カテゴリー「室内楽」の48件の記事

2022年9月20日 (火)

スタジアムにて(41) J1 京都サンガF.C.対横浜F・マリノス@サンガスタジアム by KYOCERA 2022.9.14

2022年9月14日 サンガスタジアム by KYOCERAにて

午後7時から、サンガスタジアム by KYOCERAで、J1 京都サンガF.C.対横浜F・マリノスの試合を観る。
J1昇格は果たしたが苦戦することも多い京都サンガF.C.。現在のところ降格圏にはいないが13位に甘んじている。一方、対戦相手の横浜F・マリノスは現在首位であり、サンガの劣勢が予想される。

今日は試合前に京都市交響楽団の楽団員(塩原志麻、片山千津子、小田拓也、渡邉正和、黒川冬貴)による弦楽五重奏団の演奏がある。
まずは今日は宇治市DAYということで、宇治市内の中学校から各部門で業績を上げた生徒らがスタジアム内(といっても端の方だが)を歩き、京都市交響楽団の弦楽五重奏団が大河ドラマ「鎌倉殿の13人」のオープニングテーマを3回ほど繰り返して演奏した。
弦楽五重奏団はキックオフの前のセレモニーでも演奏を行ったが、よく知らない曲で、音も応援団の太鼓にかき消されがちであった。


サンガとF・マリノスの実力差は、パッと見で分かるものではないが、上がりはF・マリノスの選手の方が速めである。

サンガも相手ゴール前で決定的なチャンスを迎えたりもしたが、あと一押しが足りず、逆にF・マリノスのエドゥアルドにヘディングシュートをゴール右隅に決められ、先制点を許す。

後半に入ってもF・マリノスのペースは続き、エルベルのループシュートがキーパーとその後ろにいたディフェンダーの頭の上を超えてゴールネットを揺らす。2-0。

サンガは、残り後3分というところで、コーナーキックを得る。クロスに井上黎生人が反応。これは相手キーパーに阻まれるが、こぼれたボールを金子大毅が蹴り上げ、ゴールの上のネットを揺らす。サンガ、一矢報いて更に攻撃を続けるが追加点はならず。J1首位の壁は厚く、サンガは1ー2での惜敗となった。

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2022年7月16日 (土)

コンサートの記(788) 「日曜の午後のクラシック 歌とピアノ&ピアノ三重奏」@ムラマツリサイタルホール新大阪 2022.7.10

2022年7月10日 ムラマツリサイタルホール新大阪にて

大阪へ。午後2時30分から、ムラマツリサイタルホール新大阪で歌曲と室内楽のコンサートを聴く。

京阪電車で終点の淀屋橋まで向かい、Osaka Metroで新大阪駅に向かう。
新大阪駅を利用したことは何度かあるが、新大阪駅から外に出たことは、ひょっとしたら一度もないかも知れない。外に出て、北へと延びる歩道橋を歩き、その後に地上に下りて西へと進む。新大阪は新幹線が停まる駅で高層ビルも多いが、街の規模としては梅田や難波に負ける。「新○○駅は本家より劣るの法則」は日本のほとんどの都市で有効である。

ムラマツリサイタルホール新大阪は、ビルの1階にあるが、他に入っているテナントは飲食店、それも大衆向けの店が多い。クラシック音楽専用ホールに大衆向けの飲食店という組み合わせが面白い。京都にはこうしたビルは存在しないであろう。


ムラマツリサイタルホール新大阪で行われる「日曜の午後のクラシック 歌とピアノ&ピアノ三重奏」であるが、新型コロナにより二度の延期を経ての開催である。今回もスムーズにことは運ばず、ピアノ奏者二人が体調不良を訴えたため、代役を起用しての公演となる。

出演は、木村真理子(ヴァイオリン)、エドアルド・デルリオ・ロブレス(チェロ)、今井彩香(ピアノ)、川床綾子(ソプラノ)、蜷川千佳(ピアノ)。

曲目は、ハイドンのピアノ三重奏曲第39番「ジプシー」、トゥリーナのピアノ三重奏曲第2番、北原白秋作詞・山田耕筰作曲の「このみち」、武満徹作詞・作曲の「小さな空」、ドヴォルザークの歌劇『ルサルカ』より「月に寄せる歌」、オスカー・ハマースタインⅡ世作詞・リチャード・ロジャース作曲のミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』より「すべての山に登れ」、メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番。

ピアノ三重奏の出演者の紹介をすると、ヴァイオリンの木村真理子は、同志社女子大学学芸学部音楽学科を卒業後、同大学音楽学会《頌啓会》特別専修生修了。第6回秋篠音楽堂室内楽フェスタにて聴衆賞を受賞。プラハで行われた4th Ameropa International Concertante Competition 2014にて第2位(1位なし)及び聴衆賞を受賞している。

チェロのエドアルド・デルリオ・ロブレスは、スペインの名チェリストであるペドロ・コロストーラに師事。マドリード音楽院で名誉賞を得る。2008年からプラハ国際音楽祭 Ameproにてチェロと室内楽の教授を務めている。

ピアノの今井彩香は、京都市立芸術大学を卒業。ヤマハヤングピアニスト推薦演奏会金賞。宝塚ベガ学生ピアノコンクール第2位を獲得。その他のコンクールでも入賞を果たしている。


ハイドンのピアノ三重奏曲第39番(新版では25番)「ジプシー」は、最終楽章にハンガリー風の曲調が採用されていることからこの名がある。
全体的には典雅な雰囲気に溢れ、ハイドンがモーツァルトに与えた影響までもが分かるような洗練された作風である。

ムラマツリサイタルホール新大阪に来るのは初めてだが、満員になった場合には、室内楽、器楽、声楽に最適の音響となりそうなホールである。今日は来場者が少なめなので残響が長めだが、それでも聞きやすい。演奏も曲調を的確に捉えている。


