カテゴリー「楽興の時」の43件の記事

2022年1月17日 (月)

楽興の時(43) 第34回「YMN(Yellow Magic Night)」

2021年12月18日 千葉市中央区のライブハウスLOOMにて

千葉の冬は京都に比べれば暖かいのだが、今日は北風が強き、この冬一番の寒さとなった。

午後3時から、千葉市中央区中央にあるライブハウスLOOMで、第34回「YMN(Yellow Magic Night)」に接する。
「YMN」は、YMO(Yellow Magic Orchestra)のカバーバンドによる演奏とセッションが行われるイベント。2008年に始まったそうで、当初は毎月開催されていたのだが、ここ数年は年3回の開催に落ち着いている。

3年ほど前に、YMOのリハーサルの音源などが――おそらく関係者からだと思うのだが――、YouTube上に出始めていたのでそれを聴いており、その関係でYMO関連の音源がお勧めに出てくることも多いのだが、Delightsというユニットの「Solid State Survivor」のミュージックビデオがお勧めに上がり、若い女性が歌っているということで、「へえ、こんな若い女の子がYMOを歌うんだ」と感心していたが、DelightsのMIYAさん(男性)が私の出身地である千葉市にあるライブハウスLOOMのオーナーで、LOOMでYMOのイベントをやっているということで興味を持ち、更に歌声の主であるRisaさんがファン獲得のためにPocochaを始めたので何度か参加。ということで、「これは一度は行かなければ」ということで参加を決める。少し早めの帰省を兼ねた参加である。

LOOMがあるのは、千葉神社のそば。ということでまず千葉神社に参拝してからLOOMに向かったのだが、3時まで時間があったので、表で待つことにする。近くには千葉市美術館もあるのだが、寄っている時間はない。
LOOMの前では、先に来たお客さんが3人ほど待っており、私の後にも並ぶ人が何人もいて行列が出来る。
リハーサルが押しているということで、開場時間が5分ほど遅れる。開場の案内に出てきたのは、寒い日だというのにミニスカートを穿いた活発そうな若い女性で、彼女がRisaさんだと分かった。Risaさんは、現時点ではYouTubeでMV配信を行っているだけのアマチュアのミュージシャン(サブスクリプションデビューも決定しているが)であるが、持っているエネルギー量が他の同世代の女の子よりも多そうだということが一目で感じられた。
「二十歳でYMO好きで英語ペラペラなんて、突然変異みたいな子だったらどうしよう」と思っていたが、Pocochaで見た限りでは、音楽と英語以外では割と普通の女の子という印象で安心していた。

今回は、YMOカバーバンドによる演奏に先駆けて、RisaさんとYMOカバーバンドであるmenon bandを率いているmenonさん(女性)によるプレトーク、そして、文芸系YouTuberでYMOにも詳しく、自身で演奏も行うムーさん(男性)によるトークイベント、更にRisaさんの発案だというYMOクイズのコーナーもある。

ライブの様子はYouTubeLiveで配信されるのだが、配信用のURLが突然変わったということで、Risaさんが、「会場にいる方で配信を見たい方はご確認を」という意味のことをアナウンスしただが、ステージ上にいた人々から「ライブ会場にいる人は配信は見ないよ」と総突っ込みを受けていた。menonさんがRisaさんについて「天然なんです」と語る。
主催者であるMIYAさんも、「Risa、天然だから」ということで、YMNのTwitter担当であり、「常時DM・リプライ受付中!」と書いているにも関わらず、DMのチェックを全くしていなかったという話をする。

LOOMについての話であるが、昔はキャバクラが3店並んでいた場所を買い取り、壁を取り払ってライブハウスにしたそうである。2006年にオープンし、YMOカバーなどの映像を撮っていたりしたが、「生でもやろうか」ということで2008年にYMNが始まっている。ちなみにLOOMというのは、YMOの代表作である「BGM」の最後に収録された無限音階を使った音楽、「LOOM/来るべきもの」に由来している。


YMOクイズは、簡単な問題から難問までバラエティに富んでいたが、目立つのは嫌なので分かる問題でも挙手はしなかった。


メインの演目であるYMOのカバーバンド(暮れに行われた配信ライブで、The Endoh of Asiaというバンド名に決まることになる)による演奏。出演は、MIYA(ドラムス)、Risa(ボーカル&キーボード)、menon(シンセベース)、遠藤雅章(キーボード&打ち込み制作)、ムー(キーボード)。たまたまらしいが、今回はドラムス以外全員キーボードという編成になった。


リハーサルは行っているが、曲順は決まっていないようで、1曲演奏してから皆で話して次の曲を決めるというスタイルで進んでいく。
「Castalia」で始まるという渋い選曲で、Risaさんがボーカルということもあり、YouTubeでDelightsが発表されている「音楽の計画 Music Plans」、「デイトリッパー」、「Solid State Survivor」などが演奏される。

ビートルズのカバーバンドは、京都のジ・アンフィールズなどいくつか聴いたことがあるが、YMOのカバーバンドを聴くのは初めてである。本家YMOの演奏を生で聴いたこともないので、テクノバンドの演奏を聴くこと自体初めてかも知れない。

