏会の中で演奏されることの方が多かったそうで(確かに上野の旧東京音楽学校奏楽堂なんかはそんなイメージがある)、今回のコンサートではその再現を試みたそうである。

 

休憩時間に浄慶寺の中島浩彰住職による法話がある。仏教というと、今は「葬式仏教」のイメージが強いが、お釈迦様は勿論、日本の各宗派の開祖もお葬式については何も唱えておらず、仏教は生きる苦しみから逃れるために始まったと語る。
西洋の宗教や科学もその点は同じであり、根底の部分は仏教とよく似ているのだが、西洋は蓄えたデータを客観的に分析し、仏教は解析するのではなく「自分」「私」の主観でそれを捉えるという違いがあると結論づけていた。

 

クライスラーの「愛の喜び」。実は、今日のプログラム最後の曲の作者である幸田延は、クライスラーも師事していたヨーゼフ・ヘルメスベルガーⅡ世(「悪魔の踊り」などの作曲家としても知られている)にヴァイオリンを師事していたそうで、そのためにクライスラー作品が取り上げられるようになったそうだ。
技術面では結構怪しい部分もあったりするのだが、このコンサートはそういうことを気にする場ではない。

 

地歌「鶴の声」では、元々尺八のために書かれた旋律を、初代中尾都山がヴァイオリン用に編曲したものが奏でられる。「美しき天然」だとか「宵待草」などに繋がる懐かしさがヴァイオリンの音色から感じられる。
「鶴の声」は、形こそ違うがクライスラーと同じ「愛の喜び」を題材とした歌であり(鶴は千年といいます、共に白髪になるまで一緒にいましょうという歌詞を持つ)、そのために続けてプログラミングされたことが明かされた。

 

佐藤岳晶の「黒髪」は、元々は佐藤が米良美一のために石牟礼道子の詩に曲をつけたものだそうだが、今回は佐藤本人がヴァイオリンとピアノのための編曲した者ものが演奏される。サビの部分でのヴァイオリンのピッチカートが効果的である。

 

地歌「黒髪」。3人が勢揃いしての演奏である。ヴァイオリン・パートはやはり初代中尾都山が尺八用のものをヴァイオリン用に編曲したものが用いられる。ピアノ・パートは佐藤が作曲したものが演奏される。
地歌とヴァイオリンは昔から演奏されてきたものであるが、ピアノは佐藤に手によるものということで新しい印象を受ける。地歌とヴァイオリンに連れず離れずで、浮遊感を持つピアノは、日本に於けるフランス音楽受容に多大な貢献を行った橋本國彦作品に通ずるところがあるように思う。そういえば佐藤はパリ国立音楽院出身なのだった。

 

幸田延のヴァイオリン・ソナタ第2番ニ短調。幸田姉妹の姉である幸田延。幸田露伴の妹である。日本のクラシック音楽受容最大の貢献者の一人であり、瀧廉太郎や山田耕筰らを育てたことでも知られる。
ちなみに、せいぜい150年程度でしかない日本のクラシック音楽の歴史上に、実は「幸田姉妹」は二組いる。まずは幸田延と幸田幸(結婚後は安藤幸)の幸田姉妹、そして現役である幸田さと子と幸田浩子の幸田姉妹である。幸田というのは珍しい苗字ではないがありふれているわけでもない。二組の間に血縁関係はなく、かなり面白い偶然である。
2曲のヴァイオリン・ソナタはいずれも幸田延のウィーン留学中に書かれたそうで、ドイツ的な趣を持つとされるが、聴いてみると結構なド演歌で、西洋人が聴いたら「日本人の作品」とすぐに見破られそうな気もする。日本人としては幸運なことにド演歌であったため旋律も覚えやすく、展開もわかりやすくて十分に楽しむことが出来た。

演奏会が終わって、そのまま帰ろうとしたのだが、住職の小学生の娘さん二人が電子ピアノで遊んでいる音がしたので、引き返してピアノで少し遊ぶ。上手く弾ければ良かったのだが、練習をしていないため、暗譜が出来ていない。ということで何曲かの冒頭だけ弾いて遊んだ。

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2019年10月 5日 (土)

楽興の時(32) 真宗大谷派唯明寺 「テラの音 vol.6」 アンサンブル・ヴェルデ

2019年9月26日 京都・紫野の真宗大谷派唯明寺にて

午後7時から、紫野にある唯明寺(ゆいみょうじ)で、「テラの音 vol.6」を聴く。「テラの音(ね)」はその寺院で行った回数をナンバーとして振っており、唯明寺で行うのが6回目ということで、「テラの音」というイベント自体はもっと数多く行われている。
「テラの音」は、真宗大谷派の寺院で行われることが多いが、唯名寺も真宗大谷派であり、節談説教を行うことでも知られる亀田晃巖住職は、真宗大谷派山城第2組(そ)の組長(そちょう)でもある。

今回は、同志社女子大学音楽学科OGによって結成されたコーラスグループ、アンサンブル・ヴェルデ(松田慶子、高畠菫、大西奈絵、田中美緒、横井優夏、村上友理、岸田典子)による合唱の公演である。「テラの音」企画発案担当で、ヴァイオリニストの牧野貴佐栄(まきの・きさえ)も同志社女子大学音楽学科OGであり、今は同校の非常勤嘱託職員などもしているため、仲間内での公演となる。

アンサンブル・ヴェルデは、「リラックスさせたり癒やしたりする“緑”のようにフレッシュな音楽を届けよう」ということで名付けられたようだが、チラシに書かれた文章の文字が小さかったため、亀田住職は、「緑(みどり)」ではなく「縁(えん)」と読み間違えて紹介していた。東京ヴェルディというチームがあるため、サッカーに興味のある人はヴェルデがイタリア語で緑という意味だと知っているのだが、亀田住職はサッカーには詳しくはなかったようである。
アンサンブル・ヴェルデというグループ名だからといって、普段は緑の衣装で合わせるということはないのだが、今日は特別に緑系や青系というそれらしいドレスでまとめてきたそうだ。

