カテゴリー「楽興の時」の40件の記事

2020年10月 8日 (木)

楽興の時(40) 「テラの音 vol.30 秋の風 音の香」@浄慶寺

2020年10月2日 御幸町竹屋町の真宗大谷派浄慶寺にて

午後7時から、京都御苑の近くにある真宗大谷派浄慶(じょうきょう)寺で、「テラの音 vol.30 秋の風 音の香」を聴く。

今回の出演者は、本来なら今年4月の「テラの音(ね)」に出演するはずだったトリオである。コロナの影響で4月の公演は中止となり、半年遅れでようやく「テラの音」のステージに立つことになった。

菅原真依のフルート、野口真央のピアノ、大和のののパーカッションによる演奏。菅原と野口は浄土真宗本願寺派の大学である相愛大学音楽学部の出身。野口真央はピアノの他にエレクトーンも弾き、作・編曲も得意としているということで、ピアノ専攻ではなく創造演奏専攻出身なのかも知れない。菅原と大和は現在、京都市消防音楽隊メンバーとして活動している仕事仲間だそうである。

 

曲目は、前半が日本の作曲家による作品で、久石譲の「Oriental Wind」(サントリー「伊右衛門」CM曲)、秋のうたメドレー(「七つの子」~「夕焼小焼」~「赤とんぼ」)、スピッツの「優しいあの子」、中島みゆきの「糸」、久石譲のジブリメドレー(「カントリー・ロード」~「君をのせて」~「人生のメリーゴーランド」)、葉加瀬太郎の「情熱大陸」。後半は海外の楽曲で、カーペンターズの「Close To You(遙かなる影)」と「トップ・オブ・ザ・ワールド」、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」より「私のお気に入り」、ミュージカル「コーラスライン」より「WHAT I DID FOR LOVE」、ミュージカル「ヘアスプレー」より「Timeless To Me」、ミュージカル「マイ・フェア・レディ」より「踊り明かそう」、スティーヴィー・ワンダーの「Isn't She Lovely」、チック・コリアの「スペイン」

フルートとピアノのデュオはクラシックでもよくあるが、そこにパーカッション(カホンなど)が加わることで、ノリが良くなる。

 

伊右衛門のCM曲である久石譲の「Oriental Wind」。様々な楽器によるバージョンがあるそうで、多くはYouTubeに載っているそうだ。久石譲は来年4月から、大阪を本拠地とする日本センチュリー交響楽団の首席客演指揮者に就任することが決まっているため、関西で聴く機会も今まで以上に増えそうである。

「秋のうたメドレー」は、同じような曲目が毎年「大阪クラシック」のラストコンサートで演奏され、お客さんが歌うことでお馴染みである。今回のコンサートでも「歌ってもいい」ということだったが、コロナということもあり、積極的に歌う人は数人しかいなかった。

「情熱大陸」は演奏の前に、作曲時のエピソードが紹介される。元々は葉加瀬太郎は「情熱大陸」のエンディングテーマである「Etupirka」のみを提供するはずだったのだが、「オープニングも作曲して欲しい、ただし1週間で」という無理な依頼を受け、以前から演奏していた2つの楽曲のAメロとBメロをくっつけて放送用バージョンとし、コンサートなどで演奏されるロングバージョンはその後に作曲されたようである。

 

「私のお気に入り」は、JR東海の「そうだ 京都、行こう。」のCM曲として知られている。私も関東にいる頃はよく見ていた。CMの人気度も一二を争うものであった。
ただ京都に住んでいると「行こうもなにもすでにいる」ため少なくともテレビでは見られない。今はYouTubeなどで手軽に見ることが出来るには出来るのだが、CMというのはわざわざ見るものでもないので、基本的には今どんなCMが流れているのかわからないまま来てしまっている。

 

アンコールは、ナット・キング・コールの「LOVE」。洋楽の中でも洗練された曲目が並んでいるということもあって、お洒落な雰囲気の中で演奏会は終わった。

 

菅原と大和は京都市消防音楽隊のYouTubeに数多く出演しているそうで、アピールすることも忘れなかった。

Dsc_9767

| | コメント (0)

2020年9月 8日 (火)

楽興の時(39) 京都坊主BAR 「MANGETSU LIVE vol.24」(オーボエ:國本恵路)

2020年9月2日 元本能寺の近くの京都坊主BARにて

午後7時から、元本能寺の近くにある京都坊主BARで、「MANGETSU LIVE vol.24」を聴く。今日はオーボエの國本恵路(くにもと・えみ)独奏の演奏会である。

國本恵路は、大阪芸術大学演奏学科オーボエ専攻卒業後、フランスに渡り、更にスイスに移ってチューリッチ芸術大学でもオーボエを修め、同大学の大学院で音楽生理学の基礎コースを修了している。帰国後は合気道を習い、現在は合気道の指導員としても活躍しているという。

飛沫防止用のシートを前にしての演奏。これまで京都坊主BARでは、リコーダー、ヴィオラ、電子チェンバロ、ヴィオラ・ダ・ガンバなどの演奏を聴いてきたが、オーボエが一番音の通りがいい。


スコット・ジョプリンの「ジ・エンターテイナー」のオーボエ独奏版でスタート。合間にトークを入れながらの進行である。今日はマイクが使えるため、トークの内容もよく聞こえる。
「ジ・エンターテイナー」は、1973年公開の映画「スティング」で一躍有名になり、今ではサッカーのサポーターが歌う曲として抜群の知名度を誇っている。

秋をテーマにしたということで、イギリスの作曲家であるジェームズ・オズワルドの「キリンソウ」が演奏される。秋というと日本ではノスタルジックなシーズンというイメージだが、イギリスの曲ということで日本の秋のイメージとは大分異なる。

日本の秋の曲として「夕焼け小焼け」が録音伴奏付きで演奏されるが、やはり日本の秋というと、空が高く澄んでいて、夕焼けが映えてというイメージが浮かびやすい。秋の季語である「月」も歌詞に登場する。中村雨紅の詩は出身地である今の東京都八王子市の夕景を表したものだそうである。國本によると「夕焼け小焼け」のメロディーは草川信が1923年に作り上げたものであるが、この年の9月1日起こった関東大震災によってオリジナルの譜面は焼けてしまったという。ただ友人に写譜を渡していたため、作品自体が灰燼に帰すということは避けられたそうだ。

