カテゴリー「柳月堂にて」の5件の記事

2022年9月11日 (日)

柳月堂にて(5) シャルル・ミュンシュ指揮ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団(現:ニューヨーク・フィルハーモニック) サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付き」

2022年6月22日

出町柳の名曲喫茶・柳月堂で、シャルル・ミュンシュ指揮ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団(現:ニューヨーク・フィルハーモニック)の演奏で、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」を聴く。後年、手兵であるボストン交響楽団と演奏した盤もあるのだが、ニューヨーク・フィルとの演奏は1947年に録音されたモノラル盤である。CD化もされており、現在でも入手出来るようだ。オルガンは、エドゥアルド・ニース=ベルガーの演奏のようである。

フランスを代表する指揮者の一人であるシャルル・ミュンシュ。小澤征爾やシャルル・デュトワの師としても知られている。ドイツ国境に近いアルザス地方のストラスブール(出生当時はドイツ帝国領シュトラウスブルク)の生まれ。アルザス地方は戦争によってフランス領になったりドイツ領になったりした歴史を持つが、ミュンシュの家系はドイツ系で、元はカール・ミュンヒという名前であった。後にフランスに帰化してフランス風のシャルル・ミュンシュに名を改める。ヴァイオリニストとして活躍し、ライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートマスターをしていた時代に、カペルマイスターを務めていたヴィルヘルム・フルトヴェングラーの影響を受けて指揮者に転身している。ミュンシュは即興的な音楽作りでも知られるが、「音楽は即興的でなければならない」を旨としたフルトヴェングラーの影響を受けていることは明らかである。

ミュンシュといえば、最晩年にパリ管弦楽団の初代音楽監督として録音したベルリオーズの幻想交響曲とブラームスの交響曲第1番という2つの名盤が有名である。すでに指揮者を引退していたミュンシュだが、アンドレ・マルローによる「世界に通用するフランスのオーケストラを創設したい」との強い希望によりパリ音楽院管弦楽団を発展的に改組して作られたパリ管弦楽団の音楽監督就任要請を受諾している。最後の力を振り絞って行われたこれらの演奏は、「狂気」すれすれの怪演でもあり、多くの人を虜にしてきた。

そんなこともあって、ミュンシュというと「ちょっと危ない」イメージもあるのだが、第二次大戦終結後まもなくに行われたこの録音では、端正でスマートな演奏を聴かせており、従来のミュンシュのイメージを覆す出来となっている。「熱い」イメージもあるミュンシュだが、それとは異なる演奏も行っていたことが分かる。

ミュンシュはボストン交響楽団の黄金時代を築いてもいるが、エレガントなボストン交響楽団の音に比べ、この当時のニューヨーク・フィルの音は都会的。今ではボストン響もニューヨーク・フィルもそれぞれの個性を保ちつつ、大きくは「アメリカ的」でくくれるオーケストラとなっているが、当時はかなり違う個性を持つ団体だったことがうかがえる。

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2022年8月26日 (金)

柳月堂にて(4) ルドルフ・ゼルキン(ピアノ) ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団 モーツァルト ピアノ協奏曲第27番

2019年6月26日

出町柳の名曲喫茶・柳月堂に行く。リクエストしたのは、モーツァルトのピアノ協奏曲第27番、ルドルフ・ゼルキンのピアノ、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の伴奏。コロムビア(CBS)のLP。

CDでも聴いたことのない演奏である。オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団らしい明るく輝かしい音色であるが、ウエットな響きなのが珍しい。明るくてウエットという響きはなかなか耳に出来ないものであるが、モーツァルトの曲であるということを考えると納得のいく音楽作りである。ローマ三部作や「展覧会の絵」などのショーピースでは評価が高かったが、古典派の演奏はほぼ黙殺されていたオーマンディとフィラデルフィア管。私もベートーヴェン交響曲全集などは聴いているが、モーツァルトを耳にするのは初めて。そもそも交響曲などの録音があるのかすら知らないが、オーマンディのモーツァルトはかなりハイレベルだったと思われる。

ベートーヴェンなどに定評のあるルドルフ・ゼルキンのピアノもモーツァルトの愛らしさを紡ぎ出しつつ誠実さに溢れ、音楽に奉仕している。

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2022年3月20日 (日)

柳月堂にて(3) ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)ほか

2022年3月2日

出町柳の名曲喫茶・柳月堂で、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏によるムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編曲)を聴く。

ラストが「キエフの大門」という曲で終わる「展覧会の絵」。ロシアがウクライナに侵攻している最中であり、他の誰かがリクエストしているかどうか気になったので、他に客はいなかったということもあり、リクエストノートを少し振り返って見たのだが、リクエストしている人はいないようであった。

史上最も完璧なアンサンブルの一つとして知られるジョージ・セル指揮のクリーヴランド管弦楽団。今もアメリカのビッグ5(ニューヨーク・フィルハーモニック、ボストン交響楽団、シカゴ交響楽団、フィラデルフィア管弦楽団、クリーヴランド管弦楽団)というSクラスの楽団の1つとして知られている。

楽曲の隅々にまで光を当てたような明確にして明晰な演奏であり、取りようによっては影に乏しいのがマイナスとなるが、ラヴェル寄りのオーケストレーションの煌めきを味わう演奏として、今も高い評価を受けそうである。

