カテゴリー「連続テレビ小説」の13件の記事

2024年11月 4日 (月)

観劇感想精選(474) NODA・MAP第27回公演「正三角関係」

2024年9月19日 JR大阪駅西口のSkyシアターMBSにて観劇

午後7時から、JR大阪駅西口のSkyシアターMBSで、NODA・MAP第27回公演「正三角関係」を観る。SkyシアターMBSオープニングシリーズの1つとして上演されるもの。
作・演出・出演:野田秀樹。出演:松本潤、長澤まさみ、永山瑛太、村岡希美、池谷のぶえ、小松和重、竹中直人ほか。松本潤の大河ドラマ「どうする家康」主演以降、初の舞台としても注目されている。
衣装:ひびのこずえ、音楽:原摩利彦。

1945年の長崎市を舞台とした作品で、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』と、長崎原爆が交錯する。「欲望という名の電車」も長崎に路面電車が走っているということで登場するが、それほど重要ではない。

元花火師の唐松富太郎(からまつ・とみたろう。『カラマーゾフの兄弟』のドミートリイに相当。松本潤)は、父親の唐松兵頭(ひょうどう。『カラマーゾフの兄弟』のフョードルに相当。竹中直人)殺しの罪で法廷に掛けられる。主舞台は長崎市浦上にある法廷が中心だが、様々な場所に飛ぶ。戦中の法廷ということで、法曹達はNHK連続テレビ小説「虎に翼」(伊藤沙莉主演)のような法服(ピンク色で現実感はないが)を着ている。
検察(盟神探湯検事。竹中直人二役)と、弁護士(不知火弁護士。野田秀樹)が争う。富太郎の弟である唐松威蕃(いわん。『カラマーゾフの兄弟』のイワン=イヴァンに相当。永山瑛太)は物理学者を、同じく唐松在良(ありよし。『カラマーゾフの兄弟』のアレクセイ=アリョーシャに相当。長澤まさみ)は、神父を目指しているが今は教会の料理人である。
富太郎は、兵頭殺害の動機としてグルーシェニカという女性(元々は『カラマーゾフの兄弟』に登場する悪女)の名前を挙げる。しかし、グルーシェニカは女性ではないことが後に分かる(グルーシェニカ自体は登場し、長澤まさみが二役、それも早替わりで演じている)。

『カラマーゾフの兄弟』がベースにあるということで、ロシア人も登場。ロシア領事官ウワサスキー夫人という噂好きの女性(池谷のぶえ)が実物と録音機の両方の役でたびたび登場する。また1945年8月8日のソビエトによる満州侵攻を告げるのもウワサスキー夫人である。

戦時中ということで、長崎市の上空を何度もB29が通過し、空襲警報が発令されるが、長崎が空襲を受けることはない。これには重大な理由があり、原爆の威力を確認したいがために、原爆投下候補地の空襲はなるべく抑えられていたのだ。原爆投下の第一候補地は実は京都市だった。三方を山に囲まれ、原爆の威力が確認しやすい。また今はそうではないが、この頃はかつての首都ということで、東京の会社が本社を京都に移すケースが多く見られ、経済面での打撃も与えられるとの考えからであった。しかし京都に原爆を落とすと、日本からの反発も強くなり、戦後処理においてアメリカが絶対的優位に立てないということから候補から外れた(3発目の原爆が8月18日に京都に落とされる予定だったとする資料もある)。この話は芝居の中にも登場する。残ったのは、広島、小倉、佐世保、長崎、横浜、新潟などである。

NODA・MAPということで、歌舞伎を意識した幕を多用した演出が行われる。長澤まさみが早替わりを行うが、幕が覆っている間に着替えたり、人々が周りを取り囲んでいる間に衣装替えを行ったりしている。どのタイミングで衣装を変えたのかはよく分からないが、歌舞伎並みとはいえないもののかなりの早替わりである。

物理学者となった威蕃は、ある計画を立てた。ロシア(ソ連)と共同で原爆を作り上げるというものである。8月6日に広島にウランを使った原爆が落とされ、先を越されたが、すぐさま報復としてニューヨークのマンハッタンにウランよりも強力なプルトニウムを使った原爆を落とす計画を立てる。しかしこれは8月8日のソビエト参戦もあり、上手くいかなかった。そしてナガサキは1945年8月9日を迎えることになる……。

キャストが実力派揃いであるため、演技を見ているだけで実に楽しい。ストーリー展開としては、野田秀樹の近年の作品としては良い部類には入らないと思われるが、俳優にも恵まれ、何とか野田らしさは保たれたように思う。

NODA・MAP初参加となる松潤。思ったよりも貫禄があり、芝居も安定している。大河の時はかなりの不評を買っていたが、少なくとも悪い印象は受けない。

野心家の威蕃を演じた永山瑛太は、いつもながらの瑛太だが、その分、安心感もある。

長澤まさみは、今は違うが若い頃は、長台詞を言うときに目を細めたり閉じたりするという癖があり、気になっていたが、分かりやすい癖なので誰かが注意してくれたのだろう。あの癖は、いかにも「台詞を思い出しています」といった風なので、本来はそれまでに仕事をした演出家が指摘してあげないといけないはずである。主演女優(それまでに出た舞台は2作とも主演であった)に恥をかかせているようなものなのだから避けないといけなかった。ただそんな長澤まさみも舞台映えのする良い女優になったと思う。女優としては、どちらかというと不器用な人であり、正直、好きなタイプの女優でもないのだが、評価は別である。大河ドラマ「真田丸」では、かなり叩かれていたが、主人公の真田信繁(堺雅人)が入れない場所の視点を担う役として頑張っていたし、何故叩かれるのかよく分からなかった。

竹中直人も存在感はあったが、重要な役割は今回は若手に譲っているようである。
たびたび怪演を行うことで知られるようになった池谷のぶえも、自分の印を確かに刻んでいた。


カーテンコールは4度。3度目には野田秀樹が舞台上に正座して頭を下げたのだが、拍手は鳴り止まず、4回目の登場。ここで松潤が一人早く頭を下げ、隣にいた永山瑛太と長澤まさみから突っ込まれる。
最後は、野田秀樹に加え、松本潤、長澤まさみ、永山瑛太の4人が舞台上に正座してお辞儀。ユーモアを見せていた。

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2024年11月 2日 (土)

これまでに観た映画より(349) 「つぎとまります」

2024年10月28日 京都シネマにて

日本映画「つぎとまります」を観る。客席数が一番多いシネマ1での上映である。京都府亀岡市を舞台としたご当地映画であり、公開直後は京都シネマに人が押し寄せたようで、公式ホームページに「ご入場いただけない場合がある」旨が記されていたが、日が経つにつれて集客数も落ち着いたものになってきたようだ。
京都市立芸術大学美術学部出身の若手クリエイター、片岡れいこ監督作品。これが長編映画3作目である。脚本:青木万央。文化庁「関西元気圏」参加事業となっている。上映時間70分の中編。

主演:秋田汐梨。出演:川合智己、三島ゆり子、渋谷哲平、梶浦梶子、黒川英二、清井咲希、佐渡山順久、三木葉南、森下稜稀、三浦康彦、宮島寶男、黒巌大五郎ほか。

主演の秋田汐梨を始め、京都出身者が多いようで、綺麗な京言葉が話される。

保津川美南(ほづがわ・みなみ。秋田汐梨)は、新卒で本命の京阪京都バス亀岡営業所を受ける。「日本一のバスの運転手」になることが夢で、すでに大型自動車免許も取得している。
亀岡生まれの美南だが、現在は両親の転居先である広島暮らし。だが、バスの運転手になるならどうしても生まれ故郷の亀岡市が良いと、亀岡まで面接を受けに来たのだ。
ちなみに面接の場面で、おそろしくセリフ回しの拙い重役役の人が出演しているが、おそらく俳優ではなく、本物の京阪京都バスの重役さんなのだと思われる。

