カテゴリー「京都市交響楽団」の234件の記事

2023年2月 1日 (水)

コンサートの記(824) 鈴木優人指揮 京都市交響楽団第674回定期演奏会

2023年1月21日 京都コンサートホールにて

午後2時30分から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団の第674回定期演奏会を聴く。指揮は古楽界のサラブレッドでもある鈴木優人。

バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の首席指揮者としてもお馴染みの鈴木優人だが、今回は20世紀に書かれたロシアの作品が並ぶ。プロコフィエフの交響曲第1番「古典交響曲」、ストラヴィンスキーの弦楽のための協奏曲ニ調、ラフマニノフの交響曲第2番。全員、亡命経験がある。


午後2時頃より、ステージ上で鈴木優人によるプレトークがある。鈴木は、今日の作曲家を若い順に並べたこと、また年の差が9歳ずつであることなどを述べ、プロコフィエフやストラヴィンスキーの一筋縄ではいかない諧謔性、そしてラフマニノフの交響曲第2番の美しさ、特に第3楽章の美しさについて語った。


今日のコンサートマスターは、京響特別客演コンサートマスターである会田莉凡。フォアシュピーラーに泉原隆志が入る。ドイツ式の現代配置をベースにしているが、ティンパニは指揮者の正面ではなくやや下手寄りに入り、その横に打楽器群が来る。
フルート首席奏者の上野博昭は、プロコフィエフとラフマニノフの両方に出演。クラリネット首席の小谷口直子は、美しいソロのあるラフマニノフのみの参加である。


プロコフィエフの交響曲第1番「古典交響曲」。鈴木の才能が飛び散る様が見えるような、生気に満ちた演奏となる。弦は軽みがあり煌びやか、管も軽快で、プロコフィエフがこの交響曲に込めた才気がダイレクトに伝わってくるような演奏である。


ストラヴィンスキーの弦楽のための協奏曲ニ調。
迷宮を進んでいくような第1楽章、華やかで祝典的だがどことなく陰りもある第2楽章。再び迷宮へと迷い込んだような第3楽章が緻密に演奏された。


ラフマニノフの交響曲第2番。鈴木らしい「気品」をもって演奏されるが、時に「荒ぶる」と書いてもいいほどの盛り上がりを見せる。「上品」と「豪快」の二項対立を止揚したようなラフマニノフであり、単に美しいだけでないパワフルさが示される。
第3楽章の小谷口直子のソロも理想的。こぼれそうな美音が憂いを込めて演奏される。無常観を砂糖でくるんだような甘悲しさが耳を満たす。
第4楽章の爆発力も素晴らしく、この曲が20世紀の大交響曲(良い意味でも悪い意味でも)であることが如実に示された。優れたラフマニノフ演奏であった。

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2023年1月12日 (木)

コンサートの記(822) 広上淳一指揮 京都市交響楽団特別演奏会「ニューイヤーコンサート」2023

2023年1月8日 京都コンサートホールにて

午後2時30分から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団特別演奏会「ニューイヤーコンサート」を聴く。指揮は広上淳一。

前半は、NHK大河ドラマのテーマ曲とヨハン・シュトラウスⅡ世の作品を並べた曲目で、後半のメインにはベートーヴェンの交響曲の中でも最も快活な第8番が選ばれている。

前半の詳細な曲目は、佐藤直紀の「青天を衝け」、ヨハン・シュトラウスⅡ世の喜歌劇「ジプシー男爵」から入場行進曲、ジョン・グラムの「麒麟がくる」、ヨハン・シュトラウスⅡ世の「南国のばら」、服部隆之の「真田丸」(ヴァイオリン独奏:石田泰尚)、エバン・コールの「鎌倉殿の13人」、ヨハン・シュトラウスⅡ世のポルカ「ハンガリー万歳」、吉俣良の「篤姫」。

今日のコンサートマスターは、「組長」こと石田泰尚。泉原隆志は降り番で、フォアシュピーラーに尾﨑平。今日は短めの曲が並ぶということもあって、管楽器奏者に前後半で目立った異動はなし。男性奏者は普段通りの服装の人が大半だが、女性奏者は思い思いにドレスアップして演奏する人が多く、中には着物姿で演奏する人もいる。


NHK職員の息子で、自称「大河フェチ」の広上淳一。大河ドラマのテーマ曲を集めた演奏会はこれまで何度か行っているが、自身が大河本編で指揮した「麒麟がくる」を始め、京響で初めて振る曲が3曲ある。いずれも共感に満ちたスケールの大きな演奏で、聴き応えがある。私は、今日取り上げれた大河ドラマのうち3作品は全編見ているので、オープニングの映像や名場面などが脳裏に浮かんで懐かしかった。残る2つも多くの回は見ている。

ヨハン・シュトラウスⅡ世の作品は、活気と上品さと華やかさが統合された理想的な演奏である。


後半、ベートーヴェンの交響曲第8番。ベートーヴェンの交響曲の中では人気が余り高くない曲だが、ベートーヴェン本人は自身の交響曲の中でこの第8番が最も好きだと答えており、この交響曲だけ誰にも献呈されていない。

広上指揮する京響は、第1楽章と第2楽章は自然体。無理のない音運びだが、「無難」という言葉からは遠く、見通しの良い透明度の高い美音による演奏を展開。第3楽章と第4楽章ではスケールを拡げて豪快さも感じさせる演奏を行った。
この手の音楽は日本では「俳句」に例えられやすいが、広上と京響の演奏を聴いていると、「短歌のような」という形容の言葉が浮かぶ。メロディアスで切れ味が良く、冗長でない。まさに短歌だ。