ビッグ5の最盛期のコンビを上げていくと、ニューヨーク・フィルハーモニックはレナード・バーンスタイン、ボストン交響楽団はセルゲイ・クーセヴィツキー、シカゴ交響楽団はゲオルグ・ショルティ、フィラデルフィア管弦楽団はユージン・オーマンディ、クリーヴランド管弦楽団はジョージ・セルとなるだろう。いずれも20世紀のコンビであるが、当時と今とでは指揮者と楽団の関係が異なるため、今後もこれらの時代を上回るコンビは出て来ないかも知れない。

ラファエル・クーベリック指揮シカゴ交響楽団によるスメタナの「モルダウ」を経た後で、次の人がリクエストしたユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏によるドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」が流れる。この演奏は人気で、以前にも1回聴いたことがある。
今でこそ大人気というわけではないユージン・オーマンディ指揮のフィラデルフィア管弦楽団の演奏であるが、往時はレナード・バーンスタイン指揮のニューヨーク・フィルハーモニックの演奏よりも人気で、ジョージ・セルとクリーヴランド管はそのあおりを食って、バーンスタインやオーマンディが録音していたCBSではなく、その傘下のエピックレーベルとしか契約出来なかった。エピックの録音技術はCBSよりも劣り、そのため最晩年にEMIに移籍したセルは、EMIの音質に満足していたという。

ユージン・オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団による「新世界」であるが、万人向けの仕上がりである。超名演ではないかも知れないが、この演奏に物足りなさを感じる人は余りいないだろう。

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2022年3月 8日 (火)

柳月堂にて(2) ブルーノ・ワルター指揮コロンビア交響楽団 ドヴォルザーク 交響曲第8番

2022年2月5日

名曲喫茶・柳月堂に入り、ブルーノ・ワルター指揮コロンビア交響楽団の演奏でドヴォルザークの交響曲第8番を聴く。

晩年、心臓発作を起こしたことにより指揮者を引退し、ビバリーヒルズで余生を過ごしていたワルターだったが、コロンビア(CBS)レーベルが、新たに開発されたステレオ録音でワルターの演奏を録音することを希望。ワルターを説得し、自前のオーケストラであるコロンビア交響楽団を結成して、心臓に持病を抱えるワルターに無理のかからないペースでのスタジオ録音を実現させる。今日聴いたドヴォルザークの交響曲第8番もそうして録音された貴重な記録であるが、かなりドラマティックな演奏であり、ワルターが最晩年であることを感じさせないエネルギーを放っている。時に阿修羅の如き怒濤の行進や熟練のドライバーのような自在なオーケストラドライブなどを見せ、今なお聴く者を魅了する。

ワルターというと、フルトヴェングラーやトスカニーニ、クレンペラーといった個性の極めて強い、というよりも今の基準でいうと異常なところのある濃い顔ぶれの中にあって、「中庸」「穏健派」というイメージが強いが、実際にはこのドヴォルザークの交響曲第8番に聴かれるようなダイナミックで個性に溢れた演奏を行っていた。強面の指揮者達と比較して顔が穏やかということもあったのだろうが、先入観は取り去って聴くべきだと思う。

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2022年2月 6日 (日)

柳月堂にて(1) ジョルジュ・プレートル指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 シベリウス 交響曲第5番

2018年2月6日

出町柳にある名曲喫茶「柳月堂」に行ってみる。柳月堂について知ったのは、京都に来て最初の年、つまり2002年のことだ。私が音楽好きであることを知った松田正隆が教えてくれたのである。ただ料金が高めということもあり、今日まで通うことはなかった。ただいつまでも行かないというのも勿体ないような気がしたので、大分時間は掛かったが、今日初めて行くことにしたのである。

洋梨のケーキとホットレモンティーを注文。聴きたい曲は収録曲を記したファイルの中から選ぶというシステムである。初めてに相応しい曲としてシベリウスの交響曲第5番を選ぶ。LPに収録されたものをセレクトするのだが、シベリウスの交響曲第5番が収められたLPは、クルト・ザンデルリンク指揮ベルリン交響楽団のものと、ジョルジュ・プレートル指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団のものしかない。クルト・ザンデルリンク指揮ベルリン交響楽団のものはCDで持っていて、シベリウスらしからぬ爆演であるということは知っている。プレートルも爆演傾向のある指揮者だが、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団とのシベリウスは存在すら知らなかったので、これを聴いてみることにする。後で調べたところ、1967年の録音で、RCAレーベルに収められたものだった。

LPなのでヒスノイズがあるが、私は子供の頃はLPで音楽を聴いていたので、そうしたものには慣れている。不満もない。
プレートルとニュー・フィルハーモニアによるシベリウスの交響曲第5番は思いのほか丁寧な演奏で、リリシズムも音の拡がりもささやかな凱歌の雰囲気も豊かである。良い演奏を発見してしまったかも知れない。

フィルアップとしてシベリウスの「悲しきワルツ」が入っている。プレートルとニュー・フィルハーモニアが「悲しきワルツ」の録音を行ったという記録はないようなので、別のコンビによるものだと思われるのだが、残念ながら誰のものなのかは確認出来なかった。結構、リタルダンドに特徴のある演奏である。

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