観劇感想精選(507) 「シャイニングな女たち」
2026年1月10日 大阪の森ノ宮ピロティホールにて観劇
午後6時から、森ノ宮ピロティホールで、「シャイニングな女たち」を観る。「シャイニング」というと、スティーヴン・キングの同名小説とスタンリー・キューブリック監督によるその映画化作品を連想しがちだが、それらとは全く関係のない話である。
作・演出:蓬莱竜太。出演:吉高由里子、さとうほなみ(ゲスの極み乙女のドラマー、ほな・いこかと同一人物。現在、朝ドラ「ばけばけ」に遊女役で出演中)、桜井日奈子、小野寺ずる(映画「風のマジム」では、伊藤沙莉演じる主人公の右腕的存在&コミックリリーフで出演)、羽瀬川なぎ(朝ドラ「虎に翼」では車椅子生活という難役を演じた)、李そじん(読みは、イ・ソジンだと思う)、名村辰(なむら・しん。「虎に翼」では学生時代には女性を蔑視していた嫌な男を演じていた)、山口紗弥加。一人を除いて全員女優という比較的珍しい布陣。宝塚歌劇は全員女性だが、男役と娘役がある。
山口紗弥加だけ年が上(吉高由里子とは比較的近い)であるが、実際に年齢の離れた役を演じている。
蓬莱竜太が十代半ばを過ごした石川県の県庁所在地、金沢市が舞台である。そのため、出演者は(韓国からの留学生役を除いて)全員、加賀地方の方言を使う。ちなみに加賀の語源は「輝き」とされ、「シャイニングな女たち」に通ずる。
北陸創成大学という、いかにも偏差値の低そうな校名の大学が舞台だが、良いとされる大学だと彼女の卒業後の進路も変わってくるため、敢えてそういったイメージの大学名にしたのだろう。ちなみに、石川大学という大学は存在しない(47都道府県のうち、石川大学と栃木大学だけが存在しない)。石川大学だと良さそうに見えるので避けたのかも知れない。
2年前の大河ドラマ「光る君へ」で主役の紫式部(まひろ/藤式部)を演じた吉高由里子。「ハロハロ日曜日」で始まる、吉高由里子じゃなかったら、「この人、ちょっと頭おかしいんじゃないの」と思ってしまうような告知がXで毎週あった。「1時間を私に下さい」とも書いていたが、大河ドラマの放送枠は45分である。今回も群像劇ではあるが、劇は彼女のモノローグに始まり、彼女を中心に回っていくため、主役と見なして間違いないだろう。女優の多くにモノローグが用意されているが、桜井日奈子がもう一人の軸となっている。
吉高由里子演じる金田海(うみ)は、地域スポーツ振興課の非正規社員(金沢駅を使って通勤しているため、石川県内の他の自治体の可能性もある)。生活に疲れた感じで、経済的な余裕もなさそうである。
ある日、葬儀の後のお別れ会に紛れ込んだ海は、安らぎを覚え、お別れの会に参加して食事をするのが癖になる。それを20回ほど重ねたある日、海は遺影に見覚えがあることに気付く。大学時代に女子フットボール部員として一緒に活動してきた白澤喜美(よしみ。桜井日奈子)であった。周りにいる人も大学時代の女子フットサル部のメンバー達で……
さとうほなみ演じる山形圭子が、海の幼馴染みということで、海の若いときの話は圭子によって語られる。中高と同じ学校の陸上部で、海は勉強は余りしないタイプ。圭子は勉強していることを海にからかわれるが、結局、同じ大学に進み、今も一番親しい友人である。2011年7月17日、FIFA女子ワールドカップ、なでしこJAPANがアメリカ代表を破って世界一になった時、海は女子サッカー部創設を決意する。圭子も巻き込まれる。2011年は3月11日に東日本大震災が起こってから、日本全体が暗く沈んだムードの年だった。今こそ女子サッカーをやろう! ということでビラを撒いたりして勧誘を行うが、反応はいまいち。そもそも女子でサッカーをすることに興味がある人は少なく、経験者はすでに強豪の女子サッカー部を持つ大学に進んでしまっている。