その後に、セッションコーナーがあり、お客さん(といっても腕にそれなりの覚えのある人だが)が参加してYMOの人気曲や、細野晴臣作曲によるイモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」などが演奏された。

終演は午後9時過ぎと、約6時間に及ぶ長丁場となったが、長さを感じさせない幸せな時間であった。

演奏終了後に、Risaさんに挨拶。自己紹介をすると目を見開いて驚かれたが、27歳も年下の娘のような女の子と何を話していいのか分からないので、短い時間で切り上げた。

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2021年7月11日 (日)

楽興の時(42) 「テラの音 Vol.30」 Duo Felicello(デュオ・フェリーチェロ)デビューライブ

2021年7月2日 真宗大谷派小野山浄慶寺にて

午後7時から、京都御苑の近くにある真宗大谷派小野山浄慶(じょうきょう)寺で、「テラの音 vol.30」を聴く。浄慶寺で「テラの音(ね)」が開催されるのは、1年ぶりとなる。コロナ禍に加えて、共同主宰である牧野貴佐栄の体調面での問題もあり、なかなか上演が出来ないでいた「テラの音」であるが、次回は10月にやはり浄慶寺で行われることが決まっている。

今回は、チェロデュオであるDuo Felicello(デュオ・フェリーチェロ)の出演。メンバーは、三井菜奈生と徳安芽里。実は今回がデビュー公演になるという。

三井菜奈生は、香川県出身。4歳でピアノ、8歳でチェロを始め、12歳から高校卒業まで、かがわジュニアニューフィルハーモニックオーケストラに所属。第20回札幌リスト音楽院セミナーでは、名チェリストとして知られるミクローシュ・ペレーニのレッスンを受けている。大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻音楽コース卒業。

徳安芽里は、奈良県出身。浄土真宗本願寺派の大学である相愛大学音楽学部を卒業。桐朋オーケストラ・アカデミー研修課程を修了している。第8回全日本芸術コンクール大学生部門で奨励賞を受賞。


曲目は、J・S・バッハの「G線上のアリア」(管弦楽組曲第3番より“エア”)、ボッケリーニの2本のチェロのためのソナタ、「日本の四季の歌メドレー」、クンマーの「ヘンデルの主題による変奏曲」、ドッツァーの「モーツァルトの主題による変奏曲」、モーツァルトの「鏡のカノン」、バリエールの2本のチェロのためのソナタ ト長調。

見慣れぬ名前の作曲家も多いが、多くはチェリスト兼作曲家だった人のようで、チェロのための練習曲なども書いており、チェロを習っている人にとってはお馴染みの作曲家のようである。

通常の「テラの音」は二部制で、間に住職による法話が入るが、今回は時短にする必要があるということで、最初に浄慶寺の中島浩彰住職による法話があり、来週は七夕ということで「五節句」の話や、仏教が「私」を巡る宗教であるということなどが語られる。


おなじみの「G線上のアリア」でスタート。

「メヌエット」でお馴染みのボッケリーニであるが、それ以外の曲は余り知られていなかったりする。生前は作曲家としてよりもチェロ奏者として有名だったようで、2本のチェロのためのソナタは、チェロデュオの定番とされているようである。スケール豊かで、伸びやかな歌が特徴。

「日本の四季の歌メドレー」は、季節を題材にした日本の童謡など12曲からなるメドレー。春に始まり冬に終わる。演奏されるのは、「春が来た」「花の街」「早春賦」「背比べ」「茶摘み」「紅葉」「里の秋」「手袋の歌」「雪」などで、断片のみが演奏される曲もある。

クンマーの「ヘンデルの主題による変奏曲」。ここで用いられているヘンデルの主題とは、「勝利の歌」としても知られる「見よ、勇者は帰る」である。
トークは主に徳安が受け持っており、「運動会などの表彰式で流れていた曲」と説明していた。

ドッツァーの「モーツァルトの主題による変奏曲」で用いられる「モーツァルトの主題」というのは、歌劇「ドン・ジョヴァンニ」のアリア“お手をどうぞ”のメロディーである。
“お手をどうぞ”の主題による変奏曲は、ショパンなども作曲しているが、チェロは「人間の声に最も近い楽器」と呼ばれることも多く、チェロのことを知り尽くし、教則本も書いたドッツァーが、ドン・ジョヴァンニの歌うアリアを基に書いた変奏曲も魅力的である。

モーツァルトの「鏡のカノン」は、2人の演奏家が1枚の楽譜を上からと下から、同時に弾いて演奏が成り立つという楽曲である。J・S・バッハがこうした作品を多く残したが、モーツァルトも作曲しているようだ。ただこの作品には偽作説があるらしい。

バリエールの2本のチェロのためのソナタ ト長調。バリエールはフランスの作曲家兼チェリストで、生前は名声を博したようだが、わずか40歳で他界している。
この曲もチェリストの間では人気があるようで、典雅な第1楽長、憂いを帯びた第2楽章、華やかな第3楽章のいずれもが魅力的な曲想を持っている。


アンコールとして、ベートーヴェンの「トルコ行進曲」より冒頭部分が演奏された。

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2021年3月25日 (木)