演奏終了後、広上はマイクを手に、「みなさん、あけまして」と語り、京響の楽団員が「おめでとうございます」と続ける。広上は客席に「大河いいでしょ?」と語りかける。なお、今年の大河ドラマである「どうする家康」は今日が初回放送日であるが、放送が行われるまでは演奏してはならないという決まりがあるそうで、広上も残念がっていた。

京響は今年の4月から常任指揮者に若手の沖澤のどかを迎えるが、広上は去年の大河ドラマである「鎌倉殿の13人」に掛けて、沖澤を北条泰時に例え、「悪いものは北条義時が全部抱えて地獄に落ちた」と語る。

「お年玉」として1曲アンコール演奏が行われることになったのだが、その前に、昨年の3月に広上が京響の常任指揮者を退任する際にプレゼントすることが約束された広上の肖像画がお披露目される。京都市立芸術大学講師の城愛音の筆によるもので、終演後にホワイエでも見ることが出来たが、「福々しい」顔として描かれている。

「お年玉」のアンコール曲は、山本直純の大河ドラマ「武田信玄」メインテーマ。昨年がメモリアルイヤーだった山本直純(生誕90年、没後20年)。広上は山本について、「日本のレナード・バーンスタインのような人」と紹介する。
山本直純の「武田信玄」は大河ドラマのテーマ曲の中でも最も人気のある曲目の一つである。甲斐武田の騎馬隊の勇壮さを音楽化したもので、疾走感と迫力、そして中間部の叙情性が印象的であり、広上と京響も音のドラマを見事に再現していた。

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2022年12月31日 (土)

コンサートの記(821) デニス・ラッセル・デイヴィス指揮 京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」2022

2022年12月28日 京都コンサートホールにて

午後7時から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」を聴く。今年の指揮者は、デニス・ラッセル・デイヴィス。

アメリカ出身のデニス・ラッセル・デイヴィス。現代音楽の優れた解釈者として知られる一方で、ハイドンの交響曲全集を録音するなど幅広いレパートリーの持ち主である。宮本亞門が演出した東京文化会館でのモーツァルトの歌劇「魔笛」で生き生きとした演奏に接しているが、おそらくそれ以来のデニス・ラッセル・デイヴィス指揮の演奏会である。

今日のコンサートマスターは泉原隆志。フォアシュピーラーに尾﨑平。ドイツ式の現代配置での演奏であるが、ステージ奥の指揮者の正面に来る場所には独唱者のための席が設けられており、ティンパニは舞台下手奥に据えられている。

独唱は、安井陽子(ソプラノ)、中島郁子(メゾ・ソプラノ)、望月哲也(テノール)、山下浩司(バス・バリトン)。合唱は京響コーラスで、ポディウムに陣取り、歌えるマスクを付けて歌う。

冒頭のヴァイオリンの音に圭角があり、「現代音楽的な解釈なのかな」と思ったが、実際はそうした予想とは大きく異なる演奏に仕上がった。しなやかで潤いに満ちた音楽であり、再現部ではヴァイオリンもなだらかな音型へと変わる。第九は第2楽章が演奏によっては宇宙の鳴動のように響くことがあるが、デニス・ラッセル・デイヴィスと京響の第九は、第1楽章が宇宙をかたどった音楽のように聞こえた。こうした経験は初めてである。

第2楽章。構築の把握の巧みさと計算の上手さが印象的な演奏である。迫力を出そうと思えばいくらでも出せる部分でも、滑らかに美しく奏でる。

第3楽章のテンポは速めで開始するが、途中で速度を落としてロマンティックに歌う。「美しさ」が印象的な楽章であるが、デイヴィスと京響は、「愛」と「優しさ」が両手を拡げて抱きしめてくれるような温かな演奏である。

第4楽章も、迫力ではなく「愛」と「優しさ」を重視。人間賛歌を歌い上げるような、ぬくもりに満ちた第九となった。

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2022年12月13日 (火)

コンサートの記(820) 原田慶太楼指揮 京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2022「ザ・フォース・オブ・オーケストラ」第3回「オールウェイズ・ストリングス」

2022年12月4日 京都コンサートホールにて

午後2時から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2022「ザ・フォース・オブ・オーケストラ」第3回「オールウェイズ・ストリングス」を聴く。今日の指揮は若手の原田慶太楼。ナビゲーターはガレッジセール。

本編の前に、午後1時15分からロビーイベント「原田マエストロといっしょ!」が行われる。原田慶太楼が指揮者の仕事についてレクチャーするもので、弦楽アンサンブル(ヴァイオリン2。ヴィオラ、チェロ、コントラバスが1ずつ。奏者は全員若手の女性である)を指揮してモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」とドヴォルザークの「ユモレスク」を演奏し、テンポや強弱、表情によって同じ曲でも印象が変わることを聴き手に示す。子どものための指揮体験コーナーもあり、原田は指揮のスタイルや「好きなもの嫌いなもの」をイメージした描き分けの変化などをアドバイスしていた。


本編の曲目は、チャイコフスキーの弦楽セレナードから第1楽章、ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲ニ短調から第3楽章(ヴァイオリン独奏:会田莉凡)、ブルッフのヴィオラと管弦楽のためのロマンス(ヴィオラ独奏:小峰航一)、ポッパーのハンガリー狂詩曲(チェロ独奏:山本裕康)、ディッタースドルフのコントラバス協奏曲ホ長調から第1楽章(コントラバス独奏:黒川冬貴)、マイケル・エイブルスの「デライツ・アンド・ダンスイズ」(弦楽四重奏と弦楽オーケストラのための作品。弦楽四重奏:会田莉凡、安井優子、小峰航一、山本裕康)。


今日のコンサートマスターは京響特別客演コンサートマスターの会田莉凡(りぼん)。泉原隆志は降り番で、フォアシュピーラーに尾﨑平。今日はヴァイオリン両翼の古典配置をベースにした布陣である。
原田は指揮台を用いず、舞台に直接立って指揮を行う。


