これまでに観た映画より(277) 京都シネマ ペルー映画祭「残されたぬくもり」
2022年1月29日 京都シネマにて
京都シネマで、ペルー映画祭「残されたぬくもり」を観る。2017年製作のドキュメンタリー映画。スペイン語と、ペルーを始めとする南アメリカ太平洋側で用いられるケチュア語(スペインがラテンアメリカを征服する以前から用いられている現地の原語で、ペルーの公用語となっている)による作品である。
1980年代、ペルーでは毛沢東思想にかぶれた反政府組織「ペルー共産党 センデロ・ルミノソ(輝ける道)」が武力闘争を開始し、内乱状態となる。その最中、虐殺や虐待が起こったのだが、犠牲になったペルー人民の約75%が先住民であった。人種差別が起こっていたことが分かる。ちなみにペルーの人口の約60%がメスチソ(スペイン系と現地人の混血)、先住民は25.8%で、白人が6%である。
「残されたぬくもり」は、肉親を殺害された女達やその子供、虐殺を行った側の元警察官(原住民は警察からテロリストと同一視され、蹂躙、殺害された)などのケチュア語のブルースと当時の悲劇を綴った詩の朗読からなる。上映時間69分。短編というほどではないが、短めの作品である。
残された人々の証言により、先住民がいかに非人間的な扱いをされたかを知ることが出来る。女性達は警察官によって犯され、トラックに袋のように吊されたという。
「ペルー共産党 センデロ・ルミノソ」は、ある日、地平線の彼方から姿を現したという。銃と鎌を手にしていた。彼らは、「こんな社会は止めにしよう。俺たちの政府を作る」と嘯いていた。程なく彼らは区役所を襲撃。優秀な公務員達の頭を石で叩き割った。悪夢の始まりである。その悲劇は今も歌となってうたいつがれている。
元警察官のシンガーの証言もある。警官になってすぐに「訓練」と称して前線に送られたそうである。同期が次々とテロリストによって殺害されていく。犠牲となったのは彼の知り合いの警官だけで50人、警察官全体では何人になるのか想像も付かないそうだ。「今日俺の番か、明日俺の番か」と恐怖に震える日々が続いたという。
映画は彼がボーカルを務めるバンドのケチュア語による鎮魂歌によって締めくくられる。
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