楽興の時(41) ロームシアター京都 Holiday Performance Vol.7 正直

2021年3月21日 ロームシアター京都3階共通ロビーにて

3階の音楽サロンで「ロームシアター京都開館5周年記念 自主事業ポスター展」を観ていくことにする。3階共通ロビーに行くと、仮設のステージが設けられ、椅子が並べられている。午後3時半から、Holiday Performance vol.7として、正直というユニットのミニライブがあるようだ。ロームシアター京都の職員となった枡谷雄一郎が責任者を務めているようである。

積極的に聴こうという気にはならなかったのだが、雨の降りがまだ強く、この後、特に用事もないので、聴いていくことにする。
正直は、小林椋と時里充によるユニット(バンド)で、2016年に結成。最近は養生テープとモーターを使った演奏(一種のノイズミュージック)を行っているようで、今日もモーターを使って養生テープを伸ばしたり、回転させたりする時に出る音(ノイズだが)を音楽として提示するという演奏を行った。
ノイズミュージックであり、聴いていて楽しくなるという種類のものではなく、山場があるというわけでもないが、その分、ずっと聴いていることは可能である。

「音楽として聴こうと思えばなんだって音楽になる」(ジョン・ケージ)

この作品も、機械の調子によって生まれる音が異なるので、ケージが提唱した「偶然性の音楽」でもある。

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2020年10月 8日 (木)

楽興の時(40) 「テラの音 vol.30 秋の風 音の香」@浄慶寺

2020年10月2日 御幸町竹屋町の真宗大谷派浄慶寺にて

午後7時から、京都御苑の近くにある真宗大谷派浄慶(じょうきょう)寺で、「テラの音 vol.30 秋の風 音の香」を聴く。

今回の出演者は、本来なら今年4月の「テラの音(ね)」に出演するはずだったトリオである。コロナの影響で4月の公演は中止となり、半年遅れでようやく「テラの音」のステージに立つことになった。

菅原真依のフルート、野口真央のピアノ、大和のののパーカッションによる演奏。菅原と野口は浄土真宗本願寺派の大学である相愛大学音楽学部の出身。野口真央はピアノの他にエレクトーンも弾き、作・編曲も得意としているということで、ピアノ専攻ではなく創造演奏専攻出身なのかも知れない。菅原と大和は現在、京都市消防音楽隊メンバーとして活動している仕事仲間だそうである。

 

曲目は、前半が日本の作曲家による作品で、久石譲の「Oriental Wind」(サントリー「伊右衛門」CM曲)、秋のうたメドレー(「七つの子」~「夕焼小焼」~「赤とんぼ」)、スピッツの「優しいあの子」、中島みゆきの「糸」、久石譲のジブリメドレー(「カントリー・ロード」~「君をのせて」~「人生のメリーゴーランド」)、葉加瀬太郎の「情熱大陸」。後半は海外の楽曲で、カーペンターズの「Close To You(遙かなる影)」と「トップ・オブ・ザ・ワールド」、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」より「私のお気に入り」、ミュージカル「コーラスライン」より「WHAT I DID FOR LOVE」、ミュージカル「ヘアスプレー」より「Timeless To Me」、ミュージカル「マイ・フェア・レディ」より「踊り明かそう」、スティーヴィー・ワンダーの「Isn't She Lovely」、チック・コリアの「スペイン」

フルートとピアノのデュオはクラシックでもよくあるが、そこにパーカッション(カホンなど)が加わることで、ノリが良くなる。

 

伊右衛門のCM曲である久石譲の「Oriental Wind」。様々な楽器によるバージョンがあるそうで、多くはYouTubeに載っているそうだ。久石譲は来年4月から、大阪を本拠地とする日本センチュリー交響楽団の首席客演指揮者に就任することが決まっているため、関西で聴く機会も今まで以上に増えそうである。

「秋のうたメドレー」は、同じような曲目が毎年「大阪クラシック」のラストコンサートで演奏され、お客さんが歌うことでお馴染みである。今回のコンサートでも「歌ってもいい」ということだったが、コロナということもあり、積極的に歌う人は数人しかいなかった。

「情熱大陸」は演奏の前に、作曲時のエピソードが紹介される。元々は葉加瀬太郎は「情熱大陸」のエンディングテーマである「Etupirka」のみを提供するはずだったのだが、「オープニングも作曲して欲しい、ただし1週間で」という無理な依頼を受け、以前から演奏していた2つの楽曲のAメロとBメロをくっつけて放送用バージョンとし、コンサートなどで演奏されるロングバージョンはその後に作曲されたようである。

 

「私のお気に入り」は、JR東海の「そうだ 京都、行こう。」のCM曲として知られている。私も関東にいる頃はよく見ていた。CMの人気度も一二を争うものであった。
ただ京都に住んでいると「行こうもなにもすでにいる」ため少なくともテレビでは見られない。今はYouTubeなどで手軽に見ることが出来るには出来るのだが、CMというのはわざわざ見るものでもないので、基本的には今どんなCMが流れているのかわからないまま来てしまっている。

 

アンコールは、ナット・キング・コールの「LOVE」。洋楽の中でも洗練された曲目が並んでいるということもあって、お洒落な雰囲気の中で演奏会は終わった。

 

菅原と大和は京都市消防音楽隊のYouTubeに数多く出演しているそうで、アピールすることも忘れなかった。

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2020年9月 8日 (火)