トゥリーナのピアノ三重奏曲第2番。トゥリーナはスペイン出身の作曲家。パリのスコラ・カントルム(エリック・サティが中年になってから通ったことでも知られる)に留学し、ヴァンサン・ダンディ(サティの師でもある)に作曲を師事。ドビュッシーやラヴェルとも親交を結んでいる。出身地のアンダルシア地方の音楽を追究した作曲家でもある。

演奏前に木村真理子がマイクを手に、トゥリーナと楽曲の紹介を行った。

旋律がスペイン風であること、和音、特にピアノの響きがドビュッシーからの影響を受けていることがすぐに分かる。スペイン系の音楽は情熱的かつ個性的で聴いていて楽しい。ナポレオンが「ピレネー山脈の向こう(スペイン)はアフリカである」と語ったが、フランスやドイツ・オーストリア、イタリアといったクラシック音楽のメインストリームとは明らかに異なる良さがある。


演奏終了後に、木村とソプラノの川床綾子が登場し、マイクを手にトークを行う。二人が出会ったのは、チェコのプラハであること、プラハでの夏の講習会に参加したのだが、多くの学生が集う中で日本人は木村と川床の二人だけであり、共に関西出身ということもあって親しくなったことなどが語られ、川床が歌う「この道」や「小さな空」、チェコ語で歌われる歌劇『ルサルカ』より「月に寄せる歌」のちょっとした解説や、歌劇『ルサルカ』の内容などが紹介された。

ソプラノの川床綾子は、大阪音楽大学短期大学部声楽科を卒業後に同大学専攻科を修了。イタリアやチェコに留学してディプロマを獲得している。関西二期会準会員。

ピアノ伴奏の蜷川千佳は、神戸女学院大学音楽学部ピアノ専攻卒業。同大学大学院音楽研究科を修了。第33回摂津音楽祭にて伴奏賞を受賞している。神戸女学院大学、四條畷学園高校非常勤講師。酒井シティオペラと関西二期会のアンサンブルピアニストを務めている。


北原白秋作詞・山田耕筰作曲の「この道」。北原白秋の歌詞は札幌を舞台に書かれており、白い時計台など、札幌の名所も登場する。北原白秋が何歳ぐらいの主人公にいつの頃の思い出を歌わせているのか、設定を把握する必要のある楽曲でもある。設定年齢によって曲のイメージがかなり変わってくる。白秋自身が「少年」との設定を書き込んでいるが、十代半ばの少年が10年ほど前、一番最初に「この道」に来た時のことを思い出して歌っているというのが最も適切だと思われる。「お母様」という言葉を使っている(山田耕筰が歌詞を変えているのであるが)ことでもそれほど年長ではないことが窺える。白秋自身は「母さんと」という言葉を選んでいるが、「少年」という設定を考えた場合は、「お母様と」の方が誤解を確実に防げる。これらの技巧により、痛切なノスタルジアと幼年期からの脱出が浮かび上がるのがこの曲の歌詞の魅力である。

解釈は唯一絶対のものではないのだが、川床の歌唱は言葉を丁寧に追ったものだったように思う。


武満徹作詞・作曲の「小さな空」。武満の歌曲の中でも人気の高い作品であり、実演で聴く機会も多い。
この曲も幼年時代を回顧している歌である。
川床は、ラストを転調して歌っていたが、これまでそうしたバージョンを聴いたことはないため、そうした譜面が存在するのか、個人的に改変したのかどうかは分からない。武満は歌曲に関しては、「自由に歌えるように」と歌声の単旋律のみ書き、基本的には伴奏などは作曲しなかった。


休憩を挟んで、ドヴォルザークの歌劇『ルサルカ』より「月に寄せる歌」。淀みない歌声が印象的である。


オスカー・ハマースタインⅡ世作詞・リチャード・ロジャース作曲のミュージカル『サウンド・オブ・ミュージカル』から「すべての山に登れ」。川床によると、コロナ禍を乗り越えるメッセージを込めて選曲されたものだという。
以前にも書いたことがあるが、私はこの曲に思い出がある。高校1年生の音楽の授業で、映画「サウンド・オブ・ミュージック」からいくつかの場面を選んで演技と合唱を行うことになり、私は「すべての山に登れ」班に入り、セリフを語った後で皆で英語詞を合唱した。私は一般的な男性よりも高めの声も出せるので、受けが良かったような記憶もあるが、詳しくは覚えていない。ちなみに演技の方は「渋い」と言われた。

川床は日本語訳詞と英語詞を混ぜたテキストを採用。サビに当たる部分はやはり英語で歌っていたが、この方がしっくりくる、というよりもサビを日本語詞にするのは難しいだろう。少なくとも英語詞のようにドラマティックにするのは困難である。


メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番。演奏前に木村真理子が曲目の解説を行う。この曲はメンデルスゾーンが30歳の時に書かれたもので、当時、メンデルスゾーンはシューマンから「19世紀のモーツァルト」(本物のモーツァルトは18世紀の人である)と評されており、ピアノ三重奏曲第1番も「ベートーヴェン以降、最も偉大なピアノ三重奏曲」と絶賛されていた。今でこそシューマンは作曲家というイメージしかないが、生前は音楽批評を音楽の一ジャンルにまで高めた批評家として知られていた。シューマンは音楽家を志したのが二十歳前後と遅かったため、楽器の演奏や管弦楽法などには苦手意識を持っており、元文学者志望という自己の資質が生かせる批評に力を入れていた。ドビュッシーも作曲家としてより批評家としての評価が生前は高かったが、シューマンにしてもドビュッシーにしても生前の姿が伝わっていないのは残念である。なお、ドビュッシーが行った批評に関しては、今も日本語訳されたものを手軽に読むことが出来るが、かなり偏った辛辣なものである。

さて、シューマンに絶賛され、その後も作曲のみならず多方面で才能を発揮したメンデルスゾーンであるが、38歳の若さで他界することになる。モーツァルトよりは3歳長生きしたが、才能があり過ぎると余り長生きは出来ないのかも知れない。

