これまでに観た映画より(410) 「爆弾」
2025年10月31日 MOVIX京都 Dolby Cinemaにて
MOVIX京都 Dolby Cinema(南館4階)で、日本映画「爆弾」を観る。Dolby Atmosの音響。
映画「爆弾」は今日が公開初日。MOVIX京都では、普通の音響による上映を3回、Dolby Cinemaでの上映を2回行う。Dolby Cinemaでの上映は前打たれてはいないが、上映開始時間(20時5分)と特別料金であることから事実上のレイトショーでの上映である。
MOVIX京都でのレイトショーは基本、人が入らないのだが、今日は20名に足りないほどではあったものの、入った方である。
映画「爆弾」は、呉勝浩(ご・かつひろ)のベストセラー小説の映画化。東京都内のどこかに仕掛けられた大小様々な爆弾を巡る、容疑者スズキタゴサクとの心理攻防戦が見物である。エキストラも大量に参加しており、迫力ある映像となっているが、屋外よりも中野野方警察署取調室内でのやり取りの方がスリリングである。
監督:永井聡(あきら)。出演:山田裕貴(ゆうき)、伊藤沙莉、染谷将太、坂東龍汰(りょうた)、寛一郎、渡部篤郎、正名僕蔵、加藤雅也、片岡千之助、中田青渚(なかた・せいな)、夏川結衣、佐藤二朗ほか。
東京都内各所に爆弾が仕掛けられ、順次爆発していくという予告がある。それを行うのは自称、スズキタゴサクという冴えない感じの中年男性(佐藤二朗)である。元々はホームレスだったようだ。酒屋で暴れて逮捕され、野方署で取り調べを受けているスズキタゴサクは、クイズを出すというやり方で爆弾のありかを示すが、自分が仕掛けたのではなく、その場所を「霊感のようなもの」で「感じる」らしい。爆弾に霊も何もないだろうと思うが、この男が鍵を握っているのは事実だ。クイズは、最初のうちは易しい内容で、「件(くだん)」という化け物」や「焼き肉のタン(舌=下)」などから九段下のとある場所に仕掛けられていることが分かる。更に新聞発売所が九段下にあることを知り、その後のスズキタゴサクのクイズの内容から沼袋交番の巡査長の矢吹(坂東龍汰)と巡査の倖田(伊藤沙莉)は配達する新聞の中に爆弾が隠されているのではないかと推理し、中東人の配達員が運転していたバイクを奪って、何とか広い場所に出て、横転させて滑らせる。爆発はない、と思う頃に小規模だが爆発はあった。その後も爆弾は東京中に仕掛けられていることが分かる。
警視庁捜査一課から来た類家(るいけ。山田裕貴)は、野方署でスズキタゴサクと対峙。化け物のような存在のスズキタゴサクと心理戦や知的攻防戦を繰り広げる。類家の前には、やはり捜査一課から来た清宮(渡部篤郎)がスズキタゴサクと向き合って、言動から爆弾のありかを聞き出そうとしていた。しかし、最後までスズキタゴサクの出すクイズを聞かなかったため、犠牲者が出るのを防げなかった。清宮は類家にバトンタッチする。
矢吹と倖田であるが、独自の捜査により、スズキタゴサクが以前暮らしていたシェアハウスを見つける。しかしそこで矢吹は罠にはまり、小規模ながら爆弾を踏み、右足首より先を吹き飛ばされる。倖田も近くにいたが、矢吹が身を挺してかばったため、ほぼ無傷。だが、倖田はスズキタゴサクへの復讐心に駆られ、矢吹を病院に向かわせた後で野方署に向かう。
野方署の伊勢(寛一郎)は、何故かスズキタゴサクに好かれるのだが、仕事に徹している。伊勢は、倖田に恋心を抱いていたのだが、病院内で倖田が笑顔で矢吹の見舞いに訪れるのを見て諦める。
環状線(山手線)の各駅で爆弾が炸裂する。もともとのターゲットは環状線(山手線)の各駅(新橋、品川、五反田、渋谷、新宿、池袋、巣鴨、日暮里)で、九段下、東京ドームシティー、阿佐ヶ谷などは山手線が狙われていると警察に悟られないよう、ダミーの爆破として行われている。
山手線を環状線と呼んでいるのはJRへの配慮かも知れない。ちなみに大阪にも大阪環状線があるが、環状していなかったり(途中で終点を迎えるので別のホームに移動しないといけない)、環状線内も走るが、大阪市内でなく奈良や和歌山に行ってしまう列車もあり、下手に居眠りできない路線となっている。
野方署の刑事、長谷部(加藤雅也)は人とは違った性的指向を持っており、それが流されて雑誌に載り、追い詰められて阿佐ヶ谷駅で鉄道自殺した。夫人であった明日香(現在は旧姓に戻って石川明日香を名乗る。夏川結衣)は鉄道会社から高額の請求をされ、貧しい暮らしへと落ちていった。
取調室がメインで、動きの場面がそれに比べると少ないためか、やや長く感じられるのが難点である。137分の映画なので、通常の映画に比べるとそもそも少し長めではあるが。