 

「ボス」と呼ばれているピアニストの岸田典子がアンサンブル・ヴェルデの結成者なのだが、岸田は今年35歳で、他のメンバー6人は8歳下だそうである。岸田が同志社女子大学卒業後に、同志社女子大学声楽専攻の助手として合唱のピアノ伴奏をすることがあったのだが、そこで目に付いた6人をスカウトして結成されたのがアンサンブル・ヴェルデだそうである。個性的な子を揃えたいというので、「声が良く出る」、「面白い」、「笑顔が良い」など、一芸に秀でた子を選んだようだ。メンバーは普段は学校の先生をしていたり、OLだったりと、普通の社会人生活を送っているそうである。

 

曲目は、第1部が、「めばえ」、「おんがく」、「犬がしっぽをみて歌う歌」、「秋」、「雪の街」、「夢みたものは」、「鴎」(以上、木下牧子作曲)。源田俊一郎編曲の「女声合唱のための唱歌メドレー」(「故郷」~「春の小川」~「朧月夜」~「鯉のぼり」~「茶摘」~「夏は来ぬ」~「我は海の子」~「村祭り」~「紅葉」~「冬景色」~「雪」~「故郷」~)。
第2部は、ボブ・チルコットの「A Littele Jazz Mass」、岸田典子のピアノ独奏による「里の秋」、瀬戸内寂聴作詞・千原英喜作曲による女声合唱とピアノのための組曲「ある真夜中に」

「めばえ」を無伴奏の合唱で歌った後、メンバーの一人一人が独唱という形で木下牧子の作品を歌っていく。アンサンブル・ヴェルデは来年、大阪府高石市のアプラたかいし小ホールでソロコンサートを行う予定があるのだが、そこでも木下牧子作品を取り上げる予定である。
コーラスグループのメンバーということで、独唱だと弱い感じは否めないが、メンバー紹介としての効果はある。

女声合唱のための唱歌メドレーは、寺院で歌われるのに雰囲気的にも合っており、美しい歌声が堂に満ちた。

ボブ・チルコットの「A Littele Jazz Mass」は、文字通りジャズ風のミサ曲である。想像通りノリの良い曲であった。

「A Littele Jazz Mass」は、高音が多用されるため、歌手達の喉を休めるために岸田典子がジャズ編曲による「里の秋」を弾く。岸田は、「秋ですので美味しいものを食べて肥えて」と冗談を言っていた。折角ダイエットに成功したのに、このところ美味しいものばかり食べていたせいで、また体重が増えてしまったらしい。

 

瀬戸内寂聴の作詞、千原英喜の作曲による女声合唱とピアノのための組曲「ある真夜中に」。“愛から悩みが生まれて”“この星に生まれて”“寂庵の祈り”“ある真夜中に”の4曲からなる。3曲目の“寂庵の祈り”は、以前にも「テラの音」で取り上げられたことがある。愛の業が全体を貫くキーとなっているようだ。

 

アンコールとして小田美貴作曲、信長貴富編曲の「群青」が歌われる。東日本大震災に被災した南相馬市立小高中学校の卒業生と、同校音楽教諭の小田美貴がそれぞれを思いを綴ることで作詞された作品である。卒業式のために作曲された作品ということもあって、学園ソング的な歌詞とメロディーで、奪われることになった南相馬での青春の思い出が歌われている。

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2019年7月13日 (土)

楽興の時(31) そうだ!お寺に行こう!プロジェクト「テラの音 -音のつなぐ世界-」

2019年7月5日 京都市中京区の真宗大谷派浄慶寺にて

午後7時から、京都御苑の近くにある真宗大谷派浄慶寺で、そうだ!!お寺に行こう!プロジェクト「テラの音(ね) -音のつなぐ世界-」を聴く。

お寺で行われるコンサート企画「テラの音」。今回は、姫路で活躍しているデュオ、ソードフィッシュを招いて行われる。メンバーは、ピアノの澤崎美重子とカホン&パーカッションの岩井利之。

曲目は、澤崎美重子のオリジナルである「ピアノ フラメンコ」、ピアソラの「リベルタンゴ」、中森明菜のナンバーである「ミ・アモーレ」、ユーミンの「あの日に帰りたい」、「チムチムチェリー」、「チュニジアの夜」(ジャンベバージョン)、「組曲」、一青窈の「ハナミズキ」、澤崎美重子のオリジナルである「千の願いが叶うなら」、中島みゆきの「糸」、サザンの「いとしのエリー」、椎名林檎の「丸の内サディスティック」、「チュニジアの夜」(カホンバージョン)、ゴダイゴの「銀河鉄道999」、葉加瀬太郎の「情熱大陸」。「情熱大陸」では、テラの音主催である牧野貴佐栄がヴァイオリンソロを奏でる。

 

澤崎美重子は、神戸山手女子短期大学器楽専攻ピアノ科を卒業後、ピアノ&キーボード奏者、作編曲家として活動を行っており、地元である姫路市内各所や関西一円で音楽活動を行っている。
岩井利之は、アン・スクール・オブ・コンテンポラリーミュージック卒業後に上京。ドラマーとして活動し、現在は出身地である高砂市に戻って、昨年末にソードフィッシュを結成している。

 