内定を貰い、研修を受けることになる美南。まずは無人のバスを運転して感覚を養う。指導するのは千代川ヒカル(梶浦梶子)だ。最も古いタイプのバス(三菱ふそうエアロスター。通称「3500」。1998年式)で訓練を行うことになった美南。ある日、見覚えのあるバス運転手を見掛ける。美南が関西に住んでいた頃、大阪府能勢町の引っ越し先から亀岡の小学校までバス通学する必要があり、その時に運転していたバスの運転手、沓掛(川合智己)だった。ちなみに沓掛は以前、京都市立芸術大学のキャンパスがあった場所の地名である。
バスの路線を覚えるのに苦労する美南。自分でも「頭良くないからなあ」と嘆くが、自分の足で歩いたり走ったりして路線を覚えることにする。ただこの行為も先輩からは「変わっている」と言われる。
続いて、実際に客を乗せての研修。先輩運転手で15年目のベテランである湯野花男(黒川英二)が補佐としてつく。バス好きの広田広道(三浦康彦)や元バスガールの鹿谷マチ子(三島ゆり子)が常連客となる。余談であるが、バスガールを主人公にした映画に石井聰亙監督の「ユメノ銀河」という作品がある。夢野久作の「少女地獄」を原作とする映画で、とても良い出来なのだが、主演女優がその後、盛大なやらかしをしてしまったため、観る機会は少ないかも知れない。
難所を湯野の代理ドライバーで交わすシーンなどもあるが、美南も徐々に成長していく。

正直、上手い俳優は出ていないし(セリフはちゃんと言えているが、間などが一流の俳優などと比べると拙い)、ストーリー展開も、人物設定も、台詞回しも、カメラワークもありきたりで、優れた映画とは呼べないかも知れない。ただ京都のローカル映画と考えれば、これはこれで味があり、愛着の持てる作品となっている。少なくとも京都市民である私は好感を持った。おそらく千葉市民のままだったら全く評価しないだろうが。

これが映画初主演となる秋田汐梨は、美人と言うよりもどちらかというと親しみの持てる顔立ちで、ドラマや舞台での主演経験もすでにあり、事務所も強いところで、多くを望まなければ結構良いところまで行けそうな力はあるように感じる。

亀岡の新名所であるサンガスタジアム by KYOCERAなども登場し、京都サンガF.C.のunder15の選手達が客役で出るなど、つい最近生まれた亀岡らしさも盛り込まれており、京都府民にはお薦め出来る映画である。

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なお、土居志央梨が永瀬正敏とW主演した「二人ノ世界」が「虎に翼」の好評を受けてだと思われるが再上映されることになり、現在、予告編が流れているのだが、上映終了後に、若い女性二人組が、「よね! よね! よねさんや!」と興奮気味に語ってた(土居志央梨の「虎に翼」での役名が山田よね)。

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2024年10月27日 (日)

観劇感想精選(473) 京都芸術劇場プロデュース2024 松尾スズキ×つかこうへい 朗読劇「蒲田行進曲」

2024年10月20日 京都芸術劇場春秋座にて観劇

午後2時から、京都芸術劇場春秋座で、京都芸術劇場プロデュース2024 松尾スズキ×つかこうへい 朗読劇「蒲田行進曲」を観る。京都芸術大学舞台芸術学科の教授となった松尾スズキが若い俳優達と取り組むプロジェクトの一つである。
松尾スズキとつかこうへいは同じ九州人にして福岡県人ではあるもののイメージ的には遠いが、実際には松尾スズキは九州産業大学芸術学部在学中に、つかこうへいの「熱海殺人事件」を観て衝撃を受け、芝居を始めたというありがちなコースをたどっていることを無料パンフレットで明かしている。ただ、つかこうへいとは生涯、面識がなかったようだ。

作:つかこうへい。いくつか版があるが昭和57年4月25日初版発行の『戯曲 蒲田行進曲』を使用。演出:松尾スズキ。出演は、上川周作、笠松はる、少路勇介(しょうじ・ゆうすけ)、東野良平(ひがしの・りょうへい)、末松萌香、松浦輝海(まつうら・てるみ)、山川豹真(ひょうま。ギター)。


映画でもお馴染みの「蒲田行進曲」。蒲田行進曲と銘打ちながら、舞台は大田区蒲田ではなく京都。東映京都撮影所が主舞台となる。実は映画版の「蒲田行進曲」は松竹映画で、松竹映画でありながら東映京都撮影所で収録を行っているという変わった作品である。

末松萌香と松浦輝海がト書きを全て朗読するという形での上演。二人は、セリフの短い役(坂本龍馬や近藤勇など)のセリフも担当する。


上川周平による前説。「どうも、こんにちは。上川周平です。京都芸術大学映画俳優コース出身者として黒木華の次に売れています(格好をつける)。嘘です。土居(志央梨)さんの方が売れています。土居さんとは同級生です。今日は京都の山奥の劇場へようこそ。まだ外国人観光客に発見されていない日本人だけの場所。朗読劇なのに5500円。これは僕らかなり頑張らないといけません。演出の松尾(スズキ)さんは、役者がセリフを噛むとエアガンで撃ちます。まさに演劇界の真○よ○子」と冗談を交えて語る。

上川周平は、今年前期のNHK連続テレビ小説「虎に翼」で、主人公の猪爪寅子(伊藤沙莉)の実兄にして、寅子の女学校時代からの親友である花江(森田望智)の夫にして二児の父、日米戦争で戦死するという猪爪直道役を演じ、口癖の「俺には分かる」も話題になっている(「俺には分かる」と言いながら当たったことは一度もなかった)。


東映京都撮影所では、新選組を主人公にした映画が撮られている。まず坂本龍馬(松浦輝海)の大立ち回り。龍馬は土方歳三の恋人にも手を出そうとして、駆けつけた土方に止められる。土方役の銀四郎(銀ちゃん。少路勇介)の脇に控えているのが、銀ちゃんの大部屋時代の後輩である村岡安治(ヤス。上川周作)。銀ちゃんは大部屋からスターになり、土方歳三役という大役を演じているが、ヤスは大部屋俳優のままである。実はヤスも「当たり屋」という低予算映画に主演したことがあるのだが、大部屋の脇役俳優が主役になっても勝手が分からず、セリフが出てこなかったりと散々苦労した思い出がある。その後も、ヤスは銀ちゃんが取ってくるセリフもないような役をやったりと、弟分を続けていた。
銀ちゃんには、小夏という彼女(笠松はる)がいる。2年前まではそれなりの役を貰っていた女優だったのだが、2年のブランクがあって今は良い役にありつけない。小夏は30歳。今でこそ、30歳は女優盛りであるが、往年は「女優は二十代が華」の時代。30歳になるとヒロインは難しく、出来る役は限られてしまう。女優とは少し異なるが、「女子アナ30歳定年説」というものがつい最近まであった。今は30代でも40代でも既婚者でも子持ちでも人気の女子アナはいるが、ほんの少し前まではそうではなかったのである。30歳を機に、女優や女子アナを辞める人がいた。そう考えると時代はかなり変わってきている。

芸能界で、女優が30歳になることを初めて肯定的に捉えたのはおそらく浅野ゆう子で、彼女は「トランタン」というフランス語で30歳を意味する言葉を使ってイメージ改善に励んでいる。その後、藤原紀香が「早く30歳になりたかった」宣言をして30歳の誕生日をファンを集めて盛大に祝ったり、蒼井優が「生誕30年祭」と銘打っていくつかのイベントを行ったりと、女優陣もかなり努力している印象を受ける。

ただこれは、女優の限界30歳の時代の話。小夏は銀ちゃんの子を妊娠しているが、銀ちゃんは小夏をヤスと結婚させるという、酷い提案を行う。結局、小夏とヤスは籍を入れる。昭和の祇園女御である。映画版だとヤス(平田満が演じた)が小夏(松坂慶子)の大ファンだったという告白があるのだが、舞台版ではそれはないようだ。
ちなみに銀ちゃんは白川(おそらく北白川のこと。京都芸術劇場と京都芸術大学が北端にある場所で、京都屈指の高級住宅街)に住んでいるようで、すぐそばでの話ということになっている。小夏は銀ちゃんの5階建てのマンションを訪れ、合鍵を使って中に入り、銀ちゃんの部屋で泣く。