続いて瀧廉太郎の「荒城の月」が録音伴奏付きで演奏される。1番は歌曲の旋律通り(山田耕筰の編曲に準拠)に吹いたが、その後は崩して歌われ、最後に歌曲のメロディーに戻ってくるという編曲であった。

アンタル・ドラティ作曲の無伴奏オーボエのための5つ小品から「蟻とキリギリス」。
指揮者大国ハンガリー出身の名指揮者として名高いアンタル・ドラティ(ドラーティ・アンタル)。世界初の「ハイドン交響曲全集」を作成し、晩年にデトロイト交響楽団を指揮して録音したストラヴィンスキーの「春の祭典」は名盤中の名盤として知られる。
作曲家や編曲家としても活躍しており、無伴奏オーボエのための5つの小品は、名オーボイストのハインツ・ホリガーのために作曲されたものである。
20世紀の作品だけに音に鋭さがあり、進行も割合複雑である。最後に軽いオチがある。

20世紀のイギリスを代表する作曲家であるベンジャミン・ブリテンの「6つの変容」より。「6つの変容」は、ギリシャ神話に登場する神々にちなんだ曲集で、今日はそのうちの“パン”、“フェイトン”、“アレトゥーサ”にまつわる3曲が演奏された。
ベンジャミン・ブリテンは、生前から「パーセル以来久しぶりに現れたイギリスの天才作曲家」と呼ばれていたが、近年、作品が上演される機会の増えている作曲家の一人であり、才気に満ちた作品の数々が人々を魅了している。

今年の7月に亡くなった映画音楽の大家、エンニオ・モリコーネの「ガブリエルのオーボエ」。録音伴奏付きの演奏である。耳に馴染みやすく、どこか懐かしい甘美で流麗な旋律が魅力的である。

クロード=ミシェル・シェーンベルクの「レ・ミゼラブル」より“夢破れて”。クロード=ミシェル・シェーンベルクは、十二音技法で知られるアーノルト・シェーンベルクの親戚である。
“夢破れて”は、スーザン・ボイルの歌唱で有名になったほか、映画「レ・ミゼラブル」のアン・ハサウェイによる感情を最優先させた歌唱も話題になった。日本語訳詞版を歌う歌手も多く、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の中でもキーになっている曲として人気が高い。嘆きの歌詞を持つだけに、歌だと情感たっぷりとなるが、オーボエで演奏した場合は旋律の美しさが目立つ。

最後はテレマンのファンタジー。「MANGETSU LIVE」はバロック以前の楽曲演奏を主軸とした演奏会であるため、テレマンの楽曲が演奏されることが多いのだが、均整の取れた楽曲は魅力的である。

| | コメント (0)

2020年8月13日 (木)

楽興の時(38) 京都坊主BAR 「MANGETSU BAROQUE NIGHT」 ensemble kreanto(西谷玲子&中野潔子)

2020年8月4日 本能寺跡近くの京都坊主BARにて

午後7時から、元本能寺(本能寺跡地)の近くにある京都坊主BARで、「MANGETSU BAROQUE NIGHT」を聴く。普段はツーステージあるが、今日はワンステージのみである。出演は、ensemble kreanto。

ensemble kreantoは、チェンバロの西谷玲子とヴィオラ・ダ・ガンバの中野潔子によるデュオ。

西谷玲子は、京都市出身。京都市立堀川高校音楽科を経て、京都市立芸術大学ピアノ科を卒業。京都市新人芸術家選奨を受賞している。現在はJEUGIAが経営する京都音楽院の講師として活躍している。

中野潔子は、大阪音楽大学楽理科卒業後、同大学院でも音楽学を学び、現在は京都音楽院などで講師を務めるほか、ヴィオラ・ダ・ガンバのコンサートなども主催している。

 

京都坊主BARに新たに電子チェンバロが入る。私が浜松を訪れた時に訪れた浜松市楽器博物館で弾くことの出来る数少ない楽器展示だった電子チェンバロと同じ種類のものだと思われる。この電子チェンバロシリーズは、「テラの音(ね)」コンサートでも用いられたことがある。新品は高いので中古品を購入したそうだ。

Dsc_9306

出演者が店に到着するまでに時間があったので、チェンバロで少し遊んでみる。J・S・バッハの「平均律クラーヴィア」からプレリュード、坂本龍一の「シェルタリング・スカイ」、サティの「ジムノペディ」第1番などの冒頭を弾き(暗譜していないため)、その後、即興演奏も行って遊ぶ。

 

スピーカーからはいつもバロック音楽が流れているのだが、コレッリの「ラ・フォリア」が流れたので、CDの紙ケースを見せて貰う。リコーダー:フランス・ブリュッヘン、チェロ:アンナー・ビルスマ、チェンバロ:グスタフ・レオンハルトという豪華な顔触れによる演奏である。しかしもう今では全員他界してしまった。

フランス・ブリュッヘンの実演には1度だけ接したことがある。リコーダー奏者ではなく指揮者としてである。自ら結成した十八世紀オーケストラを率いての京都コンサートホールでの来日公演。2003年のことだったと思う。民音(民主音楽協会、創価学会の運営)主催であるため、チケット不買運動が起きていた。
この時はブリュッヘンは体調不良だったようで、演目はベートーヴェンの交響曲第6番「田園」と第5番という王道プログラムであったが、ブリュッヘンらしい覇気と才気には欠けていた。というわけで1980年代から90年代のような好調時のブリュッヘンの演奏には残念ながら接していない。

 

今日はマイクのセッティングがなく、出演者もマスクをしながら喋る必要があるため、説明や曲目紹介などが聞き取りにくい。ただ、いずれも馴染みのない曲が多く、曲名を紹介したところで、こちらもどういう曲なのか上手く説明出来ないため、印象のみを述べることにする。

 

