美術回廊(80) 「アンディ・ウォーホル・キョウト」
2022年9月21日 左京区岡崎の京都市京セラ博物館・東山キューブにて
京都市京セラ美術館の新館である東山キューブで、「アンディ・ウォーホル・キョウト」を観る。アメリカのモダンアートを代表するアンディ・ウォーホル(本名:アンドリュー・ウォーホラ。1928-1987)の没後最大級の回顧展である。ちなみにウォーホルは、1956年と1974年に来日しており、京都も訪れているようである。
会場内はスマホ内蔵のカメラでの撮影のみ可であり、フラッシュの使用や動画撮影は禁止となっている。
ウォーホルの美術の特徴は、ポップなタッチや豊かな色彩もさることながら、「芸術における唯一性の逆転」を最大のものとしている。それまでの美術は、「一点しかないこと」「真作であること」に価値があったのだが、ウォーホルは大量生産・大量消費の時代を反映して、同じものをいくつも描き、オリジナリティも否定して、「唯一でないことの唯一性」を示すことの成功した。そうしたポップアートを提唱したのはウォーホルが最初であったはずである。そこにはあるいは「ミニマル」という観念が作用していたかも知れない。
ウォーホルが京都を訪れた時のスケッチの展示があるほか、YMO時代の坂本龍一や葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」を取り入れたアートがあり、日本からの影響も分かりやすく示されている。坂本龍一の肖像は、2枚1組であるが、同様の肖像画としてアレッサ・フランクリンやシルヴェスター・スタローンのものが並んでいる。また、本展覧会のポスターに採用されている3つの顔が並んだマリリン・モンローのものも観ることが出来る。
有名なキャンベルスープの缶を描いた作品や、ジャクリーン・ケネディの複数の表情をモチーフにした「ジャッキー」という作品などが興味深い。
プライベートを明かさなかったウォーホルであるが、敬虔なキリスト教徒であり、協会での礼拝を欠かさなかった。展覧会の後半には、キリスト教をテーマにした作品も並ぶが、「最後の晩餐」には、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」に20世紀のアメリカ的な要素を持ち込んだオリジナリティを放棄したことで逆に独自のオリジナリティを発揮するというウォーホルらしい技巧がちりばめられている。
ウォーホルの「生死観」については、壁に以下のような文字が投影されている。「ぼくは死ぬということを信じていない。起こった時にはいないからわからないからだ。死ぬ準備なんかしていないから何も言えない(I don't believe it(death),because you're not around to know that it's happend.I can't say anything about it because I'm not prepared for it.)」
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