新選組の映画では、池田屋での階段落ちが名物になっているが、危険なので誰もやりたがらない。銀ちゃんはやる気でいるが止められる。警察がうるさいというのだが、銀ちゃんは、「東映は何のためにヤクザを飼ってるんだい」とタブーを言う(東映の任侠ものは本職に監修を頼んでいた。つまり撮影所に本職が何人もいたのである。誰か明言はしないがヤクザの娘が大女優であったりする)。
15年前の「新選組血風録」で階段落ちを行った若山という俳優は、その後、下半身不随になったという。
小夏のお産の費用を捻出するため、ヤスが階段落ちを申し出る(ちなみに階段落ちする志士のモデルは、龍馬の友人である土佐の本山七郎こと北添佶摩という説があり、彼が池田屋の階段を降りて様子を見に行ったというのがその根拠だが、それ自体誰の証言なのかはっきりしない上、階段落ち自体がフィクションの可能性も高いのでなんとも言えない)。
階段落ちの談義の場面では、ニーノ・ロータの「ロミオとジュリエット」のテーマ音楽が流れるが、何故なのかは不明。また京都が舞台なのに、マイ・ペースの「東京」が何度も流れるのも意図はよく分からない。

ヤスは、小夏を連れて故郷の熊本県人吉市に行き、親に小夏を合わせる。ちなみに小夏は茨城県水戸市出身の関東人である。歓迎される二人だったが、小夏の子の親がヤスでないことは見抜かれていた。

ヤスと小夏の結婚式に銀ちゃんが乱入(ダスティン・ホフマン主演の映画「卒業」のパロディーで、「サウンド・オブ・サイレン」が流れる)するというハプニングがあったりするが、ヤスの男を見せるための階段落ちへの決意は変わらず、その日を迎えるのだった。


つかこうへいの演劇の特徴は長台詞が勢いよく語られるところにあり、アクションを入れるのも確かに効果的なのだが、台詞だけでも聞かせられるだけの力があるため、松尾スズキも朗読劇というスタイルを採ったのだろう(役者が動き回るシーンは少しだけだが入れている)。見応えというより聞き応えになるが、確かにあったように思う。

「蒲田行進曲」に納得のいかなかった松竹の井上芳太郎は、「キネマの天地」という映画を制作している。中井貴一と有森也実の出世作であり、渥美清演じる喜八の最期がとても印象的な映画となっている。また、映画「キネマの天地」に脚本家の一人として参加した井上ひさしは戯曲「キネマの天地」を発表。私も観たことがあるが、趣が大きく異なって心理サスペンスとなっている。


今回使用された「蒲田行進曲」のテキストは、風間杜夫の銀ちゃん、平田満のヤスという映画版と同じキャストでの上演を念頭に改訂されたもので、二人の出会いが「早稲田大学の演劇科」であったりと、事実に沿った設定がなされているのが特徴でもある。

親分肌の銀ちゃんと、舎弟キャラのヤスの友情ともまた違った関係が興味深く、そこに落ち目の女優との恋愛話を絡めてくるのが巧みである。銀ちゃんに何も言えないヤスであるが、ラストに階段落ちを見せることで男気を示す。

ちなみに、映画版で私が一番好きなやり取りは、キャデラックの車内で銀ちゃんが、
「おい、俺にも運転させろ!」と言い、
「銀ちゃん、免許持ってないじゃない」との返しに(今と違って、危ないので俳優には運転免許を取らせないという方針の事務所が多かった)、
「ばっきゃろう!! キャデラックは免許いらねえんだよ!!」と啖呵を切るシーンで(啖呵を切ろうが免許がないと運転出来ないのだが)あるが、舞台なのでキャデラックのシーンがなく、当然ながらこのやり取りも入っていない。


実は、東京の小劇団による「蒲田行進曲」の上演を観たことがある。1994年のことで、場所は銀座小劇場という地下の劇場。東京灼熱エンジンというアマチュア劇団の上演であった。「週間テレビ番組」という雑誌の懸賞に母が応募して当たったのである。
東京灼熱エンジンは、階段落ちのシーンで照明を明滅させて、ヤスをスローモーションで見せるという工夫をしていたが、今回は小夏役の笠松はるが、箱馬を積み重ねたような木の箱をスティックで叩くという、音響的な演出がなされていた。ただ正直、音響だけでは弱いように思われる。


若い俳優達も熱演。演技力が特段高いということはないが、つかの演劇に要求されるのは巧さよりもパワー。力強さの感じられるしなやかな演技が展開される。ラストで、俳優陣が「蒲田行進曲」を歌う演出もあるが、今回は音楽が流れただけで歌うことはなかった。

カーテンコールには松尾スズキも姿を見せた。

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2024年10月25日 (金)

明治大学博物館「虎に翼」展に行ってきました

今年の4月から9月にかけて放送されたNHK連続テレビ小説「虎に翼」(NHK東京放送局=AK制作)の展覧会が、主人公の猪爪寅子(佐田寅子。伊藤沙莉)の母校、明律大学のモデルである明治大学博物館の特別展示室で行われています。アカデミーコモンの地下1階です。

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明治大学のゆるキャラである、めいじろうも法服姿でお出迎え。

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伊藤沙莉さんのアップ写真、目立ってます。

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猪爪はる(石田ゆり子)と桂場等一郎(松山ケンイチ)がエントランスで出迎えます。

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この左横のモニターに、伊藤沙莉さんが「虎に翼」展のためだけに撮ったメッセージが映っているのですが撮影不可。

また伊藤沙莉座長が、「虎に翼」チームのために発注したTシャツとトートバッグもあるのですが、こちらも撮影禁止です。


寅子と優未(毎田暖乃)が親子二代に渡って着た黄色いワンピース。

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寅子は花岡悟(岩田剛典)にアピールしたくて、はるや花江(森田望智)の手を借りて手作りしたのですが、思いが花岡に届くことはありませんでした。ただ花岡だけはワンピースを褒めてくれました。

高等試験司法科試験合格証書

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寅子は日本人初の女性弁護士の一人となりました(女性はまだ裁判官になることは出来ない)。しかし、先駆者の苦悩が待ち受けています。

寅子の父親、猪爪直言(岡部たかし)が愛娘の記事を集めていたスクラップブック。寅子が高等試験司法科(現在の司法試験に相当)に合格した時には、戦前ですので右から左に「でかした」と記しました。

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はるが寅子に買い与えた六法全書。寅子にとっての初の翼となりました。はるさんが定義した「地獄」は、「頭の良い女が頭の良い女のまま生きること」。「男と競争して女が女として生きること」。「道なき道を行くこと」。米津玄師の主題歌「さよーならまたいつか!」の歌詞に、「人が宣う地獄の先に私は春を見る」とあるため、地獄とは誰かが宣った、つまり定義している訳ですが、最初に定義を行っているのは、はるさんです。

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司法修習を終えて、晴れて弁護士となった寅子でしたが、若い独身の女性弁護士ということで依頼人からの信頼が得られず、全く仕事がありません。信用を得るために結婚を考える寅子。

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打算で猪爪家の元書生であった佐田優三(仲野太賀)と結婚した寅子でしたが、多摩川の河原で一緒に焼き鳥を食べながら話しているうちに瞬く間に恋に落ちます。しかし優三も出征。子を宿した寅子は、「自分がなんとかしないと女性法曹の道が絶たれる」と焦ります。穂高先生(小林薫)に相談しますが、穂高先生は自分の考えで物事をどんどん推し進めていくタイプでこれは失敗。穂高先生が「犠牲」と失言をしたため裏切られた気持ちになります。よね(土居志央梨)に相談しなかったことで彼女からの信頼も失い、結局、降参。失職します。