ポピュラーを中心としたプログラムであり、切れが良くノリノリの演奏となる。
ピアソラの「リベルタンゴ」は、近年人気の楽曲であるが、主旋律をピアノ(アコースティックのピアノを置くスペースはないのでローランドのキーボードで代用)で奏でるバージョンを聴くのは久しぶりである。1998年頃だったか、タワーレコードの渋谷店クラシック売り場で、今はイタリアで活躍するピアニストの黒田亜樹がストアイベントで弾いていたのを聴いた記憶がある。

 

中森明菜の「ミ・アモーレ」は、インストゥルメンタルでの演奏であるため、「赤い鳥逃げた」という曲名であっても構わないものになっている。

「ハナミズキ」「千の願いが叶うなら」「糸」では澤崎美重子がボーカルも担当。「あくまでピアニストでボーカリストではありません」と断りを入れてからの歌唱。声も余り出ていないし、音程も時折不安定になるが、「ハナミズキ」は新垣結衣よりは上手いんじゃないかな。褒め言葉になっていないけれど。
「千の願いが叶うなら」は、澤崎美重子の作詞作曲で、「千」というのは姫路城西の丸で本多忠刻との結婚生活を送っていたこともある千姫(徳川家康の孫娘。秀忠とお江の方の長女。最初の夫である豊臣秀頼とも二度目の夫である本多忠刻とも早くに死に別れるという数奇な人生をたどった)のことだそうである。

アンコールでは「ルパン三世」が演奏された。

 

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2019年7月 9日 (火)

楽興の時(30) 「Kyo×Kyo Today vol.5」

2015年1月30日 京都芸術センター講堂にて

午後7時から、京都芸術センター講堂で、「Kyo×Kyo Today vol.5」を聴く。京都芸術センターで京都市交響楽団のメンバーが室内楽を演奏するという企画。毎年1回、冬の時期に行われていて、今年が5年目で5回目の演奏会になるが、1回から4回まではこうした催しがあることすら知らなかった。昨年、やはり京都芸術センター講堂で、30回有効のパスポートを観たとき、開場前に京都芸術センターのチケット売り場で「Kyo×Kyo Today」のことを知ったのである。

ちなみに京都芸術センターは旧・明倫小学校の校舎を利用しているが、講堂と体育館が別であったことがわかる。講堂は2階にあるが体育館は1階にあり、今はフリースペースとして使われている。体育館が講堂も兼ねているのが普通なので(私が卒業した小学校も、様々な催しが行われる木屋町通沿いの元・立誠小学校もそうである)、旧・明倫小はかなり珍しいケースである。

今日の出演者は、長谷川真弓(ヴァイオリン)、山本美帆(ヴァイオリン)、金本洋子(かなもと・ようこ。ヴィオラ)、木野村望(きのむら・のぞみ。ヴィオラ)、ドナルド・リッチャー(チェロ)、垣本昌芳(ホルン)、小谷口直子(クラリネット)。

オール・モーツァルト・プログラムで、弦楽五重奏第6番、ホルン五重奏曲、クラリネット五重奏曲「シュタードラー」。5回目の公演ということに掛けて全て5重奏の曲が選ばれている。

なお、京都市交響楽団は現在、小学生を対象とした音楽鑑賞教室を京都コンサートホールで行っており(指揮は京都市交響楽団の首席常任客演指揮者の高関健)、今日は午前10時20分からの公演と午後2時からの公演があり、更に夜もこの公演があるということで、弦楽奏者達は今日は一日中弾きっぱなしということになるそうだ。

まず、第1ヴァイオリンを務める長谷川真弓によるマイクを使った挨拶がある。いかにも良家のお嬢さんという感じの声と話し方である(弦楽奏者は楽器が高い上に小さな頃からのレッスン料金もバカにならないので、ほぼ100%、親が金持ちだといわれている。一方、管楽器は中学校の吹奏楽部で初めて楽器に触り、というケースが多く、楽器は学校持ちでレッスンは先輩達が教えてくれるため、必ずしも良家出身とは限らないそうだ。以上は、NHK交響楽団の首席オーボエ奏者である茂木大輔のエッセイによる。茂木によると、N響の場合でも弦楽器奏者と管楽器奏者とでは雰囲気が違うそうである)。

弦楽五重奏曲第6番。第1ヴァイオリン:長谷川真弓、第2ヴァイオリン:山本美帆、第1ヴィオラ:金本洋子、第2ヴィオラ:木野村望、チェロ:ドナルド・リッチャー。
リッチャーが中央に陣取り、下手に長谷川と山本のヴァイオリン奏者、上手に木野村、金本のヴィオラ奏者が並ぶ。
元々小学校の講堂ということで残響はないが、シャンデリアの下がるお洒落な内装の講堂の雰囲気はモーツァルトの音楽に合っている。音の通りも申し分ない。ただ、両サイドは磨りガラスであるため、オーケストラの演奏は無理そうだ。
1956年の創設直後に「モーツァルトの京響」という評判を取った京都市交響楽団。創設当時のメンバーは当然ながらもういないが、モーツァルト演奏時に重要となる緻密なアンサンブルは今も生きている。

 

ホルン五重奏曲。ヴィオラの金本洋子が降り、代わりにホルンの垣本昌芳が加わる編成。舞台下手から、時計回りに、長谷川、山本、リッチャー、木野村、垣本という布陣。
モーツァルトの時代のホルンは、唇と管の中に突っ込んだ手のみによって音程を変える、今ではナチュラルホルンと呼ばれるものだったため超絶技巧が必要とされたが、現代のホルンはピストンが付いているため、ナチュラルホルンよりは演奏がしやすい。このホルン五重奏曲も、ホルン協奏曲4曲を献呈されたホルン奏者、ロイトゲープのための作曲されたとされる。モーツァルトはイタズラ好きであったため、わざとナチュラルホルンでは演奏の困難なメロディーを書いたりしているが、垣本の技術に遺漏はなく、優れた室内楽演奏となる。