西谷玲子のソロ曲目は聞き取ることが出来、J・S・バッハの「シンフォニア」よりが演奏される。西谷は「調の変化を楽しんで欲しい」と言う。「インヴェンションとシンフォニア」として学習用楽曲として有名であるが、そこは流石にバッハで、平易ではあってもシックな大人の音楽に仕上げている。京都坊主BARは町家を改造したバーであり、シンクな雰囲気がバッハの楽曲にとてもよく合う。

 

中野潔子のヴィオラ・ダ・ガンバの演奏。コロナ禍で海外旅行が出来ないため、せめて音楽の世界だけでも異国に飛ぼうということで、オランダ、イギリスやフランスなどの楽曲が奏でられる。
ガット弦を張ったヴィオラ・ダ・ガンバ(チェロの先祖に当たるが、エンドピンがなく、奏者は両足で楽器を挟んで演奏する)の音色は押しつけがましさがなく、音も漂うような雰囲気があり、光の推移の様が目に見えるかのようである。そういう点においては音楽は絵画の「印象派」を先取りしている。ドビュッシーやラヴェルの音楽は、音楽における印象派と呼ばれているが絵画の印象派とは異なる(ドビュッシーらは印象派ではなく「象徴派」と呼ぶべきだという意見もある)。クロード・モネが描こうとしたような光と時間の移り変わりは、音楽では先に達成されていると見ることも出来るのかも知れない。

 

ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロの楽曲としては珍しい現代の作品の演奏を経て、テレマンの3つあるガンバ・ソナタのうちの一つが演奏される。スケールが大きくリズミカルな曲であり、テレマン自身の自信や誇りが伝わってくるかのようである。
その後の音楽とは価値観が異なる作品が多いが、その時代にマッチし、彩ってきた音楽に触れる贅沢を感じることが出来た。

 

演奏終了後、やっぱりチェンバロを演奏してみたくなったので、先程演奏した曲に加えて、楽譜が置かれていたバッハの「インヴェンションとシンフォニア」第1曲(千葉にいた頃によく弾いた曲だが、譜面がスラスラ読めないようになって来ているので苦戦)、ベートーヴェンの「月光」ソナタの冒頭(暗譜出来ておらず、すぐに行き詰まる)、サティの「グノシェンヌ」第5番の冒頭の右手の旋律、オルガンの音も出せるので、J・S・バッハの「小フーガ」ト短調の冒頭、右手だけの部分などを弾く。もう18年もピアノに向き合っておらず、たどたどしいものにしかならないが、瞬間瞬間で浮かんでくる旋律を音に変えるという即興演奏っぽい遊びを行っている時間は、あるいは私にとって最も幸せな瞬間なのではないかと、高校生の時にふと浮かんだ思いが、デパートの屋上から上がるアドバルーンのように私の頭上でゆらゆら揺れていた。

| | コメント (0)

2020年7月10日 (金)

楽興の時(37) 京都坊主BAR 「MANGETSU LIVE vol.22」 ヴィオラ:田代直子(関西フィルハーモニー管弦楽団)

2020年7月5日 本能寺跡近くの京都坊主BARにて

元・本能小学校の近くにある京都坊主BARで、「MANGETSU LIVE vol.22」が午後2時から初のマチネーで開催されるというので出掛けてみる。

今日はヴィオラ独奏のコンサートである。出演は、関西フィルハーモニー管弦楽団ヴィオラ奏者である田代直子。

田代直子は、京都市立音楽高校(現在は移転して京都市堀川音楽高校になっている)を経て京都市立芸術大学音楽学部ヴァイオリン専攻を卒業。卒業後にヴィオラに転向している。カール・ベームの出身地としても知られるグラーツにあるオーストリア国立グラーツ芸術大学に留学し、学士・修士共に満場一致で最優秀を獲得。帰国後に兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオーケストラ)コアメンバーを経て関西フィルに入団している。

2ステージ制であり、各ステージごとにカンパが行われる。

 

曲目は、ファーストステージが、テレマンのファンタジア第9番、ビーバーの「パッサカリア」、J・S・バッハの無伴奏チェロ組曲第1番(ヴィオラ版)。セカンドステージが、ヘンデルの「私を泣かせてください」(細川俊夫編曲)、パラシュコの「Hunting」、ヴュータンの「Capriccio」、近藤浩平の「いつか夢になる」(ヴィオラ版初演)、J・S・バッハの無伴奏チェロ組曲第5番よりプレリュード。

プレリュードが最後に来るが、コロナ禍の悪夢が「いつか夢になる」と願い、新しい時代の前奏曲を奏でるという意味なのだと私は受け取った。

京都坊主BARのシックな内装もヴィオラの音色にぴったりであり、雰囲気豊かな演奏となる。

「MANGETSU LIVE」は古楽の演奏が中心となるようだが、ヴィオラは古い時代には独奏曲が書かれることは余りなかったそうで、今回は古楽の曲目は抑え気味である。

楽曲解説などのトークの時は、マスクを着けて話すことになるのだが、曲ごとに解説するよりも纏めて話した方が短いので飛沫が飛ぶことも少ないということで、これから演奏する曲目や作曲の由来などを語ってから楽曲を連続で演奏するというスタイルを取る。

 

前回のリコーダーの演奏会でも取り上げられたテレマンのファンタジアからの1曲でスタートする。

 

バロックヴァイオリンの異才、ビーバーは名人芸を駆使した軽快な楽曲で知られるが、「パッサカリア」はスケール豊かな深遠な楽曲である。

 

J・S・バッハの無伴奏チェロ組曲のヴィオラ版は、日本が誇る世界的ヴィオラ奏者である今井信子も録音しており、ヴィオラ独奏版も「比較的」ではあるが聴く機会は多い。

 

ヘンデルの「私を泣かせてください」。ソプラノ歌手の森麻季が得意としている楽曲で、コロナ禍の終息を願い、彼女自身のインスタライブでこの曲のオルガン弾き語りを配信していたりしたが、今回演奏されるのは日本を代表する作曲家である細川俊夫によるヴィオラ独奏のための編曲である。
序奏を含めての編曲で、当然ながらヴィオラの音の深さを生かした仕上がりとなっている。

パラシュコはヴィオラの教本を多く書いているドイツの作曲家のようである。「Hunting」はタイトル通り軽快な曲想である。

 