失意の日々の中で、たまたま買った優三との思い出の品、焼き鳥を包んでいた新聞紙に日本国憲法の全文を発見した寅子。それはあたかも優三からのプレゼント。声を出して泣く寅子。新生、寅子の産声です。

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甥の直治(今井悠貴)のサックス。サックスは管楽器の中では歴史が浅いということもあって音が出しやすく、指使いもリコーダーと一緒で吹きやすい楽器ではあります。ジャズでは花形で、服部良一は「サックスが吹ける」というだけで大阪では引っ張りだこでした。直治が音楽好きになったきっかけは、寅子にコンサートに連れて行ってもらったことですが、何のコンサートなのかは描かれていません。「愛のコンサート」は、猪爪家ではラジオで聴いていましたので、「愛のコンサート」でないのは確かです。服部良一は、父親に「音楽乞食なんて辞めて魚屋を継げ」と言われたそうですが、音楽家の身分が相当低い時代でもありました。

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寅子と優三のパネル。初々しい学生時代の姿。この頃は可愛らしかった伊藤沙莉さんですが、どんどん美人になっていって、「何が起きてるの?」と不思議に思いました。


伊藤沙莉さんのサイン。着物の柄もあって読み取りにくいです。

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こちらは仲野太賀さんのサイン。読み取りやすいです。

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俺たちの轟グッズ

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轟太一役の戸塚純貴さんは、三谷幸喜脚本・監督の映画「スオミの話をしよう」にも重要な役で出ていました。

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山田よねの衣装。出番は多いのに、最後まで謎の多い役でした。ただ男でも女でもなく山田よねとして生きてくれたのは嬉しく思います。

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法服。中田正子さんのものです。


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こちらは現代の法服(男性用)。黒一色なのでピントが合わせにくいです。


花岡悟(岩田剛典)。岩田さんは名古屋の人で、今回は名古屋でのロケも多かったため、故郷に錦を飾れたんじゃないでしょうか。

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明治大学専門部女子部設立の趣旨。明治大学は進取の気質に富む大学で、共学の私立大学として初めて女子教育に力を入れたほか、私立大学初の商学部の設置、日本初の経営学部の創設などを行っています。
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番組台本 作・吉田恵里香

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「虎に翼」収録の前に、法律を学ぶ役の6人の女優が明治大学で特別講義を4コマ受けたという話は伊藤沙莉が何度もしているが(法律を学ばない花江役の森田望智もなぜかついてきたらしい。森田望智は大卒だが、明治大学ではなかったはずで、他の大学の雰囲気を味わいたかったのかも知れない)、こぼれ話が紹介されている。

伊藤沙莉は、ネットラジオなどを聴くと、大変頭の回転が速い人であることが分かるのだが、小難しい話は余り得意ではないようで、最初の授業は最前列で聴いていたが、2コマ目、3コマ目と授業が進むごとにどんどん後ろの席に下がっていったそうで、先生達も苦笑していたという。

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2024年10月15日 (火)

「あさイチ Kira KIra キッチン」 麻生久美子 2024.10.8

2024年10月8日

NHK総合「あさイチ」。今日は「Kira Kira キッチン」と称して、調理を行いながら番組が進行するという趣向。ゲストは女優の麻生久美子。
麻生さんは、現在、NHK連続テレビ小説「おむすび」(橋本環奈主演)に主人公のお母さん役として出演中である。と書いていながら私は見ていない。「ブギウギ」は、笠置シヅ子をモデルとした音楽の話で、同い年の草彅剛が音楽家役で出ているので見たし、「虎に翼」は、日本初の女性法曹で、母校である明治大学出身の三淵嘉子がモデルであり、私も寅年(五黄の寅ではなく八白の寅)、主役を演じるのが同郷の伊藤沙莉ということで見る要素があったのだが、「おむすび」は麻生久美子が出てはいるがヒロインではないし、それだけではちょっと弱い。橋本環奈は嫌いではないが特に好きではない。そもそも彼女が出演した作品を数えるほどしか見ていないということで食指が動かなかったのである。同い年の北村有起哉など、良い俳優も出ているのであるが、舞台が福岡と神戸なので、余り惹かれないということもある(NHK大阪放送局=BK制作)。

神戸が舞台の一つということで、阪神・淡路大震災も絡んでくるはずである。

主人公は栄養士を目指すのだが、福岡には九州限定で栄養士の名門として知られる中村学園大学があり(全国区の知名度はない)、九州で栄養士を目指す子は大体、そこを目指すのだが、主人公は関西に出てきてしまうようである。「虎に翼」で主人公の伊藤沙莉演じる猪爪(佐田)寅子(ともこ)の母親、はるさん役を演じていた石田ゆり子は女子栄養大学の二部だったか、短期大学部だったかの出身で、栄養士のお母さん役には最適だったのだが、先の朝ドラに出てしまったので、今回は出られない。

麻生久美子は、1978年6月17日生まれ。千葉県山武(さんぶ)郡山武町(さんぶまち)の出身。現在は合併により山武(さんむ)市となっている。山武郡山武町は千葉県の中でも一番の田舎といわれているところで、映画「SF ショートフィルム」で麻生久美子の実家付近でのロケが行われているのだが、感心してしまうくらい何もないところである。ちなみに麻生久美子の実のお母さんとお婆さんが出演されている。
両親の中が悪く、離婚。父親は金遣いが荒くて粗暴でちょっと困った人だったようで、夫婦喧嘩の時に包丁を持ちだして、幼い麻生久美子が楯になって母親をかばったという話がある。弟と二人、母子家庭で育つこととなる。母親はスーパーで働いていたのだが、「ハンバーグやミートボールを貰ってきてくれるんですけど、どっちも一緒じゃないですか」という環境で育った。ザリガニを釣って、食べたこともあるのだが、後で「食べちゃいけない。細菌なんかがいるから」と言われたらしい。ただザリガニはエビの味がするのでごちそうだったそうである。

私も幼い頃に千葉県内にある母方の実家(田舎にある)でザリガニ釣りをして遊んだが、勿論、食べず、釣ったザリガニは祖父が海釣りのエサにしていた。余談だが、東京にはザリガニ料理が食べられる店があるらしい。

貧乏という理由でいじめられることもあったそうで、彼女は額の見えにくいところに傷があるのだが、幼い頃に石を投げつけられて出来たものである。また走る車の前に突き飛ばされそうになり、この時は母親が他の子どもたちの家に怒鳴り込んだそうだ。このお母さん、結構、スパルタで、麻生久美子がちょっと悪いことをしたら木に縛りつけて泣いてもわめいてもなかなか許さないということもあったらしい。そんな彼女であるが、幼い頃は、「自分は世界で一番可愛い」と思い込んでいるような、「今振り返ると嫌な子」だったようで、西田ひかるのファンであり、西田ひかるの顔のほくろがある場所をいじっていたら、ほくろが出来たという話もある。
お菓子系と呼ばれたライトなエロ目の雑誌にモデルとして出るようになり、コンビニかどこかに買いに行って、「お菓子系なのに、これ私」と周りに自慢して回ったという彼女らしいエピソードもある。
授業態度は真面目で、成績も良かったようだが、学区的には県立佐倉高校一校だけが飛び抜けた進学校で、その他は、誰でも入れるレベルの高校ということで、成績が良くても佐倉高校に行けるだけの学力はなかっためか、県立佐倉南高校に進学することになり、残念そうな発言をしていた記憶がある。「高校時代にはいじめられるし」と発言しているが、どちらかというとハブられていたというより、自分から壁を作っていて、余り周りとは仲良くしなかったようである。容姿的には幼い頃から別格扱いではあったらしい。
十代の頃は哀川翔に片思いしていて相手にされなかったようだが、哀川翔に「カンゾー先生」への出演を勧められ、ブレークすることになった。

割と開けっぴろげで、明るく、豪快に笑う性格。映画に出まくっているが、映画自体はそれほど好きではなく、余り映画は観ない。そのことで事務所に怒られたこともある。ただ映画が好きではないのに映画女優としてフィルムに収まることに疑問を感じた時代もあったようだ。

