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2025年2月11日 (火)

コンサートの記(886) 日本シベリウス協会創立40周年記念 シベリウス オペラ「塔の乙女」(日本初演。コンサート形式)ほか 新田ユリ指揮

2024年11月29日 東京都江東区の豊洲シビックセンターホールにて

東京へ。豊洲シビックセンターホールで、シベリウス唯一のオペラ「塔の乙女」の日本初演を聴くためである・
劇附随音楽などはいくつも書いているシベリウスであるが、オペラを手掛けているというイメージを持つ人はかなり少ないと思われる。「塔の乙女」はシベリウスがまだ若い頃に書かれたもので、初演後長い間封印されていた。1981年にようやく再演が行われたという。
実は、シベリウス同様にほとんどオペラのイメージのない指揮者のパーヴォ・ヤルヴィ(実際には、「フィデリオ」やミュージカルになるが「ウエスト・サイド・ストーリー」などを指揮している)が「塔の乙女」を録音しており、これが最も手に入りやすい「塔の乙女」のCDとなっている。

 

豊洲シビックセンターは、江東区役所の特別出張所や文化センター、図書館などからなる複合施設で、2015年にオープン。ホールは5階にある。音楽イベントの開催なども多いようだが、音楽専用ではなく多目的ホールである。それほど大きくない空間なので、おそらく音響設計などもされていないだろう。ステージの背景はガラス張りになっていて、豊洲の街のビルディングが見えるが、遮蔽することも出来るようになっている。本番中は閉じて屋外の景色は見えにくくなっていた。

 

今回の演奏会は、日本シベリウス協会の創立40周年を記念して行われるものである。
オペラ「塔の乙女」は、上演時間40分弱であり、それだけでは有料公演としては短いので、前半に他のシベリウス作品も演奏される。

曲目は、第1部が、コンサート序曲、鈴木啓之のバリトンで「フリッガに」と「タイスへの賛歌」(いずれも小沼竜之編曲)、駒ヶ嶺ゆかりのメゾソプラノで「海辺のバルコニーで」(山田美穂編曲)と「アリオーソ」。第2部がオペラ「塔の乙女」(コンサート形式)である。スウェーデン語の歌唱であるが日本語字幕表示はなく、聴衆は無料パンフレットに掲載された歌詞対訳を見ながら聴くことになる(客席は暗くはならない)。

日本初演作品ということでチケットは完売御礼である。

 

指揮は、北欧音楽のスペシャリストで、日本シベリウス協会第3代会長の新田ユリ。彼女は日本・フィンランド新音楽協会の代表も務めている。

管弦楽団は創立40周年記念オーケストラという臨時編成のもの(コンサートミストレス・佐藤まどか)。第1ヴァイオリン4、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロがいずれも3、コントラバス2という小さい編成の楽団だが、「塔の乙女」初演時のオーケストラ編成はこれよりも1人少ないものだったそうである。

 

午後6時30分頃より、新田ユリによるプレトークがある。
シベリウスとオペラについてだが、シベリウスはベルリンやウィーンに留学していた時代にワーグナーにかぶれたことがあるそうで、「自分もあのようなオペラを書いてみたい」と思い立ち、「船の建造」という歌劇作品に取り組むことになったのだが、結局、筆が止まってしまい、未完。その素材を生かして「レンミンカイネン」組曲 が作曲された。「レンミンカイネン」組曲の中で最も有名な交響詩「トゥオネラの白鳥」は、元々は歌劇「船の建造」の序曲として書かれたものだという。
その後、ヘルシンキ・フィルハーモニー・ソサエティーからチャリティーコンサートの依頼を行けたシベリウスは、オペラ「塔の乙女」を完成させる。初演は、1896年11月7日。この時点ではシベリウスは「クレルヴォ」以外の交響曲を1曲も書いていない。指揮はシベリウス本人が行った。演奏会形式であったという。しかし、このオペラはシベリウスが半ば取り下げる形で封印してしまい、その後、1世紀近く知られざる曲となっていた。オペラにしては短いということと、シンプルなストーリー展開が作品の完成度を下げているということもあったのだろう。なお、台本はラファエル・ヘルツベリという人が書いており、先にも書いたとおりスウェーデン語作品である。これ以降、シベリウスは交響曲の作曲に本格的に取り組むようになり、オペラを書くことはなかった。
シベリウスはスウェーデン系フィンランド人で、母語はスウェーデン語である。当時のフィンランドはロシアの支配下にあったが、ロシア以前にはスウェーデンの領地であったことからスウェーデン系が上流階層を占めていた。ただ時代的には国民がフィンランド人としてのアイデンティティーを高めていた時期であり、シベリウスもフィンランド語の学校で学んでいる(ただ彼は夢想家で勉強は余り好きではなく、フィンランド語をスウェーデン語並みに操ることは終生出来なかった)。シベリウスの歌曲は多いが、大半はスウェーデン語の詩に旋律を付けたものであり、フィンランド語、英語、ドイツ語の歌曲などが少しずつある。

今日の1曲目として演奏されるコンサート序曲は、フィンランドの指揮者兼作曲家のトゥオマス・ハンニカイネンが、2018年に「塔の乙女」のスコアを研究しているうちに、矢印など意味ありげな記号を辿り、それが一つの楽曲になることを発見したもので、2021年に現代初演がなされている。1900年4月7日に、コンサート序曲が初演され、それが「塔の乙女」由来のものであることが分かっているのだが、総譜などは見つかっておらず、幻の楽曲となっていた。
一応、制約があり、2025年いっぱいまでは、トゥオマス・ハンニカイネンにのみ指揮する権利があるのだが、今回、日本シベリウス協会が「塔の乙女」の日本初演に合わせて演奏したいと申し出たところ特別に許可が下りたそうで、世界で2番目に演奏することが決まったという。

世界レベルで見るとシベリウス人気が高い国に分類される日本だが、それでも北欧音楽はドイツやフランスの音楽に比べるとマイナーである。ただ日本シベリウス協会の会員にはシベリウスや北欧の作品に熱心に取り組んでいる人が何人もいるため、オペラ作品なども上演可能になったそうである。

 

1曲目のコンサート序曲。日本初演である。創立40周年記念オーケストラは、チェロが客席寄りに来るアメリカ式の現代配置をベースにしている。楽団員のプロフィールが無料パンフレットに載っているが、日本シベリウス協会の会員も含まれている。現役のプロオーケストラの奏者や元プロのオーケストラ団員だった人もいれば、フリーの人もいる。有名奏者としては舘野泉の息子であるヤンネ舘野(山形交響楽団第2ヴァイオリン首席、ヘルシンキのラ・テンペスタ室内管弦楽団コンサートマスター兼音楽監督)が第2ヴァイオリン首席として入っている。
コンサートミストレスの佐藤まどかは、東京藝術大学大学院博士後期課程を修了。シベリウスの研究で博士号を取得している。シベリウス国際ヴァイオリンコンクールでは3位に入っている。上野学園短期大学准教授(上野学園大学は廃校になったが短大は存続している)。日本シベリウス協会理事。
シベリウスがまだ自身の作風を確立する前の作品であり、グリーグに代表される他の北欧の作曲家などに似た雰囲気を湛えている。この頃のシベリウスはチャイコフスキーにも影響を受けているはずだが、この曲に関してはチャイコフスキー的要素はほとんど感じられない。後年のシベリウス作品に比べるとメロディー勝負という印象を受ける。

 

バリトンの鈴木啓之による「フリッガに」と「タイスへの賛歌」。神秘的な作風である。
鈴木啓之は、真宗大谷派の名古屋音楽大学声楽科および同大学大学院を修了。フィンランド・ヨーチェノ成人大学でディプロマを取得している。第8回大阪国際音楽コンクール声楽部門第3位(1位、2位該当なしで最高位)を得た。

 

駒ヶ嶺ゆかりによる「海辺のバルコニーで」と「アリオーソ」。神秘性や悲劇性を感じさせる歌詞で、メロディーも哀切である。
駒ヶ嶺ゆかりも、真宗大谷派の札幌大谷短期大学(音楽専攻がある)を卒業。同学研究科を修了。1998年から2001年までフィンランドに留学し、舘野泉らに師事した。東京でシベリウスの歌曲全曲演奏会を達成している。北海道二期会会員。

 

オペラ「塔の乙女」。合唱は東京混声合唱団が務める。
配役は、乙女に前川朋子(ソプラノ)、恋人に北嶋信也(テノール)、代官に鈴木啓之(バリトン)、城の奥方に駒ヶ嶺ゆかり(メゾソプラノ)。

前川朋子は、国立(くにたち)音楽大学声楽科卒業後、ドイツとイタリアに留学。フィンランドの歌曲に積極的に取り組んでいる。東京二期会、日本・フィンランド新音楽協会、日本シベリウス協会会員。

北嶋信也は、東海大学教養学部芸術学科音楽学課程卒業、同大学大学院芸術学研究科音響芸術専攻修了。二期会オペラ研修所マスタークラス修了時に優秀賞及び奨励賞を受賞。東海大学非常勤講師、二期会会員。
東海大学出身のクラシック音楽家は比較的珍しい。東海大学には北欧学科があり(元々は文学部北欧学科だったが、現在は文化社会学部北欧学科に改組されている)、言語以外の北欧を学べる日本唯一の大学となっている。ただ、そのことと今回の演奏会に出演していることに関係があるのかは分からない。

 