ヴュータンの「Capriccio」。
ベルギー・フランス語圏に生まれ、フランスで活躍したヴュータン。作曲家としてもそこそこ有名であるが、当時屈指のヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリニストとして、またイザイらを生み出したヴァイオリンの名教師としてその名を轟かせていた。「Capriccio」はヴュータンの遺作だそうで、遺作がヴィオラの作品となった作曲家はたまたまだと思われるが何人かいるそうである。
19世紀を生きたヴュータンであるが、「Capriccio」は古典的な造形美を誇る作品であり、高雅さと哀切さとが、高い次元で織り上げられている名品である。

 

近藤浩平の「いつか夢になる」は、コロナ禍で演奏活動が難しくなった数多くの演奏家のために書かれた独奏曲である。元々はソプラノ独唱のために書かれたが、多くの独奏楽器のために編曲されており、ヴィオラ版全編の会場での上演は今日が初めてとなるそうだ。三部構成で、ヴィオラで聴くと、最初とラストに祈りに満ちた旋律が奏でられるように聞こえる(歌唱バージョンの森永かず子の詩を読むとまた違った内省と無常と憂いの強い印象である)。
ちなみにヴィオラ抜粋版のWeb初演を行ったのは、グラーツ・フィルハーモニー管弦楽団のヴィオラ奏者であるカール・スミスだそうで、田代とはグラーツ繋がりとなる。

作曲者の近藤浩平も京都坊主BARに駆けつけており、拍手を受けた。

 

ラスト。コロナ禍で自粛生活が続き、第二波が来そうな予感もあるが、再び音楽活動が自粛とならないよう願いと希望を込めたかのようなプレリュードの演奏となる。重苦しさを情熱で打破していくような印象を受けた。

 

知り合いも多く来ていたので、終演後にお喋り。みんなで乾杯する時に、なぜかヴェルディの「乾杯の歌」をスマホの歌詞を見ながらアカペラで歌うことになったりする。

 

| | コメント (0)

2020年7月 7日 (火)

楽興の時(36) 「テラの音」特別版「今こそ、みんなの力で」

2020年7月3日 中京区の真宗大谷派小野山浄慶寺にて

京都御苑の近くにある真宗大谷派小野山浄慶(じょうきょう)寺で久しぶりに「テラの音(ね)」を聴く。今回はコロナ対策として特別版「今こそ、みんなの力で」と銘打たれ、普段は予約不要であるが要予約、来場者も20名までに限られる。風通しを良くするため本堂の障子が開け放たれており、雨音が良く響く。自然の通奏低音との共演である。

今回の出演者は、「テラの音」共同主催者で企画担当でもあるヴァイオリニストの牧野貴佐栄(きさえ)と、実妹のmarie(ピアノ&ヴォーカル)のデュオ。姉妹であるため顔は同傾向ではあるが、髪型、髪の色、衣装全て大きく異なる。性格もかなり違うはずである。多分であるが、兄弟姉妹は性格が違うほど仲は良くなる傾向がある、と思われる。

オープニングとして姉の牧野貴佐栄のヴァイオリン独奏で、J・S・バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番より「プレリュード」と「ガボット」が弾かれる。

その後は姉妹デュオで、「Hallelujah~ハレルヤ~」、「Cannon Rock」(パッヘルベルの「カノン」の編曲)、ビートルズナンバーの「Oh! Darling」、「G線上のアリア」、イーグルスの「Desperado~ならず者~」、「希望の讃歌」、葉加瀬太郎の「情熱大陸」の演奏。

「希望の讃歌」は譜面が出版されていないため、耳コピで演奏にまで漕ぎ着けたそうである。

通常の「テラの音」は2時間ほどの上演時間であるが、今日は1時間ほどの短縮バージョン。開演時間もいつもの7時から7時半に遅らせている。雨でヴァイオリンの調子が余り良くないようだが、ノリの良い演奏が聴かれる。
ちなみに現地での聴衆の数が限られるということで、来られない人のために今回の「テラの音」はFacebookでライブ配信がなされた。

コロナでの自粛期間は姉妹で実家(名古屋だと思われる)に戻って過ごしたそうで、仕事も演奏会も飛んでしまったが、姉妹で練習する時間が持てたそうである。

 

アンコール演奏は、ジョン・レノンの「Imagine」。合唱はまだ危険とされているため、歌詞カードは印刷されていたが、聴衆は心の中で歌うに留める。

 

最後は、浄慶寺の中島浩彰住職による法話。実はコロナ対策として叫ばれている「三密」が元は仏教用語であり、「身密・口密・意密」の三つからなるもので、身体・行動、言葉・発言、意思・心の三つが整うととても良いのだが、新型コロナのためにそれが難しくなっている。移動行動が制限されているため祖母が孫に会えないということがあったり、ネット上での口撃で女子プロレスラーが自殺してしまったりという痛ましい出来事があったりした。
ただ、自粛期間に普段出来ないことする時間が生まれるなど、良いこともあるという話にもなる。住職は掃除が捗ったり、家族の時間を持つことが出来たそうである。

Dsc_9074

| | コメント (0)

2020年6月22日 (月)

楽興の時(35) 京都坊主BAR 「MANGETSU LIVE vol.21」 リコーダー:森本英希(テレマン室内オーケストラ)

2020年6月6日 本能寺跡近くの京都坊主バーにて

午後7時から、油小路錦小路上ルにある京都坊主BARで、「MANGETSU LIVE vol.21」を聴く。出演は、テレマン室内オーケストラのフルート奏者である森本英希。リコーダーのコンサート、二部制での上演である。

日本でも小中学校の音楽授業で必携になるなどお馴染みの楽器であるリコーダー。バロック期にはリコーダーの曲が多く書かれたが、古典派の時代に入るとフルートなどの横笛のみが生き残るようになり、リコーダーは忘却の彼方へと押しやられた。リコーダーが復権するのは20世紀に入ってからである。

リコーダーの名手としては後に指揮者として高い評価を得ることになる故フランス・ブリュッヘンが有名である。現役の奏者としては、デンマーク出身のミカラ・ペトリの存在が知られる。