初演時はメンデルスゾーン自身がピアノを弾いたと伝わるピアノ三重奏曲第1番。ロマンティシズムに溢れた第1楽章と第2楽章、愉悦感に富んだ第3楽章、高度な作曲技術が駆使された第4楽章など、いずれも魅力的であり、演奏も曲調を丁寧に描き分けていたように思う。


アンコールとして全員による島崎藤村の詩に大中寅二が曲を付けた「椰子の実」が演奏された(ピアノは連弾版であった)。

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2022年6月 3日 (金)

コンサートの記(779) ムジークフェストなら2022@奈良県コンベンションセンター天平ホール 工藤重典&大萩康司

2022年5月29日 新大宮の奈良県コンベンションセンター天平ホールにて

奈良市は気温が上がり、最高気温は32度を記録する。

午後6時30分から、奈良県コンベンションセンター天平ホールで、フルートの工藤重典とギターの大萩康司による演奏を聴く。基本的にデュオだが、ソロも1曲ずつ用意されている。

曲目は、プーランクの「常動曲」、C.P.E.バッハの無伴奏フルートのためのソナタ イ短調(工藤重典独奏)、ピアソラの「タンゴの歴史」、ヴィラ=ロボスの5つの前奏曲より「叙情的な旋律」&「インディオへの讃歌」(大萩康司独奏)、シャンカールの「魅惑の夜明け」

工藤重典は、現代日本フルート界最大の大物といって間違いのない存在であるが、そんな工藤が出演するコンサートが、1時間ちょっとの尺とはいえ、500円で聴けるのだからかなりお得である。


プーランクの「常動曲」は、元々はピアノ曲である。「パリのモーツァルト」と呼ばれたプーランク。パリの街中を鼻歌交じりで歩いているような愉悦感が伝わってくる(私はパリには一度も行ったことがないのであるが)。


C.P.E.バッハの無伴奏フルートのためのソナタ。工藤によると、父親であるJ.S.バッハは無伴奏作品を書いているが、同時代の作曲家は無伴奏作品をほとんど手掛けていないそうである。
通常、3楽章の曲は、急・緩・急で構成されていることが多いが、この曲は、緩・急・急という珍しい構成になっている。時代の制約が感じられる部分もあるが、典雅な楽曲である。


ピアソラの「タンゴの歴史」。工藤はピアソラを「ピアソーラ」と発音する。
「タンゴの歴史」は、「娼家1900」「カフェ1930」「ナイトクラブ1960」「現代のコンサート」の4曲からなる。

売春宿で始まったといわれるアルゼンチンタンゴ。1曲目にはそれを表す「娼家1900」というタイトルが付けられている。タンゴの代表的な楽器であるバンドネオンの音色には売春宿の哀愁が宿っているなどといわれることもあるが、「娼家1900」はそれを感じさせない明るめの楽曲である。売春婦の気休めの音楽だったことを描いてもいるのだろう。
「カフェ1930」になると哀感が加わり、いわゆる「タンゴ」に近い音楽となる。「ナイトクラブ1960」は情熱的で、日本人が抱くタンゴのイメージに更に近づく。最後の「現代のコンサート」は、1990年を描いた楽曲で、ピアソラが世俗の音楽からクラシックにまで高めたタンゴが奏でられる。客席も盛り上がっていた。


ヴィラ=ロボスの5つの変奏曲より「叙情的な旋律」&「インディオへの讃歌」。
ヴィラ=ロボスはブラジルの作曲家だが、大萩は今年がブラジル独立200周年に当たるということを紹介する。
「ブラジル風バッハ」という楽曲の数々で知られるヴィラ=ロボス。「叙情的な旋律」はその名の通り南米の作曲家が書いた叙情的なギター曲という趣向だが、「インディオへの讃歌」はブルースのような要素も聞こえ、結構面白い曲となっている。


シャンカールの「魅惑の夜明け」。
インドのシタール奏者であるラヴィ・シャンカール。シタールというと、ビートルズの「ノルウェーの森」で鳴っていることで有名だが、「ノルウェーの森」でシタールを弾いているジョージ・ハリスンはシャンカールに憧れてシタールを始めており、後にはインドでシャンカールに直接シタールを教わったりもしている。
「魅惑の夜明け」は、大萩康司によると「鹿を呼ぶための音楽」だそうで(大萩は友人のフルート奏者である江戸聖一郎からその話を聞いたらしい)、工藤も「じゃあ奈良で演奏しなくちゃね」と語った。
当然ながら東洋音楽的な要素も盛り込まれた楽曲で、神秘性にも溢れている。


アンコール演奏は、ベートーヴェンのソナチネ。哀感のある曲で、それがタンゴにも繋がっている。

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コンサートの記(778) ムジークフェストなら2022@奈良県コンベンションセンター天平ホール The Osaka Brassters

2022年5月29日 新大宮の奈良県コンベンションセンター天平ホールにて

奈良へ。ムジークフェストなら2022を聴くためである。

一昨年に完成した奈良県コンベンションセンター天平ホールで行われる2つの室内楽コンサートが目当て。

ムジークフェストならは、一昨年は中止、昨年は配信公演のみに限られたため、奈良県コンベンションセンター天平ホールで、ムジークフェストならの有観客公演が行われるのは今年が初めてとなる。

奈良県コンベンションセンターは、近鉄新大宮駅から西へ10分ほど歩いたところにある。北には奈良市役所があり、南にはNHK奈良放送局の新庁舎が奈良県コンベンションセンターと時を同じくして建てられている。天平ホールがあるのは、蔦屋書店やスターバックス、ファミリーマートなどが入った「観光振興施設」の2階である。コンベンションホールなどが入った北側の「コンベンション施設」と南側の「観光振興施設」との間に天平広場があり、ここでアマチュアによるジャズなどの演奏が行われ、その周辺が飲食スペースとなっていて屋台などが出ている。コロナ禍はまだ続いているということもあって、天平広場の演奏ステージと飲食スペースの周囲は柵で覆われており、入場時には手指の消毒が必要で、また滞在時間は1時間以内に限られている。