チャイコフスキーの弦楽セレナードから第1楽章。原田はノンタクトでの指揮。瑞々しくスプリングの良く効いた歌を京響から引き出す。

演奏終了後にガレッジセールの二人が登場。弦楽セレナードについて、川田広樹が曲目の紹介を行い、ゴリが「オー人事のCMでお馴染みの」と曲について語る。
ゴリが、「原田さん、熱量が凄いですね」と語り、原田が「今、ダイエットしてるんで」と応え、ゴリが「本番終わる頃にはガリガリですね」と返していた。

今回は協奏曲がメインとなるが、いずれも京都市交響楽団の首席奏者がソリストを務めるということで、「演奏が終わったらそれ(首席というポジションと楽器)について聞いてみましょう」ということになる。


ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲ニ短調。京響客演コンサートマスターの会田莉凡がソリストを務める。その間、コンサートマスターの位置には尾﨑が座るが、横に人を置かず(プルトを作らず)、コンマス一人体制となる。
超絶技巧が特徴のハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲。演奏家によっては技巧をひけらかすように弾く場合もあるが、会田の場合は地に足の付いた堅実なソロを奏でた。

ガレッジセールの二人がコンサートマスターについて会田に聞く。演奏の前に原田が、コンサートマスターについては、「サッカーに喩えるとキャプテンのようなもの。(指揮者が)監督でキャプテン」
ゴリ「エースストライカーのようなものですかね」
原田「そうですね」
ゴリ「今日はコンサートマスターが女性ということで、女性版堂安が現れるという」
というやり取りがあった。
会田は、「5歳からヴァイオリンを初めて8歳からアンサンブルで弾き始めて」ということでアンサンブルの楽しさを知ったそうで、ソロで弾こうと思ったことは余りないそうである。プロの演奏家になり、コンサートマスターになるとも思っていなかったそうだ。
ゴリ「原田さんは何歳から指揮者になろうと思われたんですか?」
原田「僕は生まれる前から」
ゴリ「嘘つけ!」
原田「僕のことはどうでもいいです」


ブルッフのヴィオラと管弦楽のためのロマンス。曲名通りロマンティックな曲である。独奏の小峰航一は京響の首席ヴィオラ奏者。リリカルな演奏を展開する。
首席ヴィオラ奏者という立場について小峰は、「コンサートマスターがキャプテンだとするとチームリーダー」と述べる。京響のヴィオラパートは男性は2人で後は全員女性であるが、小峰について二人の女性ヴィオラ奏者は、「頼りになるチームリーダー」、「面倒くさい男」と対照的な印象を述べ、小峰はヴィオラのメンバーについて「キャラが濃い」と語った。ヴィオラの役割について小峰は「彩り」と語る。
ヴィオラ奏者は最初からヴィオラを習っていた訳ではなく、まずヴァイオリンを習い、ある時点からヴィオラに転向するというケースが多い。小峰もまずはヴァイオリンを習っていたが、11歳の時にヴィオラに転向。性格的に「クラスの人気者でも陽キャでもない」ということでヴァイオリンよりもヴィオラの方が合っていたそうである。


ホッパーのハンガリー狂詩曲。チェロ独奏を受け持つのは、京響特別首席奏者の山本裕康。いぶし銀のような渋いソロを奏でる。ガレッジセールの質問はチェロ台とエンドピンについて。エンドピンは20世紀の最初に登場し、それ以前はチェロの本体を首から提げて演奏してたそうである。
山本がチェロを選んだ理由については、「よく言われることですが人間の声に一番近い」と述べていた。


ディッタースドルフのコントラバス協奏曲。ソリストは京響首席コントラバス奏者の黒川冬貴。典雅なソロを奏でる。

ディッタースドルフについては原田は、「ハイドンやモーツァルトと親しく」「ディッタースドルフが第1ヴァイオリン、ハイドンが第2ヴァイオリン、モーツァルトがヴィオラ」という編成で演奏旅行を行ったこともあると話す。

コントラバスを選んで理由について黒川は、「オーケストラの奏者になりたいと思ったのが中学生の時で、そこからだと(間に合うのは)コントラバスだけ」と述べていた。コントラバスは吹奏楽の編成に弦楽器としては唯一入っており、吹奏楽部からコントラバスを始めたという人も多い。


マイケル・エイブルスの「デライツ・アンド・ダンスイズ」。今回が日本初演となる。
エイブルスは60歳になる現役の作曲家で、原田とも親交があるそうである。弦楽四重奏が神秘的な旋律を奏で、弦楽オーケストラがピッチカートで応える。弦楽四重奏はその後、流れるような旋律を奏で、弦楽オーケストラもそれを反映するように盛り上がりを見せた。


原田の指揮する京響は、伸びやかにして華やかで活気のある演奏を聴かせた。

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2022年12月 5日 (月)

コンサートの記(818) リオ・クオクマン指揮 京都市交響楽団第673回定期演奏会 フライデー・ナイト・スペシャル

2022年11月18日 京都コンサートホールにて

午後7時30分から、京都コンサートホールで京都市交響楽団の第673回定期演奏会を聴く。今年の4月から金曜土曜の2日間に渡る定期演奏会は、プログラムが双方で少し異なることになり、金曜日の定期は「フライデー・ナイト・スペシャル」として、開演時間が通常より30分遅くなり、休憩なし約1時間のプログラムでの演奏が行われることとなった。チケット料金も当然ながら通常よりも安めである。