お坊さんの経営するバーということで、知り合いにも何人か会う。


飛沫防止のためのビニールシートを前に垂らしての演奏である。演奏の時は当然ながら無理だが、トークはマスクで顔を覆って行われる。


森本英希は、和歌山県橋本市生まれ。京都市立芸術大学修士課程を修了。フルート、バロックフルート、リコーダーを専攻し、篠笛なども演奏するなど、笛のスペシャリストでもある。2013年に日本フルートコンヴェンションコンクールで第1位を獲得。2017年には京都芸術賞と京都新聞社賞を受賞している。


予定されていた曲目の前に、コロナ禍で亡くなった人を追悼するために「涙のパヴァーヌ」の演奏が行われる。「涙のパヴァーヌ」はフランス・ブリュッヘンのアルバムのタイトルにもなっている曲である。

フランス・ブリュッヘンのリコーダーアルバムの代表作は、自らがリコーダー用に編曲したJ・S・バッハの「無伴奏チェロ組曲」集であるが、今回のコンサートでも、ブリュッヘン編曲版かどうかは定かでないが(聞くのを忘れた)、無伴奏チェロ組曲第1番と第3番が演奏される。

クープランの「恋の鶯」という曲が演奏された他、「ターフェルムジーク」で知られるテレマンのファンタジアよりや、尺八を意識したという日本人作曲家の作品なども演奏された。

リコーダーのみによる演奏会を聴くのは、おそらく今回が初めてのはずで、なかなか貴重な体験である。


ラストもアンコールの代わりに小型のリコーダーによる「涙のパヴァーヌ」が演奏されて、コンサートは締められた。


その後は、森本さんとも少しお話。余り詳しい内容は書けないが、日本における古楽演奏発展の経緯なども教えていただいた。

| | コメント (0)

2020年1月18日 (土)

楽興の時(34) 「テラの音 vol.28 スペインの風~フラメンコ・ギター・コンサート~」

2020年1月10日 中京区の真宗大谷派小野山浄慶寺にて

午後7時から、京都御苑のそばにある浄慶(じょうきょう)寺で、「テラの音(ね) vol.28 スペインの風~フラメンコ・ギター・コンサート」を聴く。念のため書いておくが「スペイン風邪」ではない。多分、主催者側もスペイン風邪についてよく知らなかったのだと思われる。
出演は、スペイン出身で、今は日本とスペインを行き来しているルシアノ・ゴーン。セカンドギターとして荻野慎也が4曲ほど参加する。

ルシアノ・ゴーンは、1994年生まれという、まだ若いギタリストである。2019年の10月に行われた「Concurso Nino Miguel 2019」で優勝を飾ったばかり。2018年にはスペイン・セビージャのフラメンコギターコンクールで3位に入っている。父親もギタリストであり、幼少時よりギターを父に師事。21歳からスペインのトップギタリストであるアントニオ・レイのセカンドギタリストとして活動を始める。日本人女性と結婚したが、妻の難病療養のために2018年10月に来日し、スペインと日本両国での演奏活動を開始している。

 

曲目は、第1部が、「Entre dos Aguas」(パコ・デ・ルシア作曲)、「Taranta」、「Farruca」、「Tanguillos」、「Bolero」、「Bulerias」(パコ・デ・ルシア作曲)。第2部が、「Granaina」、「Solea por Buleria」、「Guajiras」(パコ・デ・ルシア作曲)、「Alegrias」(パコ・デ・ルシア作曲)、「Zepateado」(パコ・デ・ルシア作曲)、「Rio Ancho」(パコ・デ・ルシア作曲)。

パコ・デ・ルシア作品以外は、ルシアノ・ゴーンの自作自演となる。

ルシアノ・ゴーンは右手と左手の両方で旋律を奏でるなど超絶技巧の持ち主であるが、気負いといったものが感じられず、軽々と楽しそうに演奏する。それが逆に凄みに繋がっている。

日本はフラメンコの盛んな国であり、そのため「スペイン=フラメンコ」というイメージもあるが、実際はフラメンコが盛んなのは南部のアンダルシア地方だけで、同じスペインでも北部に行くと、「フラメンコ? そんなのやるんだ、変わってるね」という風に取られることが多いそうである。スペインはギターの国であるが、作曲家のホアキン・ロドリーゴも、ギタリストのナルシソ・イェペスもクラシックの人であり、フラメンコギターよりもクラシックギターの方が盛んなのかもしれない。

「Bolero」というと、モーリス・ラヴェルの「ボレロ」が有名だが、ルシアノ・ゴーンの「Bolero」はそれとは趣が全く異なる。そもそもラヴェルの「ボレロ」はボレロのリズムで書かれていないのが特徴だったりする。

荻野慎也にソロ演奏を希望する声もあったが、荻野自身が指に問題を抱えているそうで、今はセカンドギタリストとしてのみ活動しているそうである。

休憩時間に浄慶寺の中島住職による法話がある。現世利益について語られ、ゴーンはゴーンでもカルロス・ゴーンの金まみれの生活について、それが資本主義においては正しいとされるのかも知れないが、本来の意味での現世利益に適ったものなのかという疑問が投げかけられた。

 

第2部の冒頭で弾かれた「Granaina」は、2018年にルシアノ・ゴーンが初めて来日し、龍安寺の石庭を訪れた時にインスピレーションを受けて書いた曲だそうである。雪が降っていたそうで、細やかな音型が舞い降りる雪を描写していると思われる繊細な楽曲である。

アンコールでは、パコ・デ・ルシアのルンバをモチーフにした即興をルシアノと荻野の二人で行い、熱い演奏が繰り広げられた。

Dsc_8445

| | コメント (0)

2019年10月13日 (日)

楽興の時(33) 「テラの音 Vol.27 ~洋楽と邦楽の世界~」

2019年10月4日 京都市中京区の真宗大谷派浄慶寺にて

午後7時から、御所の南にある真宗大谷派小野山浄慶(じょうきょう)寺で「テラの音(ね) Vol.27 ~洋楽と邦楽の世界~」を聴く。タイトルにある通り、クラシックと邦楽のジョイントが行われる。出演者は、「テラの音」共同主宰兼企画担当ででヴァイオリニストである牧野貴佐栄(ヤマハ音楽教室ヴァイオリン講師)、ピアニストの森麻衣子、歌・三絃の佐藤文岳晶(本名と作曲家・編曲家としての名前は佐藤岳晶)。