麻生久美子さんの映画の舞台挨拶には、二度ほど行ったことがあるのだが、最初はテアトル新宿で行われた、「贅沢な骨」の舞台挨拶付き上映。この頃はまだフィルムを使っていたので、フィルムトラブルがあって、上映が始まってすぐにフィルムが丸まって動かなくなってしまうため、3度やり直すという事件があった。
麻生さんによると、「贅沢な骨」は、上映出来るのかどうかまだ分からないまま撮り始めた映画であるとのことだった。
舞台挨拶が終わり、上手通路から退場する時に、お客さんの一人が手を差し伸べたらしいのだが、麻生さんは、「わー! 握手握手!」とはしゃいで自分から握手に行き、その後ろの席の人とそのまた後ろの人ーー多分、二人は手を差し出していなかったと思われるのだがーーとも握手をして、「アーッハッハッハッハッ!」と豪快な笑い声を残して去って行ったのをよく覚えている。「あー、この人、やっぱり千葉の女だわ」と思ったものだ(千葉の女性は豪快に笑う人が多い)。
好きな女優さんなので、色々知識があるんですね。ずっと書いていられるけれど、そんなことしても仕方がないので、今日の内容へ。


で、ここからが本編。番組が始まった時から、すでに麻生さんは調理中である。麻生さんは包丁でタマネギを刻んでいる。カメラが寄ってきて、「おはようございます」挨拶を行う麻生さん。今日の番組内容を紹介して。「嫌だもう、朝からすみません。恥ずかしい」と言う。その後も料理を行いながら喋っていく。指導は秋元さくらシェフ(フレンチ)。ひき肉のピカタを作っていく。

鈴木菜穂子アナウンサーに「お料理大好き」と言われた麻生さんは、「いやーもう、そんなに」と謙遜する。

後は基本的に調理が進んでいく。女優さんの家庭的な部分を見る機会は余りないので、貴重ともいえる。


麻生久美子のお気に入りの紹介。
ドイツの一口バウムのチョコレートがけとシンガポールのピリ辛ポークジャーキー。いずれも国内に店舗があるそうである(ポークジャーキーは東京のみ)。
多分、食べに行くことはないな。
手料理の紹介もある。ハンバーグ、春巻き、ブリの照り焼き。普通のお母さんの料理である。子どもたちが喜ぶので、春巻きを作ることが一番多いそうだ。


続いて山野辺仁(やまのべ・ひとし)シェフの指導で、秋のみそぼろ丼の調理。
基本的に麻生さんが料理しているだけの展開である。正直、大女優を使ってやることなのかどうか分からない。麻生さんは基本的にかなり良い人なので何でもやってくれるけれど。
今日は朝のNHKなので比較的落ち着いているけれど、実際はキャピキャピした明るい人である。

朝ドラ「おむすび」では、今のところギャルが重要なポジションを占めているようなのだが、麻生久美子も「ギャルやってみたかった」と述べた。実際にギャルであったこともないが(それほど彼女をよく知っているわけではないが、性格的に多分無理である)、麻生久美子がギャルを演じたこともおそらく一度もないと思われる。数多くの映画やドラマに出ている麻生久美子だが、実際の年齢より上の女性を演じることも比較的多く、落ち着いた役が多い。悪女役もやっていて、私は映画「ハサミ男」の知夏役が結構好きである。あの作品は、原作者も監督も残念なことになってしまったけれど。

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2024年10月14日 (月)

NHKBS「クラシック俱楽部」 大阪府堺市公開収録 石橋栄実ソプラノリサイタル(再放送)

2024年9月12日

録画しておいた、NHKBS「クラシック俱楽部」大阪府堺市公開収録 石橋栄実ソプラノリサイタルを視聴。2023年12月15日に堺市立美原文化会館での収録されたもの。ピアノは關口康祐(せきぐち・こうすけ)。

ソプラノ歌手の石橋栄実(えみ)は、1973年、東大阪市生まれ。私より1つ上で、有名人でいうと、イチロー、松嶋菜々子、篠原涼子、大泉洋、稲垣吾郎、夏川りみなどと同い年となる。大阪音楽大学声楽科を卒業、同大学専攻科を修了。現在は大阪音楽大学の教授と、大阪音楽大学付属音楽院の院長を兼任している。ソプラノの中でも透明度の高い声の持ち主で、リリック・ソプラノに分類されると思われる。東京や、この間、「エンター・ザ・ミュージック」で取り上げられていたように広島など日本各地で公演を行っているが、現在も活動の拠点は大阪に置いている。インタビュー映像も含まれているが、「一度も大阪を離れようと思ったことはなかった」そう。ちなみにインタビューには標準語で答えているが、言い回しが明らかに関東人のそれとは異なる。石橋はオペラデビューが1998年に堺市民会館で行われたフンパーディンクの「ヘンゼルとグレーテル」だったそうで、「堺は特別な街」と語る。


曲目は、ジョルダーノ作曲の「カロ・ミオ・ベン」、マスカーニ作曲の「愛してる、愛してない」、モーツァルト作曲の歌劇「フィガロの結婚」から「とうとううれしい時が来た」と「恋人よ、早くここへ」、ドヴォルザーク作曲の歌劇「ルサルカ」から「月に寄せる歌」、プッチーニ作曲の歌劇「ラ・ボエーム」から「私が町を歩くと」、
連続テレビ小説「ブギウギ」メドレー(「東京ブギウギ」、「買い物ブギー」、「恋はやさし野辺の花よ」)、
歌曲集「カレンダー」から「十月」「三月」(薩摩忠作詞、湯山昭作曲)、「のろくても」(星野富弘作詞、なかにしあかね作曲)、「今日もひとつ」(星野富弘作詞、なかにしあかね作曲)、「いのちの歌」(miyabi=竹内まりや作詞、村松崇継作曲。NHK連続テレビ小説「だんだん」より)


声の美しさとコントロールが絶妙である(実は歌手の方には多いのだが、話しているときの地声が特別美しいというわけではない)。
映像映えのするタイプではないのだが、実物はかなり可愛(検閲により以下の文章は削除されました)

「愛してる、愛してない」は、マスカーニの作品よりも、坂本龍一が中谷美紀をfeaturingした同名タイトルの曲の方が有名であると思われるが、花占いをしながら歌う歌曲で、石橋もそうした仕草をしながら歌う。

モーツァルトのスザンナのアリアは彼女の個性に合っている。


途中で、堺市の紹介があり、大仙古墳は仁徳天皇陵と従来の名称で呼ばれている。
なんか冗談が寒いのがNHKである。

連続テレビ小説「ブギウギ」メドレー。最も有名な「東京ブギウギ」(作詞:鈴木勝=鈴木大拙の息子、作曲:服部良一)がまず歌われる。実は「東京ブギウギ」はリズムに乗るのがかなり難しい曲なのだが、クラシック音楽調に編曲されているので、オリジナル版よりは歌いやすいと思われる。
關口のピアノで、「ラッパと娘」と「センチメンタル・ダイナ」が演奏される。服部良一も大阪の人で、少年音楽隊に入って音楽を始め、朝比奈隆の師としても知られるウクライナ人のエマヌエル・メッテルに和声学、管弦楽法、対位法、指揮法などを師事しているが、音の飛び方が独特で、「え? こっからそこに行くの?」という進行が結構ある。「ラッパと娘」などは「それルール違反でしょ」という箇所が多い。

「買い物ブギー」。この曲は笠置シヅ子をモデルとした朝ドラに主演した東京出身の趣里、兵庫県姫路市出身の松浦亜弥、神奈川県茅ヶ崎市出身の桑田佳祐なども歌っているが、大阪弁の曲であるため、大阪の人が歌った方が味わいが出る。作詞は作曲の服部良一自身が村雨まさを名義で行っている。
石橋は客席通路での歌唱。カメラを意識しながら演技を入れての歌唱を行って、ステージに上がる。ただ、この曲はクラシックの歌手が歌うと美しすぎてしまう。笠置シヅ子は実は歌唱力自体はそんなに高い方ではない。彼女の長所は黒人の女性ジャズシンガーに通じるようなソウルフルな歌声にある。日本人には余りいないタイプである。