 

クラリネット五重奏曲「シュタードラー」。今日演奏される曲の中で一番有名な曲である。喫茶店などのBGMとしてもよく用いられる曲であるため、聴くと「ああ、知ってる」となる人も多いと思われる。

演奏前にクラリネット奏者の小谷口直子がマイクを持って挨拶をする。クラリネットは楽器の歴史の中では比較的若い楽器であり、モーツァルトの晩年になってようやく普及したため、モーツァルトが書いたクラリネットのための曲も多くはないのだが、クラリネット協奏曲と、今日演奏するクラリネット五重奏曲を書いてくれたお陰でクラリネット奏者は至福の時を味わうことが出来ると小谷口は語る。小谷口は2010年より文化庁派遣芸術家在外研修員としてウィーン国立音楽大学に留学したが、「ウィーンは京都によく似たところがある」という。ウィーン市民の排他的なところと京都人の排他性は似ているが、小谷口はそれには触れず(触れたら怒る人もいるだろうし)、芸術と街が一体になった雰囲気や、京都なら御所、ウィーンなら宮殿を中心として発展しているところ、カフェ文化が街に根付いていることなどを挙げる。モーツァルトの音楽というと小谷口はウィーンのメランジュという泡立てコーヒーの味を思い出すそうだ。モーツァルトの曲調を例えるのに「夢のように」という言葉を使いたいという小谷口だが、ウィーンには「悪夢のように甘すぎるケーキ」や「悪夢のように不味い飯」などもあったそうである。「最近はクラリネットを吹くよりも喋る方が得意になった」と言って、客席を笑わせる。

弦楽のメンバーはホルン五重奏曲の時と一緒。垣本と小谷口が入れ替わるが、小谷口は中央に正面を向いて座り、舞台上手に木野村、リッチャーが陣取る。

小谷口のクラリネットは伸びやかで、典雅さにも欠けていない。弦楽奏者4人も緻密なアンサンブルで聴かせ、はんなりとした演奏となる。

アンコールとしてクラリネット五重奏曲の第4楽章よりアレグロの部分が再度演奏された。

客席であるが、オール・モーツァルト・プログラムということもあってか、若い女性も多い。京都堀川音楽高校の生徒だろうか、制服を着た女子高生達もいる。一方で、男性の方は白髪頭の人が目立つ。あるいはクラシックの聴衆の世代交代は女性よりも男性の方が上手くいっていないのかも知れない。

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2019年5月25日 (土)

楽興の時(29) 「テラの音 Vol.13 ~チェロとピアノの織りなす調べ~」

2019年5月19日 北白川の真宗大谷派圓光寺にて

午後6時から、北白川山田町にある真宗大谷派圓光寺で行われる「テラの音(ね) Vol.13 ~チェロとピアノの織りなす調べ~」を聴く。今回は、西村あゆみと西村まなみの姉妹によるピアノとチェロのコンサートである。

姉の西村あゆみ(ピアノ)は、京都市立音楽高校(現・京都市立京都堀川音楽高校)を経て、大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻音楽コースを卒業。第4回クオリア音楽フェスティバル大学の部3位、2014年京都ピアノコンクール一般部門金賞並びに全部門最優秀賞京都新聞賞などを受賞している。京都芸術祭「デビューコンサート」に出演し、京都芸術祭聴衆賞も受賞している。
妹の西村まなみは、京都市立京都堀川音楽高校、京都市立芸術大学音楽学部を卒業。第25回クラシック音楽コンクール全国大会チェロ部門大学の部第4位、第3回宗次ホール弦楽四重奏コンクール第1位およびハイドン賞を受賞。第70回全日本学生音楽コンクール名古屋大会チェロ部門大学部の第3位、第31回京都芸術祭音楽部門新人賞も受賞している。


曲目は、第1部が、エルガーの「愛の挨拶」、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」、マーク・サマーの「Julie-O」、カザルス編の「鳥の歌」、サン=サーンスの「白鳥」、田中カレンの「はくちょう」、カサドの「親愛なる言葉」、フォーレの「夢のあとに」。第2部が、尾高尚忠の「夜曲」、木村弓の「世界の約束」、久石譲の「風の谷のナウシカ」より組曲「5つのメロディー」、両毛地方民謡「八木節」、中島みゆきの「糸」


有名曲が並ぶが、マーク・サマーはジャズの作曲家兼チェリストであり、「Julie-O」はピッチカートで始まるノリの良い曲である。
真宗大谷派圓光寺は、茶山の東側の中腹にあり、白川通まですぐそこの割には山深い印象を受けるのだが、「鳥の歌」、サン=サーンスの「白鳥」、田中カレンの「はくちょう」の鳥シリーズが演奏された時には、偶然、ウグイスが鳴き続け、歌比べのような形になった。

田中カレンの「はくちょう」は、はくちょう座を描いた曲である。西村あゆみが小学4年生の時に練習していたのだが、大好きだった学校の先生が妹さんを亡くした時に、「『きっとはくちょう座の星になって見守ってくれてるよ』って言って弾いてあげなよ」と母親から言われて、音楽室で先生に聴かせたという思い出があるそうだ。

フォーレの「夢のあとに」は、ノートルダム大聖堂が火災に遭った日に、チェリストのゴーティエ・カプソンが大聖堂の近くに駆けつけて弾いたことでも話題になったが、今日取り上げたのは、そのこととは特に関係がないようである。


第2部は全曲日本人の作曲家による作品が並ぶ。尾高忠明の父親としても知られる尾高尚忠の「夜曲」は、橋本國彦にも通じるようなフランス音楽からの影響と日本的な旋律を三部形式で書き上げた作品。なかなか魅力的である。