今回の指揮者は、マカオ出身のリオ・クオクマン。コンサートマスターは、泉原隆志、フォアシュピーラーに尾﨑平。いつも通りドイツ式の現代配置での演奏である。

今日の曲目は、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」(リオ・クオクマンによるピアノ弾き振り)、リヒャルト・シュトラウスの歌劇「ばらの騎士」組曲、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」。明日はプログラムから「ラプソディ・イン・ブルー」が抜け、代わりにプッチーニの歌劇「マノン・レスコー」から第3幕への間奏曲と大曲であるレスピーギの交響詩「ローマの松」が加わる。

客の入りは今ひとつ。やはり安い席はそれなりに埋まるが、料金が高めの席(京響は公立のオーケストラということもあって、S席でも5500円と比較的安めであるが)は空席が目立つ。


リオ・クオクマンは、香港とアメリカで音楽を学び、2014年のスヴェトラーノフ国際指揮者コンクールで最高位を獲得。2016年までフィラデルフィア管弦楽団でヤニック・ネゼ=セガンの副指揮者を務めた。現在は、香港フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者を務めている。


プレトークでクオクマンは、「コロナが流行する前の最後のコンサートが京都コンサートホールでの京響定期だった」ということで、「また素晴らしいホールで素晴らしいオーケストラと共演出来るのを嬉しく思う」と語った。

管楽器の首席であるが、フルートの上野博昭はガーシュウィンのみ、クラリネットの小谷口直子はリヒャルト・シュトラウスのみの出番。トランペットのハラルド・ナエスは「ばらの騎士」のみ板に乗らなかった。


ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」。クオクマンのピアノは正統派。端正の中に遊び心が時折顔をのぞかせる。
京響は音色こそ先週のボストン交響楽団に比べれば地味であるが、スケールが大きく迫力のある伴奏を聴かせる。日本のオーケストラらしい表情の細やかさも印象的である。


リヒャルト・シュトラウスの歌劇「ばらの騎士」組曲。リヒャルト・シュトラウス好みの可憐で華やかな音の絵巻が展開される。京響の音色も冴えており、洗練されている。音の絵巻と書いたが、指揮者が若いということもあり、音とデジタル画像のコラボレーションのような印象も受ける。若い音楽家は感性もデジタルな人が多く、今後、多くの楽曲のイメージが大きく変革していく可能性は高いと思われる。


ラヴェルの「ラ・ヴァルス」。語り上手な演奏である。ラヴェルがこの曲に託した筋書きのようなものが巧みに音に変えられていく。
クオクマンの指揮も冴えまくっており、京響の音色も日本のオーケストラとしては色彩豊かで、クオクマンと築くオーケストラドライブに爽快感を覚える。


カーチュン・ウォンもそうだが、リオ・クオクマンも才気煥発というタイプ。日本も含めて近年のアジアの指揮者にはこうした才人タイプが多く、今後が楽しみである。

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2022年11月25日 (金)

コンサートの記(815) パスカル・ロフェ指揮 「京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクト vol.3 セルゲイ・ディアギレフ生誕150年記念公演『天才が見つけた天才たち』」

2022年11月6日 京都コンサートホールにて

午後2時から、京都コンサートホールで、「京都コンサートホール×京都市交響楽団プロジェクト vol.3 セルゲイ・ディアギレフ生誕150年記念公演『天才が見つけた天才たち』」を聴く。京都市交響楽団をパスカル・ロフェが指揮したコンサート。定期演奏会などに比べるとチケット料金が高めで、客層も微妙に異なるような気がする。

バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)の興行主として多くの名作に関わったことで知られるセルゲイ・ディアギレフ。リムスキー=コルサコフらに作曲を師事し、絵画などの芸術の擁護者として名を広めた後で音楽プロデュースを手掛けるようになり、バレエ・リュスを旗揚げすることになる。ストラヴィンスキーの「春の祭典」の騒動が有名だが、ドビュッシーやラヴェルなどフランスの作曲家を起用した有名バレエ作品を生み出してもいる。生み出すと書いたが、芸術家としては彼は自らの才能に早々に見切りをつけており、「生み出す」天才ではなく、本物の実力者を「見出す」天才であった。


今日の演奏曲目は、ストラヴィンスキーの「火の鳥」組曲(1919年版)、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番(ピアノ独奏:アレクセイ・ヴォロディン)、リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェヘラザード」

今日のコンサートマスターは、「組長」こと石田泰尚。泉原隆志は降り番で、フォアシュピーラーに尾﨑平。今日はコントラバスに客演が多く、そのことが関係したのか低音の鳴りが今ひとつに感じられた。フルート首席の上野博昭、オーボエ首席の髙山郁子、クラリネット首席の小谷口直子は全編に出演。ホルン首席の垣本昌芳、トランペット首席のハラルド・ナエス、ファゴット首席の中野陽一郎らは降り番であった(ハラルド・ナエスは無料パンフレットに名前は載っていたが姿は見せず)。チェロ首席にはルドヴィート・カンタが客演で入る。


ストラヴィンスキーの「火の鳥」。パスカル・ロフェらしい明晰で分離の優れた演奏である。迫力よりも構造重視であり、こうした演奏をさせるとロフェは抜群の適性を見せる。


プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番。「蜜蜂と遠雷」でも知名度を上げた曲だが、元々、超絶技巧のかっこいい曲としてピアニストに人気であり、コンクールなどではかなり取り上げられることが多いようである。

ソリストのアレクセイ・ヴォロディンは、モスクワ音楽院に学び、ゲザ・アンダ国際コンクールに優勝。協奏曲のソリストとしても多くの名指揮者と共演を重ねている。

名手のヴォロディンであるが、緩やかな部分でのリリシズムが魅力的。高音の冴えも素晴らしい。速い部分が団子になって聞こえたのだが、ペダリングにも問題はなく、おそらくホールの音響と今日の私の席(2階席のサイド、といっても2階席はサイドとポディウムしかない訳だが、いずれにせよピアノを聴くのに適した席ではない)の問題であると思われる。2階席のレフトサイドで聴いたが、あるいは同じ2階席ならライトサイドの方が音は良かったかも知れない。