「塔の乙女」のあらすじ。
乙女が岸辺で花を摘んでいると、代官が現れ、娘をさらって塔に閉じ込めてしまう。乙女は嘆き、歌う。乙女が姿を消したことで彷徨っている恋人は乙女の歌声を耳にし、乙女が塔に閉じ込められていることを知る。代官と恋人の一騎打ちになろうとしたところで城の奥方が現れ(代官は偉そうに見えるが、身分としては城の奥方の方が上である)、乙女を解放した上で代官を捕縛するよう家臣に命じる。かくて乙女と恋人はハッピーエンド、という余りにも単純なストーリーである。一種のメルヘンであるが、代官がなぜそれほど乙女に惚れ込むのか、恋人と乙女はそれまでどういう関係だったのかなど、細部についてはよく分からないことになっている。
本格的なオペラというよりも余興のような作品として台本が書かれ、作曲が行われたということもあるだろう。
このテキストだと確かに受けないだろうなとは思う。見方を変えて、これは若き芸術の内面を描いたものであり、芸術家の中に眠っている才能を葛藤を経ながら自らの手で発掘していく話として見ると多少は面白く感じられるかも知れない。演奏会形式でしか上演されたことはないようだが、いわゆるオペラとして上演する時には演出を工夫してそういう見方が出来ても良いようにするのも一つの手だろう。
出来れば字幕付きでの上演が良かったのだが、それでも楽しむことは出来た。
シベリウスの音楽は抒情美があり、ピッチカートが心の高鳴りを表すなど、心理描写にも秀でている。ストーリーに弱さがあるため、今後も単独での上演は難しいかも知れないが、他の短編もしくは中編オペラと組み合わせての上演なら行える可能性はある。

今日は前から2番目の席ということもあり、歌手達の声量ある歌声を存分に楽しむことが出来た。

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2025年2月 9日 (日)

これまでに観た映画より(375) 筒井康隆原作 長塚京三主演 吉田大八監督作品「敵」

2025年2月1日 烏丸御池のアップリンク京都にて

アップリンク京都で、日本映画「敵」を観る。筒井康隆の幻想小説の映画化。長塚京三主演、吉田大八監督作品。出演は、長塚京三のほかに、瀧内公美、河合優実、黒沢あすか、松尾諭(まつお・さとる)、松尾貴史、中島歩(なかじま・あゆむ。男性)、カトウシンスケ、高畑遊、二瓶鮫一(にへい・こういち)、高橋洋(たかはし・よう)、戸田昌宏、唯野未歩子(ただの・みあこ)ほか。脚本:吉田大八。音楽:千葉広樹。プロデューサーに江守徹(芸名はモリエールに由来)が名を連ねている。

令和5年の東京都中野区が舞台であるが、瀧内公美、河合優実、黒沢あすかといった昭和の面影を宿す女優を多く起用したモノクローム映画であり、主人公の家屋も古いことから、往時の雰囲気やノスタルジーが漂っている。

77歳になる元大学教授の渡辺儀助(長塚京三)は、今は親から、あるいは先祖から受け継いだと思われる古めかしい家で、静かな生活を送っている。両親を亡くし、妻も早くに他界。子どもも設けておらず、一人きりである。冒頭の丁寧な朝のルーティンは役所広司主演の「PERFECT DAYS」を連想させるところがある。専門はフランス文学、中でも特にモリエールやラシーヌらの戯曲に詳しい。今は、雑誌にフランス文学関連のエッセイを書くほかは特に仕事らしい仕事はしていない。実は大学は定年や円満退職ではなく、クビになっていたことが後になって分かる。

大学教授時代の教え子だった鷹司靖子(瀧内公美。「鷹司」という苗字は摂関家以外は名乗れないはずだが、彼女がそうした上流の出なのかどうかは不明。また「離婚しようかと思って」というセリフが出てくるが、鷹司が生家の苗字なのか夫の姓なのかも不明である)はよく遊びに訪れる仲である。優秀な学生であったようなのだが、渡辺が下心を抱いていたことを見抜いていたようでもある。しょっちゅうフランス演劇の観劇に誘い、終わってから食事とお酒が定番のコースだったようだが、余程鈍い女性でない限り気付くであろう。ただ手は出さなかったようである。渡辺の家で夕食を取っている時に靖子が渡辺を誘惑するシーンがあるのだが、これも現実なのかどうか曖昧。その後の靖子の態度を見ると、現実であった可能性は低いようにも見える。
友人でデザイナーの湯島(松尾貴史)とよく訪れていた「夜間飛行」というサン=テグジュペリの小説由来のバーで、バーのオーナーの姪だという菅井歩美(河合優実)と出会う渡辺。歩美は立教大学の仏文科(立教大学の仏文科=フランス文学専修は、なかにし礼や周防正行など有名卒業生が多いことで知られる)に通う学生ということで、フランス文学の話題で盛り上がる(ボリス・ヴィアンやデュラス、プルーストの名が出る)。ある時、歩美が学費未納で大学から督促されていることを知った渡辺。歩美によると父親が失職したので学費が払えそうになくなったということなので、渡辺は学費の肩代わりを申し出て、金を振り込んだのだが、以降、歩美とは連絡が取れなくなる。「夜間飛行」も閉店。持ち逃げされたのかも知れないと悟った渡辺であるが、入院した湯島に「世間知らずの大学教授らしい失敗」と自嘲気味に語る。

湯島を見舞った帰り。渡辺は、「渡辺信子」と書かれた札の入った病室を発見。部屋に入るとシーツをかぶせられた遺体のようなものが見える。渡辺がシーツを剥ぎ取ると……。

どこまでが現実でどこまでが幻想もしくは夢なのか曖昧な手法が取られている。フランス発祥のシュールレアリズムや象徴主義、「無意思的記憶」といった技法へのオマージュと見ることも出来る。

タイトルの「敵」であるが、渡辺は高齢ながらマックのパソコンを自在に扱うが、あからさまな詐欺メールなども届く。相手にしない渡辺だったが、「敵について」というメールが届き、気になる。「敵が北から迫ってきている」「青森に上陸して国道4号線を南下。盛岡に着いた」「難民らしい」「汚い格好をしている」との情報もパソコンに勝手に流れてくる。このメールやパソコンの画面上に流れるメッセージも現実世界のものなのかは定かではない。渡辺は何度か「敵」の姿を発見するのだが、それらはいずれも幻覚であることに気付く。
一方で、自宅付近で銃声がして、知り合い2名が亡くなるが、これも現実なのかどうか分からない。令和5年夏から令和6年春に掛けての話だが。渡辺以外は「敵」が来た素振りなどは見せないので、これも渡辺の思い込みなのかも知れない。

亡くなったはずの妻、信子(黒沢あすか)が姿を現す。儀助と共に風呂に入り、一度も連れて行ってくれなかったパリに一緒に行きたいなどとねだる。渡辺の家を訪れた靖子や編集者の犬丸(カトウシンスケ)も信子の姿を見ているため、儀助の幻覚というより幽霊に近いのかも知れないが、この場面まるごとが儀助の夢である可能性も否定できない。

渡辺は自殺することに決め、遺言状を書く。ここに記された日付や住所によって、渡辺が東京都中野区在住で、今は令和5年であることが分かるのであるが、結局、渡辺は自殺を試みるも失敗した。生きることや自分の生活から遠ざかってしまった現実世界に倦んでいるような渡辺。生きていること自体が彼にとって「敵」なのかも知れないが、一方で残り少ない日々こそが彼の真の「敵」である可能性もある。逆に「死」そのものが「敵」であるということも考えられる。渡辺は次第に病気に蝕まれていくのだが、それもまた「敵」、老いこそが「敵」といった捉え方も出来る。

 

大河ドラマ「光る君へ」にも出演して好演を見せた瀧内公美。AmazonのCMにも抜擢されて話題になっているが、本格的な芸能界デビューが大学卒業後だったということもあり、比較的遅咲きの女優さんである。
育ちが良さそうでありながら匂うような色気を持ち、渡辺を誘惑する場面もある魅力的かつ蠱惑的な存在として靖子を描き出している。

映画やドラマに次々と出演している河合優実。今回も小悪魔的な役どころであるが、出演場面はそれほど長くない。

早稲田大学第一文学部中退後に渡仏し、ソルボンヌ大学(パリ大学の一部の通称。以前のパリ大学は、イギリスのオックスフォード大学やケンブリッジ大学同様にカレッジの集合体であった)に学ぶという俳優としては異色の経歴を持つ長塚京三。フランス語のシーンも無難にこなし、何よりも知的な風貌が元大学教授という役にピッタリである。

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2025年2月 6日 (木)

Huluオリジナル連続ドラマ「あなたに聴かせたい歌があるんだ」

Huluオリジナル連続ドラマ「あなたに聴かせたい歌があるんだ」のエピソード1とエピソード2を見る。

「ボクたちはみんな大人になれなかった」の小説家、燃え殻が原作者として脚本に参加した作品。全話各20分ほどのドラマである。
監督は萩原健太郎。出演:成田凌、伊藤沙莉、田中麗奈、藤原季節、上杉柊平、前田敦子ほか。

田舎の高校の教室。英語の臨時教師である望月かおり(田中麗奈)がかつて下着グラビアに出ていたことが発覚する。かおりは、「私は今年27歳になったの。みなさんもこれからも10年経ったら必ず27歳になります。その時、みなさんが後悔することが一つでも少ないように本気で願っています」と言って、キリンジの「エイリアンズ」をラジカセで流した。かおりはそのまま退職するが、その後、再登場する。

この高校のクラスにいた人物の10年後が描かれる。
エピソード1“27歳のあなたは大人でしたか?立派でしたか?”の主人公は、荻野智史(おぎの・ともふみ。成田凌)。荻野はエピソード2にも続けて登場する。俳優を目指して上京した荻野だが、25歳の時に夢を諦め、一般企業に就職。中途入社ということもあり、余り待遇のよくない会社のようである。ストレスからか花粉症を発するようになっている。