楽興の時(39) 京都坊主BAR 「MANGETSU LIVE vol.24」(オーボエ:國本恵路)

2020年9月2日 元本能寺の近くの京都坊主BARにて

午後7時から、元本能寺の近くにある京都坊主BARで、「MANGETSU LIVE vol.24」を聴く。今日はオーボエの國本恵路(くにもと・えみ)独奏の演奏会である。

國本恵路は、大阪芸術大学演奏学科オーボエ専攻卒業後、フランスに渡り、更にスイスに移ってチューリッチ芸術大学でもオーボエを修め、同大学の大学院で音楽生理学の基礎コースを修了している。帰国後は合気道を習い、現在は合気道の指導員としても活躍しているという。

飛沫防止用のシートを前にしての演奏。これまで京都坊主BARでは、リコーダー、ヴィオラ、電子チェンバロ、ヴィオラ・ダ・ガンバなどの演奏を聴いてきたが、オーボエが一番音の通りがいい。


スコット・ジョプリンの「ジ・エンターテイナー」のオーボエ独奏版でスタート。合間にトークを入れながらの進行である。今日はマイクが使えるため、トークの内容もよく聞こえる。
「ジ・エンターテイナー」は、1973年公開の映画「スティング」で一躍有名になり、今ではサッカーのサポーターが歌う曲として抜群の知名度を誇っている。

秋をテーマにしたということで、イギリスの作曲家であるジェームズ・オズワルドの「キリンソウ」が演奏される。秋というと日本ではノスタルジックなシーズンというイメージだが、イギリスの曲ということで日本の秋のイメージとは大分異なる。

日本の秋の曲として「夕焼け小焼け」が録音伴奏付きで演奏されるが、やはり日本の秋というと、空が高く澄んでいて、夕焼けが映えてというイメージが浮かびやすい。秋の季語である「月」も歌詞に登場する。中村雨紅の詩は出身地である今の東京都八王子市の夕景を表したものだそうである。國本によると「夕焼け小焼け」のメロディーは草川信が1923年に作り上げたものであるが、この年の9月1日起こった関東大震災によってオリジナルの譜面は焼けてしまったという。ただ友人に写譜を渡していたため、作品自体が灰燼に帰すということは避けられたそうだ。

続いて瀧廉太郎の「荒城の月」が録音伴奏付きで演奏される。1番は歌曲の旋律通り(山田耕筰の編曲に準拠)に吹いたが、その後は崩して歌われ、最後に歌曲のメロディーに戻ってくるという編曲であった。

アンタル・ドラティ作曲の無伴奏オーボエのための5つ小品から「蟻とキリギリス」。
指揮者大国ハンガリー出身の名指揮者として名高いアンタル・ドラティ(ドラーティ・アンタル)。世界初の「ハイドン交響曲全集」を作成し、晩年にデトロイト交響楽団を指揮して録音したストラヴィンスキーの「春の祭典」は名盤中の名盤として知られる。
作曲家や編曲家としても活躍しており、無伴奏オーボエのための5つの小品は、名オーボイストのハインツ・ホリガーのために作曲されたものである。
20世紀の作品だけに音に鋭さがあり、進行も割合複雑である。最後に軽いオチがある。

20世紀のイギリスを代表する作曲家であるベンジャミン・ブリテンの「6つの変容」より。「6つの変容」は、ギリシャ神話に登場する神々にちなんだ曲集で、今日はそのうちの“パン”、“フェイトン”、“アレトゥーサ”にまつわる3曲が演奏された。
ベンジャミン・ブリテンは、生前から「パーセル以来久しぶりに現れたイギリスの天才作曲家」と呼ばれていたが、近年、作品が上演される機会の増えている作曲家の一人であり、才気に満ちた作品の数々が人々を魅了している。

今年の7月に亡くなった映画音楽の大家、エンニオ・モリコーネの「ガブリエルのオーボエ」。録音伴奏付きの演奏である。耳に馴染みやすく、どこか懐かしい甘美で流麗な旋律が魅力的である。

クロード=ミシェル・シェーンベルクの「レ・ミゼラブル」より“夢破れて”。クロード=ミシェル・シェーンベルクは、十二音技法で知られるアーノルト・シェーンベルクの親戚である。
“夢破れて”は、スーザン・ボイルの歌唱で有名になったほか、映画「レ・ミゼラブル」のアン・ハサウェイによる感情を最優先させた歌唱も話題になった。日本語訳詞版を歌う歌手も多く、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の中でもキーになっている曲として人気が高い。嘆きの歌詞を持つだけに、歌だと情感たっぷりとなるが、オーボエで演奏した場合は旋律の美しさが目立つ。

最後はテレマンのファンタジー。「MANGETSU LIVE」はバロック以前の楽曲演奏を主軸とした演奏会であるため、テレマンの楽曲が演奏されることが多いのだが、均整の取れた楽曲は魅力的である。

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2020年8月13日 (木)

楽興の時(38) 京都坊主BAR 「MANGETSU BAROQUE NIGHT」 ensemble kreanto(西谷玲子&中野潔子)