久石譲が「風の谷のナウシカ」のために書いた音楽をチェロとピアノのための組曲にまとめ上げた「5つのメロディー」は、久石の傑出したメロディーメーカーとしての才能を再確認出来る優れた楽曲である。

二人の安定した技巧による演奏を間近で聴けるというも贅沢な感じがする。

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2019年4月15日 (月)

楽興の時(28) 「テラの音 Vol.25 ~歌とピアノの贈り物~」

2019年4月5日 中京区の真宗大谷派小野山浄慶寺にて

午後7時から真宗大谷派小野山浄慶寺での「テラの音 Vol.25」を聴く。今回はソプラノとピアノによる演奏会である。
ソプラノは、京都市立芸術大学音楽学部音楽学科声楽専攻2回生の高田瑞希。私が接したことのある「テラの音」の出演者としてはおそらく最年少になると思われる。京都市少年合唱団修了とあるから、広上さんとも仕事をしたことがあるのだろう。
ピアノの片山梨子も京都市立芸術大学出身。第3回ジュラ・キシュ国際ピアノコンクールで第1位獲得。ポーランド国立放送交響楽団の本拠地としても知られるカトヴィツェで行われた第9回ポーランド国際ピアノマスタークラスにも出演して演奏している。現在はショパンの演奏をライフワークとしているそうである。

曲目は、まず片山梨子のピアノ独奏でショパンの「子犬のワルツ」。2曲目に高田瑞希が登場してのベッリーニの「優雅な月よ」。ここまでをプロローグとして、第1部が、中田章の「早春賦」、瀧廉太郎の「花」、「早春賦」のモチーフとされるモーツァルトの「春への憧れ」より1番、トスティの「四月(Aprile)」、トスティの「春(プリマヴェーラ)」、スカルラッティの「すみれ(Violette)」、菅野よう子の「花は咲く」、山崎朋子の「空高く」。浄慶寺の中島住職の法話を経ての第2部が、トスティの「Sogno(夢)」、ロイド=ウェバーのミュージカル「CATS」よりメモリー(日本語歌詞版)、ピアノ独奏でシューマンの『子供の情景』より「見知らぬ国々と人々」と「トロイメライ」、吉田千秋の「琵琶湖周航の歌」より1番から4番まで、木村弓の「いつも何度でも」、瀬戸内寂聴作詞の「寂庵の祈り」、久石譲の「Stand Alone」

ピアノはローランドのキーボードを使用する。

第1部は春や花を題材とした曲目、第2部には夢や希望をモチーフにした楽曲が並ぶ。

高田瑞希はお喋りな子のようで、片山に「今日は清楚なイメージで行きたい」と提案するも、「5分でばれる」と言われたそうである。

モーツァルトの「春への憧れ」は曲そのものも有名だが、モーツァルトが自身最後のピアノ協奏曲となる第27番の第3楽章に転用していることで知られている。童心に帰ったかのようなモーツァルトの憧れが感じ取れる曲だ。

菅野よう子の「花は咲く」は、高田が京都少年合唱団在団中に京都コンサートホールでの演奏会で初めてソロパートを取った思い出の曲だそうである。

「琵琶湖周航の歌」は、高田が子供の頃に子守歌として聞かされていた曲で、個人的に夢と繋がっているのだそうだ。歌詞は6番まであるが、全部やると長いので、加藤登紀子カバー版と同じ4番までが歌われた。

 

中島浩彰住職の法話は、現在の福島県の様子を伝えるもの。中島住職は東日本大震災発生直後から今に至るまで何度も福島を訪れているが、福島第1原発からかなり離れた二本松市や郡山市でも放射線濃度が高いため、福島を離れる人と生活があるので残る人に分かれ、残った人の中でも意見が異なり、年を経るにしたがって乖離の度合いも甚だしくなってきているそうである。政府も当初は「年間1ミリシーベルトあれば避難」という見解だったのだが徐々に甘くなり、「年間20ミリシーベルトまでは大丈夫」とするも根拠がないのでみな不安だそうだ。ただ、「もう考えるのが面倒だ」「生活が優先」ということで集会に参加しなくなった人も増えているそうである。
政府は福島であっても地産地消を勧めてくるのだが、検査が年々甘くなっており「信じきれない」ということで、ミネラルウォーターを買い、被災地以外の場所で採れた野菜を食べるようにしている家も多いそうだが、子供が幼稚園に入ると、幼稚園では政府の地産地消政策に従って福島県産の作物を使った給食が出てくる。幼稚園では給食ではなく弁当を選ぶことも可能なのだが、小学校に上がると福島県産の食物を使った給食を食べなければならなくなる。ということで子供が幼稚園に入る年齢に達したり、小学生になるタイミングで福島を離れる人もおり、残った人も父親と母親の間で意見が分かれて喧嘩になったりもしているそうである。

 

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2019年4月 6日 (土)

楽興の時(27) みやこめっせ桜まつり2019 さくらコンサート第3部

2019年3月30日 左京区岡崎の京都市勧業館みやこめっせウェルカムホールにて

午後2時30分から、みやこめっせ「さくらコンサート」第3部を聴く。前半が二胡奏者の尾辻優衣子の演奏、後半が松井るみ(ソプラノ)、井上元気(テノール)、澤田奈央子(ピアノ)による歌曲コンサートである。