エピソード2“夢は見る方ですか?叶える方ですか?”の主人公は、前田ゆか(伊藤沙莉)。望月かおりの英語の授業で号令を行っていたのが伊藤沙莉の声だったので、学級委員長だったのかも知れない。伊藤沙莉は千葉県立若松高校(私が出た中学からも進学する子の多い高校である)1年の時に学級委員長を経験したことがあるようだ。ゆかは、高校卒業後にアイドルを夢見て上京するのだが、伊藤沙莉は女優としては愛嬌もあって可愛いものの、アイドル顔では全くない。自信満々で生まれた町を後にするゆか。最初から通用しないのが分かってしまって切ないが、書類選考に通らず、たまにオーディションに参加出来ても、「笑って」と言われてこわばった笑顔しか浮かべられず(「TRICK」で仲間由紀恵が演じた山田奈緒子を連想させられる)ほとんど相手にもされずに落ちる。一緒にオーディションを受けたのは自分よりもずっと年下の可愛い子ばかりであった。バイト先で、サラリーマンを辞めた荻野と再会。荻野はカラオケ中に「やっぱり役者を目指す」と宣言して退社。アルバイトをしながら再び役者を目指していた。二人は同棲を始める。荻野はゆかとの結婚を考え、また役者の夢を諦めようとするが、夢を追う人が好きであるゆかはそれが気に入らず(キャラクター的に燃え殻原作の「ボクたちはみんな大人になれなかった」で伊藤が演じた加藤かおりと繋がるところがあるようだ)別れを決意。母親(ふせえり)に泣きながら電話し、アイドルの夢を諦めて実家に帰ることを告げる。
失意のゆかを演じる伊藤沙莉の演技がまた巧みで、単に落ち込んでいるだけでなく、目の焦点が合わないなど、自失の様を表現してみせる。
そんなゆかも最後にはとびっきりの笑顔を見せ、その対比が見る者の頬を緩ませる。

 

Huluオリジナル連続ドラマ「あなたに聴かせたい歌があるんだ」エピソード3“真夜中に書いたラブレターを投稿してみませんか?”を見る。臨時の英語教師、望月かおりの教室にいた一人、片桐晃(藤原季節)は、高校卒業後、小説家を志しているが、一行も書けないでいる。小説を書きたいのではなく、小説家になりたかったのだと気付く片桐。普段、何をしているのかは不明。出掛けてはいるようである。ちなみに片桐にとっては望月かおりは初恋の女性だった。

ある日、片桐は図書館で、ヘッドホンで音楽を聴き、サンドウィッチを頬張りながら読書をしている可愛らしい女性を見掛ける(名前は中尾あや。次の次の次の朝ドラのヒロインの一人に決まった見上愛が演じている)。一目惚れした片桐は、「いつか芥川賞取るんで付き合って下さい」といきなり告白。都合が良いことにOKされる。片桐の部屋で同棲することになり、ロフトにある布団でイチャイチャする二人。しかし、片桐は結局は一行も小説を書くことが出来ず、ある日、彼女は消えた。
行きつけのゲイバーのママ(黒田大輔)から、今は売れっ子作家になった並木翔平(ジャルジャルの後藤淳平が演じている)の売れなかった頃の話を聞かされる片桐。片桐はあやへのラブレターとして小説を書き上げた。

正直、照れくさい話である。余り良くないと思う。図書館でサンドウィッチを食べながら読書をしているというのはマナーとしてどうかと思うし、片桐がワープロソフトで四百字詰め原稿用紙を開いて執筆しているのも感心しない。確かにワープロソフトに四百字詰め原稿用紙のデザインは入っているが、審査員が読みにくいので、普通は避けるところである。大して働いているようには見えないのにロフトのある広めに部屋に住めているのも謎。おそらく東京なので家賃も高そうだが、親が金持ちなのだろうか。結局、ツッコミどころだけで終わってしまったような気もする。
大河ドラマ「光る君へ」で、藤原道長(柄本佑)の娘で一条天皇(塩野瑛久)に嫁ぎ、紫式部(吉高由里子。劇中での名は、まひろ、藤式部)を女房とする中宮彰子を演じて注目を浴びた見上愛。「光る君へ」では平安朝のメイクをしていたので、今回のドラマの容貌は大分異なるが、いずれにせよ美人というよりは愛らしいファニーフェイスタイプである。出番がそれほど長くないということもあって、演技というほどの演技を必要とするシーンはこのドラマにはなく、自然に演じている。

 

Huluオリジナル連続ドラマ「あなたに聴かせたい歌があるんだ」のエピソード4“叶わなかった夢だけがロマンチックだと思いませんか?”とエピソード5“知らない男と一緒に夜空を見上げたことはありますか?”を見る。
望月かおりのクラスにいた中澤優斗(上杉柊平)は、かおりがラジカセでキリンジの「エイリアンズ」を聴かせた日の放課後、今から10年間、自分たちがかおりの年齢になるまでバンドを組んで武道館を目指してみないかと、同級生の進藤康太(中島広稀)、松浦蓮二(楽駆)に告げる。
そして10年。3人が組んだバンド、Radical in the 1Kは、武道館どころか小さなライブハウスで20人を集めるのが精一杯であり、解散ライブを行う。
楽屋で、「27にして就活の話」などと自嘲的に語る3人だったが、アンコールが掛かっているとの報告があり……。
ちょっと時系列におかしなところがある上に、ストーリー的にもそれほど特別なところはないのだが、音楽に夢を見た者達の喜びと悲哀が伝わってくる。

 

エピソード5は、望月かおりの物語である。そのまま教師を退職したかおりは、派遣の受付嬢として、会社を転々としていた。教師を辞めてすぐに東京に出たのかどうかは分からないが、少なくとも「ずっと東京タワーを見ている」と言えるほどには長く東京にいる。派遣の仕事は長くても5年でクビになる。本当は5年勤務すると正社員として雇わなければならないのだが、守られておらず、5年は解雇するまでの期限となっている。今の職場で働き始めてから後1ヶ月で5年。その間、同じビルに勤める年下の課長といい仲になるが、より若い女性に取られてしまう。受付嬢では何のスキルも身につかない。「前世で何か悪いことをしたのだろうか」と思うかおり。「だとしたら今後も罰を受け続けることになる」
かおりは勤務しているビルの屋上に上がり、飛び降り自殺を決意する、のだが先客として屋上に来ていた男に呼び止められる。
星の話などをする二人。「エイリアンズ」に掛けた訳でもないだろうが、向こう(の星)からもこちらを見ているのだろうかという話になる。
男は、そこそこ売れてる小説家だといい、そこそこ売れていることの辛さを口にする。
翌朝、男の遺体がかおりの勤めるビルの前で発見される。かおりはその後、引き上げたが、後に残った男は投身自殺を選んだのだった。
男はそこそこ売れているどころか、有名作家の並木翔平だった。

 

Huluオリジナル連続ドラマ「あなたに聴かせたい歌があるんだ」エピソード6“あなたにとってかけがえのない人は誰ですか?”、エピソード7“「おいしい」と「うまい」と「安心する」ならどれですか?”、エピソード8(最終回)“大切な人に聴かせたい歌はありますか?”を見る。

エピソード6の主人公は、島田まさみ(前田敦子)。望月かおりを率先して退職に追い込んだ人物である。毒親を持ち、ストレスが溜まっていた。
高校卒業後は、スーパーでアルバイトをしていたが、店長と恋仲になり、一緒に東京に出る。店長はまもなく子どもが生まれる身だったので、居づらくなって東京に出たのだった。 しかし、元店長が働いてくれたのは数ヶ月だけで、収入は全てまさみに頼るようになる。
結局はダメンズウォーカーなまさみ。しかし、彼女は人気絶頂のアイドル歌手、八木今日子(前田敦子の二役だが写真のみでの登場)に容姿や歌声がそっくりなことに気付き、物真似タレントを目指す。人気歌手の物真似だけにライバルも多かったが、自然に脱落。まさみは七木今日子として八木今日子の物真似で人気を徐々に上げるのだが、それだけでは生活出来ず、週1回、物真似バーで行われるショーに出演する以外はバイトを二つ掛け持ちしている。
八木今日子は初のドームツアーを行う初日にひき逃げ事故に遭い、命を落とす。七木今日子ことまさみに物真似バーのオーナーから出演するよう電話があるのだが、「私は偽物だよ!」と断り……。
以前は演技を酷評されることも多かった前田敦子だが、長く続けていると成長もする。今回はぶりぶりのアイドルのシーンもあるだけに彼女に合っているように思う。歌唱のシーンはやはり元アイドルグループのセンターだけに見せ方を知っているように感じられた。

エピソード7では、再び中澤優斗が主人公となる。3年が経っている。バイト解散後、父親が経営していたラーメン店を継いだ中澤。しかし向かいに小綺麗なラーメン屋が出来ると客を奪われる。向かいのラーメン屋は長蛇の列なのに、中澤のラーメン店は客が一人いるかいないか。
そんなある日、一人の少女(アヤカ・ウィルソン)が店を訪れる。少女はチャーシュー麺を注文。完食後にスマホで写真を撮るのだが。
後日、中澤のラーメン店に客が押し寄せる。少女の正体はKEIKOという名のインフルエンサーだったのだ。