2020年8月4日 本能寺跡近くの京都坊主BARにて

午後7時から、元本能寺(本能寺跡地)の近くにある京都坊主BARで、「MANGETSU BAROQUE NIGHT」を聴く。普段はツーステージあるが、今日はワンステージのみである。出演は、ensemble kreanto。

ensemble kreantoは、チェンバロの西谷玲子とヴィオラ・ダ・ガンバの中野潔子によるデュオ。

西谷玲子は、京都市出身。京都市立堀川高校音楽科を経て、京都市立芸術大学ピアノ科を卒業。京都市新人芸術家選奨を受賞している。現在はJEUGIAが経営する京都音楽院の講師として活躍している。

中野潔子は、大阪音楽大学楽理科卒業後、同大学院でも音楽学を学び、現在は京都音楽院などで講師を務めるほか、ヴィオラ・ダ・ガンバのコンサートなども主催している。

 

京都坊主BARに新たに電子チェンバロが入る。私が浜松を訪れた時に訪れた浜松市楽器博物館で弾くことの出来る数少ない楽器展示だった電子チェンバロと同じ種類のものだと思われる。この電子チェンバロシリーズは、「テラの音(ね)」コンサートでも用いられたことがある。新品は高いので中古品を購入したそうだ。

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出演者が店に到着するまでに時間があったので、チェンバロで少し遊んでみる。J・S・バッハの「平均律クラーヴィア」からプレリュード、坂本龍一の「シェルタリング・スカイ」、サティの「ジムノペディ」第1番などの冒頭を弾き(暗譜していないため)、その後、即興演奏も行って遊ぶ。

 

スピーカーからはいつもバロック音楽が流れているのだが、コレッリの「ラ・フォリア」が流れたので、CDの紙ケースを見せて貰う。リコーダー:フランス・ブリュッヘン、チェロ:アンナー・ビルスマ、チェンバロ:グスタフ・レオンハルトという豪華な顔触れによる演奏である。しかしもう今では全員他界してしまった。

フランス・ブリュッヘンの実演には1度だけ接したことがある。リコーダー奏者ではなく指揮者としてである。自ら結成した十八世紀オーケストラを率いての京都コンサートホールでの来日公演。2003年のことだったと思う。民音(民主音楽協会、創価学会の運営)主催であるため、チケット不買運動が起きていた。
この時はブリュッヘンは体調不良だったようで、演目はベートーヴェンの交響曲第6番「田園」と第5番という王道プログラムであったが、ブリュッヘンらしい覇気と才気には欠けていた。というわけで1980年代から90年代のような好調時のブリュッヘンの演奏には残念ながら接していない。

 

今日はマイクのセッティングがなく、出演者もマスクをしながら喋る必要があるため、説明や曲目紹介などが聞き取りにくい。ただ、いずれも馴染みのない曲が多く、曲名を紹介したところで、こちらもどういう曲なのか上手く説明出来ないため、印象のみを述べることにする。

 

西谷玲子のソロ曲目は聞き取ることが出来、J・S・バッハの「シンフォニア」よりが演奏される。西谷は「調の変化を楽しんで欲しい」と言う。「インヴェンションとシンフォニア」として学習用楽曲として有名であるが、そこは流石にバッハで、平易ではあってもシックな大人の音楽に仕上げている。京都坊主BARは町家を改造したバーであり、シンクな雰囲気がバッハの楽曲にとてもよく合う。

 

中野潔子のヴィオラ・ダ・ガンバの演奏。コロナ禍で海外旅行が出来ないため、せめて音楽の世界だけでも異国に飛ぼうということで、オランダ、イギリスやフランスなどの楽曲が奏でられる。
ガット弦を張ったヴィオラ・ダ・ガンバ(チェロの先祖に当たるが、エンドピンがなく、奏者は両足で楽器を挟んで演奏する)の音色は押しつけがましさがなく、音も漂うような雰囲気があり、光の推移の様が目に見えるかのようである。そういう点においては音楽は絵画の「印象派」を先取りしている。ドビュッシーやラヴェルの音楽は、音楽における印象派と呼ばれているが絵画の印象派とは異なる(ドビュッシーらは印象派ではなく「象徴派」と呼ぶべきだという意見もある)。クロード・モネが描こうとしたような光と時間の移り変わりは、音楽では先に達成されていると見ることも出来るのかも知れない。

 

ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロの楽曲としては珍しい現代の作品の演奏を経て、テレマンの3つあるガンバ・ソナタのうちの一つが演奏される。スケールが大きくリズミカルな曲であり、テレマン自身の自信や誇りが伝わってくるかのようである。
その後の音楽とは価値観が異なる作品が多いが、その時代にマッチし、彩ってきた音楽に触れる贅沢を感じることが出来た。

 

演奏終了後、やっぱりチェンバロを演奏してみたくなったので、先程演奏した曲に加えて、楽譜が置かれていたバッハの「インヴェンションとシンフォニア」第1曲(千葉にいた頃によく弾いた曲だが、譜面がスラスラ読めないようになって来ているので苦戦)、ベートーヴェンの「月光」ソナタの冒頭(暗譜出来ておらず、すぐに行き詰まる)、サティの「グノシェンヌ」第5番の冒頭の右手の旋律、オルガンの音も出せるので、J・S・バッハの「小フーガ」ト短調の冒頭、右手だけの部分などを弾く。もう18年もピアノに向き合っておらず、たどたどしいものにしかならないが、瞬間瞬間で浮かんでくる旋律を音に変えるという即興演奏っぽい遊びを行っている時間は、あるいは私にとって最も幸せな瞬間なのではないかと、高校生の時にふと浮かんだ思いが、デパートの屋上から上がるアドバルーンのように私の頭上でゆらゆら揺れていた。