曲目は、シューベルトのヴァイオリン・ソナタ第3番、木ノ本屋巴遊作曲の地歌「葵の上」、クライスラーの「愛の喜び」、玉岡検校作曲の地歌「鶴の声」(ヴァイオリンパート作曲:初代中尾都山。改訂:佐藤岳晶)、佐藤岳晶の「黒髪」、湖出市十郎作曲の地歌「黒髪」、幸田延のヴァイオリンソナタ第2番ニ短調。

幸田延のヴァイオリン・ソナタニ短調は最近、医師免許を持つプロヴァイオリニストとして知られる石上真由子がCDをリリースしており、まだ買っていないがいずれは買って聴いてみようと思っている。

 

牧野貴佐栄は、名古屋市立菊里高校音楽科を経て同志社女子大学音楽学科を卒業しているが、森麻衣子も同じ名古屋市内にある愛知県立明和高校音楽科を経て同志社女子大学音楽学科を卒業という似た経歴を持っている。前回に「テラの音」に出た時は、富山市にある桐朋学園大学院大学(2017年に東京の調布市にある桐朋学園大学の本部にも大学院が出来たのでややこしいことになっている)に在学中だったが、現在は修了しており、関西での音楽活動や音楽教室での指導を行っているようだ。ピアノを田部京子や岡田博美に師事、室内楽を藤原浜雄や川久保賜紀に師事している。来年の2月には上桂にある青山音楽記念館バロックザールでリサイタルを行う予定である。

佐藤文岳晶/佐藤岳晶は、地歌箏曲を二代米川文子に指示しているが、幼少時から西洋音楽を学び、桐朋学園大学ピアノ専攻卒業、パリ国立音楽院エクリチュール(作曲理論)科を修了しており、西洋音楽を学んでいた時間の方が長いようである。現在は京都女子大学准教授、桐朋学園大学院大学ほかの非常勤講師を務めている。

 

シューベルトのヴァイオリン・ソナタ第3番。シューベルトが愛用してた眼鏡は今丁度大阪の国立国際博物館に展示中なのでタイムリーである(?)。
典雅さと毒々しさの両方を持つシューベルトの個性は、この曲でも良く発揮されている。この曲の調性はト短調で、モーツァルトがキラーコンテンツとしてきた調性であるが、モーツァルトよりもベートーヴェンに近く聞こえるのは、第3楽章の旋律のせいもあるだろう。

 

地歌「葵の上」は、カットを入れたバージョンでの上演である。葵の上に嫉妬した六条御息所の心情が語られる。

 

牧野貴佐栄によると、日本の洋楽の黎明期には、西洋の音楽と邦楽が同じ演奏会の中で演奏されることの方が多かったそうで(確かに上野の旧東京音楽学校奏楽堂なんかはそんなイメージがある)、今回のコンサートではその再現を試みたそうである。

 

休憩時間に浄慶寺の中島浩彰住職による法話がある。仏教というと、今は「葬式仏教」のイメージが強いが、お釈迦様は勿論、日本の各宗派の開祖もお葬式については何も唱えておらず、仏教は生きる苦しみから逃れるために始まったと語る。
西洋の宗教や科学もその点は同じであり、根底の部分は仏教とよく似ているのだが、西洋は蓄えたデータを客観的に分析し、仏教は解析するのではなく「自分」「私」の主観でそれを捉えるという違いがあると結論づけていた。

 

クライスラーの「愛の喜び」。実は、今日のプログラム最後の曲の作者である幸田延は、クライスラーも師事していたヨーゼフ・ヘルメスベルガーⅡ世(「悪魔の踊り」などの作曲家としても知られている)にヴァイオリンを師事していたそうで、そのためにクライスラー作品が取り上げられるようになったそうだ。
技術面では結構怪しい部分もあったりするのだが、このコンサートはそういうことを気にする場ではない。

 

地歌「鶴の声」では、元々尺八のために書かれた旋律を、初代中尾都山がヴァイオリン用に編曲したものが奏でられる。「美しき天然」だとか「宵待草」などに繋がる懐かしさがヴァイオリンの音色から感じられる。
「鶴の声」は、形こそ違うがクライスラーと同じ「愛の喜び」を題材とした歌であり(鶴は千年といいます、共に白髪になるまで一緒にいましょうという歌詞を持つ)、そのために続けてプログラミングされたことが明かされた。

 

佐藤岳晶の「黒髪」は、元々は佐藤が米良美一のために石牟礼道子の詩に曲をつけたものだそうだが、今回は佐藤本人がヴァイオリンとピアノのための編曲した者ものが演奏される。サビの部分でのヴァイオリンのピッチカートが効果的である。

 

地歌「黒髪」。3人が勢揃いしての演奏である。ヴァイオリン・パートはやはり初代中尾都山が尺八用のものをヴァイオリン用に編曲したものが用いられる。ピアノ・パートは佐藤が作曲したものが演奏される。
地歌とヴァイオリンは昔から演奏されてきたものであるが、ピアノは佐藤に手によるものということで新しい印象を受ける。地歌とヴァイオリンに連れず離れずで、浮遊感を持つピアノは、日本に於けるフランス音楽受容に多大な貢献を行った橋本國彦作品に通ずるところがあるように思う。そういえば佐藤はパリ国立音楽院出身なのだった。

 

