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2026年2月27日 (金)

これまでに観た映画より(429) オムニバス映画「ブルーハーツが聴こえる」

2026年2月14日

U-NEXTで、オムニバス映画「ブルーハーツが聴こえる」を観る。2017年の作品。日本バンド史上に燦然と輝くTHE BLUE HEARTSの楽曲にインスパイアされた6編の短編映画からなる一本。前半はコメディが並ぶが進むにつれて重みが増していく。

第1作「ハンマー(48億のブルース)」は、飯塚健の脚本・編集・監督。彼が監督した連続ドラマ「REPLAY&DESTROY」と同じ人物が登場する。
アンティーク家具職人の後藤一希(尾野真千子)は、ある雨の日に偶然、同棲中の彼氏が他の女性といるところを見てしまう。彼氏は小劇団の主宰者か何かで、脚本を書き、おそらく演出もする。
一方、高校生の愛川奏(あいかわ・かなで。伊藤沙莉)は、大学受験のための模試を受けるが、惨憺たる成績。行ける大学があるのかどうかも不明である。第5志望に受かりっこない「東京大学」を記入したことに家具製作所の久保(角田晃広)は呆れる。奏は、同級生の佐野結(萩原みのり)と共にバンドを組もうとしている。
ある日、変装して、といっても仮面にマントで余計怪しいのだが、彼氏の劇団の芝居を観にザ・スズナリに行った一行は、芝居の内容に感動し、涙を流す。
一方で、奏のドラム、結のギターによるバンドが結成され、久保と一希をツインボーカルに迎えて演奏を行うのだった(音はTHE BLUE HEARTSのものが流れる)。

「REPLAY&DESTROY」と同じスタッフによる制作だと思われるが、映画であるため、ドラマとは画室が違い、少し上品になっている。
伊藤沙莉は、相変わらずいけてない髪型をしていて、奏はモテそうにないが、顔だけのアップになると可愛い子であることが分かる。女子高生役をやるときは当たり前のようにミニスカートの制服姿だが、千葉県立若松高校で本当の高校生をしていた時には、周りはミニスカートにルーズソックスでも、スカート丈膝より下、靴下は学校指定のものという校則を守り、学級委員長をしたことがあったりと、お堅い面もあるのかも知れない。

ラストのハンマーは、尾野真千子が机に振り下ろす。いくつかの解釈が可能だと思うが、いずれにせよ、ここから新しい人生が始まる。


第2作「人にやさしく」。宇宙を行く刑務船の中が舞台のSFで実験的要素も強い。行く先の星では懲役刑が待っている。だが船が故障し、座して死を待つしかない身となる。テロを起こした人などが乗っているが、中に一人、ヒューマロイド(人間とアンドロイドのハイブリッド)の男(市原隼人)が乗っている。人を殺したので刑務船に乗っているようだ。
体制側の看守は覆面姿で武装しているが、覆面が取れると女(瀧内公美)であることが分かる。瀧内公美はこの映画全編を通して顔だけなら一番美人だと思える。なお、科学者役で西村雅彦(西村まさ彦)が乗っており、瀧内公美と並んで富山県人が二人同じ画面に映っている。富山県からは多くの舞台人が出ているが、それでも大都市圏出身の俳優が多いため、富山の人二人という状況が珍しい。
最終的にはヒューマロイドが、刑務船を修理するという展開になる。
この映画唯一のアクションものである。脚本・監督:下山天。


第3作「ラブレター」。脚本・監督:井口昇。脚本家の池野(斎藤工)は自らの青春時代を脚本化している(その割にはモノローグとナレーションしか書いていないが)うちに、事故で若くして亡くなった同級生の彩乃(山本舞香)のことを思い出す。脚本を書けば過去が変わるかもと考えた池野は、友人の小松(要潤)と共にトイレからタイムスリップする。建設現場から落ちてきた建材により落命した彩乃。そこで池野は、彩乃をシザーハンドにして、建材に立ち向かえるようにするのだが……。
井口昇はベテランだが、説明的なセリフも多く、少し素人臭のする作品である。


第4作「少年の詩」。脚本・監督:清水崇。1987年の話。石川ユウコ(優香)は、息子の健(内川蓮生)と暮らすシングルマザー。栃木県足利市内の大型スーパーに勤めている。健の誕生日の日、ユウコと健はユウコが仲良くしている男の存在を巡って親子喧嘩をしてしまう。その日、ユウコが勤めるスーパーでは、屋上でボンバー仮面というヒーローのショーが行われる。
ショーのバックステージに忍び込んだ健は、ボンバー仮面役のスーパー社員で主任の永野(新井浩文)が母親に迫るのを目撃してしまい……。

可愛らしい印象で売ってきた優香だが、メイクを地味にして、その辺にいそうなおばさんを好演している。
新井浩文は、細やかな好演を見せているが、強制性交で実刑となり服役したとあっては、俳優は諦めるべきだと思う。彼のせいで大河ドラマ「真田丸」は一時期配信停止となった。ただすでに復帰プロジェクトが進行中で撮影も終わっているという。


第5作「ジョウネツノバラ」。脚本・出演:永瀬正敏。監督:工藤伸一。
出演者は、永瀬正敏と水原希子の二人だけである。
目を大きく見開き倒れる女性(水原希子)。病室である。傍らに佇む男(永瀬正敏)は夫だと思われる。
女性は亡くなったようで、葬儀が行われようとしている。棺桶の顔の前の扉を開けて、妻を確認する夫。夫はそのまま妻を車椅子に乗せて自宅のアパートまで帰ってしまう。
妻を風呂に入れた夫は、妻を冷凍室に運び、保存する。突然、永瀬正敏の髪が白くなり、歳月が過ぎたことが表される。冷凍室の中で妻は昔のままに眠っている。だが夫は冷凍機能を解除。妻と床の上に横たわる。あるいは夫の寿命も尽きようとしているのかも知れない。

脚本:永瀬正敏だが、セリフは一つもなく、おそらく場所と進行のみが描かれていると思われる。映像詩的作品であり、このオムニバス映画の中でも異彩を放っている。


第6作「1001のバイオリン」。脚本:小嶋健作、監督:李相日。
秋山達也(豊川悦司)は、東京の団地マンションで、妻(小池栄子)、長女(石井杏奈)、長男(荒木飛羽)の4人暮らし。東京に来て4年になるが、その前は福島第一原発で働いていた。東日本大震災により、仕事を失った秋山は、原発を見限り、すぐに一家で東京に移住。いくつかの仕事に就いたが長続きせず、現在は無職である。
長男の授業参観に出た達也。長男は、福島で飼っていた犬のタロウのことを書いた作文を朗読する。「タロウはまだ生きてるかも知れないぞ」と帰り道に息子に話しかける達也だったが、長男の考えは現実的だった。元同僚の安男(三浦貴大)と再開した達也は、飼い犬のタロウを探しに福島へと向かう。
クレジットにより、福島県いわき市と福島県南相馬市でロケが行われたことが分かる。犬の名前がタロウなのは、「南極物語」でも描かれたあの犬に掛けられているのかも知れないが、詳しい由来は語られないので分からない。
トヨエツは全編、福島弁のセリフを話す。福島の言葉には詳しくないので、どれだけのクオリティなのかは不明である。
「国宝」の李相日監督だからだとか、この作品が最もシリアスだからということは抜きにしても、一番完成度が高いと思われる。もっとも完成度重視でない作品も前半には多いのだが。

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