エピソード8は、これまでの出演者が揃うフィナーレ。片桐晃の結婚式があり、高校の同級生達が出席する。片桐は27歳で小説家の夢を諦め、小さな出版社の契約社員となっていた。そして結婚したのだった。
まさみは八木今日子の物真似でブレークし、テレビにも出演するが、忘れられるのも早かった。中澤のラーメン店も一時は繁盛するが、一時は一時であった。ゆかはアイドルの夢を完全に捨て、お見合いして結婚。妊娠している。久しぶりに元彼の荻野と顔を合わせたゆかは、「平凡だけと退屈じゃない」と友人の受け売りの言葉を口にする。その荻野は、単館系映画主役の最終選考に残っていた。今日合否の連絡が来るため、気が気でない。

同じ結婚式場で、望月かおりの結婚式があることを知る一同。かおりが最後の授業で掛けた「エイリアンズ」を全員で合唱し……。

思うようにはいかない人生。まだ若く希望は捨て切れてはいないが。あるいは全員、望月かおりにきちんと謝罪すべきだったのかも知れないとも思う。直接手を下していないとはいえ、傍観者ではあったのだから。人の一生を変えてしまうのは重い罪だ。
10年を経て、彼らの後悔はなかったのかというと嘘にはなるのだろうが、まだここで終わりではない。おそらく思うようにはいかないだろうが、人生は続いていく。

なお、漫画版(コミカライズ)の作画は、仏教漫画『阿・吽』が話題になったおかざき真里が手掛けているようである。

 

「あなたに聴かせたい歌があるんだ」は、2月14日の夜、日テレプラスにおいてテレビ初放送される予定である。



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2025年1月26日 (日)

これまでに観た映画より(368) 濱口竜介監督作品「寝ても覚めても」

2024年11月23日

ひかりTV有料配信で、日仏合作映画「寝ても覚めても」を観る。「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督作品。濱口竜介監督はこれが初の商業作品である。その後、出演者が一悶着起こした曰く付きの映画でもある。原作:柴崎友香。脚本:田中幸子、濱口竜介。出演:東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知、仲本工事、田中美佐子ほか。占部房子もワンシーンだけ出演している(3.11の地震で気分が悪くなってしゃがみ込んでいる女性役)。音楽:tofubeats。

大阪で物語が始まり、東京に移り、再び大阪に帰ってくる(最初の場面は大阪市内だが、戻ってきたときはおそらく大阪市内ではない。天野川が流れているというので、枚方市付近の可能性がある)。

大学生の朝子(唐田えりか)は、中之島の国立国際美術館で、牛腸茂雄(ごちょう・しげお)の写真展を見た後で、鳥居麦(ばく。東出昌大)にいきなりキスをされて恋に落ちる。朝子は親友の島春代(伊藤沙莉)や岡崎伸行(渡辺大知)と共に、麦が居候している岡崎の家で度々遊ぶようになる。春代は麦のことを警戒しており、「あの男だけはアカン」と忠告する(これが現実世界で響くことになるとは)。ちなみに春代と岡崎は同じ大学に通っていることが会話で分かるが、麦や朝子についてはどうなのかはっきりとは分からない。麦は風来坊のような性格で、度々無断でどこかへ行ってしまう。そしてある日、麦は朝子の前から姿を消した。

2年後、朝子は東京に出て喫茶店を経営している。近くにある酒造会社に勤める丸子亮平(東出昌大二役)と出会う朝子。最初は亮平のことを麦だと思い込んで、「麦だよね?」と話しかけるが、亮平は顔は麦にそっくりだが他人なので、「獏? 動物園のこと?」と意味が分からない。しかし、亮平が朝子に好意を持つのも早かった。おそらく一目惚れである。東京でも牛腸茂雄の作品展を観ようとしていた朝子。東京で出来た友人である鈴木マヤ(山下リオ)と画廊の前で待ち合わせていたのだが、そこに亮平が通りかかる。遅れてきたマヤがようやく画廊にたどり着くが、もう入場時間を過ぎている。ここで亮平が機転を利かせて、3人は画廊に入ることが出来た。亮平もやはり大阪出身である。惹かれ合う亮平と朝子だったが、おそらく朝子は自身が麦の面影を亮平に見ていることに気付き、一度は別れを決意する。

朝子の親友のリオは、たまにテレビの再現VTRに出る女優で、普段は舞台女優としての活動に力を入れている。チェーホフやイプセンの作品に出ているので、新劇系統の小劇団に参加しているのだと思われる。亮平の同僚である串橋耕介(瀬戸康史)と共に、リオが出演したチェーホフ作品(「桜の園」だと思われる)のビデオを見ていた時に、耕介が突然怒り出すという事件が起こる。耕介はリオの演技を自己満足だと批判し、不快感を露わにする。そしてその後、自身でチェーホフのセリフを語る。チェーホフのセリフはビデオを見てその場で覚えたものとは思えないのだが、実際に耕介は舞台俳優に憧れて演じていた経験があり、自分は諦めたのにまだ続けている人がいることに嫉妬したとして謝罪。おそらくチェーホフ作品で同じ役を演じたことがあるのだろう。最終的にはリオと耕介は結婚することになる。濱口監督は、「ドライブ・マイ・カー」でも、「ゴドーを待ちながら」や「ワーニャ伯父さん」を西島秀俊に演じさせているので、そうした王道の演劇作品が好みなのだろう。また伊藤沙莉の証言では、ニュアンスを抜いたセリフの喋り方の訓練を行っており、伊藤は、「ニュアンスを抜く」の意味が当初は分からなかったと告白しているが、「ドライブ・マイ・カー」で、西島秀俊演じる俳優兼演出家が感情を込めずにゆっくりとセリフを喋らせるシーンがあるため、これに近いことが行われていたことが想像出来る。

イプセンの「野鴨」に出演することになったリオ。亮介は金曜の午後のソワレを招待券として受け取る。朝子も同じ回を取るかと思ったが、彼女は金曜のマチネーのチケットを頼んだ。その後、朝子から別れを切り出された亮介は、受付で金曜のマチネーにチケットを変更して貰った。無論、朝子に会うためだ。開演直前だったがリオに挨拶。リオは当然ながら亮平の意図を見抜いており、朝子は明日のチケットに変えたのだと告げる。
それでも折角なので観ていくつもりだった亮平だが、その日は、2011年の3月11日。開演の客電が消えた瞬間に東京でも大きな揺れが発生し、大道具や照明などが倒れたり破損したりしたことなどから公演は中止に。電車が止まっているので、歩いて会社まで帰ろうとしたが、街は人で混雑。地震のショックでうずくまっている女性(占部房子)に声を掛けるなど、亮平は優しさを見せる。そんな中、亮平は朝子と出会う。運命を感じた二人は抱き合うのだった。

5年後、亮平と朝子は同棲を続けているが結婚はしていない。リオと耕介は結婚している。ある日、朝子はデパートで春代と偶然再会。春代はシンガポール人の男性と結婚して、シンガポールに住んでいたが、旦那が東京に転勤になったので東京で暮らしているという。亮平と出会った春代は、朝子が亮平の中に麦を見つけて付き合っているのだとすぐに見抜く。そして麦が最近売り出し中の芸能人になっており、CMに出演して、連続ドラマの主演も決まっていると教える。
実は亮平も麦が売り出し中の芸能人であることを知っており、出会いの件から、顔が似ているので自分に惹かれたのだろうと見当を付けていた。それでもそのお陰で出会えたのだからと寛容な態度を取る。
亮平は大阪の本社に転勤を願い出る。新居は天野川の近くだ。だが朝子が一人の時に、麦が訪ねている……。

容姿の似た男性の間で揺れる女性を描いたファンタジー。評価は高く、第42回山路ふみ子映画賞、山路ふみ子新人映画賞(唐田えりか)、第10回TAMA映画賞最優秀作品賞、最優秀男優賞(東出昌大)、最優秀新人女優賞(伊藤沙莉)、第40回ヨコハマ映画祭の作品賞、主演男優賞(東出昌大)、助演女優賞(伊藤沙莉)、最優秀新人女優賞(唐田えりか)など受賞多数である。
ただ、個人的には都合の良い映画のように映る。朝子が麦と亮平の間で揺れるのも、顔の似たいい男だからのように思われ、軽く見えてしまうのも難点である。所詮、顔ってことか。
実際、軽い二人だったようで、不倫騒動を起こしてしまい、東出昌大はすでに撮影済みであった映画以外は出演自粛、唐田えりかは映画と配信、BSのみの出演で韓国に拠点を移しつつある。韓国では彼女の容姿は受けが良いようだ。最近になって日本の地上波のドラマに出演したが散々に叩かれている。
この映画は、濱口竜介監督作品ということで、いずれは観ることになったと思うのだが、「伊藤沙莉のSaireek Channel」を初回の方から聴いて、丁度「寝ても覚めても」が公開になるというタイミングだったので視聴してみた。伊藤沙莉は今よりポッチャリしていて、大阪弁を喋る役なのだが、千葉県出身で方言を話したことがほとんどないので、習得に時間を掛けたという話をしている。実は春代は出番はそれほど長くなく、鈴木マヤを演じた山下リオの方が助演に近いのだが、ヨコハマ映画祭では伊藤沙莉が助演女優賞を受賞している。春代が朝子にすっと温かい言葉を掛けて、ドキッとさせるシーンがあるが、それが評価されたのだろうか。この時に、共に助演女優賞を取ったのが親友の松岡茉優で、この時点では2016年の大河ドラマ「真田丸」にも良い役で出演していた松岡の方が知名度では上であったと思われる。すでに二人は親友になっているが、その後、更に友情が深まる事件が2020年に発生している。詳しくは書かないでおく。

伊藤沙莉が語るところでは、「寝ても覚めても」のチームは仲が良く、一緒に出掛けたりしていたらしいが、東出と唐田がああいうことになって会えなくなってからは親交もおそらく途絶えたのだと思われる。