幸田延のヴァイオリン・ソナタ第2番ニ短調。幸田姉妹の姉である幸田延。幸田露伴の妹である。日本のクラシック音楽受容最大の貢献者の一人であり、瀧廉太郎や山田耕筰らを育てたことでも知られる。
ちなみに、せいぜい150年程度でしかない日本のクラシック音楽の歴史上に、実は「幸田姉妹」は二組いる。まずは幸田延と幸田幸(結婚後は安藤幸)の幸田姉妹、そして現役である幸田さと子と幸田浩子の幸田姉妹である。幸田というのは珍しい苗字ではないがありふれているわけでもない。二組の間に血縁関係はなく、かなり面白い偶然である。
2曲のヴァイオリン・ソナタはいずれも幸田延のウィーン留学中に書かれたそうで、ドイツ的な趣を持つとされるが、聴いてみると結構なド演歌で、西洋人が聴いたら「日本人の作品」とすぐに見破られそうな気もする。日本人としては幸運なことにド演歌であったため旋律も覚えやすく、展開もわかりやすくて十分に楽しむことが出来た。

演奏会が終わって、そのまま帰ろうとしたのだが、住職の小学生の娘さん二人が電子ピアノで遊んでいる音がしたので、引き返してピアノで少し遊ぶ。上手く弾ければ良かったのだが、練習をしていないため、暗譜が出来ていない。ということで何曲かの冒頭だけ弾いて遊んだ。

Dsc_7553

 

| | コメント (0)

2019年10月 5日 (土)

楽興の時(32) 真宗大谷派唯明寺 「テラの音 vol.6」 アンサンブル・ヴェルデ

2019年9月26日 京都・紫野の真宗大谷派唯明寺にて

午後7時から、紫野にある唯明寺(ゆいみょうじ)で、「テラの音 vol.6」を聴く。「テラの音(ね)」はその寺院で行った回数をナンバーとして振っており、唯明寺で行うのが6回目ということで、「テラの音」というイベント自体はもっと数多く行われている。
「テラの音」は、真宗大谷派の寺院で行われることが多いが、唯名寺も真宗大谷派であり、節談説教を行うことでも知られる亀田晃巖住職は、真宗大谷派山城第2組(そ)の組長(そちょう)でもある。

今回は、同志社女子大学音楽学科OGによって結成されたコーラスグループ、アンサンブル・ヴェルデ(松田慶子、高畠菫、大西奈絵、田中美緒、横井優夏、村上友理、岸田典子)による合唱の公演である。「テラの音」企画発案担当で、ヴァイオリニストの牧野貴佐栄(まきの・きさえ)も同志社女子大学音楽学科OGであり、今は同校の非常勤嘱託職員などもしているため、仲間内での公演となる。

アンサンブル・ヴェルデは、「リラックスさせたり癒やしたりする“緑”のようにフレッシュな音楽を届けよう」ということで名付けられたようだが、チラシに書かれた文章の文字が小さかったため、亀田住職は、「緑(みどり)」ではなく「縁(えん)」と読み間違えて紹介していた。東京ヴェルディというチームがあるため、サッカーに興味のある人はヴェルデがイタリア語で緑という意味だと知っているのだが、亀田住職はサッカーには詳しくはなかったようである。
アンサンブル・ヴェルデというグループ名だからといって、普段は緑の衣装で合わせるということはないのだが、今日は特別に緑系や青系というそれらしいドレスでまとめてきたそうだ。

 

「ボス」と呼ばれているピアニストの岸田典子がアンサンブル・ヴェルデの結成者なのだが、岸田は今年35歳で、他のメンバー6人は8歳下だそうである。岸田が同志社女子大学卒業後に、同志社女子大学声楽専攻の助手として合唱のピアノ伴奏をすることがあったのだが、そこで目に付いた6人をスカウトして結成されたのがアンサンブル・ヴェルデだそうである。個性的な子を揃えたいというので、「声が良く出る」、「面白い」、「笑顔が良い」など、一芸に秀でた子を選んだようだ。メンバーは普段は学校の先生をしていたり、OLだったりと、普通の社会人生活を送っているそうである。

 

曲目は、第1部が、「めばえ」、「おんがく」、「犬がしっぽをみて歌う歌」、「秋」、「雪の街」、「夢みたものは」、「鴎」(以上、木下牧子作曲)。源田俊一郎編曲の「女声合唱のための唱歌メドレー」(「故郷」~「春の小川」~「朧月夜」~「鯉のぼり」~「茶摘」~「夏は来ぬ」~「我は海の子」~「村祭り」~「紅葉」~「冬景色」~「雪」~「故郷」~)。
第2部は、ボブ・チルコットの「A Littele Jazz Mass」、岸田典子のピアノ独奏による「里の秋」、瀬戸内寂聴作詞・千原英喜作曲による女声合唱とピアノのための組曲「ある真夜中に」

「めばえ」を無伴奏の合唱で歌った後、メンバーの一人一人が独唱という形で木下牧子の作品を歌っていく。アンサンブル・ヴェルデは来年、大阪府高石市のアプラたかいし小ホールでソロコンサートを行う予定があるのだが、そこでも木下牧子作品を取り上げる予定である。
コーラスグループのメンバーということで、独唱だと弱い感じは否めないが、メンバー紹介としての効果はある。

女声合唱のための唱歌メドレーは、寺院で歌われるのに雰囲気的にも合っており、美しい歌声が堂に満ちた。

ボブ・チルコットの「A Littele Jazz Mass」は、文字通りジャズ風のミサ曲である。想像通りノリの良い曲であった。

「A Littele Jazz Mass」は、高音が多用されるため、歌手達の喉を休めるために岸田典子がジャズ編曲による「里の秋」を弾く。岸田は、「秋ですので美味しいものを食べて肥えて」と冗談を言っていた。折角ダイエットに成功したのに、このところ美味しいものばかり食べていたせいで、また体重が増えてしまったらしい。

 

瀬戸内寂聴の作詞、千原英喜の作曲による女声合唱とピアノのための組曲「ある真夜中に」。“愛から悩みが生まれて”“この星に生まれて”“寂庵の祈り”“ある真夜中に”の4曲からなる。3曲目の“寂庵の祈り”は、以前にも「テラの音」で取り上げられたことがある。愛の業が全体を貫くキーとなっているようだ。

 

アンコールとして小田美貴作曲、信長貴富編曲の「群青」が歌われる。東日本大震災に被災した南相馬市立小高中学校の卒業生と、同校音楽教諭の小田美貴がそれぞれを思いを綴ることで作詞された作品である。卒業式のために作曲された作品ということもあって、学園ソング的な歌詞とメロディーで、奪われることになった南相馬での青春の思い出が歌われている。