アンコール演奏は、ショパンの12のエチュード作品25-1。リリカルな演奏であった。


リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェヘラザード」。ロフェは京響から立体的な音響を引き出し、コンサートマスターの石田泰尚のソロも見た目とは裏腹に美麗にして優しげで、「美演」として高く評価したい演奏となった。ロフェはこれらの曲目を手掛けると本当に上手い。

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2022年10月23日 (日)

コンサートの記(810) 齋藤友香理指揮 京都市交響楽団第672回定期演奏会

2022年10月14日 京都コンサートホールにて

午後7時から、京都コンサートホールで京都市交響楽団の第672回定期演奏会を聴く。今日の指揮は若手の齋藤友香理。

東京生まれの齋藤友香理。桐朋女子高校音楽科を経て、桐朋学園大学ではピアノを専攻する。「一人だけで練習するのは寂しい」という理由から副専攻では指揮クラスを受講していた。卒業後に同大学の科目履修生『指揮』に在籍して指揮者としての第一歩を踏み出している。2010年から1年間、公益財団法人新日鉄住友文化財団「指揮研究員」として紀尾井ホール室内管弦楽団(旧紀尾井シンフォニエッタ東京)や東京フィルハーモニー交響楽団で研鑽を積み、2013年からはドレスデン音楽大学(カール・マリア・フォン・ウェーバー音楽大学)大学院に進み、修了後には、ハインリッヒ・シフやキリル・ペトレンコのアシスタントなどを務めている。第54回ブザンソン国際指揮者コンクールでは、聴衆賞とオーケストラ賞を受賞。


曲目は、ワーグナーの歌劇「リエンチ」序曲、ウェーバーのクラリネット協奏曲第1番(クラリネット独奏:小谷口直子)、メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」


午後6時30分頃から、ステージ上で齋藤友香理によるプレトークがある。女性としては低めの落ち着いた声である。
齋藤は、「私は東京生まれなのですが、京都コンサートホールには縁がありまして」と語り、2009年の小澤征爾音楽塾のコンサートで京都コンサートホールの指揮台に立ち、生まれて初めてに近い形でオーケストラ相手の指揮を行ったという。その後、ローム ミュージック ファンデーションのセミナーに参加した際には、京都コンサートホールで京都市交響楽団相手にブラームスの交響曲第1番を指揮したことがあるそうである。

その後の楽曲解説では、ワーグナーの「リエンチ」がヒトラーに影響を与えたことや、ウェーバーのクラリネット協奏曲第1番のソリストである小谷口直子(京都市交響楽団首席クラリネット奏者)とミュンヘンで会ったことがあるという話や、渡独する際にはメンデルスゾーンのことは余り頭になかったが、受講した音楽セミナーの会場がライプツィッヒのメンデルスゾーンハウス(その名の通りメンデルスゾーンが過ごした家。その天才ぶりから「進めど進めど薔薇また薔薇」と称されるほど順風満帆だったメンデルスゾーンであったが、この家において38歳の若さで亡くなっている)であったという縁から興味を持ち始めたという。


今日はヴァイオリン両翼の古典配置での演奏。コンサートマスターは京都市交響楽団特別客演コンサートマスターの「組長」こと石田泰尚。フォアシュピーラーに泉原隆志。今日は客演首席チェロ奏者としてNHK交響楽団首席の「藤森大統領」こと藤森亮一が入る。フルート首席の上野博昭、ホルン首席の垣本昌芳らはメンデルスゾーンのみの出演である。


ワーグナーの歌劇「リエンチ」序曲。しっかりとした「ドイツ」の「ワーグナー」の音が出ていることに感心する。ドイツ在住なのでドイツの空気とドイツ音楽を常に肌で感じているということもあるだろうが、そもそもドイツ音楽に適性がありそうである。細部の彫刻も見事で、その分全体像がぼやけているような気がしないでもなかったが、若手でこれだけのワーグナーが振れるのは見事である。
日本の若手指揮者、女性指揮者共に充実しているようだ。


ウェーバーのクラリネット協奏曲第1番。個人的な思い出を語ると、生まれて初めて買ったクラリネット協奏曲のCDは、モーツァルトではなくウェーバーのものであった。ベルリン・フィル入団を巡るゴタゴタで話題になったザビーネ・マイヤーのクラリネットソロによるEMIのCDで(伴奏はヘルベルト・ブロムシュテット指揮のシュターツカペレ・ドレスデン)、私もザビーネ・マイヤー事件(ザビーネ・マイヤーのベルリン・フィル入団辞退のみならず、ヘルベルト・フォン・カラヤンの芸術監督辞任にまで発展した)を知っていたため、彼女のCDを購入したのであった。

小谷口直子は、深紅のドレスで登場。オーケストラのメンバーが協奏曲のソロを務めた場合、かっちりしすぎたりスケールが小さくなったりしがちなのだが(ソリストとオーケストラプレーヤーではそもそも求められるものが違う)、小谷口の場合はそういったことはなく甘く伸びやかな音色で天を翔る。
齋藤指揮の京都市交響楽団も陰影に富んだ優れた伴奏を聴かせる。

アンコール演奏は、ベールマンのクラリネットと弦楽五重奏のためのアダージョ。典雅な演奏であった。
本編終了後とアンコール演奏終了後に、齋藤と小谷口は抱き合って互いを称え合う。


メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」。メンデルスゾーンの交響曲は第5番まであるが、番号は出版順であり、実際には「スコットランド」が彼の最後の交響曲である。
「スコットランド」交響曲は、高校生の時に定番のひとつであるオットー・クレンペラー指揮のCDで初めて聴き、その後にペーター・マークの2種類のCD(定番のDECCA盤ではなくいずれもデジタル録音の輸入盤)で繰り返し楽しんだが、ひょっとしたら今は手元にCDがないかも知れない。なくても今はYouTubeでそれなりに楽しめる時代であるが。

齋藤は中庸からやや速めのテンポを採用。濃厚なロマンティシズムよりも古典的な造形美を優先させたような演奏であるが、時折、馥郁としたロマンが立ち上る。若手指揮者らしい颯爽とした味わいもあり、京響共々豊かな音像を構築。「スコットランド」交響曲はメンデルスゾーンの最高傑作に挙げられることも多いが、実際はコンサートでプログラムに載ることは比較的少ない。今日のコンビはたまにしか聴けない名曲を存分に味わわせてくれた。

最後に齋藤はオーケストラメンバーに立つよう指示を送るが、京響の団員は指揮者に敬意を示して立たず、齋藤が一人で喝采を浴びた。

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2022年10月 1日 (土)

コンサートの記(807) ジョン・アクセルロッド指揮京都市交響楽団第671回定期演奏会 マーラー 交響曲第2番「復活」

2022年9月25日 京都コンサートホールにて

午後2時30分から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団の第671回定期演奏会を聴く。今日の指揮者は、京響首席客演指揮者のジョン・アクセルロッド。マーラーの交響曲第2番「復活」1曲勝負である。

セレモニアルな場面で演奏されることの多いマーラーの交響曲第2番「復活」。20世紀半ばまでは、そうした折りにはベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」が演奏されることが多かったが、マーラーの交響曲がコンサートレパートリーに定着するようになってからは、「復活」が演奏されることも多くなった。個人的には「復活」の実演に接するのは今日で3度目だが、初めての聴いたのは大阪音楽大学創立90周年記念(於ザ・シンフォニーホール。西本智実指揮大阪音楽大学カレッジ・オペラハウス管弦楽団+大阪音楽大学関係者ほか)、2度目はパーヴォ・ヤルヴィのNHK交響楽団首席指揮者就任記念演奏会(於・NHKホール)といずれも祝祭的な節目で演奏されている。アクセルロッドと京響の「復活」も本来はアクセルロッドの京響首席客演指揮者就任記念として演奏されるはずだったのだが、コロナによって今回に延期となっている。ということで特別な折りでの演奏ではなくなったが、コロナ禍からの「復活」の烽火を京都から上げる演奏会となった。


午後2時頃から、ジョン・アクセルロッドによるプレトークがある(通訳:小松みゆき)。アクセルロッドは、1995年に小澤征爾が終戦50年記念演奏会として長崎で「復活」を取り上げたことに触れ、「復活」という曲目の特別性について語る。アクセルロッドは、第九(日本語で「第九」と発音する)やベートーヴェンの「田園」についても触れ、「復活」はそれらと違ってマーラーの哲学や精神を描いた作品であるとする解釈を披露していた。
またコーラスはマスクをつけながらの歌唱となることを明かし、コーラスが活躍する第5楽章には、キリスト教、ユダヤ教、仏教などの各宗教を超えたメッセージがあると述べる。

ちなみに、私が生まれて初めて買った交響曲のCDがマーラーの交響曲第2番「復活」である。高校1年生の時で、CBSソニー(現ソニー・クラシカル)から出ていたロリン・マゼール指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ほかによる演奏であった。「復活」というタイトルとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏ということに惹かれて購入している。他に比較対象がなかったが、曲の巨大さと演奏の力強さに驚いた記憶がある。


京都市交響楽団がマーラーの交響曲第2番「復活」を取り上げるのは、これで5回目だが、これまでの4回は全て京都会館第1ホールでの演奏で、本拠地が京都コンサートホールに移ってからは初の「復活」となるようである。
最初に取り上げたられたのは、山田一雄の指揮による1974年5月18日の演奏会で、2度目も山田一雄指揮による1981年5月29日の京響創立25周年演奏会である。1981年の演奏はビクターによってライブ録音されており、今もタワーレコードから出ている復刻版CDを入手することが出来る。
3度目に取り上げられたのはその5年後の1986年6月18日の京響創立30周年記念演奏会に於いてで、指揮は小林研一郎が務めている。
4度目の演奏は、井上道義の指揮によって1990年11月15日に、京都国際音楽祭の一環として行われている。
今回も特別な節目ではないものの、京都の秋 音楽祭の演目として「復活」が取り上げられている。


今日のコンサートマスターは、京都市交響楽団特別名誉友情コンサートマスターの豊島泰嗣。フォアシュピーラーに泉原隆志。ドイツ式の現代配置による演奏で、今日はヴィオラの首席にソロ首席ヴィオラ奏者の店村眞積が入る。特別首席チェロ奏者の山本裕康は降り番で、チェロの第1プルトは、中西雅音(まさお。チェロ副首席奏者)とドナルド・リッチャーが務める。
ソプラノ独唱はテオドラ・ゲオルギュー(以前にも実演に接したことがあるが、有名ソプラノ歌手であるアンジェラ・ゲオルギューとは血縁関係にはないようである)、メゾ・ソプラノ独唱は山下牧子。合唱は京響コーラス。コーラスはポディウム(P席)に陣取っての歌唱である。


アクセルロッドのテンポは中庸。各楽器の分離は明瞭であり、音色も明るめで、そのためか演奏時間約80分の大作とは思えないほど時が過ぎるのが速く感じられた。
大音量での迫力も十分だがそれ以上にノスタルジックな場面での透明で優しい音色が印象的であった。京響も強弱硬軟自在の演奏でアクセルロッドの指揮に応える。