尾辻優衣子の二胡。自身のアルバムに収められた楽曲を中心としたプログラムで、伴奏は録音されたものを流すという、カラオケ版での演奏。二胡は単音しか出せないため、独奏に向いた楽器ではない。元々は京劇の伴奏楽器で、楽器としての地位も低かったが、劉天華によって中国を代表する楽器となっている。
単音の楽器ということもあり、聴かせられるものになるかどうかは別として演奏すること自体はさほど難しくはない。私も半年ほど二胡を習っていたことがあるが、「十九の春」などはすぐ弾けるようになっている。ただ弦が切れやすいため、切れないよう適度に抑えて力強く弾くということは難しく思えた。
尾辻は「二胡はヴァイオリンと原理は同じで遠い親戚」と紹介して、ヴァイオリン曲である「情熱大陸」も奏でていた。
中国人作曲家によるクラシカルな二胡の曲として最後の最後に「賽馬(競馬)」が演奏される。ヴァイオリンでいうピッチカートも繰り出され、万全の迫力に富む演奏に仕上がっていた。

 

歌曲コンサート。さくらコンサートということで、まず松井るみと井上元気のデュオで「さくらさくら」が歌われる。その後、イタリアの作曲家であるレスピーギ、フランスの作曲家であるグノー、プーランク、ロザンタールの歌曲が歌われる。

レスピーギは、ベルリオーズやリムスキー=コルサコフとともに三大オーケストレーションの名手に数えられており、ローマ三部作がとにかく有名だがそれ以外の曲が取り上げられる機会は少ない。歌曲を聴くのは私は初めてとなる。

グノーやプーランクは比較的有名だが、ロザンタールは作曲家としてよりも指揮者やオッフェンバックの楽曲を集めてコンサートピースとしてまとめた「パリの喜び」の編曲者として有名な人物である。1904年生まれでありながらかなりの長生きであり、「パリの喜び」の自作自演盤をデジタル録音で収めている。松井るみ独唱によるロザンタール作品として取り上げられたのは「英国のねずみ」という歌である。イギリスで生まれ育ったねずみが船に乗り、たどり着いたのはフランス。そこで英国ホテルというホテルを見つけ、屋根裏部屋でジンやウィスキーといったイギリス名物を発見したねずみは歓喜。毎夜、PARTYを開くが階下にすむフランス人達の不興を買い、というストーリーである。松井は自作の紙芝居を用意し、めくりながら歌う。エスプリのお手本のような楽曲であり、紙芝居もわかりやすかった。なお、珍しい楽曲が並んでいるが、タブレット端末にダウンロードした電子楽譜を使っているため、譜面を探し出すのにさほど苦労はしていないようである。

その後、オーストリア出身のレハールが作曲した喜歌劇「メリー・ウィドウ」より「とざした唇に」の日本語版とグノーの歌劇「ロメオとジュリエット」より出会いの場のデュオが歌われ、アンコールのヴェルディの歌劇「椿姫」から「乾杯の歌」で華やかに閉じられた。

 

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2018年12月23日 (日)

楽興の時(26) 伏見交通安全協会・京都府伏見警察署主催「交通安全!X'mas Concert」2018

2018年12月20日 伏見区の京都市呉竹文化センターにて

午後2時30分から、丹波橋駅前にある京都市呉竹文化センターで、伏見交通安全協会・京都府伏見警察署の主催による「交通安全!X'mas Concert」を聴く。一日警察署長・エレクトーン演奏は、エレクトーン奏者の小椋寛子。吹奏楽演奏は、京都聖母学院中学校・高等学校吹奏楽部。合唱は、伏見老人福祉センターコーラス同好会。

小椋寛子が、Twitterで情報を流したのを受けて聴きに来たもの。小椋寛子は昨年に続き、2年連続の参加になるようだ。


開演5分前から準備に入るなど、余り慣れた感じはしない。

無料コンサートということもあり、赤ん坊が叫んでるし、お爺ちゃんも叫んでるしという環境である。

開会セレモニーとしてして、まず京都聖母学院中学校・高等学校吹奏楽部のトランペット奏者によるファンファーレがあり、主催者として伏見警察署の署長が挨拶を行う。
京都府内での交通事故は、減少傾向にあり、昨年の同時期に比べると31%減となっているそうだ。なお、年末年始は交通事故が増える時期だそうである。

続いて、馬屋原伏見区長による来賓挨拶がある。実は小椋寛子とは高校の先輩後輩だという明かされる。


その後、一日警察署長である小椋寛子が、女性警察官の格好で登場。なお、京都府警のゆるキャラであるポリスまろんとみやこがエスコートしていたが、フラフラとした足取りで逆に心配される。


京都聖母学院中学校・高等学校吹奏楽部による演奏。部員は総勢で70名ほどいるそうだが、今日が終業式で、この時間はまだ授業を受けている生徒もいるということで、45名での参加となる。中学校1年から高校2年生までの参加である。
全員が21世紀生まれということで、いわゆる懐メロはピンとこないそうだが、まず、西城秀樹の「ヤングマン」が演奏される。西城秀樹が今年他界したということで選ばれた曲だそうである。

続いて、京都聖母学院はカトリックの学校ということもあって、「クリスマス・キャロル・ファンタジー」が演奏される。

お年寄りのための「青い山脈」の演奏。生徒達は映画を観たことがないため、「山脈が青いからなんなん?」という反応もあったそうである。

今年流行った、DA PUMPの「U.S.A」がその次に演奏される。客席にはお年寄りが多いということで、よくはわからないようだったが、「軽快な曲やったなあ」という声は聞こえた。ちなみに顧問の先生も今年47歳だが、松田聖子より新しい歌手の曲はよく知らないそうである。

最後は、加山雄三メドレー、「君といつまでも」「お嫁においで」「サライ」が演奏される。

更にアンコールとして、ディズニー映画「ズーラシア」より“Try Everything”の演奏もある。

京都聖母学院中学校・高等学校吹奏楽部は、高校の大会で京都府の金賞を受賞した強豪だそうである。


続いて、伏見老人福祉センターコーラス同好会による合唱。メンバーの中で男性は2人しかおらず、ちょっと寂しい。女性と違って男性は余り催しに参加したがらないようである。