Dsc_7493

 

| | コメント (0)

2019年7月13日 (土)

楽興の時(31) そうだ!お寺に行こう!プロジェクト「テラの音 -音のつなぐ世界-」

2019年7月5日 京都市中京区の真宗大谷派浄慶寺にて

午後7時から、京都御苑の近くにある真宗大谷派浄慶寺で、そうだ!!お寺に行こう!プロジェクト「テラの音(ね) -音のつなぐ世界-」を聴く。

お寺で行われるコンサート企画「テラの音」。今回は、姫路で活躍しているデュオ、ソードフィッシュを招いて行われる。メンバーは、ピアノの澤崎美重子とカホン&パーカッションの岩井利之。

曲目は、澤崎美重子のオリジナルである「ピアノ フラメンコ」、ピアソラの「リベルタンゴ」、中森明菜のナンバーである「ミ・アモーレ」、ユーミンの「あの日に帰りたい」、「チムチムチェリー」、「チュニジアの夜」(ジャンベバージョン)、「組曲」、一青窈の「ハナミズキ」、澤崎美重子のオリジナルである「千の願いが叶うなら」、中島みゆきの「糸」、サザンの「いとしのエリー」、椎名林檎の「丸の内サディスティック」、「チュニジアの夜」(カホンバージョン)、ゴダイゴの「銀河鉄道999」、葉加瀬太郎の「情熱大陸」。「情熱大陸」では、テラの音主催である牧野貴佐栄がヴァイオリンソロを奏でる。

 

澤崎美重子は、神戸山手女子短期大学器楽専攻ピアノ科を卒業後、ピアノ&キーボード奏者、作編曲家として活動を行っており、地元である姫路市内各所や関西一円で音楽活動を行っている。
岩井利之は、アン・スクール・オブ・コンテンポラリーミュージック卒業後に上京。ドラマーとして活動し、現在は出身地である高砂市に戻って、昨年末にソードフィッシュを結成している。

 

ポピュラーを中心としたプログラムであり、切れが良くノリノリの演奏となる。
ピアソラの「リベルタンゴ」は、近年人気の楽曲であるが、主旋律をピアノ(アコースティックのピアノを置くスペースはないのでローランドのキーボードで代用)で奏でるバージョンを聴くのは久しぶりである。1998年頃だったか、タワーレコードの渋谷店クラシック売り場で、今はイタリアで活躍するピアニストの黒田亜樹がストアイベントで弾いていたのを聴いた記憶がある。

 

中森明菜の「ミ・アモーレ」は、インストゥルメンタルでの演奏であるため、「赤い鳥逃げた」という曲名であっても構わないものになっている。

「ハナミズキ」「千の願いが叶うなら」「糸」では澤崎美重子がボーカルも担当。「あくまでピアニストでボーカリストではありません」と断りを入れてからの歌唱。声も余り出ていないし、音程も時折不安定になるが、「ハナミズキ」は新垣結衣よりは上手いんじゃないかな。褒め言葉になっていないけれど。
「千の願いが叶うなら」は、澤崎美重子の作詞作曲で、「千」というのは姫路城西の丸で本多忠刻との結婚生活を送っていたこともある千姫(徳川家康の孫娘。秀忠とお江の方の長女。最初の夫である豊臣秀頼とも二度目の夫である本多忠刻とも早くに死に別れるという数奇な人生をたどった)のことだそうである。

アンコールでは「ルパン三世」が演奏された。

 

| | コメント (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

2346月日 DVD YouTube …のようなもの いずみホール おすすめCD(TVサントラ) おすすめサイト おすすめCD(クラシック) おすすめCD(ジャズ) おすすめCD(ポピュラー) おすすめCD(映画音楽) お笑い その日 びわ湖ホール アニメ・コミック アニメーション映画 アメリカ アメリカ映画 イギリス イギリス映画 イタリア イタリア映画 ウェブログ・ココログ関連 オペラ カナダ グルメ・クッキング ゲーム コンサートの記 コンテンポラリーダンス コンビニグルメ サッカー ザ・シンフォニーホール シアター・ドラマシティ シェイクスピア シベリウス ショートフィルム ジャズ スタジアムにて スペイン スポーツ ソビエト映画 テレビドラマ デザイン トークイベント ドイツ ドキュメンタリー映画 ニュース ノート ハイテクノロジー バレエ パソコン・インターネット パフォーマンス パーヴォ・ヤルヴィ ピアノ ファッション・アクセサリ フィンランド フェスティバルホール フランス フランス映画 ベルギー ベートーヴェン ポーランド ミュージカル ミュージカル映画 ヨーロッパ映画 ラーメン ロシア ロームシアター京都 中国 中国映画 交通 京都 京都コンサートホール 京都フィルハーモニー室内合奏団 京都劇評 京都四條南座 京都国立博物館 京都国立近代美術館 京都市交響楽団 京都文化博物館 京都芸術センター 京都芸術劇場春秋座 伝説 住まい・インテリア 余談 兵庫県立芸術文化センター 動画 千葉 南米映画 占い 台湾映画 史の流れに 哲学 大河ドラマ 大阪 大阪フィルハーモニー交響楽団 大阪松竹座 学問・資格 宗教 室内楽 小物・マスコット・インテリア 広上淳一 心と体 恋愛 意識について 携帯・デジカメ 政治・社会 教育 散文 文化・芸術 文学 文楽 旅行・地域 日本映画 日記・コラム・つぶやき 映像 映画 映画音楽 映画館 書店 書籍・雑誌 書籍紹介 朗読劇 来日団体 東京 梅田芸術劇場メインホール 楽興の時 歌舞伎 正月 歴史 海の写真集 演劇 無明の日々 猫町通り通信・鴨東記号 祭り 笑いの林 第九 経済・政治・国際 絵画 美容・コスメ 美術 美術回廊 習慣 能・狂言 花・植物 芸能・アイドル 落語 街の想い出 言葉 趣味 追悼 邦楽 配信ライブ 野球 関西 雑学 雑感 韓国 韓国映画 音楽 音楽劇 音楽映画 食品 飲料 香港映画