最後は日本語の歌曲。親しみやすい楽曲が多く、安定した歌声を楽しむことが出来る。顔の表情も豊かで、やはりかわ(検閲により以下の文章は削除されました)

メッセージ性豊かな歌詞の曲が選ばれているという印象も受ける。

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2024年9月28日 (土)

「あさイチ プレミアムトーク」 伊藤沙莉 2024.9.6

2024年9月6日

「あさイチ プレミアムトーク」。ゲストは、連続テレビ小説「虎に翼」で主役の佐田(猪爪)寅子を演じた伊藤沙莉。8月31日に、「虎に翼」がクランプアップしての出演である。
コロコロ笑っていたかと思うと、メッセージに涙し、1時間に4回も泣くなど、感情豊かな人であることが分かる。

クランクアップの様子も放送されるが、泣きながら「明日から佐田寅子としていられないっていうのがちょっと想像つかない」と言いながら、「3日後ぐらいには徐々に実感」と言って笑い取りに行っているのが、いかにもお笑い芸人の妹である。

周りからは「朝ドラのヒロインって大変でしょ」と言われたそうだが、「意外とそうではなくて」「作品を作る楽しさ」の方が勝っていたそうである。

この人はかなりの人たらしだと思われるのだが(唐沢寿明や織田裕二に可愛がられているようである。また「虎に翼」でナレーション担当の尾野真千子ともかなり親しくなったらしい。出来るドジっ子なので当然、モテる)、自分を下げてでも必ず相手を立てるので悪い印象のない人である。

セリフ覚えが良く、普段はセリフを間違えないようだが、土居志央梨の証言によると、一度、ちょっとだけ噛んだときに、いきなり自分で自分の頬を「周りが引くぐらい」思いっきりはたき、頬が真っ赤になって、メイクさんが「あー!」と言いながら寄っていったそうで、逆に迷惑を掛けてしまったそうだが、シンプルに集中力を欠いていたので切り替えるのに一番早いというのでセリフビンタを選んだようである。土居志央梨は、「自分に厳しすぎるだろ」と笑っていた。

猪爪時代の寅子がお見合い中に居眠りするシーンがあるが、伊藤沙莉のフォトエッセイを読むと、「コンビニのバイト中はレジ打ち中にシンプルに就寝」と書かれており、この辺から取られている可能性がある。

森田望智(みさと)の証言、「どこか別の世界に行っている」に関してもフォトエッセイには、「居酒屋のバイトではビラ配りしてたら夜の散歩が気持ちよくなって一時行方不明」と呼応するようなことが書かれており、昔からそうだったようだ。

この人はなんなんだろう。


後半には、リアルにその時代を生きた人達の、想像では補えないくらいの苦労に思いをはせ、表現する上での難しさやプレッシャーなども述べて、その上で今の時代とリンクする部分に考えさせられることも多かったと語った。


前作の朝ドラ「ブギウギ」(NHK大阪放送局=BK制作)のヒロインである趣里から、励ましのメッセージを何度も受け取ったことや、プレゼントとして練り香水を貰ったことも明かして、今もつけているということで、手首の匂いを鈴木菜穂子アナウンサー(私の父親の大学の後輩で学部も一緒である)や博多華丸・大吉にかがせていた。

伊藤沙莉は、シングルマザーの貧しい家庭環境で育っており、伯母の協力を得ていたという境遇を寅子の娘である優未に例えていた。同じ千葉県出身の女優である麻生久美子も同じような幼少期を送っており、苦労人も多いようである(伊藤沙莉は千葉市若葉区出身で私と同郷。麻生久美子は山武〈さんぶ〉郡山武町〈さんぶまち〉、現・山武〈さんむ〉市出身)。


最後に、生まれて初めてネイルサロンに行ったということで爪を見せていた。女優だと様々な役をやるので、ネイルをデコレーションしたりは出来ないようである。


今後は1ヶ月ほど休養を取るようだ。

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2024年9月26日 (木)

米津玄師 「さよーならまたいつか!」(NHK連続テレビ小説「虎に翼」オープニングタイトルバック・フルバージョン)

米津玄師オフィシャルYouTubeチャンネルより。
朝ドラのヒロインにはイメージカラーがあり、猪爪寅子(伊藤沙莉)は虎に由来する黄色がイメージカラーで、若い頃は黄色い着物をよく着ています。明律大学専門部女子部の仲間との風景を経て、寅子は挫折して倒れます。そこから復活して、「綺麗な水のような」法律と戯れます。「空に唾を吐く」の部分で、米津玄師はやや粗めに歌っていますが、ここが伊藤沙莉のハスキーボイスを意識した箇所だと思われます。
ドラマのオープニングは、様々な職業の女性と共に踊る、寅子こと伊藤沙莉の実写で終わります。

2番の映像は、その後新たに撮られたもので、階段下の書生部屋にいる佐田優三(仲野太賀)と、明律大学講堂(当時、竣工したばかりの明治大学記念館の講堂がモデル)での法廷劇で、妨害行為を行った小橋浩之(名村辰)らに激怒した寅子を止めようとして引っ掻かれてしまう優三が映っています。笑い声の部分に出てくるのは、家庭裁判所の父こと多岐川幸四郎(滝藤賢一)です。
「雨霰」の部分では泣く猪爪改め佐田寅子と猪爪花江(森田望智)が描かれます。
「蓋し虎へ」の「蓋し」は「まさに」という意味ですが、「なるほど」というニュアンスも含まれ、「なるほど」が口癖の星航一(岡田将生)がちゃんと映っています。

そして、明律大学法学部の「魔女ファイブ」(佐田寅子=伊藤沙莉、山田よね=土居志央梨、桜川涼子=桜井ユキ、大庭改め竹村梅子=平岩紙、汐見香子こと崔香淑=ハ・ヨンス)+玉(村沢玉。羽瀬川なぎ)によるダンス。玉は戦後は車いすという設定なので、上半身だけ踊ります。
実は伊藤沙莉は、幼い頃はダンサー志望で、女優よりもダンサーとしてのデビューの方が先だったりします。土居志央梨は高校まではクラシックバレエをやっていたので、踊りはお手の物だと思われます。桜井ユキは日舞をやっているようですね。平岩紙はホルンを吹いているイメージで、ダンス経験は不明。ハ・ヨンスについてもよく分かりません。ただ簡単な振付なので動きに問題はないと思われます。

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2024年9月21日 (土)

観劇感想精選(469) 佐野史郎&山本恭司&小泉凡 「小泉八雲 朗読のしらべ 龍蛇伝説~水に誘われしものたち~」

2024年9月6日 大阪・谷町4丁目の山本能楽堂にて

午後6時から、谷町4丁目の山本能楽堂で、「小泉八雲 朗読のしらべ 龍蛇伝説~水に誘われしものたち~」を観る。小泉八雲が愛した松江出身の佐野史郎がライフワークとして続けている朗読公演。二夜連続で小泉八雲作品の公演に接することとなった。
原作:小泉八雲、監修・講演:小泉凡、脚本・朗読:佐野史郎、構成・音楽:山本恭司、翻訳:平井星一、池田雅之。

佐野史郎と山本恭司は松江南高校の同級生である。

今回の演目は、『知られぬ日本の面影』より「杵築」、『知られぬ日本の面影』より「美保の関」、『知られぬ日本の面影』より「日本海に沿って」河童の詫び証文、『天の川奇譚』より「鏡の乙女」、『霊の日本』より「振袖火事」、『怪談』より「おしどり」、『東の国から』より「夏の日の夢」