叩かれてばかりの東出と唐田だが、少なくともこの映画においては東出はなかなか良い演技をしている。セリフは余り上手くないが、モデル出身だけあって佇まいが良い。唐田えりかの演技はやや拙い感じだが、演技経験に乏しく、苦手意識がある中での抜擢であったため、やむを得ない印象は受ける。初々しさがあって良い。「ナミビアの砂漠」では短い出番ながら自然な印象の演技で、表に情報は出ないが演技のレッスンは続けているのだと思われる。

一番印象に残るのは瀬戸康史で、英語を喋るシーンがあるなど、いい役を貰っているということもあるが、この時から存在感を放っている。ただあくまで引き立て役であるためか、瀬戸康史はこの映画では特に賞は貰っていない。

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2025年1月 4日 (土)

これまでに観た映画より(362) 伊藤沙莉主演 ショートフィルム「平成真須美 ラスト ナイト フィーバー」

2024年12月16日

ひかりTV配信で、ショートフィルム「平成真須美 ラスト ナイト フィーバー」を観る。二宮健監督作品。主演:伊藤沙莉。出演:篠原悠伸、中島歩ほか。2019年の作品。上映時間32分。
この時期の伊藤沙莉は、ミニシアター系で上映されるような通向けの作品に多く出ている。

伊藤沙莉演じる真須美(苗字不明)は、おそらく売れない芸能人である。女友達の兄がポピュラー楽曲の作曲家であるのだが、3人のダンサーが踊っている前でないと曲が作れないという奇妙な癖を持っている。平成があと3日で終わり、5月1日からは令和になるということで、残り3日の間に1曲作り上げたいとプロデューサーが要望。しかし、3人いたダンサーのうちの1人が何らかの理由で脱退したため、ダンス経験のある真須美にアルバイトとしてこの仕事が回ってきたのだ。

作曲作業は小さなスタジオで合宿という形式で行われる。

作曲家のユーシン(篠原悠伸)は上半身裸でアコースティックギターを掻き鳴らすという奇妙な作曲スタイル。残り二人のダンサーはレオタードを着たおっさんということで、真須美は戸惑い、ユーシンに対しては不審の目を向け、手を抜いて踊る。
ユーシンの作曲は全く進まず、ユーシンはプロデューサー(怒ると関西弁になる)から一喝される。

ダンサーの一人から、「真須美ちゃんって、『真須美ちゃん』って顔だよね」と嬉しくもなんともない言葉を掛けられる真須美。「毒物カレー事件の時、めっちゃいじめられましたよ」(1998年に起こった和歌山毒物カレー事件。林眞須美死刑囚は現在も収監されたままである)と応えた。当時は幼稚園生であったという。

翌日も作曲は進まないが、夜、真須美がトイレに行こうとした時に、中に入って鍵を掛けていなかったユーシンと遭遇。悠伸は用を足していた訳ではなく、単に狭い場所に籠もっていたかったのだ。ここで交わした会話で、互いの心が少しほぐれ、平成最後の日となった4月30日には、真須美も全力で踊り、昨夜の真須美の「探しものって、探すのをやめた時に見つかるらしいですよ」という井上陽水譲りの真須美の言葉が功を奏したのか、曲も出来上がっていく。
真須美のiPhoneに電話が入る。母親からのものだったが、実は母親の声は伊藤沙莉の実母が演じたものだという。声は似ていないが、言い回しは少しだけだが同じようなところがある(生で聞くと声質も似ているらしい)。真須美の母は、真須美に「応援はしている」としつつ実家に帰ってこないかと誘う。この実母との会話により、真須美がやはり売れていない芸能人だと確信出来る。そして、噂を聞きつけてスタジオの下に来ていた元彼と出会う真須美。元彼はつい最近まで付き合っていた相手と別れたという。

曲が完成した後で、表へと飛び出す真須美。ここからは、実際に平成31年4月30日深夜から、令和元年5月1日になった瞬間の渋谷でゲリラ的に撮影された映像になる。おそらくだが、JR渋谷駅からセンター街を抜けるルートを真須美は走る。そしてユーシンが女性(おそらく通りがかりの人)の前で出来たばかりの曲を弾き語りしているのを見つける。昨夜トイレで、「人前では一度も歌ったことがない」というユーシンに真須美が「歌ってみたらどうですか」と提案。ユーシンがその言葉を受け入れたのを確認する。
真須美の誕生日は5月1日。追ってきた元恋人に「誕生日おめでとうって言ってよ」とお願いし、鼻歌を歌いながら来た道を引き返していく真須美。

冒頭の伊藤沙莉は眼鏡を掛けて不安そうな顔をしている。芸能活動が全く上手くいっていない上に、奇妙としか言えない仕事の依頼。自信をなくしていたのだと思われるが、自分の言葉で人が変わったのを見て、自分の存在に意義があるということを見つけたのかも知れない。

地味で奇妙で、誰が観ても面白いという作品ではないかも知れないが、生きるのが辛い人の背中をそっと押してくれるような、ほんのちょっとした優しさが感じられる作品である。

今回も伊藤沙莉は自然体の演技であるが、彼女の「その辺にいそうな子の中では一番可愛い」という容姿も結構ずるいのではないかと感じられる。自己投影がしやすく感情移入もまたしやすいのだ。二十代の頃は「誰が見ても美人」という女優の方が有利だが、彼女も三十代になり、美人度よりも親しみやすさの方が客の心を捉える世代に入った。活躍の幅が広がりそうな予感もする。

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2024年12月25日 (水)

これまでに観た映画より(359) 森山未來主演「ボクたちはみんな大人になれなかった」

2024年12月7日

Netflixで、Netflix製作映画「ボクたちはみんな大人になれなかった」を観る。森山未來主演作品。原作は燃え殻の同名小説。監督は森義仁。出演は森山未來の他に、伊藤沙莉、東出昌大、SUMIRE、篠原篤、平岳大、片山萌美、高嶋政伸、ラサール石井、大島優子、原日出子、萩原聖人ほか。

渋谷が主舞台となっている。渋谷のゴミ収集場所の場面から始まる。このシーンは後にリフレインされる。
佐藤(森山未來)は、1999年に恋人のかおり(伊藤沙莉)と別れた。というより、かおりが一方的に姿を消したのだ。その後、SNSが発達した時代になると、佐藤はFacebookでかおりを見つける。かおりは他の男と結婚し、子どもをもうけていた。

時代が次々と飛ぶ作品で、一番古い時代は1995年、公開年の2021年の前年であるコロナ禍の2020年が最新の場面となる。

佐藤は、映像のテロップを作る会社の社員だが、後にスタートアップの社員であることが分かる。高校卒業後に製菓会社のアルバイト社員をしていたのだが、まだマンションの一室をオフィスにしていた弱小テロップ製作会社に応募して採用されたのだ。とにかく人がいないので誰でも良かったらしい。その後、会社は規模を拡大し、現在では広めのオフィスを持つようになる。
この時、佐藤はかおりと付き合っていた。二人が出会ったのは1995年。文通の雑誌に、かおりが「犬キャラ」のペンネームでペンフレンドを募集していたのを佐藤が見つけたのが始まりであった。ちなみに「犬キャラ」というのは、小沢健二の「犬は吠えるがキャラバンは進む」というかなり有名なアルバムに由来しており、小沢健二がキューピット役となっている。かおりは渋谷にあるインドなどアジア系の雑貨を売る店で働いているようである。

最初はペンフレンドであるが、爆風スランプの「大きな玉ねぎの下で」(今度、この曲にインスパイアされた映画が公開されるようである)の歌詞にあるように会いたくなるのは必然。二人は渋谷で会うことになり、デートを重ねる。おそらく佐藤がテロップ製作会社に就職したのは、かおりとの結婚を意識したためだと思われるが、就職のお祝いにかおりにラブホテルに誘われる佐藤。かおりはそれまで経験がなかった。以降はかおりとのデートシーンが中心となる。タワーレコード渋谷店でCDを購入し、スペイン坂上にあった映画館、シネマライズの前を通ると、王家衛監督の「天使の涙」がロードーショー公開されている。私は1997年にシネマライズで「天使の涙」を三回観ており、タワーレコード渋谷店は、NHK交響楽団の定期演奏会を聴いた帰りにしばしば寄っていて、私自身の青春と重なる。
佐藤と出会ったばかりで、人見知り気味の初々しい姿を見せるかおりを演じる伊藤沙莉がとても可愛らしい。その後、ドライブデートなどをする二人だったが(かおりが、「宮沢賢治は東北から一歩も出なかった」という意味のセリフを語る場面があるが、これは明らかに誤りである)、円山町のラブホテル(どうも常連になっているようだ。かおりが群馬県出身であることが、ラブホテルの受付のおばちゃんとの会話で分かる)に泊まり、オルガン坂を上るかおりが振り向いて「今度CD持ってくるからね」と語りかけた姿が、佐藤にとってのかおりの最後の姿となった。

その後、佐藤には、恵(大島優子)という恋人が出来たり、スー(SUMIRE。浅野忠信とCHARAの娘)といい感じになったりするのだが、深い関係にまでは至らない。
パーティーで出会った、いわい彩花(という芸名でセクシー系のDVDを6枚出している子。演じるのは片山萌美)を誘った佐藤は、彩花から「子どもの頃なりたかった大人になれてる?」と聞かれる。
結構、ごちゃごちゃした作りなのだが、最終的には佐藤がかおりを忘れられないという心境が示されることで終わる。二十代から四十代になっても忘れられない女となると、やはり伊藤沙莉ぐらいは起用しないと説得力は出ない。なお、かおり役が誰なのかは公開直前まで伏せられていた。
小説家になりたいという夢を持ちつつ、面白いものが書けないでいる佐藤。かおりの、「君は大丈夫だよ。面白いもん」の言葉が背中を押してくれるのだが、その時は花開かない。ただ、「その後」は明かされていないが、自伝的小説を基にしているということは、この後、佐藤はかおりとの思い出を小説にして世に出ることになるのかも知れない。