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2020年7月10日 (金)

楽興の時(37) 京都坊主BAR 「MANGETSU LIVE vol.22」 ヴィオラ:田代直子(関西フィルハーモニー管弦楽団)

2020年7月5日 本能寺跡近くの京都坊主BARにて

元・本能小学校の近くにある京都坊主BARで、「MANGETSU LIVE vol.22」が午後2時から初のマチネーで開催されるというので出掛けてみる。

今日はヴィオラ独奏のコンサートである。出演は、関西フィルハーモニー管弦楽団ヴィオラ奏者である田代直子。

田代直子は、京都市立音楽高校(現在は移転して京都市堀川音楽高校になっている)を経て京都市立芸術大学音楽学部ヴァイオリン専攻を卒業。卒業後にヴィオラに転向している。カール・ベームの出身地としても知られるグラーツにあるオーストリア国立グラーツ芸術大学に留学し、学士・修士共に満場一致で最優秀を獲得。帰国後に兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオーケストラ)コアメンバーを経て関西フィルに入団している。

2ステージ制であり、各ステージごとにカンパが行われる。

 

曲目は、ファーストステージが、テレマンのファンタジア第9番、ビーバーの「パッサカリア」、J・S・バッハの無伴奏チェロ組曲第1番(ヴィオラ版)。セカンドステージが、ヘンデルの「私を泣かせてください」(細川俊夫編曲)、パラシュコの「Hunting」、ヴュータンの「Capriccio」、近藤浩平の「いつか夢になる」(ヴィオラ版初演)、J・S・バッハの無伴奏チェロ組曲第5番よりプレリュード。

プレリュードが最後に来るが、コロナ禍の悪夢が「いつか夢になる」と願い、新しい時代の前奏曲を奏でるという意味なのだと私は受け取った。

京都坊主BARのシックな内装もヴィオラの音色にぴったりであり、雰囲気豊かな演奏となる。

「MANGETSU LIVE」は古楽の演奏が中心となるようだが、ヴィオラは古い時代には独奏曲が書かれることは余りなかったそうで、今回は古楽の曲目は抑え気味である。

楽曲解説などのトークの時は、マスクを着けて話すことになるのだが、曲ごとに解説するよりも纏めて話した方が短いので飛沫が飛ぶことも少ないということで、これから演奏する曲目や作曲の由来などを語ってから楽曲を連続で演奏するというスタイルを取る。

 

前回のリコーダーの演奏会でも取り上げられたテレマンのファンタジアからの1曲でスタートする。

 

バロックヴァイオリンの異才、ビーバーは名人芸を駆使した軽快な楽曲で知られるが、「パッサカリア」はスケール豊かな深遠な楽曲である。

 

J・S・バッハの無伴奏チェロ組曲のヴィオラ版は、日本が誇る世界的ヴィオラ奏者である今井信子も録音しており、ヴィオラ独奏版も「比較的」ではあるが聴く機会は多い。

 

ヘンデルの「私を泣かせてください」。ソプラノ歌手の森麻季が得意としている楽曲で、コロナ禍の終息を願い、彼女自身のインスタライブでこの曲のオルガン弾き語りを配信していたりしたが、今回演奏されるのは日本を代表する作曲家である細川俊夫によるヴィオラ独奏のための編曲である。
序奏を含めての編曲で、当然ながらヴィオラの音の深さを生かした仕上がりとなっている。

パラシュコはヴィオラの教本を多く書いているドイツの作曲家のようである。「Hunting」はタイトル通り軽快な曲想である。

 

ヴュータンの「Capriccio」。
ベルギー・フランス語圏に生まれ、フランスで活躍したヴュータン。作曲家としてもそこそこ有名であるが、当時屈指のヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリニストとして、またイザイらを生み出したヴァイオリンの名教師としてその名を轟かせていた。「Capriccio」はヴュータンの遺作だそうで、遺作がヴィオラの作品となった作曲家はたまたまだと思われるが何人かいるそうである。
19世紀を生きたヴュータンであるが、「Capriccio」は古典的な造形美を誇る作品であり、高雅さと哀切さとが、高い次元で織り上げられている名品である。

 

近藤浩平の「いつか夢になる」は、コロナ禍で演奏活動が難しくなった数多くの演奏家のために書かれた独奏曲である。元々はソプラノ独唱のために書かれたが、多くの独奏楽器のために編曲されており、ヴィオラ版全編の会場での上演は今日が初めてとなるそうだ。三部構成で、ヴィオラで聴くと、最初とラストに祈りに満ちた旋律が奏でられるように聞こえる(歌唱バージョンの森永かず子の詩を読むとまた違った内省と無常と憂いの強い印象である)。
ちなみにヴィオラ抜粋版のWeb初演を行ったのは、グラーツ・フィルハーモニー管弦楽団のヴィオラ奏者であるカール・スミスだそうで、田代とはグラーツ繋がりとなる。