まず、小泉八雲の曾孫である小泉凡が登場。ちょっとした講演を行う。今年は小泉八雲の没後120年、そして代表作『怪談』出版120周年に当たるメモリアルイヤーだという。更に、来年のNHK連続テレビ小説が小泉八雲の妻である小泉節(小泉セツ、小泉節子)をモデルにした「ばけばけ」に決まり、会う人会う人みな一様に「おめでとうございます」と言ってくるという話をする。小泉節を主役級として描いた作品としては、八雲との夫婦生活を描いた「日本の面影」(1984年、NHK総合。原作・脚本:山田太一。小泉節を演じたのは檀ふみ。小泉八雲を「ウエストサイド物語」のジョージ・チャキリスが演じているという異色作である。私も子どもの頃に見てよく覚えている)以来となる。小泉凡が子どもの頃、家の奥に姿見があったそうだが、それが小泉節の遺品だったそうだ。鏡の右の部分が少し色あせたような感じだったので、「なんであそこだけあんなになってるの?」と聞くと、「おばあちゃん(小泉節)、いつもあそこに手ぬぐい掛けてたからよ」と母親が答えたそうである。ちなみに小泉凡が小学校に上がり、おもちゃのサッカーボールを買って貰って家の中で遊んでいたところ、その姿見に思い切りボールをぶつけてしまって、ひびが入り、その後はテープで留めてあるという。今回は井戸が鏡になるという話が出てくるのだが、ラフカディオ・ハーンが青年期を過ごしたアイルランドにも聖なる泉が沢山あり、そこに不思議な姿が映るという話が数多くあるそうだ。

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、来日当初は、東京や横浜、特に外国人居留区のあった横浜に長く滞在していたのだが、鎌倉や江ノ島(よく勘違いされるが、江ノ島は鎌倉市ではなく藤沢市にある)に出掛け、水泳が得意なのでよく泳いでいたそうだが、江ノ島の龍の像や龍神伝説を知って感銘を受けているという。ということで、今回は龍蛇を題材にした作品でランナップの組むことになった。

ちなみに出雲地方にはウミヘビが打ち上がるそうで、出雲の西の方では出雲大社に、出雲の東の方では佐太(さだ)神社に打ち上がったウミヘビを龍神として毎年奉納していたのだが、地球温暖化の影響で、ここ10年ほどはウミヘビが打ち上げられることがなくなってしまったそうである。出雲の沖には寒流が流れ込んでおり、それに行方を遮られたウミヘビが浜に打ち上げられるのだが、寒流がなくなってしまったため、男鹿半島の方まで行かないとウミヘビが打ち上がる様子は見られなくなってしまったそうである。
なお、「ばけばけ」とは全く関係なしに、現在、小泉八雲記念館では、「小泉セツ―ラフカディオ・ハーンの妻として生きて」という企画展をやっていることが紹介される。


佐野史郎は羽織袴姿で登場。山本恭司はエレキギターの演奏の他、効果音も担当する。舞台正面から見て左手(下手)に佐野史郎が、右手(上手)に山本恭司が陣取る。

佐野史郎は声音や声量を使い分けての巧みな朗読を見せる。音楽好きということもあって音楽的な語り口を聞かせることもある。だが、技術面よりも八雲への愛に溢れていることが感じられるのが何よりも良い。


ラフカディオ・ハーンは、素戔嗚尊が詠んだ日本初の和歌「八雲立つ出雲八重垣妻籠に八重垣作るその八重垣を」にちなんで八雲と名乗ったとされており、今回の佐野史郎が解説を担当した無料パンフレットにもそう書かれているが、日本ではハーンが、「ハウン」に聞こえ、「ハウンさん」と呼ばれたことから、「ハ=八、ウン=雲」にしたという説もある。

「杵築」は、八雲が出雲大社を参拝する時の記録で、宍道湖を船で渡っている時に見た、お隣、鳥取の大山の描写があるなど、旅情と詩情に溢れた文章である。

「美保の関」。美保関の神様は鶏を嫌うという。ついでに卵も嫌うという。ある日、船旅に出た一行は美保関で強風に遭う。誰か卵を持っていないかなどと言い合う人々。実は煙管に鶏の絵を入れた男がおり、それで美保関の神様が機嫌を損ねたのではないかという話になっている。この話には、大国主命の国譲りの神話が関与しているようである。美保関(美保神社)の神様はえびす様で事代主のこととされている。えびすは商売の神様としてお馴染みだが、実は蛭子(身体障害者)として流されており、祟り神でもある。
事代主自体は大国主の子とされ、鹿島神こと建御雷神に国譲りを迫られた大国主が事代主に聞くように言い、事代主が承諾したという展開になる。一方、弟神の建御方神は抵抗して建御雷神に敗れ、信州へと逃れ、諏訪大社に根付いている。建御雷神は藤原氏の氏神であるため、何らかの勢力争いが背景にあると思われる。
鶏というと、島根県の隣に鳥取県があるが、「鳥が騒がしい」と鳥取で乱が起こっているような描写が『古事記』に登場する。関係があるのかどうかは分からない。
大国主は、大神神社の大物主と同一視されることがあり、佐野史郎は、大神神社には卵が備えられることから、「大物主は蛇?」と記しているが、大物主が蛇なのは神話でも語られている。佐野は「卵は蛇の好物」としている。ということで、事代主は大国主=大物主とは逆の性質を持っていることが分かる。
鶏を嫌うことに関しては、折口信夫が面白い説を出しているが、鶏は朝を告げる鳥であり、太陽神である天照大神を最高神とする大和朝廷への反骨心があるのではないかと私は見ている。えびすが大和朝廷から捨てられた神であることもここに関係してくるのではないか。


日本各地にある河童の話。河童は馬を好むのだが、川に入った馬を掴んだところ、そのまま引きずり出され、人間達に捕らえられてしまう。そこで詫び状を書くという話である。
舞台は出雲の川津なのだが、小泉節は出雲弁がきつかったため、「かわづ」と発音できず、「かわぢ」と発音し、八雲は「河内」と聞き取り、そのまま記している。八雲は日本語はそれほど達者ではなかったため、節さんが頼りだったようだが、節さんが間違えるとそのまま間違えるということになっている。


『天の川奇譚』より「鏡の乙女」。京都が舞台である。ある日、男が井戸に飛び込んで死ぬという事件が起こる。
神官の松村が、京都にやってきて寺町に住み、老朽化した社殿復興の資金調達に奔走する。日照りがあり、京の水も涸れるのだが、松村の家の前の井戸だけは水が潤沢である。ある日、松村が井戸を覗くと、そこに絶世の美女が映っていた。余りに美しいので、松村は気を失い、危うく井戸に落ちるところであった。その美女がある日、松村の家を訪れる。美女は弥生という名の鏡の妖精で、毒蛇に捕らえられ、操られていたが、毒蛇は信州へと逃げた(つまり建御方神か?)という。井戸をさらうと鏡が見つかる。大分古びていたが、磨くと見事なものとなった。三月に作られたものであり、美女が弥生と名乗った意味も分かる。
弥生が再び現れる。百済からやってきた弥生は、藤原家の所有する鏡となったという。やはりここでも、藤原氏と建御方神の対立があるようだ。弥生の鏡は足利義政に献上され、義政は松村に金子を渡し、これで社殿の復興が叶うこととなった。


『霊の日本』より「振袖火事」。江戸時代初期、娘が町で色男を見かける。すぐに見失ってしまったが、色男の姿が脳裏に焼き付いた。色男の着物に似た色の振袖を着れば色男にまた会えるのではないかと考えた娘は、当時の流行りであった袖の長い青の振袖を作って貰い、それを常に着るようになる。だが、色男とは再会出来ない。娘は「南無妙法蓮華経」と唱え続ける。しかし恋の病のために次第に痩せ細り、ついには亡くなってしまう。振袖は娘の菩提寺に預けられたのだが、この寺の住職が高く売れると見込んで売りに出す。果たして、先の娘と同じ年頃の若い女性が振袖を結構な値段で買う。しかし、その女性もすぐにやつれて亡くなってしまう。振袖は寺に戻されるが、住職はまた売りに出す。また高値で売れ、買った若い女性がやつれて亡くなる、ということが繰り返される。流石に住職も、「この振袖には何かある」ということで、焼却処分しようとしたのだが、振袖は大いに燃え上がり、「南無妙法蓮華経」の七文字が火の玉となって江戸の町に飛び散る。延焼が延焼を生み、ついには江戸のほとんどが焼けてしまう。これが「振袖火事」こと明暦の大火である。火元となったのは、本郷の日蓮宗(法華宗)本妙寺であった。実は色男の正体は蛇であったという。