「冬のメドレー」(「雪」「冬の星座」「ペチカ」「雪の降る町を」など)、「いい日、旅立ち」、「上を向いて歩こう」、「きよしこの夜」が歌われる。
お爺ちゃんお婆ちゃんによるアマチュア合唱団で、練習は月2回だけということもあり、声が合っていない。更にお爺ちゃんがどこを歌っているのかわからなくなり、楽譜をごそごそし始め、更には譜面を落としてしまうなどしっちゃかめっちゃかになっていた。
無料コンサートというだけあってこんなものだろうし、こうしたハプニングも面白さのうちである。


そして、小椋寛子によるエレクトーンの演奏。いつも小椋が使っているYAMAHAのSTAGEAのエレクトーンを使っての演奏である。グレーのドレスに着替えて登場した小椋はまず「美女と野獣」序曲を演奏。その後、「最近のエレクトーンは声を出せるってご存じですか?」と聞いてから、スキャットの音を出したガーシュウィンの「アイ・ガッタ・リズム」を演奏する。

小椋は、ABCテレビの「おはよう朝日土曜日です」のジングルや、BGMを演奏しているということで、その演奏も行う。

大阪音楽大学ピアノ学科在学中にオーディションを受けて、「おはよう朝日土曜日です」のエレクトーン奏者に採用された小椋寛子。第4次審査で、「鍵盤を見ずに、カメラを見ながら笑顔で弾いて下さい」と注文されて戸惑いながら弾いたいう「魔法にかけられて」より“真実の愛のキス”も弾く。

最後は、「サウンド・オブ・ミュージック」メドレー。エレクトーンでは動物たちの鳴き声も出せるようだ。表題作のほか、「ドレミの歌」「私のお気に入り(マイ・フェイバリット・シングズ )」「エーデルワイス」「もうすぐ17歳」「すべての山に登れ」などが演奏された。そういえば、高校1年の時の音楽の授業で、「サウンド・オブ・ミュージック」の1場面を選び、何組かに分かれて演じて歌うという課題があり、私は「すべての山に登れ」の組に入って演じて歌った。

その後、ヤマハ音楽教室に通っているちびっ子達が参加して、小椋とのコラボレーションを行う。ちびっ子達は、「あわてん坊のサンタクロース」、「池の雨」(ヤマハ音楽教室のCMでやっている「ドレミファソラファミレド」というあれである)、「大好き」を歌う。


閉会の挨拶で、小椋寛子がなぜか名前を「小林寛子」と間違えられるなどハプニング続きであったが、小椋寛子はプロのエレクトーン奏者ということもあって楽しい時間を過ごすことが出来た。

入場者全員に、箸とタオルがプレゼントされる。


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2018年10月15日 (月)

楽興の時(25) 京都コンサートホール×ニュイ・ブランシュ KYOTO 2018「瞑想のガムラン――光と闇に踊る影絵、覚醒の舞」

2018年10月5日 京都コンサートホール1階エントランスホールにて

京都コンサートホール1階エントランスホールで行われる、京都コンサートホール×ニュイ・ブランシュ KYOTO 2018「瞑想のガムラン――光と闇に踊る影絵、覚醒の舞」という公演が午後9時半からあるので参加する。1階エントランスホールはそう広くはないし、西川貴教の出演するコンサート帰りの客が参加したら入りきらないのではないかと懸念されたが、西川貴教ファンでガムランにも興味があるという人はほとんどいないようで、一杯にはなかったが移動にも苦労するというほどではない。ただカーペット席や椅子席は満員で、多くの人が立ち見ということになった。私も立ち見である。

パリ市が毎年秋に行う現代アートのイベント、ニュイ・ブランジェ(白夜祭)。今年は京都・パリ友情盟約締結60周年ということで、今日10月5日に京都市内各所でもニュイ・ブランジェの催しが行われ、京都コンサートホールではフランスを代表する作曲家であるドビュッシーの没後100年を記念して、ドビュッシーに多大な影響を与えたガムランの演奏が行われることになった。

ガムラン演奏と影絵芝居(ワヤン)の上演を行うのは、インドネシア伝統芸能団ハナジョスのローフィット・イブラヒム(男性)と佐々木宏美の二人。
インドネシア伝統芸能団ハナジョスは、2002年11月にジャワ島ジョグジャカルタで結成されたジャワ芸能ユニット。ガムランの演奏、影絵芝居ワヤンの上演、ワークショップ、作曲、演奏指導などを行っている。2005年に京都に拠点を移し、2009年からは大阪を中心とした活動を行っている。

ローフィット・イブラヒムは、1979年ジョグジャカルタ生まれ。インドネシア芸術高校を経てインドネシア芸術大学伝統音楽科を卒業。同大学の芸術団のメンバーとなる。2005年から日本在住。
佐々木宏美も1979年の生まれで、イブラヒムと同い年である。神戸大学発達科学部人間行動表現学科音楽コース在学中にガムランと出会い、2002年からインドネシア政府国費留学生としてインドネシア芸術大学パフォーミングアーツ学部伝統音楽学科に2年留学。帰国後にインドネシア伝統芸能団ハナジョスに参加している。

鐘を叩き、歌いながら二人が登場。まずは打楽器演奏を行った後で、金属製の楽器や胡弓のような楽器を演奏し、歌う。

その後、影絵芝居ワヤンの上演がある。佐々木宏美が「インドネシアの影絵は表からも裏からも見ることが出来る」と語ったので、まずはスクリーンの背後から見ることにする。影絵に使う人形に彩色が施してあり、裏からは人形劇として見ることが出来ることがわかる。ただ、影絵の効果はこれでは十分にわからないので表の方へと回り、結局エントランスホールを一周する。