舞台上の段差を目一杯使っての演奏で、前を通る隙間がないということで、山下牧子とテオドラ・ゲオルギューはいったん客席通路に下りて(今日は最前列は発売されていない)指揮台の近くにある階段を上がって持ち場についていた。二人ともアクセルロッドのほぼ真横に立って歌うのだが、アクセルロッドの振る指揮棒がゲオルギューの顔に当たりそうに思えて少しヒヤヒヤした。

その山下とゲオルギューの歌唱も言うことなしであり、マイクをつけての歌唱となった京響コーラスも神秘的にして輝かしい歌唱を展開した。

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2022年9月20日 (火)

スタジアムにて(41) J1 京都サンガF.C.対横浜F・マリノス@サンガスタジアム by KYOCERA 2022.9.14

2022年9月14日 サンガスタジアム by KYOCERAにて

午後7時から、サンガスタジアム by KYOCERAで、J1 京都サンガF.C.対横浜F・マリノスの試合を観る。
J1昇格は果たしたが苦戦することも多い京都サンガF.C.。現在のところ降格圏にはいないが13位に甘んじている。一方、対戦相手の横浜F・マリノスは現在首位であり、サンガの劣勢が予想される。

今日は試合前に京都市交響楽団の楽団員(塩原志麻、片山千津子、小田拓也、渡邉正和、黒川冬貴)による弦楽五重奏団の演奏がある。
まずは今日は宇治市DAYということで、宇治市内の中学校から各部門で業績を上げた生徒らがスタジアム内(といっても端の方だが)を歩き、京都市交響楽団の弦楽五重奏団が大河ドラマ「鎌倉殿の13人」のオープニングテーマを3回ほど繰り返して演奏した。
弦楽五重奏団はキックオフの前のセレモニーでも演奏を行ったが、よく知らない曲で、音も応援団の太鼓にかき消されがちであった。


サンガとF・マリノスの実力差は、パッと見で分かるものではないが、上がりはF・マリノスの選手の方が速めである。

サンガも相手ゴール前で決定的なチャンスを迎えたりもしたが、あと一押しが足りず、逆にF・マリノスのエドゥアルドにヘディングシュートをゴール右隅に決められ、先制点を許す。

後半に入ってもF・マリノスのペースは続き、エルベルのループシュートがキーパーとその後ろにいたディフェンダーの頭の上を超えてゴールネットを揺らす。2-0。

サンガは、残り後3分というところで、コーナーキックを得る。クロスに井上黎生人が反応。これは相手キーパーに阻まれるが、こぼれたボールを金子大毅が蹴り上げ、ゴールの上のネットを揺らす。サンガ、一矢報いて更に攻撃を続けるが追加点はならず。J1首位の壁は厚く、サンガは1ー2での惜敗となった。

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2022年9月12日 (月)

コンサートの記(804) 三ツ橋敬子指揮 京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2022「ザ・フォース・オブ・オーケストラ」第2回「2-ウェイ・ミュージシャンズ」

2022年9月4日 京都コンサートホールにて

午後2時から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2022「ザ・フォース・オブ・オーケストラ」第2回「2-ウェイ・ミュージシャンズ」を聴く。指揮はお馴染みの三ツ橋敬子。ナビゲーターはガレッジセールの二人。


曲目は、レナード・バーンスタインのオーケストラのためのディヴェルティメントと「オン・ザ・タウン」から「3つのダンス・エピソード」、武満徹の「乱」組曲から第4楽章と「海へⅡ」(アルト・フルート、ハープ、弦楽オーケストラのための。フルート独奏:上野博昭、ハープ独奏:松村衣里)、ニーノ・ロータのトロンボーン協奏曲(トロンボーン独奏:岡本哲)、久石譲の「魔女の宅急便」とオーケストラのための「DA・MA・SHI・絵」


バトンテクニックに長けた三ツ橋敬子は、現代音楽を得意としている。なお、今回は三ツ橋が「演奏に専念したい」ということでガレッジセールとの絡みはなし。ガレッジセールの二人が進行を引き受ける。


今日のコンサートマスターは、「組長」こと石田泰尚(やすなお)。泉原隆志は降り番で、フォアシュピーラーに尾﨑平。ドイツ式の現代配置での演奏である。管楽器の首席奏者は、前半はホルンの垣本昌芳を除くほぼ全員が出演。垣本は後半に登場。クラリネット首席の小谷口直子は前半のみの出番となった。


レナード・バーンスタインのオーケストラのためのディヴェルティメント。死後に作曲作品の再評価が進むレナード・バーンスタイン。指揮者の弟子が非常に多く、彼らが頻繁に師であるレナード・バーンスタイン(愛称:レニー)の作品を取り上げるということもあるだろう。三ツ橋もレニーの愛弟子である小澤征爾に師事しており、レニーの孫弟子ということになる。
三ツ橋の指揮する京都市交響楽団であるが、非常に良く鳴る。今日は1階席で聴いたのだが、やはり音楽専用ホールを持つアドバンテージは非常に大きいようである。以前は1階席の鳴りが悪かった京都コンサートホールであるが、京響の成長と、舞台をすり鉢型にする工夫により、「良いオーケストラは良く鳴り、そうでないと良く鳴らない」という素直で演奏家には怖い響きの音響へと変わった。
レニーの多様な作風が窺えるオーケストラのためのディヴェルティメント。三ツ橋による表情の描き分けも巧みであった。