天平ホールは、多目的の小ホールであるが、音響設計などはなされていないようで、基本的には講演などが中心となりそうである。演劇の公演も可能なようだが、舞台の奥行きや袖の深さなどは確認しづらい。


まずは午後3時15分開演の、The Osaka Brasstersの公演を聴く。
The Osaka Brasstersは、オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ(旧大阪市音楽団)のメンバーからなる金管五重奏団である。約2年前のコロナ下での結成。コロナで仕事がなくなってしまった時に、「じゃあ配信をしてみるか」ということで、5人で配信を行ったのが始まりだそうである。

メンバーは、新穂優子(トランペット)、中嶋尚也(トランペット)、伊藤数仁(ホルン)、戸井田晃和(トロンボーン)、北畠真司(チューバ)。

曲目は、宮川彬良の「ゆうがたクインテット」、宮本正太郎編曲による「日本の歌による幻想曲」、レナード・バーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」より“プロローグ”“トゥナイト”“アメリカ”(ジャック・ゲイル編曲)、久石譲の「ジブリメドレー」(宮本正太郎編曲)、ハドソン編曲の「ダニー・ボーイ(ロンドンデリーの歌)」、酒井格(さかい・いたる)の「たなばた」

前半は北畠真司が、後半は戸井田晃和が司会を務める。

奈良での公演ということで、北畠真司がメンバーに「奈良にまつわるエピソードを用意するよう」促したが、事前に挙げてきたのは新穂優子だけだったそうである。新穂優子は奈良を代表する高級住宅街である学園前の皮膚科で初めてピアスを開けたそうである。

北畠真司は、奈良県橿原市の出身で、八木中学校から高田高校、大学は大阪府柏原(かしわら)市にある大阪教育大学教養学科芸術専攻音楽コース(いわゆる教育大学のゼロ免コースの一つ)を出ているのだが、大阪教育大学の音楽棟は大学の中でも一番奥にあり、あとちょっとで奈良県香芝市という場所に位置しているそうで、「ほとんど香芝」らしい。
ちなみに、新穂優子も大阪教育大学教養学科芸術専攻音楽コースで、新穂の方が先輩なのだが、オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ入団は北畠の方が早いそうである。

天平ホールは音響面で優れているということはないようだが、金管五重奏ぐらいの響きはちょうど良く聞こえる。

宮本正太郎編曲の「日本の歌による幻想曲」は、元は四季メドレーとして依頼され、プログラムの書かれたチラシにも「四季メドレー」と記されているが、少し凝った出来になったため、新たにタイトルを与えられたようである。「雪(雪やこんこ)」、瀧廉太郎の「花」、「七夕」、「ちいさい秋みつけた」の4曲からなる。

「ジブリメドレー」は、「となりのトトロ」「天空の城ラピュタ」「もののけ姫」の3つの映画から曲が取られているが、「となりのトトロ」「君をのせて」「アシタカとサン」「さんぽ」の4曲からなっている。

「たなばた」は、童謡の「七夕」とは無関係の酒井格のオリジナル曲。なかなかかっこいい曲である。

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2022年5月 1日 (日)

コンサートの記(776) 「ローム ミュージック フェスティバル 2022」リレーコンサートA「萩原麻未 featuring 岡本麻子」

2022年4月23日 左京区岡崎のロームシアター京都サウスホールにて

正午から、左京区岡崎のロームシアター京都サウスホールで、「ローム ミュージック フェスティバル 2022」リレーコンサートA「萩原麻未 featuring 岡本麻子」を聴く。個性派ピアニストとして人気の萩原麻未が、岡本麻子(まこ)と行うピアノ・デュオコンサート。

2020年はコロナのために中止、2021年は直前になって配信のみに切り替わったローム ミュージック フェスティバル。久しぶりの実演ということになる。

曲目は、モーツァルトの2台のピアノのためのソナタ ニ長調、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」(ラヴェル自身による2台ピアノ版)、プーランクの「シテール島への船出」、ラヴェルの「耳で聴く風景」(「ハバネラ」「鐘が鳴るなかで」)、チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」組曲(N・エコノム編)。
途中休憩15分を含み、上演時間約1時間半のコンサートである。

タイトルは、「萩原麻未 featuring 岡本麻子」となっているが、立場は対等。モーツァルトの2台のピアノのためのソナタ、プーランクの「シテール島への船出」、ラヴェルの「耳で聴く風景」では萩原麻未が第1ピアノ、その他の曲では岡本麻子が第1ピアノを奏でる。

萩原麻未は青の、岡本麻子は黄緑色のドレスを纏って登場。譜めくり人をつけての演奏である。


今日は前から6列目の真ん中の席に座るが、この席は直接音が届きすぎるため、モーツァルトなどは音像が大きすぎて、席のチョイスに失敗した感じであった。その他の曲は良かったが、もう少し後ろの席であった方が、音楽の全体像を把握しやすかったように思う。

とはいえ、洗練されつつも力強く、表現力豊かな二人のピアノを聴いているのは楽しい。「音楽は何よりも楽しさが大事」ということを思い出した。


モーツァルトの2台のピアノのためのソナタ ニ長調。1990年代に、この曲を聴くと知的能力が向上するという学説が発表されたことがあるが(モーツァルト効果)、現在ではそれは否定されている。普通に考えて音楽をちょっと聴いたぐらいで知的能力が向上するとは考えにくいのだが、非常にチャーミングな楽曲であり、リラクゼーション効果はあるため、それが調査結果に結びついたのかも知れない。
先に書いた通り、ステージから近めの席を選んだのは、この曲に関しては失敗だったと思うが、音楽自体を愉しむことは出来る。


萩原麻未は、パリ国立高等音楽院に学び、パリ地方音楽院で室内楽を学んでいて、十八番はラヴェルのピアノ協奏曲ということでフランスものは全般的に得意である。
「エスプリ・クルトワ」溢れるフランシス・プーランク(「パリのモーツァルト」との異名を取った)、ドビュッシーとともに近代フランス音楽を代表する作曲家であるラヴェルの演奏も当然ながら優れたものとなる。プーランクにおける洗練と愛らしさ、そしてバスク地方に生まれ、スペイン的な熱狂と土俗感にも富むラヴェルの演奏なども巧みである。岡本麻子は、萩原ほど知名度は高くないが、堅実にして確かな技術と表現力を感じさせる。


チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」組曲。編曲を担当したニコラス・エコノム(1953-1993)は、キプロス生まれの編・作曲家だそうだが、ピアニストに高い技巧を求める編曲を施している。

萩原と岡本の丁々発止のピアニズム、表現力とレンジの幅広さ、優雅さと神秘性豊かな編曲など聴き所満載であり、一人では生み出せないピアノ・デュオならではの音楽と、二人のピアニストが生み出す親密な空気を味わうことの出来る演奏会であった。

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2022年3月23日 (水)

コンサートの記(769) アンサンブル九条山コンサート Vol.10「標-SIGNE」

2022年3月11日 京都府立府民ホールアルティ(ALTI)にて

午後7時から京都府立府民ホールアルティで、アンサンブル九条山コンサート Vol.10「標(しるし)-SIGNE」を聴く。全曲、2010年代に書かれた邦人作品で編まれたプログラム。

曲目は、馬場法子の「カノンではない変奏曲」(2011)、網盛将平(あみもり・しょうへい)の「Practice of chimeric movement on static syntax」(2015)、前川泉の「レンブラントとして笑う自画像」(2019。アンサンブル九条山公募選出作品)、西村朗の「氷蜜(ひみつ)」(2019)、坂田直樹の「カンデラ」(2019。世界初演)、坂田直樹の「黒曜石の波」(2019。アンサンブル九条山、アンサンブル・エクート共同委嘱作品。日本初演)。

作曲者3名が会場に駆けつけており、舞台転換の合間にトークのコーナーが設けられ、パーカッションの畑中明香(はたなか・あすか)が馬場法子に、ヴァイオリンの石上真由子が前川泉(女性)に、ソプラノの太田真紀が坂田直樹にインタビューを行った。
馬場と坂田はパリ在住。前川は現在、東京藝術大学大学院修士課程に在学中である。


古典派やロマン派の時代を経ずに、素朴な作曲が行われていた時期に続いてほぼ現代音楽から西洋音楽作曲法の受容が行われた日本。他の東アジアの国に先駆けて西洋文化を取り入れているとはいえ、音楽史がいびつになるのはどうしても避けられない。今日聴いた曲も、いずれも面白いところはあったが、後世まで生き残る作品なのかどうかは正直良く分からない。良く分かったら、私も音楽史上に名を残せるわけだが、そんな才能があったら千年に一人の天才である。


馬場法子の「カノンではない変奏曲」。編成は、フルート(若林かをり)、クラリネット(上田希)、ヴァイオリン(石上真由子)、チェロ(福富祥子)。指揮を佐渡裕の弟子で大阪教育大学の教員でもあるヤニック・パジェが務める。

意図的に息漏れをする管楽器がおもちゃの楽器のような愛らしい音色を出してスタート。ヴァイオリンとチェロがうねり、やがてチェロが寄せては引く波のような音型を奏で始める(指揮者の影になっていたので見えなかったが、弦に洗濯ばさみを挟むという特殊奏法を行っていたようだ)。ラストはヴァイオリンが弓ではなく青い棒のようなもので弦を擦るという特殊奏法を行っていた。


網守将平の「Practice of chimeric movement on static syntax」。出演は、太田真紀(ソプラノ)と森本ゆり(ピアノ)。

太田真紀と森本ゆりがピアノの連弾をしながらセリフを喋るというスタイルで開始。英語そして日本語が語られ、旋律へと変わっていく。ポピュラー音楽ならピアノの弾き語りはごくごく当たり前だが、クラシックでピアニストが語ったり歌ったりすることはまずないので珍しい(以前、同じアルティで児玉桃が語りながらピアノを弾いていたことはある)。
その後、太田真紀が後方へと移り、客席に背中を向けながらうなったり語ったりを行い、最後は少し上手寄りに移動して客席に横顔を見せながら叫んだりしていた。


前川泉の「レンブラントとして笑う自画像」。古代ギリシャの伝説的画家であるゼウクシスが、醜い老婆から「自分を女神として描いて欲しい」と頼まれ、仕事を開始するも余りの滑稽さに笑い転げ、息を詰まらせて死んだ、という話を題材にした作品をレンブラントが描いており、それを音楽として再現するという試み。編成は、バス・フルート(若林かをり)、バス・クラリネット(上田希)、チェロ(福富祥子)。石上真由子が行ったインタビューによると、前川は自身が習っていたのはヴァイオリンであるが、なぜか低音楽器が好きで、このような特殊な編成になったという。

各楽器が震えるような音を出す中、奏者達が実際に笑い声を上げていく。その後、楽器の旋律も笑いを模したようなものに近づいていく。


西村朗の「氷蜜(ひみつ)」。若林かをりによるフルート独奏作品である。いかにもフルート独奏のための現代曲といった特殊奏法満載の曲であるが、弱音で彼方から祭り囃子のような旋律が吹かれるのが印象的。今日聴いた作品の中ではこの瞬間が一番魅力的に聞こえた。


京都市出身で、今年41歳の若手作曲家、坂田直樹による「カンデラ」。上田希によるクラリネット独奏作品で、坂田は上田が演奏することを念頭に置いて作曲。上田が高い技術を持っているということで、より難度の高い楽曲となったようだ。
クラリネットの音をキャンドルの明滅に例えたもののようで、中盤に表れる重音奏法が光と影の重奏のようで印象的である。


最後の曲となる坂田直樹の「黒曜石の波」。坂田が大分県の姫島で見た黒曜石の輝きを音の波や潮騒に見立てた作品である。編成は、フルート(若林かをり)、クラリネット(上田希)、ヴァイオリン(石上真由子)、チェロ(福富祥子)、ピアノ(森本ゆり)、打楽器(畑中明香)。ヤニック・パジェの指揮による演奏。
3つの楽章からなるが、この曲はイメージがしやすかった。特にピアノの低音と鉄琴の煌めきが描写的で受け取りやすい。現代音楽の聴き方として、耳で聴くというよりは音を頼りに想像を楽しんだ方が理解しやすいということが上げられると思うが、この曲はまさに想像力で聴く作品であった。