約四半世紀が描かれるため、世界も様変わりしている。最初の頃は公衆電話を使っており、ポケベルで連絡したり、パソコンもブラウン管内蔵の旧式のものだったりする。今は若者の間では見なくなったガラケーも登場する。
大傑作という訳には残念ながらいかないだろうが、森山未來と伊藤沙莉のコンビが実に良く、特に若い人には薦められる作品となっている。

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2024年11月27日 (水)

「PARCO文化祭」2024 2024.11.17 森山未來、大根仁、リリー・フランキー、伊藤沙莉、カネコアヤノ、神田伯山

2024年11月17日 東京・渋谷公園坂のPARCO劇場にて

東京へ。渋谷・公園坂のPARCO劇場で、「PARCO文化祭」を観るためである。

午後6時から、渋谷のPARCO劇場で、「PARCO文化祭」を観る。俳優・ダンサーの森山未來と、「TRICK」シリーズや「モテキ」などで知られる映像作家・演出家の大根仁がプレゼンターを務める、3夜に渡る文化祭典の最終日である。

新しくなったPARCO劇場に入るのは初めて。以前のPARCO劇場の上の階にはパルコスペースパート3という小劇場もあり、三谷幸喜率いる東京サンシャインボーイズが公演を行っていたりしたのだが(個人的には柳美里作の「SWEET HOME」という作品を観ている。結構、揉めた公演である)。今のPARCO劇場の上の階には劇場ではなく、アート作成スペースのようなものが設けられている。また、大きな窓があり、渋谷の光景を一望出来るようにもなっている。

PARCO劇場の内装であるが、昔の方が個性があったように思う。今は小綺麗ではあるが、ごく一般的な劇場という感じである。ただ、屋外テラスがあって、外に出られるのはいい。
PARCO劇場の内部は赤色で統一されていたが、それは現在も踏襲されている。

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今日はまず森山未來らによるダンスがあり(3夜共通)、リリー・フランキーと伊藤沙莉をゲストに迎え、森山未來と大根仁との4人によるトーク、そしてシンガーソングライターのカネコアヤノによるソロライブ、神田伯山による講談、ZAZEN BOYSによるライブと盛りだくさんである。神田伯山の講談とZAZEN BOYSによるライブの間に休憩があるのだが、ZAZEN BOYSのライブを聴いていると今日中に京都に戻れなくなってしまうため、休憩時間中にPARCO劇場を後にすることになった。

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森山未來らによるダンス。出演は森山未來のほかに、皆川まゆむ(女性)、笹本龍史(ささもと・りょうじ)。楽曲アレンジ&演奏:Hirotaka Shirotsubaki。音楽の途中に「PARCO」という言葉が入る。森山未來がまず一人で上手から現れ、服を着替えるところから始まる。照明がステージ端にも当たると、すでに二人のダンサーが控えている。ここからソロと群舞が始まる。ソロは体の細部を動かすダンスが印象的。群舞も力強さがある。振付は森山未來が主となって考えられたと思われるが、洗練されたものである。
森山未來は神戸出身ということもあって関西での公演にも積極的。今後、京都でイベントを行う予定もある。

大根仁が登場して自己紹介を行い、「もう一人のプレゼンター(森山未來)は今、汗だくになっている」と説明する。程なくして森山未來も再登場した。

そのまま、リリー・フランキーと伊藤沙莉を迎えてのトーク。伊藤沙莉であるが、リリー・フランキーに背中を押されながら、明らかに気後れした態度で上手からゆっくり登場。何かと思ったら、「観客とコール&レスポンス」をして欲しいと頼まれてコールのリハーサルまで行ったのだが、どうしても嫌らしい。楽屋ではうなだれていたようである。伊藤沙莉というと、酒飲んで笑っている陽気なイメージがあるが、実際の彼女は気にしいの気い遣い。人見知りはするが一人行動は苦手の寂しがり屋という繊細な面がある。リリー・フランキーが、「私が目の中に入れて可愛がっている沙莉」と紹介し、「(コール&レスポンスが)どうしても嫌だったら、やらなくていいんだよ」と気遣うが、伊藤沙莉は、「やらないと終わらないし」と言って、結局はやることになる。作品ごとに顔が違う、というより同じ映画の中なのに出てくるたびに顔や声が違うという、「どうなってんの?」という演技を行える人であるが、実物は丸顔の可愛らしい人であった。丸顔なのは本人も気にしているようで、SNSに加工ソフトを使って顔を細くし、脚を長くした写真を載せたところ、友人の広瀬アリスが激やせしたのかと心配して、「沙莉、どうした?」と電話をかけてきたという笑い話がある。「めっちゃ、はずかった」らしい。
丸顔好きで知られる唐沢寿明に気に入られているんだから別にいいんじゃないかという気もするが。

なお、リリー・フランキーと伊藤沙莉は、「誰も知らないドラマで共演していて、誰も知らない音楽番組の司会をしていて、誰も知らないラジオ番組をやっている」らしい。伊藤は、「FOD(フジテレビ・オン・デマンド)」と答えて、配信されているのは把握しているようだが、地上波でやっているのかどうかについては知らないようであった。ちなみに、誰も知らないドラマで伊藤沙莉の母親役に、丸顔の山口智子が選ばれたらしいが、顔の形で選んでないか? すみません、「丸顔」でいじりまくってますけど、Sなんで好きなタイプの人には意地悪しちゃうんです。

伊藤沙莉が嫌がるコール&レスポンスであるが、大根がまず見本としてやってみせる。客席の該当する人は、「Yeah!」でレスポンスする。
リリー・フランキーが大根に、なんでコール&レスポンスをするのか聞く。
PARCO文化祭の初日のトークのゲストがPerfumeのあ~ちゃんで、「Perfumeのコール&レスポンスがある」というので、まずそれをやり、2日目のトークのゲストの小池栄子にコール&レスポンスの打診をしたところ、「やります」と即答だったので、3日目は伊藤沙莉にやって貰うことにしたらしい。リリー・フランキーは、「あ~ちゃんは歌手でしょう。小池栄子は割り切ってやる人でしょ」と言っていた。確かに小池栄子は仕事を断りそうなイメージがない。若い頃はそれこそなんでもやっていたし。
で、伊藤は本当はやりたくないコール&レスポンスだが、仕事なのでやることになる。
「男の人!」「女の人!」「それ以外の人!」で、「それ以外の人!」にもふざけている人が大半だと思うが反応はある。リリー・フランキーは、「今、ジェンダーの問題」と言っていた。
その後も続きがあって、「眼鏡の人!」「コンタクトの人!」「裸眼の人!」「老眼の人!」と来て、最後に「『虎に翼』見てた人!」が来る。「虎に翼」を見ていた人は思ったよりも多くはないようだった。
伊藤は、この後残るとまた何かやらされそうで嫌なので、出番が終わった後すぐに行く必要のある仕事を入れたそうである。

ここで椅子が運ばれてくるはずだったのだが、運ばれてきたのは椅子ではなく箱馬を重ねたもの(「箱馬」が何か分からない人は検索して下さい。演劇用語です)。レディーファーストなのか、伊藤沙莉のものだけ、上にクッションが乗せられていた。大根が、「出演者にお金を掛けたので、椅子に使う金がなくなった」と説明していたが、まあ嘘であろう。

建て替えられる前のPARCO劇場についてだが、伊藤沙莉は朗読劇の「ラヴ・レターズ」を観に来たことがあるという。旧PARCO劇場には出る機会がなく、新しくなったPARCO劇場には、「首切り王子と愚かな女」という舞台で出演しているので、背後のスクリーンに「首切り王子と愚かな女」(作・演出:蓬莱竜太)の映像が映し出される、WOWOWで放送されたものと同一の映像だと思われる。面白いのは、男性3人は座ったまま後ろを振り返って映像を見ているのだが、伊藤沙莉だけは、客席とスクリーンの間にいるので気を遣ったということもあるだろうが、椅子代わりの箱馬から下り、床に膝をついてクッションに両手を乗せ、食い入るように映像を見つめていたこと。この人は映像を見るのが本当に好きなのだということが伝わってくる。リリー・フランキーは、長澤まさみの舞台デビュー作である「クレイジー・ハニー」(作・演出:本谷有希子)で旧PARCO劇場の舞台に立っており、「クレイジー・ハニー」の映像も流れた。ちなみにリリー・フランキーは舞台作品に出演したことは2回しかないのに2回とも旧PARCO劇場であったという(私は名古屋の名鉄劇場で「クレイジー・ハニー」を観ている。大阪の森ノ宮ピロティホールでの公演のチケットも取ったのだが都合で行けず、ただ「長澤まさみの舞台デビュー作は観ておかないといけないだろう」ということで名古屋公演のチケットを押さえた。カーテンコールで長澤まさみは嬉し泣きしていた)。

伊藤沙莉は笑い上戸のイメージがあるが、実際に今日もよく笑う。ただPARCOの話になり、千葉PARCOについて、「何売ってんの? 何か売ってんの?」とリリー・フランキーが聞いた時には、「馬鹿にしないで下さい!」と本気で怒り、郷土愛の強い人であることが分かる。実際、千葉そごうの話だとか、JR千葉駅の話などをしてくれる芸能人は伊藤沙莉以外には見たことがない。100万近い人口を抱えているということもあり、千葉市出身の芸能人は意外に多いが、余り地元のことを話したがらない印象がある。木村拓哉も若い時期を過ごした時間が一番長いのは千葉市で、実家も千葉市にあるのに、千葉の話をしているのは聞いたことがない。プロフィールでも出身地は出生地である東京となっている。しばしば神奈川愛を語る中居正広とは対照的である。原田知世も千葉県佐倉市に住んでいた頃は、よく千葉そごうに買い物に来ていたようだが、そんな話も公でしているのは聞いたことがない。郷土愛の強さからいって、これからは千葉市出身の芸能人の代表格は伊藤沙莉ということになっていくのだろう。