作曲者の近藤浩平も京都坊主BARに駆けつけており、拍手を受けた。

 

ラスト。コロナ禍で自粛生活が続き、第二波が来そうな予感もあるが、再び音楽活動が自粛とならないよう願いと希望を込めたかのようなプレリュードの演奏となる。重苦しさを情熱で打破していくような印象を受けた。

 

知り合いも多く来ていたので、終演後にお喋り。みんなで乾杯する時に、なぜかヴェルディの「乾杯の歌」をスマホの歌詞を見ながらアカペラで歌うことになったりする。

 

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2020年7月 7日 (火)

楽興の時(36) 「テラの音」特別版「今こそ、みんなの力で」

2020年7月3日 中京区の真宗大谷派小野山浄慶寺にて

京都御苑の近くにある真宗大谷派小野山浄慶(じょうきょう)寺で久しぶりに「テラの音(ね)」を聴く。今回はコロナ対策として特別版「今こそ、みんなの力で」と銘打たれ、普段は予約不要であるが要予約、来場者も20名までに限られる。風通しを良くするため本堂の障子が開け放たれており、雨音が良く響く。自然の通奏低音との共演である。

今回の出演者は、「テラの音」共同主催者で企画担当でもあるヴァイオリニストの牧野貴佐栄(きさえ)と、実妹のmarie(ピアノ&ヴォーカル)のデュオ。姉妹であるため顔は同傾向ではあるが、髪型、髪の色、衣装全て大きく異なる。性格もかなり違うはずである。多分であるが、兄弟姉妹は性格が違うほど仲は良くなる傾向がある、と思われる。

オープニングとして姉の牧野貴佐栄のヴァイオリン独奏で、J・S・バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番より「プレリュード」と「ガボット」が弾かれる。

その後は姉妹デュオで、「Hallelujah~ハレルヤ~」、「Cannon Rock」(パッヘルベルの「カノン」の編曲)、ビートルズナンバーの「Oh! Darling」、「G線上のアリア」、イーグルスの「Desperado~ならず者~」、「希望の讃歌」、葉加瀬太郎の「情熱大陸」の演奏。

「希望の讃歌」は譜面が出版されていないため、耳コピで演奏にまで漕ぎ着けたそうである。

通常の「テラの音」は2時間ほどの上演時間であるが、今日は1時間ほどの短縮バージョン。開演時間もいつもの7時から7時半に遅らせている。雨でヴァイオリンの調子が余り良くないようだが、ノリの良い演奏が聴かれる。
ちなみに現地での聴衆の数が限られるということで、来られない人のために今回の「テラの音」はFacebookでライブ配信がなされた。

コロナでの自粛期間は姉妹で実家(名古屋だと思われる)に戻って過ごしたそうで、仕事も演奏会も飛んでしまったが、姉妹で練習する時間が持てたそうである。

 

アンコール演奏は、ジョン・レノンの「Imagine」。合唱はまだ危険とされているため、歌詞カードは印刷されていたが、聴衆は心の中で歌うに留める。

 

最後は、浄慶寺の中島浩彰住職による法話。実はコロナ対策として叫ばれている「三密」が元は仏教用語であり、「身密・口密・意密」の三つからなるもので、身体・行動、言葉・発言、意思・心の三つが整うととても良いのだが、新型コロナのためにそれが難しくなっている。移動行動が制限されているため祖母が孫に会えないということがあったり、ネット上での口撃で女子プロレスラーが自殺してしまったりという痛ましい出来事があったりした。
ただ、自粛期間に普段出来ないことする時間が生まれるなど、良いこともあるという話にもなる。住職は掃除が捗ったり、家族の時間を持つことが出来たそうである。

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2020年6月22日 (月)

楽興の時(35) 京都坊主BAR 「MANGETSU LIVE vol.21」 リコーダー:森本英希(テレマン室内オーケストラ)

2020年6月6日 本能寺跡近くの京都坊主バーにて

午後7時から、油小路錦小路上ルにある京都坊主BARで、「MANGETSU LIVE vol.21」を聴く。出演は、テレマン室内オーケストラのフルート奏者である森本英希。リコーダーのコンサート、二部制での上演である。

日本でも小中学校の音楽授業で必携になるなどお馴染みの楽器であるリコーダー。バロック期にはリコーダーの曲が多く書かれたが、古典派の時代に入るとフルートなどの横笛のみが生き残るようになり、リコーダーは忘却の彼方へと押しやられた。リコーダーが復権するのは20世紀に入ってからである。

リコーダーの名手としては後に指揮者として高い評価を得ることになる故フランス・ブリュッヘンが有名である。現役の奏者としては、デンマーク出身のミカラ・ペトリの存在が知られる。


お坊さんの経営するバーということで、知り合いにも何人か会う。


飛沫防止のためのビニールシートを前に垂らしての演奏である。演奏の時は当然ながら無理だが、トークはマスクで顔を覆って行われる。


森本英希は、和歌山県橋本市生まれ。京都市立芸術大学修士課程を修了。フルート、バロックフルート、リコーダーを専攻し、篠笛なども演奏するなど、笛のスペシャリストでもある。2013年に日本フルートコンヴェンションコンクールで第1位を獲得。2017年には京都芸術賞と京都新聞社賞を受賞している。