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2021年11月14日 (日)

コンサートの記(752) 「ALTI 民族音楽祭~津軽・中国・モンゴル・琉球の音楽~」@京都府立府民ホールアルティ

2021年10月28日 京都府立府民ホールアルティ(ALTI)にて

午後6時から、京都府立府民ホールアルティで、「民族音楽祭~津軽・中国・モンゴル・琉球の音楽~」という音楽会に接する。津軽三味線(itaru)、二胡(尾辻優依子)、馬頭琴&ホーミー(福井則之)、ヴァイオリン(提琴&ヴァイパー。大城淳博)に古楽器のヴィオラ・ダ・ガンバ(中野潔子)を加え、各国・各地域の音楽が奏でられる。

曲目は、「もみじ」(全員)、「津軽よされ節」(三味線)、「楓葉繚乱(ふうようりょうらん)」(三味線)、「ナラチメグ」(馬頭琴、提琴、ガンバ)、「蘇州夜曲」(二胡)、「灯影揺紅」(二胡)、「スーホの白い馬」(馬頭琴)、「ホーミー・ホルバー・アヤルゴー」(馬頭琴&ホーミー)、「こきりこ節」(三味線、二胡)、「だんじゅかりゆし」(提琴、ガンバ)、「久高万寿主/唐船どーい」(ヴァイパー)、「かごめかごめ」の即興演奏(三味線、提琴、ガンバ)、「牧羊姑娘」(二胡、馬頭琴)、即興演奏(馬頭琴、三味線)、「茉莉花」(二胡、提琴、ガンバ)、「アメイジンググレイス~津軽あいや節」(三味線)、「津軽じょんがら節」(三味線)、「良宵」(二胡)、「三門峡暢思曲」(二胡)、「ドンシャン・グーグー」(馬頭琴)、「白馬」(馬頭琴)、「月ぬ美(ちゅら)しゃ」(ヴァイパー、ガンバ)、「てぃんさぐぬ花/闘山羊」(提琴、ガンバ)、「賽馬」(全員)。

全席自由だが、前後左右1席空けのソーシャルディスタンススタイルで、舞台席の上方、二階席と呼ばれる部分(一般的な二階席とは違う意味で使われている)は今日は関係者以外立ち入り禁止となっている。


ヴァイパーという楽器は、目にするのもその名を聞くのも初めてだが、アメリカで開発された6弦のエレキヴァイオリンで、日本では大城淳博が第一人者ということになるようである。

馬頭琴は演奏や曲を録音で聴いたことがあり、以前に訪れた浜松市楽器博物館では、「体験できる楽器」の中に馬頭琴(もどき)が含まれていたので、ちょっと音を出したこともあるのだが、演奏を生で聴くのは初めてかも知れない。

ホーミーは、今から30年ほど前に日本でも話題になったモンゴルの歌唱法である。低音の「ウィー」という声に倍音で中音域、高音域が重なるのが特徴となっている。坂本龍一の著書には、日本にホーミーを紹介したのは「いとうせいこう君」という記述があるが、これは本当かどうか分からない。坂本龍一は、日本で初めてラップを歌った人物もいとうせいこうであるとしている。


個人的なことを書かせて貰うと、民族音楽は比較的好きな方で、二十歳前後の頃にはキングレコードから出ている民族音楽シリーズのCDを何枚か買って楽しんでいた。「ウズベクの音楽」はかなり気に入った(HMVのサイトで、各曲の冒頭を聴くことが出来る)。
二胡は、姜建華が弾く坂本龍一の「ラストエンペラー」や、坂本龍一がアレンジしたサミュエル・バーバーの「アダージョ」を聴いて憧れ、キングレコードの民族楽器シリーズの中の1枚もよく聴いており、25歳の頃に先生について習い始めたのだが、色々と事情もあって3ヶ月でレッスンは終わってしまった。考えてみれば、二胡は単音しか出せない楽器なので、一人では「ラストエンペラー」を弾くことは出来ない。演劇を学ぶために京都に行く決意をしたのもこの頃ということもあり、以降は二胡とは疎遠になっている。

こうやって書いてみると、坂本龍一という音楽家の存在が私の中ではかなり大きいことが改めて分かってくる。ちなみに今日演奏された「てぃんさぐぬ花」も、初めて聴いたのは「BEAUTY」というアルバムに収められた坂本龍一編曲版であった。


客席に若い人が余りないのが残念であるが(親子連れはいた)、民族楽器が終結した演奏会を聴くという機会も余りないため、印象に残るものとなった。


福島則之の説明によると、馬頭琴は二弦からなる楽器であるが、一本の弦に馬の尻尾の毛100本ほどが束ねられているそうで、二弦と見せかけて実は二百弦という話をしていた。馬頭琴の音は人間の声に近い。西洋の楽器を含めて、これほど人間の声に近い音色を奏でる楽器は他に存在しないのではないだろうか。

ちなみに、弓の持ち方であるが、ヴァイオリンだけ上から掴むように持つオーバーハンドで、馬頭琴、二胡、ヴィオラ・ダ・ガンバは箸を持つように下から添えるアンダーハンドである。二胡とヴィオラ・ダ・ガンバは手首を返しながら左右に弓を動かすが、馬頭琴は二胡やヴィオラ・ダ・ガンバほどには弓を動かさないということもあってか、手首を固定したまま弾いている。

ヴィオラ・ダ・ガンバの、ガンバは「足」という意味で、両足で挟みながら演奏する。Jリーグのガンバ大阪も、フットボールの「フット」のイタリア語である「ガンバ」と、「頑張れ!」の「頑ば!」を掛けたチーム名である。
エンドピンのないチェロのようにも見え、ヴィオラ・ダ・ガンバのために書かれた曲も現在はチェロで弾かれることが多いことから、「チェロの祖先」と思われがちだが、実際は違う体系に属する楽器であり、弦の数も6本が基本と、チェロよりも多い。


