これまでに観た映画より(346) 伊藤沙莉&須賀健太主演「獣道」
2024年9月13日
ひかりTVの配信で、日英独合作映画「獣道」を観る。監督・脚本は、「ミッドナイトスワン」の内田英治。出演:伊藤沙莉(主題歌も担当)、須賀健太(ナレーショ兼任)、アントニー(マンテロウ)、吉村界人、でんでん、矢部太郎、韓英恵、広田レオナ、近藤芳正ほか。
実話に基づく話とされる。
長く続く初恋の物語でもある。
伊藤沙莉演じる愛衣は、いくつもの新宗教にのめり込んでいる母親の下、地方都市で育ち(シングルマザーのようである。演じるのは広田レオナ)、やがてある新宗教の施設に引き取られて、アナンダ(釈迦の十大弟子の一人であるアーナンダに由来)の法名を得て信仰生活を送るようになるのだが、教祖ら教団幹部が警察に逮捕されて事実上の解散。初めて学校(中学校)に通うようになり、ここで亮太(須賀健太)と出会うが、共に暴走族のグループに関わるようになる。高校には進まなかったか早々に辞めたかで、彼氏が出来て、彼の家族と暮らすようになった愛衣は、髪を金色に染める。彼ら北見家は半グレ一家であり、万引きや生活保護(おそらく不正受給)で暮らしている(愛衣は煙草を吸うが、演じている伊藤沙莉は大の煙草嫌いであることが兄のオズワルド・伊藤俊介の証言で分かっている。オズワルド伊藤は喫煙者であるが、妹と同居していた時代に、「家では絶対煙草を吸わないで」と言われていたにも関わらず、風呂場で何度も吸ってしまい、ついには「家賃上げるよ(兄が4万、妹が12万と言われている)」「お前は、馬鹿お兄ちゃんか」とキレられたとのこと)。
だが彼と別れて行き場をなくした愛衣は、男絡みのいざこざに巻き込まれ、拉致された上、生き埋めにされて危うく殺されそうになる。何とか救い出された愛衣は、半グレの一家にいる同級生を訪ねてきた女の子であるユカに誘われ、家にやっかいになることに。清楚系に変わった愛衣。実の娘のように可愛がられる。だが、媚びた態度がユカの反感を買う。夜には工場で働いているということにしていたのだが、実はホステスをやっていた。愛衣の後を付けてそれを発見したユカの告げ口を受けて、義理の父親(ユカの実父。近藤芳正)が店に訪ねてくる。義絶を仄めかされた愛衣は女の武器を使って、何とか気持ちを引き留めようとするが上手くいかず、やがてホテトル嬢へと身を落とす。亮太と再会した愛衣は、「東京に行こう」と告白されるが、拒絶した。最終的には人気AV女優となり、身内からも尊敬されて多くのファンを持つことになる愛衣だが、表情はどこか寂しそうである(つま先をくっつけ、足の開きを「∧」の形にすることで愛らしくも弱々しく立っているように見える演技を行っていることが確認出来る)。
基本的に伊藤沙莉を見るための映画である。新宗教時代のすっぴんと見られる表情、清楚系からヤンキー、友人キャラに夜の仕事そして性風俗業界に生きる女性、可愛らしさから狂気までと様々な顔を見せてくれる。一々顔や声が変わるのが面白い。かなり妖艶なシーンもあり、AV女優になってからのとろんとしたあざとい目つきなどは実際にAVを見て研究しているようでもある。
伊藤沙莉の演技により、内容がかなり変わったそうで、他にも色々とあるのだが、伊藤沙莉を楽しむための映画と割り切った方が良さそうである。
なお、愛衣のモデルとなった女性がこの映画に出演しているようだが、はっきりとは分からない。
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