演奏が終わってガレッジセール登場。ゴリは今日は前髪を下ろしている。まず川田広樹が、京響と三ツ橋敬子を紹介。今回のテーマである「2-ウェイ・ミュージシャンズ」の意味が、「クラシック音楽ともう一つ。つまり二刀流」であると明かす。ゴリは、「二刀流と言えば大谷翔平選手」ということで、「ベーブ・ルースの持っていた二桁勝利二桁本塁打の記録を104年ぶりに破った」「今、全国の女子アナ、女性タレントが彼を狙っています。もうすぐ三刀流に」というところで川田に止められていた。

レナード・バーンスタインは、クラシックやミュージカルの優れた作曲家であり、同時に世界最高峰の座をカラヤンと争う大指揮者でもあった。作曲と指揮の二刀流である(同時に名ピアニストにして名教師でもあったが、ややこしくなるので今日は紹介されなかった)。
ゴリは、「バーンスタインも子どもの頃にお父さんとオーケストラを聴きに行き、そこでオーケストラの魅力に目覚めた。だから今日もここに将来のバーンスタインがいるかも知れない。大人になったらどうなるか分かりません。でも吉本興業に来るのは止めましょう」と言って川田に「何でよ」「素敵な会社よ」と突っ込まれていた。ちなみにゴリは、「給料がめちゃくちゃ安い」と語っていた。

「オン・ザ・タウン」は、レニーが最初に作曲したミュージカルで、映画化もされている(邦題は「踊る大紐育」)。「オン・ザ・タウン」はオペラ形式で上演されることもあり、日本でも佐渡裕が半オペラ半ミュージカルというスタイルで上演している。
「3つのダンス・エピソード」は、1945年にレニー自身が編曲したショーピースで、アメリカ的なノリが楽しい曲である。三ツ橋と京響も雰囲気豊かな演奏を繰り広げた。

続く武満徹は、クラシック音楽と映画音楽の二刀流である。がレッジセールの二人にとっては、映画音楽というと、「スター・ウォーズ」、「インディ・ジョーンズ」といったジョン・ウィリアムズの楽曲が印象深いようである。ゴリは、「インディ・ジョーンズ」には多分に影響を受けており、大学受験時に勉強をやる気が起こらず、東京の予備校でダラダラ二浪していて「もう諦めて沖縄帰ろうかな」と思っていたのだが、ある日、予備校の仲間から「何が好きなの」と言われて、「『インディ・ジョーンズ』のような世界が好きでああいうのやりたいんだよね」と答えたところ、「だったら日大藝術学部に映画学科があるからそこ受けてみたら。真田広之とか有名な人が出てるよ」と言われて初めて日芸を知り、途端に勉強にもやる気が出て合格出来たという話をする。
ゴリは、「ロッキー」シリーズも好きなようで、「絶対勝てないよ」と言われたロッキーが頑張っていいところまで行く。「人生何があるか分からないですよ。でも吉本興業に来るのは止めましょう」
ちなみにゴリは、中学生の時に彼女と二人で「ロッキー」シリーズを観に行って、見終わった後、シャドーボクシングをしながら「彼女を守る」というポーズを取っていたが、向こうからヤンキー五人組が来るのを見て、「肩こりの人」に変えたという話をしていた。

黒澤明の映画「乱」は、シェイクスピアの「リア王」を翻案したもので、黒澤の晩年の代表作である。黒澤映画のラッシュフィルムには、あらかじめクラシックの音楽が付けられていて、「これによく似た曲を書いて欲しい」と作曲家に頼むのが常だったようだ。「乱」のフィルムにも、マーラーの「巨人」などの音楽が付けられていたことが窺える。最終的にはこの「乱」で、武満と黒澤は喧嘩別れしてしまうことになるのだが、フィルムミュージック「乱」は今でも武満の代表作として世界中で演奏されている。光と影の明滅するような「タケミツトーン」はこの曲でも発揮されている。
三ツ橋と京響はこの曲の「抑えたドラマティシズム」を巧みに描き出していた。


武満徹の「海へⅡ」(アルト・フルート、ハープ、弦楽オーケストラのための)。
メルヴィルの小説「白鯨」に着想を得た作品で、「夜」「白鯨」「鱈岬」の3部からなる。武満は晩年に、「鯨のような優雅で頑健な肉体を持ち、西も東もない海を泳ぎたい」と語ってたそうだが、武満本人は若くして結核を患うなど、かなり病弱な人であり、65歳という、作曲家としては比較的若い年齢で亡くなっている。

生前、フランスの音楽評論家から、「タケミツは日系フランス人音楽家である」と評された武満徹であるが、この「海へⅡ」を聴くと、武満がドビュッシーなどから受けた影響がよく分かる。
余り関係ないが、「海へⅡ」は、私にとっても重要な作品である。ここでは説明はしないが。


ニーノ・ロータのトロンボーン協奏曲。それほど有名な曲ではないのだが、何故か2ヶ月連続で聴くことになった。先月末に、東大阪文化創造館 Dream House 大ホールで、愛知室内オーケストラの演奏で聴いているが、京都コンサートホールで聴く京響の演奏の方がオーケストラとしての馬力や色彩感に優れている。
ソリストの岡本哲(京響トロンボーン首席奏者)も、余裕を持って旋律を吹いていた。

ゴリは、ニーノ・ロータについて、「『ゴッドファーザー』などの映画音楽を書いた人」と紹介するが、映画の内容を考えて「大人になってから観て下さい」と伝えていた。


映画音楽とクラシック作品の二刀流のもう一人である久石譲。ゴリは、「久石譲は元々はミニマル・ミュージックという音楽を書いていた人」と紹介。エッシャーのだまし絵に着想を得た「DA・MA・SHI・絵」におけるミニマル・ミュージックの手法について説明する。

「魔女の宅急便」の愛らしさ、オーケストラのための「DA・MA・SHI・絵」の爽快さなど、いずれも優れたオーケストラ演奏であった。

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