「茉莉花」は、中国の国民的歌謡で、第二の国歌的存在であり、アテネオリンピックや北京オリンピックでも流れて話題になっている。尾辻は、上海に短期留学したことがあるのだが、街角のスーパーや薬局などで「茉莉花」の編曲版が流れているのを普通に耳にしたそうで、中国人の生活に「茉莉花」という曲が根付いているのが分かる。

「良宵」は、二胡の独奏曲の中で間違いなく最も有名な曲であり、二胡奏者は全員この曲をレパートリーに入れているはずである。作曲した劉天華は、それまで京劇などの伴奏楽器でしかなかった二胡を一人で芸術的な独奏楽器の地位まで高めた人物であり、中国の民族音楽の向上に多大な貢献を行っているが、多忙が災いしたのか37歳の若さで他界している。
「良宵」は、元々のタイトルは「除夜小唱(大晦日の小唄)」というもので、大晦日の酒宴をしている時に浮かんだ曲とされる。尾辻によると、後半になるにつれて酔いが回ったような曲調として演奏する人もいるそうである。


アンコールとして、こちらは日本の国民的歌曲となっている「故郷」が独奏のリレーの形で演奏された。

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2021年8月15日 (日)

コンサートの記(738) アンサンブル九条山コンサート VOL.12 観世流能楽師・浦田保親×アンサンブル九条山「彼岸にて」

2021年8月6日 烏丸迎賓館通りの京都府立府民ホールアルティにて

午後7時から、京都府立府民ホールアルティで、アンサンブル九条山コンサート VOL.12 観世流能楽師・浦田保親×アンサンブル九条山「彼岸にて」を聴く。文字通り、観世流の能楽師である浦田保親とアンサンブル九条山によるコラボレーション。

現代音楽への挑戦を続けるアンサンブル九条山。2010年にヴィラ九条山のレジデントであったヴァレリオ・サニカンドロによって現代音楽アンサンブルとして結成され、2015年からは演奏家による企画を主体的に行う団体として再始動している。今日の出演は、太田真紀(ソプラノ)、畑中明香(はたなか・あすか。打楽器)、石上真由子(いしがみ・まゆこ。ヴァイオリン)、上田希(うえだ・のぞみ。クラリネット)、福富祥子(ふくとみ・しょうこ。チェロ)、森本ゆり(ピアノ)。

能舞を行う浦田保親は、1967年生まれ。父親は観世流職分・浦田保利。3歳で初舞台を踏み、10歳で初シテを「猩々」で演じている。2012年には長男である親良との「ちかの会」を結成。復曲能や新作能にも意欲的に取り組んでいる。重要無形文化財総合指定保持者。


曲目は、まず早坂文雄の「佐藤春夫の詩に據る四つの無伴奏の歌」より「孤独」と「漳州橋畔口吟」の2曲が太田真紀によって歌われ、畑中明香の演奏による石井眞木の「サーティーン・ドラムス」を挟む形で残りの2曲である「嫁ぎゆく人に」と「うぐひす」の歌唱が行われる。後半にはメシアンの代表作の一つである世の終わりのための四重奏曲が演奏される。


黒澤映画の作曲家としても知られる早坂文雄。仙台生まれの札幌育ち。家庭の事情で中学卒業後すぐに社会に出ており、作曲は独学である。同じ北海道出身の伊福部昭や三浦敦史らと札幌で新音楽連盟を結成。この頃、サティ作品に傾倒し、いくつかの曲を日本初演している。1939年に東宝映画に音楽監督として入社し、黒澤明との名コンビで知られたが、結核の悪化により41歳の若さで他界。その死に際して黒澤明は、「両腕をもがれたよう」と悲嘆に暮れている。同じく結核に苦しんでいた武満徹は、早坂のために「弦楽のためのレクイエム」を書き上げた。
「佐藤春夫の詩に據る四つの無伴奏の歌」は、佐藤春夫のごくごく短い詩の一節を選んで作曲したものだが、四つの歌を通すと一つの物語が浮かぶように設計されている。
汎東洋主義を掲げた早坂文雄。この歌曲でも尺八の息づかいを応用するなど、独特の試みがなされている。
「漳州橋畔口吟」に浦田保親が登場。扇子を持って舞う。


石井眞木(男性)の「サーティーン・ドラムス」。タイトル通り13の太鼓で演奏される曲である。数種類のバチの他、素手でも演奏が行われる。畑中明香のダイナミックな演奏が魅力的である。
浦田保親は、榊の付いた杖を持って登場。神へ奉納するような舞を見せる。


メシアンの世の終わりのための四重奏曲(ヴァイオリン、クラリネット、チェロ、ピアノのための)。20世紀に作曲された最高の室内楽作品の一つとして高く評価されており、その特異な曲名と共に有名である。演奏は、石上真由子、上田希、福富祥子、森本ゆり。
森本ゆりの硬質のピアノが、全曲を通して良いアクセントとなっている。

世の終わりのための四重奏曲は、第二次大戦中にドイツの捕虜収容所にて書かれ、1941年にメシアン自身のピアノで初演されている。ヴァイオリン、クラリネット、チェロ、ピアノという編成は、たまたま捕虜収容所で一緒だった演奏家を念頭に入れたが故の産物である。世の終わりのための四重奏曲というタイトルは『ヨハネ黙示録』に由来するが、意味的には「時の終わりのための四重奏曲」とした方が原題に近いようである。

この曲では浦田は増女の能面を付けて登場。まずは赤の着物、次いで白の着物、最後は頭に鳳凰の飾りを付けた天女の衣装で現れる。
アルティは舞台が可動式で自由に設計することが出来るが、今日は中央部を張り出した独特の設置。舞台奥側から俯瞰で見ると凸型に見えるはずである。