『怪談』より「おしどり」。陸奥国田村の郷、赤沼(現在の福島県郡山市に地名が残る)が舞台。村允(そんじょう)という鷹匠が狩りに出るが獲物を捕まえることが出来ない。ふと見ると、赤沼につがいのおしどりがいる。村允は空腹を満たすため、おしどりのオスを射る。メスの方は葦の中に逃げ去る。
その夜、村允の枕元に美しい女が現れる。女はおしどりのメスであることを明かし、なぜ罪もない夫を殺したのかと村允をなじる。そして赤沼に来いとの歌を詠む女。
翌朝、村允は赤沼に出向き、おしどりのメスを見つける。おしどりのメスは村允めがけて泳いできて、くちばしを自分に刺して自害して果てた。その後、村允は頭を丸めて僧侶となった。

『東の国から』より「夏の夜の夢」。浦島太郎の物語を翻案したものである。
大坂の住之江が舞台。漁師の倅である浦島太郎は、船で漁に出て釣り糸を垂らすが、かかったのは一匹の亀のみ。亀は千年万年生きるとされる縁起物である上に龍王の使い。殺す訳にはいかず、浦島太郎は亀を逃がす。すると水面を渡って美しい女がこちらに近づいてくる。女は龍王の娘であり、龍王の使いである亀を助けてくれたお礼に常夏の島にある父の宮殿、竜宮城へ共に行って、お望みならば花嫁となるので永遠に一緒に楽しく暮らそうと浦島太郎に言い、浦島太郎もそれに従った。二人で共に櫓を取り、竜宮城へと進む。
3年の楽しい月日が流れた。しかしある日、浦島太郎は、「両親の顔が見たいので戻りたい」と女に告げる。女は「もう会えなくなるから」と止めるが、浦島太郎は「顔を見て帰るだけだから」と聞かない。女は絹の紐で結んだ玉手箱を浦島太郎に渡し、「これが帰る助けになりましょうが、決して開けてはなりませぬ。どんなことがあっても!」と浦島太郎に念押しする。
浦島太郎は元いた浜に戻るが、全てが異なっている。老人に話を聞き、浦島太郎だと名乗ると老人は、「浦島太郎なら400年前に遭難したよ」と呆れる。古い墓を訪れた浦島太郎は、自分の墓を発見。一族の墓もそばにあった。落胆して帰路に就く浦島太郎。しかし、玉手箱を開ければ何かが変わるのではと思ってしまい……。

異国人の目が捉えた美しい日本が、日本語の名人にして小泉八雲の良き理解者である佐野史郎によって語られる。贅沢な夜となった。

なお、松江での公演が決定しており、『怪談』出版120年ということで、『怪談』からの話を多く取り上げ、いつもより上演時間も長く取った特別バージョンで行うという。興味深いが松江は遠い。

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2024年9月16日 (月)

NHK総合「土スタ 『虎に翼』特集@明治大学」 伊藤沙莉&仲野太賀 ハイライト映像へのリンクあり

2024年5月25日

NHK総合「土スタ(土曜スタジオの略のはずなのだが、「土曜にスターがやってくる」の略だとされており、そう読み上げられる)『虎に翼』特集@明治大学」を録画で見る。現在放送中の連続テレビ小説「虎に翼」のヒロインのモデルである三淵嘉子(独身時代の名前は武藤嘉子で、苗字にちなんで「ムッシュ」というあだ名で呼ばれていた。二度結婚しており、和田姓を経て三淵姓となっている)が旧制明治大学専門部女子部法科(3年制)と旧制明治大学法学部(3年制)卒ということで、東京都千代田区神田駿河台(最寄り駅は御茶ノ水)にある明治大学駿河台キャンパス・アカデミーコモン内のアカデミーホールからの生放送となる。ゲストは、ヒロインの猪爪寅子(いのつめ・ともこ)改め佐田寅子役の伊藤沙莉と、寅子の夫となった佐田優三役の仲野太賀。仲野太賀は俳優の中野英雄の息子(次男)で、再来年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」で、羽柴小一郎や大和大納言の名でも知られる豊臣秀長役で主役を張ることが決まっている。

明治大学アカデミーコモンは、私が在学中には存在しなかった建物で、一部を除いては学部の教室ではなく、専門職大学院や社会人向け講座(リバティアカデミー)などで使われているそうだが、現在の私は明治大学とは関係がないし、東京にもいないので実態はよく分からない。地下に移転した明治大学博物館(「虎に翼」展開催中)があり、明大OBである阿久悠記念館が出来ている。
アカデミーホールは多目的ホールで、講演なども行われるが、毎年、明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)の上演会場となっている。MSPは一度だけ、「ヴェニスの商人」を観ている。

明治大学出身者の法曹がモデルということで、伊藤沙莉も明治大学で法学の特別講義を4コマほど受けたそうだ。ちなみに女学校時代の寅子の親友で、今は寅子の兄の直道(上川周作)に嫁いでいる花江役の森田望智(もりた・みさと)も法律とは関係のない役なのに何故か付いてきたそうである。森田望智は大卒のはずだが(大学名非公開)また大学の雰囲気を楽しみたかったのだろうか。仲野太賀は明治大学には来ていなかったそうで、「だから落ちたのか!」と冗談を言っていた。

昨日の放送で、優三に赤紙(召集令状)が届き、出征するシーンが描かれたのだが、優三に届いた赤紙は色が薄いピンク色であった。前作の朝ドラ「ブギウギ」で、ヒロインの福来スズ子(趣里)の弟である花田六郎(黒崎煌代)に届いた赤紙は文字通り真っ赤であった。六郎が召集令状を受けたのは日米開戦前ということで染料が豊富にあったのだが、その後に染料が足りなくなり、赤紙の色も落ちていった。優三が招集されたのは昭和19年という設定である。

石田ゆり子、岡部たかし、土居志央梨、上川周作がビデオ出演。土居志央梨と上川周作は同い年(31歳)で、京都造形芸術大学映画俳優コースの同級生。伊藤沙莉も先日30歳になったばかりで、仲野太賀も31歳。若手陣は全員アラサーである。土居志央梨は、男装して男言葉を話す無愛想なキャラ(山田よね)を演じているため、ビデオ映像に出演した素に近い状態とのギャップがかなりある。
昨日、「あさイチ」に草彅剛が出演し、ゲストとしてT字路sが登場して歌を披露したのだが、伊藤沙莉はカラオケでT字路sの曲をよく歌うそうだ。「虎に翼」は名古屋がロケ地になっているのだが、名古屋ロケを終えた夜に伊藤沙莉と土居志央梨は二人でカラオケに出掛け、伊藤沙莉はT字路sを、土居志央梨は椎名林檎を歌った。二人とも歌は上手いらしい(伊藤沙莉は歌手デビュー済み)。

撮影の裏話が中心だが、チームの雰囲気はとても良さそうで、伊藤沙莉も仲野太賀も互いをリスペクトしている様子がよく伝わってくる。

伊藤沙莉と仲野太賀が夫婦役を演じるのは二度目で、NHKBSプレミアム(現在は統合によりチャンネル自体は廃止されている)とNHK総合「ドラマ10」で放送された連続ドラマ「拾われた男」で共演している。「拾われた男」には草彅剛も準主役で出演しており、昨日の「あさイチ」では「拾われた男」の映像も流れた。「拾われた男」は、現在はDisney+で配信されている。

ハイライト映像へのリンク

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