「ワヤン・クリ 太陽神の子カルノ」
ストーリー自体はフォークロアに良く出てくる類いのもので、太陽神スルヨの子どもを宿したマンドゥロ国王女のクンティが、王様の怒りを買い、生まれたカルノという男の子を川に流すことから始まる。優しい老夫婦(多少、ボケが始まっているようだが)に拾われたカルノは大事に育てられ、17歳になる頃には特別な若者へと成長していた。太陽神スルヨはカルノを見て自身の子どもと確信し、超能力を持つ弓矢を与える。弓矢の名人として武芸の大会で活躍するカルノ。そのカルノを見て、アスティノ国の王子であるドゥルユドノはカルノをアスティノ国の将軍に迎え入れることに決める。
ラストは影絵の上演を離れ、イブラヒムが紙の馬にまたがっての馬術を見せる。表現が多彩である。


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2018年10月13日 (土)

楽興の時(24) 真宗大谷派岡崎別院「落語とJAZZの夕べ」2018

2018年10月3日 左京区岡崎の真宗大谷派岡崎別院にて

午後7時から、真宗大谷派岡崎別院本堂で、「落語とJAZZの夕べ」を聴く。いつもは空いている催しのようだのだが、今日はどうしたわけか超満員。本堂に入りきれないほどの人が集まった。

司会を務めるのは仏教イベントでは余り見かけないような可愛らしい女性であったが、フリーアナウンサーやタレント、女優などをしていて、現在放送中の朝の連続テレビテレビ小説「まんぷく」にも、主人公の今井福子(安藤サクラ)が務めるホテルのフロント係役として出演しているという。「まんぷく」は録画しているので見直したところ、確かにそれとわかる女性が出演していた。

第1部がJAZZの演奏会。ヴォーカルの麻生優佳、アルトサックスの本並ともみ、キーボードの須田敏夫、ダブルベースのマキアキラ、ドラムスの辻川郷という編成。
全10曲が演奏され、そのうち6曲にヴォーカルの麻生が参加する。

曲目は、「It's only a paper moon」、「Autumn leaves(枯葉)」、「星に願いを」、「Caravan」、「ムーンリヴァー」、「Smile」、「Fly me to the moon」、「中国行きのスロウボウト」、「ムーンライトセレナーデ」、「Moanin'」という超王道レパートである。

「It's only a paper moon」が本並ともみを中心としたサックスカルテットで演奏されてスタート。2曲目の「枯葉」から「Fly me to the moon」までは麻生優佳のヴォーカルが入る。伴奏が合ってるのか合ってないのかよくわからないところがあったりしたが、楽しむには十分な水準である。客席は白髪の人中心で、音楽にうるさい人も余りいないようであるし。
反応が本当にNHKの公開収録のそれそのままであり、お年の方は本当にああした反応を見せるようである。

第2部が落語、四代目桂塩鯛(しおだい)が登場する。岡崎別院本堂内には高座がないため、ビールケースを三つ重ねたものを7つほど置き、上に板を敷いて特設の高座とした。

桂塩鯛は、昭和33年、京都市生まれ。立命館大学中退後に桂朝丸(現・桂ざこば)に入門し、現在はざこばの筆頭弟子である。若い頃にABC落語・漫才新人コンクールで最優秀賞を受賞したことがあり、平成10年に文化庁芸術祭優秀賞を受賞している。

塩鯛は、まず一目でその筋とわかる人が最近いなくなったという話をし、新幹線で組の人(3年1組と冗談を言っていた)と出会った時のことを話す。東京から大阪に帰る新幹線の3人掛けシート、窓側に塩鯛は座っていたのだが、京都から組の人らしき人物が乗ってきた。3人掛けシートの通路側の席には、サラリーマンと思われる人が疲れて寝ていたのだが、組風の男はサラリーマンの足を思いっ切り踏んだため、「お前、なにすんねん! 足踏みよってからに」と怒る。起きていたら、組風の姿を見て遠慮したと思われるのだが、目を開けてすぐに怒鳴ったため、相手の風体に気づく暇がなかったようだ。組風の男はのうのうと「足踏んだからなんやねん?」と返答し、サラリーマンも「なんやねん」と言い返すが、組風の男も「なんやねん」と言い返し、サラリーマンも「なんやねん」と返し続けるが、そのたびの顔色が悪くなっていく。塩鯛が止めに入ろうとしたが、前の席に座っていたおっさんが、「お前、関係ないのになんやねん?」と苦情を言ってきたため、塩鯛も組風の男と前のおっさん二人に延々と「なんやねん」を返して、そのしているうちに新大阪に着いてしまったという話である。
これを枕に、チンピラの「らくだ」を巡る話である古典落語「らくだ」全編上演に入っていく。長屋に住む「らくだ」(役立たずという意味がある)というあだ名の男、卯之助。この男がどうしようもないろくでなしで、3年もの間、長屋の家賃を一度も払ったことがなく、長屋で祝儀を出すことになっても「立て替えておいてくだせえ」と言ったきり、結局、今に至るまで金を払ったことがない。
らくだの親分である脳天の熊五郎がらくだの長屋を訪ねてくる。らくだが寝坊をしていると思ってしばらく話しかけていた熊五郎だが、らくだの体が冷たくなっていることに気づく。どうもフグを食って毒に当たり、死んでしまったらしい。
やはりやくざ者である熊五郎は、長屋の前を通りかかったくず屋を呼び止め、らくだの死を利用して、ただで酒と肴を楽しもうと企てて……。

噺家なので、登場人物の演じ分けが巧みなのは当然なのだが、クシャミやしゃっくりを入れるタイミングが絶妙であり、自然に出てしまったかのように聞こえる。人間の生理現象は意識して出るものではないので、真似るのは難しいのだが、そこは十全のようである。



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