「次の校舎の陰から出てきた人をスカウトする」と海は決めるが、出てきたのは見るからにオタクっぽい白澤喜美で……。
コーチにプロ経験もある川越瑞希(山口紗弥加)を招き、人数不足でサッカーは諦めてフットサル部を立ち上げた海(それまでフットサルの存在も知らなかった)。初戦はシュートを何発も食らって大敗するが、実力を付けていく。
そんな中、子どもの頃は皆から「可愛い」「綺麗」と言われて得意になるも、それが災いしたのか小学校4年生の時に同級生の女子全員から無視され、以後は、「地味に地味に」を心がけてきた遠藤アキラ(羽瀬川なぎ)が週刊誌の「スポーツ美女」コーナーで取り上げられ、自信を付ける。そんなアキラのロッカーから財布が盗まれた。金額は1350円と安いが、金沢市内の実家などではなく、遠くからなのか、下宿してるのか、持ち金に乏しく、とにかく月末までそれで過ごさなければいけないのだった。海の提案で皆で金を出すことにするが、海は犯人に心当たりがあり……。
この後は蓬莱竜太得意の心理戦が始まるが、その後、ネット社会の怖ろしさや、海の非正規社員としての悲哀(喜美も契約社員にしかなれなかった。海は非正規ながら公務員のようだが、非正規ゆえ発案した企画は一つも通らない、給料や待遇も据え置きで正社員への昇格も却下、午前中に地域のスポーツの写真を撮りに出掛けることだけが生き甲斐だったが、コロナで活動出来なくなる。コロナが終わると写真撮影専門の人が入ってきて、海は事務の雑用をこなすだけになる。アキラは、地方局のレポーターとして人気になり、東京に進出するも地方とは違い、同業となるのは全員可愛い子。仕事はなく、でも事務所にレッスン代は払わねばならず、酒席の接待に駆り出されることもある)などが描かれ、最後は輝いていた青春時代に戻って、どこかからか落ちてきたボールでサッカー(金沢駅近くの公園ということで神社のそばのあそこかな? などと想像していた)という何とか花のある終わり方をするかと思われたが、ラストに能登半島地震の発生が圭子によって告げられる。
悪い作品ではないのだが、テーマを詰め込み過ぎてしまうため、結果としてどれを描きたかったのかが不鮮明になってはいる。ただ俳優陣は皆魅力的で、満足のいく出来にはなった。一つ一つ三部作で描いた方が良いような気もした。
左利きの有名人の一人である吉高由里子であるが、サッカーもレフティー。脚のレフティーは手の左利きより多いので、他にも何人か左で蹴る人がいたが、常時左は吉高由里子だけである。
今回は吉高由里子得意のフィールドに持ち込める役だったので、吉高も生き生きと演じる。「岡山の奇跡」と呼ばれて注目された桜井日奈子だが、今のところテレビドラマでも映画でも有名作で主役を張ったことはない。今日は良い演技だったし、ホワイエにも一人だけお花が二つ届いていたが、「彼女でないと出来ない役」が思い浮かばないのが現状である。岡山県は最近元気で、後輩の女優達も出てきているため、嵌まり役が見つかればいいのだが。
他の出演者は「安定」といったところ。
宣伝用ポスターに黒塗りのサッカーボールが写っており、劇中でもサッカーボールが使われるが、本気でやるとボールが客席に蹴り込まれてしまう危険性があるため、要所だけボールを用いて、後はエアでキックやトラップなどを行っていた。
金沢が舞台なのが嬉しい。「あの辺かな、あの辺かな」と街並みを思い浮かべながら観ていた(実際に出てくる具体的な施設は、金沢駅とその周辺のホテル、金沢21世紀美術館、石川県立美術館のみ)。また金沢に行きたい。七尾市の能登演劇堂も再訪したい。













































































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