予定されていた曲目の前に、コロナ禍で亡くなった人を追悼するために「涙のパヴァーヌ」の演奏が行われる。「涙のパヴァーヌ」はフランス・ブリュッヘンのアルバムのタイトルにもなっている曲である。

フランス・ブリュッヘンのリコーダーアルバムの代表作は、自らがリコーダー用に編曲したJ・S・バッハの「無伴奏チェロ組曲」集であるが、今回のコンサートでも、ブリュッヘン編曲版かどうかは定かでないが(聞くのを忘れた)、無伴奏チェロ組曲第1番と第3番が演奏される。

クープランの「恋の鶯」という曲が演奏された他、「ターフェルムジーク」で知られるテレマンのファンタジアよりや、尺八を意識したという日本人作曲家の作品なども演奏された。

リコーダーのみによる演奏会を聴くのは、おそらく今回が初めてのはずで、なかなか貴重な体験である。


ラストもアンコールの代わりに小型のリコーダーによる「涙のパヴァーヌ」が演奏されて、コンサートは締められた。


その後は、森本さんとも少しお話。余り詳しい内容は書けないが、日本における古楽演奏発展の経緯なども教えていただいた。

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2020年1月18日 (土)

楽興の時(34) 「テラの音 vol.28 スペインの風~フラメンコ・ギター・コンサート~」

2020年1月10日 中京区の真宗大谷派小野山浄慶寺にて

午後7時から、京都御苑のそばにある浄慶(じょうきょう)寺で、「テラの音(ね) vol.28 スペインの風~フラメンコ・ギター・コンサート」を聴く。念のため書いておくが「スペイン風邪」ではない。多分、主催者側もスペイン風邪についてよく知らなかったのだと思われる。
出演は、スペイン出身で、今は日本とスペインを行き来しているルシアノ・ゴーン。セカンドギターとして荻野慎也が4曲ほど参加する。

ルシアノ・ゴーンは、1994年生まれという、まだ若いギタリストである。2019年の10月に行われた「Concurso Nino Miguel 2019」で優勝を飾ったばかり。2018年にはスペイン・セビージャのフラメンコギターコンクールで3位に入っている。父親もギタリストであり、幼少時よりギターを父に師事。21歳からスペインのトップギタリストであるアントニオ・レイのセカンドギタリストとして活動を始める。日本人女性と結婚したが、妻の難病療養のために2018年10月に来日し、スペインと日本両国での演奏活動を開始している。

 

曲目は、第1部が、「Entre dos Aguas」(パコ・デ・ルシア作曲)、「Taranta」、「Farruca」、「Tanguillos」、「Bolero」、「Bulerias」(パコ・デ・ルシア作曲)。第2部が、「Granaina」、「Solea por Buleria」、「Guajiras」(パコ・デ・ルシア作曲)、「Alegrias」(パコ・デ・ルシア作曲)、「Zepateado」(パコ・デ・ルシア作曲)、「Rio Ancho」(パコ・デ・ルシア作曲)。

パコ・デ・ルシア作品以外は、ルシアノ・ゴーンの自作自演となる。

ルシアノ・ゴーンは右手と左手の両方で旋律を奏でるなど超絶技巧の持ち主であるが、気負いといったものが感じられず、軽々と楽しそうに演奏する。それが逆に凄みに繋がっている。

日本はフラメンコの盛んな国であり、そのため「スペイン=フラメンコ」というイメージもあるが、実際はフラメンコが盛んなのは南部のアンダルシア地方だけで、同じスペインでも北部に行くと、「フラメンコ? そんなのやるんだ、変わってるね」という風に取られることが多いそうである。スペインはギターの国であるが、作曲家のホアキン・ロドリーゴも、ギタリストのナルシソ・イェペスもクラシックの人であり、フラメンコギターよりもクラシックギターの方が盛んなのかもしれない。

「Bolero」というと、モーリス・ラヴェルの「ボレロ」が有名だが、ルシアノ・ゴーンの「Bolero」はそれとは趣が全く異なる。そもそもラヴェルの「ボレロ」はボレロのリズムで書かれていないのが特徴だったりする。

荻野慎也にソロ演奏を希望する声もあったが、荻野自身が指に問題を抱えているそうで、今はセカンドギタリストとしてのみ活動しているそうである。

休憩時間に浄慶寺の中島住職による法話がある。現世利益について語られ、ゴーンはゴーンでもカルロス・ゴーンの金まみれの生活について、それが資本主義においては正しいとされるのかも知れないが、本来の意味での現世利益に適ったものなのかという疑問が投げかけられた。

 

第2部の冒頭で弾かれた「Granaina」は、2018年にルシアノ・ゴーンが初めて来日し、龍安寺の石庭を訪れた時にインスピレーションを受けて書いた曲だそうである。雪が降っていたそうで、細やかな音型が舞い降りる雪を描写していると思われる繊細な楽曲である。

アンコールでは、パコ・デ・ルシアのルンバをモチーフにした即興をルシアノと荻野の二人で行い、熱い演奏が繰り広げられた。

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