なお、残念ながら千葉PARCOは現在は存在しない。千葉市のショッピングというと、JR千葉駅の駅ビル「ペリエ」、その南側にある千葉そごう、JR千葉駅および京成千葉駅から京成千葉中央駅まで京成千葉線とJR外房線の高架下に延びる屋内商店街(C・ONEっていったかな?)、千葉駅前大通りに面した富士見町(旧千葉そごうで今はヨドバシカメラが入っていた塚本大千葉ビルと千葉三越など。千葉三越は撤退済み)、千葉駅からモノレール及びバスで少し行った中央三丁目(バス停はそのまま「中央三丁目」、千葉都市モノレールは葭川公園駅。千葉銀座商店街がある)などが主な場所だが、中央三丁目にあったセントラルプラザと千葉PARCOはいずれも営業を終えており、セントラルプラザがあった場所には高層マンションが建っている。セントラルプラザ(略称は「センプラ」。創業時は奈良屋。火災に遭ったことがあり、奈良屋の社長が亡くなっている)は、CX系連続ドラマで、真田広之と松嶋菜々子が主演した「こんな恋のはなし」に、原島百貨店の外観として登場し(内装は別の場所で撮影)、原島百貨店の屋外に面したディスプレイの装飾を手掛けている松嶋菜々子とそれを見守る真田広之の背後に、東京という設定なのに千葉都市モノレールが映っていた。「こんな恋のはなし」は松嶋菜々子の代表作と呼んでもよい出来で、おそらくこの作品出演時の彼女は他のどの作品よりも美しいと思われるのだが、残念ながらソフト化などはされておらず、今は見られないようである。
千葉PARCO跡地にも高層マンションが建つ予定だが、PARCOの系列である西友が入ることになっている。
なお、大阪では、大丸心斎橋店北館が心斎橋PARCOになり、そごう劇場として誕生した小劇場兼ライブスペースが大丸心斎橋劇場を経てPARCO SPACE14(イチヨン)と名を変えて使用されている。
森山未來が、「神戸にはPARCOはない」と言い、リリー・フランキーも「北九州にある訳がない。暴力団しかいない」と言い、大根が「工藤會」と続けて、伊藤が「そんな具体的な」と笑っていた。

ちなみに、伊藤沙莉は森山未來からのオファーで呼ばれたようで、二人は映画&Netflix配信ドラマ「ボクたちはみんな大人になれなかった」で共演していて、濃厚なあれあれがあるのだが、そういう人と別の仕事をする時はどういう気持ちになるのだろう。なお、撮影は渋谷一帯を中心に行われており、ラストシーンはすぐそこのオルガン坂で撮られたのだが、渋谷名所のスペイン坂などと違い、オルガン坂は余りメジャーな地名ではないので、森山未來も伊藤沙莉もオルガン坂の名を知らなかったようである。

大根が、「毎日リアルタイムで見てました。『虎の翼』」とタイトルを間違え、リリー・フランキーに訂正される。リリー・フランキーは、「今年のドラマといえば、『虎に翼』か(大根が監督し、リリー・フランキーが出演している)『地面師たち』。でも『「地面師たち」見てます』と言ってくる人、反社ばっか」と嘆いていた。

伊藤沙莉が紅白歌合戦の司会者に選ばれたという話。リリー・フランキーは、「歌うたえよ、上手いんだから。『浅草キッド』うたえよ」と具体的な曲名まで挙げてせがんでいるそうだ。伊藤本人は歌うことには乗り気でないらしい。
リリー・フランキーは紅白歌合戦の審査員を務めたことがあるのだが、トイレ休憩時間が1回しかなく、それも短いので、時間内に戻ってこられなかったそうだ。伊藤に、「どうする? おむつする?」と言って、「流石にそれは」という表情をされるが、「衣装どうしようか迷ってるんですよ」とは話していた。
紅白で失敗すると伝説になるから気を付けるようにという話にもなり、「都はるみを美空ひばりと間違えて紹介」、加山雄三が「少年隊の『仮面舞踏会』」と紹介すべきところを「少年隊の『仮面ライダー』」と言ったという話などが挙げられる。加山雄三の「仮面ライダー」はYouTubeなどにも上がっていて、見ることが出来る。


続いてカネコアヤノのソロライブ。昨日、島根でライブを行い、今日、東京に移動してきたそうだ。アコースティックギターを弾きながらソウルフルな歌声と歌詞を披露する。ギターも力強く、同じメロディーを繰り返すのも特徴。ただ、歌い終えて森山未來と大根仁とのトークになると、明るく爽やかで謙虚な人であることが分かる。作品と人物は分けて考えた方がいい典型のようなタイプであるようだ。


講談師(「好男子」と変換された)の神田伯山。「今、最もチケットの取れない講談師」と呼ばれている。森山も、「(PARCO文化祭も)伯山さんだけで一週間持つんじゃないですか?」と語っていた。
私は、上方の講談は何度か聞いているが、江戸の講談を聞くのはおそらく初めてである。同じ講談でも上方と江戸ではスタイルが大きく異なる。
「PARCO劇場では、落語の立川志の輔師匠がよく公演をされていますが、落語と講談は少し違う」という話から入る。
講談は早口なのでよく間違えるという話をする。出てくるのは徳川四天王の一人で、「蜻蛉切」の槍で有名な本多平八郎忠勝(上総大多喜城主を経て伊勢桑名城主)。「本多平八郎忠勝。槍を小脇に、馬を駆け巡らせ」と言うべきところを、つい「本多平八郎忠勝、馬を小脇に、槍を駆け巡らせ」と言ってしまうも講談師本人は気付いていないということがあるそうである。

信州松本城主、松平丹波守が、参勤交代で江戸に向かう途中、碓氷峠で紅葉を眺めていた時のこと。妙なる音色が聞こえてきたので、「あれは何だ?」と聞くと、「江戸で流行りの浄瑠璃というもののようでございます」というので、浄瑠璃を謡い、奏でていた二人が呼ばれる。伯山は、「浄瑠璃は今でいうヒット曲、あいみょんでございます。と言ったところ、あいみょんのファンから『お前にあいみょんの何がわかる』と苦情が来た」という話をしていた。
その、江戸のあいみょんに浄瑠璃の演奏を頼む松平丹波守。二人は迷ったが演奏を行い、松平丹波守からお褒めの言葉を賜る。ただ、二人は松平伊賀守の家臣で、他の大名の前で浄瑠璃を演奏したことがバレると色々とまずいことになるので、内密にと願い出る。ただ松平丹波守は、江戸で松平伊賀守(信州上田城主)に碓氷峠で面白いことがあったと話してしまい、口止めされていたことを思い出して、「尾上と中村というものが猪退治を行った」と嘘をつく。そこで松平伊賀守は、家臣の尾上と中村を見つけ出し、猪退治の話をするよう命じる。なんでそんなことになったのか分からない尾上と中村であったが、即興で猪退治の講談を行い、松平伊賀守にあっぱれと言われたという内容である。
伯山の講談であるが、非常にメロディアスでリズミカル。江戸の人々は今のミュージカルを聴くような感覚で講談を聴いていたのではないかと想像される。江戸の講談を聴くのは今日が初めてなので、他の人もこのようにメロディアスでリズミカルなのかどうかは分からないが、これに比べると上方の講談はかなり落ち着いた感じで、住民の気質が反映されているように思える。

森山未來が登場し、「伯山さんの講談を是非聴きに行って下さい。チケット取れませんけどね」と語った。


ちなみに私は、旧PARCO劇場を訪れたのは数回で余り多くはない。1990年代には、芸術性の高い作品は三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで上演されることが多く、三茶によく行っていた。
旧PARCO劇場で良かったのは、何と言っても上川隆也と斎藤晴彦版の初演となった「ウーマン・イン・ブラック」。上川と斎藤版の「ウーマン・イン・ブラック」は、その後、大阪で2回観ているが、ネタを知った上での鑑賞となったので、PARCO劇場での初演が一番印象的である。私がこれまで観た中で最も怖い演劇で、見終わってからも1週間ほど家族に「上川隆也良かったなあ」と言い続けていた記憶がある。

朗読劇「ラヴ・レターズ」は、妻夫木聡のものを観ている。相手の女優の名前は敢えて書かない。検索すればすぐに出てくると思うが。ラストシーンで妻夫木聡は泣いていた。
朗読劇も劇に入れるとした場合、この作品が妻夫木聡の初舞台となる。

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2024年10月27日 (日)

観劇感想精選(473) 京都芸術劇場プロデュース2024 松尾スズキ×つかこうへい 朗読劇「蒲田行進曲」

2024年10月20日 京都芸術劇場春秋座にて観劇

午後2時から、京都芸術劇場春秋座で、京都芸術劇場プロデュース2024 松尾スズキ×つかこうへい 朗読劇「蒲田行進曲」を観る。京都芸術大学舞台芸術学科の教授となった松尾スズキが若い俳優達と取り組むプロジェクトの一つである。
松尾スズキとつかこうへいは同じ九州人にして福岡県人ではあるもののイメージ的には遠いが、実際には松尾スズキは九州産業大学芸術学部在学中に、つかこうへいの「熱海殺人事件」を観て衝撃を受け、芝居を始めたというありがちなコースをたどっていることを無料パンフレットで明かしている。ただ、つかこうへいとは生涯、面識がなかったようだ。