なんといってもキーパーソンであるスズキタゴサクを演じた佐藤二朗の存在感が圧倒的。こうしたキャラクターは舞台経験が豊富なら上手く演じられるが、映像での演技しかしてこない人では出せない味だろう。
佐藤二朗は、テレビドラマなどでは「芝居が大袈裟」と言われることもあり、実際、そういうときもあるのだが、この手の映画では、「彼でないと無理だろう」と思わせるほどの完成度を示している。あるいは佐藤二朗の代表作になるのかも知れない。
明日(2025年11月1日)から、大阪でまた主演映画「風のマジム」が上演される伊藤沙莉。警察官ということでいつもの可愛らしい笑顔はラストのみである。警官らしいキビキビとした演技。
矢吹が爆弾を踏んだ時、矢吹が背後の倖田を守ろうとしてかばいに行き、共に気絶するシーンがあるのだが、気がついて矢吹の体を放した時に倖田の前髪が乱れている。伊藤沙莉の映像作品はかなりの数見ているのだが、前髪が乱れているのを見るのはおそらく初めて。かなり色っぽく、「アラサーだけど子どもっぽいところを残している可愛い女の子」というイメージが覆る。おそらく、出来る女を演じても篠原涼子などよりも妖艶で大人な魅力が出せるはずで、こういう伊藤沙莉も良い。実際には篠原涼子も伊藤沙莉も実務が出来ないタイプなのだけれど。
なお、実際には伊藤沙莉の方が坂東龍汰より年上であるが、劇中では矢吹の方が倖田よりも年上で階級も上ということになっている。
倖田沙良が病院に矢吹のお見舞いに行ったときの格好は、制服とは真逆の「TRICK」の山田奈緒子のようなフェミニンなもので、ここに彼女の本当の性格が表れていそうである。伊藤沙莉も「サバサバ系に見られがちだが、実は真逆の乙女脳」だそうで、だからなのかどうかは分からないが、フェミニンな格好も似合っている。演出的には意外性を狙ったのかも知れないが、普通に女っぽい可愛い子で、普段からそういう人なのだろうと察しが付くため、意外性は余りない。寛一郎演じる伊勢が倖田に好意を抱いていることが分かる場面やセリフがあって、ラストに向けての一種の伏線にもなっているのだが、伊勢もあるいは倖田のプライベートを知って好きになったのかも知れない。
ちなみに伊藤沙莉と坂東龍汰は、二人でいろいろ考えてアドリブをいくつも入れたそうだが、全てカットされたそうである。
三國連太郎の孫で、佐藤浩市の息子である寛一郎。NHK連続テレビ小説「ばけばけ」でも、山根銀二郎という、音楽評論家の山根銀二によく似た名前の役を若々しい演技で見せていた。今回は、出番は多いのだが、メインになる場が余り多くなく、二番手か三番手である。親子であるだけに、セリフ回しは佐藤浩市によく似ている。
実質的主役の山田裕貴。中日ドラゴンズや広島東洋カープで活躍した内野手、山田和利の息子である。名古屋で生まれ育ったので中日ドラゴンズのファンであり、この映画でもドラゴンズにまつわる話がいくつか出てくる。なお、中日ドラゴンズはこの映画に協力という名で援助を行っている。
頭の切れる変人といった感じがよく出ているが、まだ若いために重厚感は不足。年を重ねると重厚感も出てくるだろう。運動神経も良いようなので、アクションなどでも活躍出来るかも知れない。
1990年代を代表する美女の一人であった夏川結衣。透明感が抜群で、連続ドラマ「青い鳥」や林海象監督・永瀬正敏主演の「罠」に主役の濱マイクの口のきけない彼女役で出演したときの透明感などは同じ人間とは思えないレベルであった。
21世紀に入ってからは、少し体重が増えたようで丸顔の可愛いおばちゃんとなり、「結婚できない男」での女医役は当たり役となっている。
今はまた少し痩せたようで、薄幸な女性を演じている。宮本輝原作の「私たちが好きだったこと」では、不安神経症の女性を演じた夏川結衣。今も透明感はあるので、こうした役も似合う。ラスト付近の倖田役の伊藤沙莉との二人のシーンも生きる悲哀が感じられて良い。
俳優陣は実力派揃いだが、やはり中心にいるのはスズキタゴサクを演じる佐藤二朗で、不気味だがその辺にいそうという怖ろしさを見る者に伝える。劇中でスズキタゴサクを本気で殺そうとする者や、スズキがヒントを出すときに使う右手の人差し指をへし折る者が出てくるのだが、それほど憎々しい怪物を佐藤二朗はリアリティを持って演じている。
基本的に佐藤二朗を見るべき映画になっていると思われるが、エンターテインメント大作として映画史に刻まれる作品になりそうな気がする。













































































最近のコメント