スペシャルコント「志村けん in 探偵佐平60歳」
スペシャルコント「志村けん in 探偵佐平60歳」を視聴。志村けんが作った約60分のコントドラマ。原作:樋口有介『木野塚探偵事務所だ』。脚本:内村宏幸、平松雅俊、戸田幸宏、志村康徳(しむらけんの本名)。演出:吉田照幸。NHKエンタープライズの制作。2018年の正月に放送されたものだが、翌々年、新型コロナにより志村けんは他界。ドラマ形式による作品としては最後の出演作となった。
出演:志村けん、伊藤沙莉、高橋恵子、岸本加世子、平泉成、津田寛治、堀内敬子、堀部圭亮、野間口徹、大悟(千鳥)、井出卓也、広岡由里子、中上サツキ、大津尋美ほか。志村けん主演のためかNHKとはいえ、コントドラマにしては実力派の俳優が揃っている。
警視庁を定年退職した木野塚佐平は、ハードボイルドな私立探偵となることを決意する。とはいっても、警視庁に定年まで勤めたとはいえ会計係、それもパソコンも満足に使えない窓際。ということで無理があるのだが、それでも新宿・歌舞伎町に事務所を借り、強引にスタート。まずは美人秘書を募集するのだが、希望するバスト86㎝以上(後に82㎝以上に訂正)のグラマラスな若い美女で、60を過ぎたおっさんの助手になろうという物好きはいない。そんな折、事務所内を飾る植物を運んできた梅谷桃世(伊藤沙莉)という大学生の女の子が現れる。アルバイトをしていた会社の社長が失踪して倒産したという桃世。出会ったばかりなのに佐平とタメ口で話すなど、口や態度はやや悪いものの、頭脳明晰で推理力と洞察力に長けるなど探偵としての資質は十二分。後に武闘面でも力を発揮と大変優秀な右腕となる。というより、事件はほぼ彼女任せとなる。高難度の演技もこなす伊藤沙莉だが、今回のような自然体で等身大の女の子を演じてもリアリティがあり、作品に溶け込んでいる。どこまでが桃世でどこからが伊藤沙莉なのか分からなくなるほどである。ボケとツッコミを交互にやったり、頭をはたかれたり、はたき返したりとコント的な演技も多いのだが、日本では数少ない天性のコメディエンヌとしての資質がここで生きている。今思うとだが、コメディの資質が志村けんから伊藤沙莉にバトンタッチされた瞬間に立ち会ったような趣すら感じる。なお、伊藤沙莉の上の世代の天性のコメディエンヌの一人に、「トリック」の山田奈緒子を演じた仲間由紀恵がいるが、桃世も奈緒子同様に、「貧乳ネタ」で散々にいじられ、自虐発言まで行っている。
おそらく志村けんと伊藤沙莉二人だけのシーンはアドリブ満載だと思われる。
うだつの上がらなかった警視庁の会計係が名探偵になれるはずもないのだが、佐平は唯一の特技であるコイン投げで、銭形平次のように相手を倒していく。ただジェネレーションギャップで桃世は銭形平次も「知らねえ」
金魚誘拐事件を佐平に依頼する元女優の高峰和子を演じるのは高橋恵子。高峰和子のデビュー作は「女子高生ブルース」であるが、高橋恵子(関根恵子)のデビュー作が実際に「女子高生ブルース」である。
最初の依頼人、高村麗香を演じる堀内敬子は、私より4歳上ということで、収録時、放映時共に結構な年齢なのだが、変わらぬ美しさと色気で世の男性陣を魅了する。なお、この後(2022年)、堀内敬子と伊藤沙莉は「ももさんと7人のパパゲーノ」において親子役で共演することになる。
最近のコメント