能面を付けると視界がほとんど遮られるはずだが、浦田はそれを感じさせないキレのある舞を披露。舞台端や演奏家のすぐそばまで寄るため、見ているこちらがヒヤヒヤしたりもした。

オリヴィエ・メシアンの母親は、詩人であり、メシアンがまだお腹の中にいる時に、「いまだかつて誰も聴いたことのない音楽が聞こえる」という詩を書いたというが、生まれた息子は本当に「誰も聴いたことのない音楽」を生み出すことになる。
世の終わりのための四重奏曲は、この世とあの世の対比が描かれるのだが、それはまさに能が描き続けてきた世界である。
上田希のピアニシモで彼方から響き始めるかのようなクラリネットの音は、異人である能の登場人物の肉声のように聞こえたりもする。
余り指摘されてはいないはずだが、メシアンの音楽は天体と親和性があり、天の川や星々の煌めきが音楽で描写されたようなところがある。「天国への階段」とされるラストも、同時に満点の星空へと吸い込まれていくような「魂の昇華」が目に見えるかのようだ。

浦田の舞も、本当の意図は分からないが、衣装の変遷とメシアンの音楽とのストーリー性、また演奏者が全員女性であるということから、三者三様というよりも三つの女性の舞を通して「女人往生」に繋がるものがあるようにも見えた。一言で表せるほど単純なものでもないと思われるが。

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2021年7月26日 (月)

ボザール・トリオ ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第5番「幽霊」

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2021年7月11日 (日)

楽興の時(42) 「テラの音 Vol.30」 Duo Felicello(デュオ・フェリーチェロ)デビューライブ

2021年7月2日 真宗大谷派小野山浄慶寺にて

午後7時から、京都御苑の近くにある真宗大谷派小野山浄慶(じょうきょう)寺で、「テラの音 vol.30」を聴く。浄慶寺で「テラの音(ね)」が開催されるのは、1年ぶりとなる。コロナ禍に加えて、共同主宰である牧野貴佐栄の体調面での問題もあり、なかなか上演が出来ないでいた「テラの音」であるが、次回は10月にやはり浄慶寺で行われることが決まっている。

今回は、チェロデュオであるDuo Felicello(デュオ・フェリーチェロ)の出演。メンバーは、三井菜奈生と徳安芽里。実は今回がデビュー公演になるという。

三井菜奈生は、香川県出身。4歳でピアノ、8歳でチェロを始め、12歳から高校卒業まで、かがわジュニアニューフィルハーモニックオーケストラに所属。第20回札幌リスト音楽院セミナーでは、名チェリストとして知られるミクローシュ・ペレーニのレッスンを受けている。大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻音楽コース卒業。

徳安芽里は、奈良県出身。浄土真宗本願寺派の大学である相愛大学音楽学部を卒業。桐朋オーケストラ・アカデミー研修課程を修了している。第8回全日本芸術コンクール大学生部門で奨励賞を受賞。


曲目は、J・S・バッハの「G線上のアリア」(管弦楽組曲第3番より“エア”)、ボッケリーニの2本のチェロのためのソナタ、「日本の四季の歌メドレー」、クンマーの「ヘンデルの主題による変奏曲」、ドッツァーの「モーツァルトの主題による変奏曲」、モーツァルトの「鏡のカノン」、バリエールの2本のチェロのためのソナタ ト長調。

見慣れぬ名前の作曲家も多いが、多くはチェリスト兼作曲家だった人のようで、チェロのための練習曲なども書いており、チェロを習っている人にとってはお馴染みの作曲家のようである。

通常の「テラの音」は二部制で、間に住職による法話が入るが、今回は時短にする必要があるということで、最初に浄慶寺の中島浩彰住職による法話があり、来週は七夕ということで「五節句」の話や、仏教が「私」を巡る宗教であるということなどが語られる。


おなじみの「G線上のアリア」でスタート。

「メヌエット」でお馴染みのボッケリーニであるが、それ以外の曲は余り知られていなかったりする。生前は作曲家としてよりもチェロ奏者として有名だったようで、2本のチェロのためのソナタは、チェロデュオの定番とされているようである。スケール豊かで、伸びやかな歌が特徴。

「日本の四季の歌メドレー」は、季節を題材にした日本の童謡など12曲からなるメドレー。春に始まり冬に終わる。演奏されるのは、「春が来た」「花の街」「早春賦」「背比べ」「茶摘み」「紅葉」「里の秋」「手袋の歌」「雪」などで、断片のみが演奏される曲もある。

クンマーの「ヘンデルの主題による変奏曲」。ここで用いられているヘンデルの主題とは、「勝利の歌」としても知られる「見よ、勇者は帰る」である。
トークは主に徳安が受け持っており、「運動会などの表彰式で流れていた曲」と説明していた。

ドッツァーの「モーツァルトの主題による変奏曲」で用いられる「モーツァルトの主題」というのは、歌劇「ドン・ジョヴァンニ」のアリア“お手をどうぞ”のメロディーである。
“お手をどうぞ”の主題による変奏曲は、ショパンなども作曲しているが、チェロは「人間の声に最も近い楽器」と呼ばれることも多く、チェロのことを知り尽くし、教則本も書いたドッツァーが、ドン・ジョヴァンニの歌うアリアを基に書いた変奏曲も魅力的である。

モーツァルトの「鏡のカノン」は、2人の演奏家が1枚の楽譜を上からと下から、同時に弾いて演奏が成り立つという楽曲である。J・S・バッハがこうした作品を多く残したが、モーツァルトも作曲しているようだ。ただこの作品には偽作説があるらしい。

バリエールの2本のチェロのためのソナタ ト長調。バリエールはフランスの作曲家兼チェリストで、生前は名声を博したようだが、わずか40歳で他界している。
この曲もチェリストの間では人気があるようで、典雅な第1楽長、憂いを帯びた第2楽章、華やかな第3楽章のいずれもが魅力的な曲想を持っている。


アンコールとして、ベートーヴェンの「トルコ行進曲」より冒頭部分が演奏された。

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