作:つかこうへい。いくつか版があるが昭和57年4月25日初版発行の『戯曲 蒲田行進曲』を使用。演出:松尾スズキ。出演は、上川周作、笠松はる、少路勇介(しょうじ・ゆうすけ)、東野良平(ひがしの・りょうへい)、末松萌香、松浦輝海(まつうら・てるみ)、山川豹真(ひょうま。ギター)。


映画でもお馴染みの「蒲田行進曲」。蒲田行進曲と銘打ちながら、舞台は大田区蒲田ではなく京都。東映京都撮影所が主舞台となる。実は映画版の「蒲田行進曲」は松竹映画で、松竹映画でありながら東映京都撮影所で収録を行っているという変わった作品である。

末松萌香と松浦輝海がト書きを全て朗読するという形での上演。二人は、セリフの短い役(坂本龍馬や近藤勇など)のセリフも担当する。


上川周平による前説。「どうも、こんにちは。上川周平です。京都芸術大学映画俳優コース出身者として黒木華の次に売れています(格好をつける)。嘘です。土居(志央梨)さんの方が売れています。土居さんとは同級生です。今日は京都の山奥の劇場へようこそ。まだ外国人観光客に発見されていない日本人だけの場所。朗読劇なのに5500円。これは僕らかなり頑張らないといけません。演出の松尾(スズキ)さんは、役者がセリフを噛むとエアガンで撃ちます。まさに演劇界の真○よ○子」と冗談を交えて語る。

上川周平は、今年前期のNHK連続テレビ小説「虎に翼」で、主人公の猪爪寅子(伊藤沙莉)の実兄にして、寅子の女学校時代からの親友である花江(森田望智)の夫にして二児の父、日米戦争で戦死するという猪爪直道役を演じ、口癖の「俺には分かる」も話題になっている(「俺には分かる」と言いながら当たったことは一度もなかった)。


東映京都撮影所では、新選組を主人公にした映画が撮られている。まず坂本龍馬(松浦輝海)の大立ち回り。龍馬は土方歳三の恋人にも手を出そうとして、駆けつけた土方に止められる。土方役の銀四郎(銀ちゃん。少路勇介)の脇に控えているのが、銀ちゃんの大部屋時代の後輩である村岡安治(ヤス。上川周作)。銀ちゃんは大部屋からスターになり、土方歳三役という大役を演じているが、ヤスは大部屋俳優のままである。実はヤスも「当たり屋」という低予算映画に主演したことがあるのだが、大部屋の脇役俳優が主役になっても勝手が分からず、セリフが出てこなかったりと散々苦労した思い出がある。その後も、ヤスは銀ちゃんが取ってくるセリフもないような役をやったりと、弟分を続けていた。
銀ちゃんには、小夏という彼女(笠松はる)がいる。2年前まではそれなりの役を貰っていた女優だったのだが、2年のブランクがあって今は良い役にありつけない。小夏は30歳。今でこそ、30歳は女優盛りであるが、往年は「女優は二十代が華」の時代。30歳になるとヒロインは難しく、出来る役は限られてしまう。女優とは少し異なるが、「女子アナ30歳定年説」というものがつい最近まであった。今は30代でも40代でも既婚者でも子持ちでも人気の女子アナはいるが、ほんの少し前まではそうではなかったのである。30歳を機に、女優や女子アナを辞める人がいた。そう考えると時代はかなり変わってきている。

芸能界で、女優が30歳になることを初めて肯定的に捉えたのはおそらく浅野ゆう子で、彼女は「トランタン」というフランス語で30歳を意味する言葉を使ってイメージ改善に励んでいる。その後、藤原紀香が「早く30歳になりたかった」宣言をして30歳の誕生日をファンを集めて盛大に祝ったり、蒼井優が「生誕30年祭」と銘打っていくつかのイベントを行ったりと、女優陣もかなり努力している印象を受ける。

ただこれは、女優の限界30歳の時代の話。小夏は銀ちゃんの子を妊娠しているが、銀ちゃんは小夏をヤスと結婚させるという、酷い提案を行う。結局、小夏とヤスは籍を入れる。昭和の祇園女御である。映画版だとヤス(平田満が演じた)が小夏(松坂慶子)の大ファンだったという告白があるのだが、舞台版ではそれはないようだ。
ちなみに銀ちゃんは白川(おそらく北白川のこと。京都芸術劇場と京都芸術大学が北端にある場所で、京都屈指の高級住宅街)に住んでいるようで、すぐそばでの話ということになっている。小夏は銀ちゃんの5階建てのマンションを訪れ、合鍵を使って中に入り、銀ちゃんの部屋で泣く。


新選組の映画では、池田屋での階段落ちが名物になっているが、危険なので誰もやりたがらない。銀ちゃんはやる気でいるが止められる。警察がうるさいというのだが、銀ちゃんは、「東映は何のためにヤクザを飼ってるんだい」とタブーを言う(東映の任侠ものは本職に監修を頼んでいた。つまり撮影所に本職が何人もいたのである。誰か明言はしないがヤクザの娘が大女優であったりする)。
15年前の「新選組血風録」で階段落ちを行った若山という俳優は、その後、下半身不随になったという。
小夏のお産の費用を捻出するため、ヤスが階段落ちを申し出る(ちなみに階段落ちする志士のモデルは、龍馬の友人である土佐の本山七郎こと北添佶摩という説があり、彼が池田屋の階段を降りて様子を見に行ったというのがその根拠だが、それ自体誰の証言なのかはっきりしない上、階段落ち自体がフィクションの可能性も高いのでなんとも言えない)。
階段落ちの談義の場面では、ニーノ・ロータの「ロミオとジュリエット」のテーマ音楽が流れるが、何故なのかは不明。また京都が舞台なのに、マイ・ペースの「東京」が何度も流れるのも意図はよく分からない。

ヤスは、小夏を連れて故郷の熊本県人吉市に行き、親に小夏を合わせる。ちなみに小夏は茨城県水戸市出身の関東人である。歓迎される二人だったが、小夏の子の親がヤスでないことは見抜かれていた。

ヤスと小夏の結婚式に銀ちゃんが乱入(ダスティン・ホフマン主演の映画「卒業」のパロディーで、「サウンド・オブ・サイレン」が流れる)するというハプニングがあったりするが、ヤスの男を見せるための階段落ちへの決意は変わらず、その日を迎えるのだった。


つかこうへいの演劇の特徴は長台詞が勢いよく語られるところにあり、アクションを入れるのも確かに効果的なのだが、台詞だけでも聞かせられるだけの力があるため、松尾スズキも朗読劇というスタイルを採ったのだろう(役者が動き回るシーンは少しだけだが入れている)。見応えというより聞き応えになるが、確かにあったように思う。

「蒲田行進曲」に納得のいかなかった松竹の井上芳太郎は、「キネマの天地」という映画を制作している。中井貴一と有森也実の出世作であり、渥美清演じる喜八の最期がとても印象的な映画となっている。また、映画「キネマの天地」に脚本家の一人として参加した井上ひさしは戯曲「キネマの天地」を発表。私も観たことがあるが、趣が大きく異なって心理サスペンスとなっている。


今回使用された「蒲田行進曲」のテキストは、風間杜夫の銀ちゃん、平田満のヤスという映画版と同じキャストでの上演を念頭に改訂されたもので、二人の出会いが「早稲田大学の演劇科」であったりと、事実に沿った設定がなされているのが特徴でもある。

親分肌の銀ちゃんと、舎弟キャラのヤスの友情ともまた違った関係が興味深く、そこに落ち目の女優との恋愛話を絡めてくるのが巧みである。銀ちゃんに何も言えないヤスであるが、ラストに階段落ちを見せることで男気を示す。

ちなみに、映画版で私が一番好きなやり取りは、キャデラックの車内で銀ちゃんが、
「おい、俺にも運転させろ!」と言い、
「銀ちゃん、免許持ってないじゃない」との返しに(今と違って、危ないので俳優には運転免許を取らせないという方針の事務所が多かった)、
「ばっきゃろう!! キャデラックは免許いらねえんだよ!!」と啖呵を切るシーンで(啖呵を切ろうが免許がないと運転出来ないのだが)あるが、舞台なのでキャデラックのシーンがなく、当然ながらこのやり取りも入っていない。


実は、東京の小劇団による「蒲田行進曲」の上演を観たことがある。1994年のことで、場所は銀座小劇場という地下の劇場。東京灼熱エンジンというアマチュア劇団の上演であった。「週間テレビ番組」という雑誌の懸賞に母が応募して当たったのである。
東京灼熱エンジンは、階段落ちのシーンで照明を明滅させて、ヤスをスローモーションで見せるという工夫をしていたが、今回は小夏役の笠松はるが、箱馬を積み重ねたような木の箱をスティックで叩くという、音響的な演出がなされていた。ただ正直、音響だけでは弱いように思われる。


若い俳優達も熱演。演技力が特段高いということはないが、つかの演劇に要求されるのは巧さよりもパワー。力強さの感じられるしなやかな演技が展開される。ラストで、俳優陣が「蒲田行進曲」を歌う演出もあるが、今回は音楽が流れただけで歌うことはなかった。

カーテンコールには松尾スズキも姿を見せた。

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2024年10月25日 (金)

明治大学博物館「虎に翼」展に行ってきました

今年の4月から9月にかけて放送されたNHK連続テレビ小説「虎に翼」(NHK東京放送局=AK制作)の展覧会が、主人公の猪爪寅子(佐田寅子。伊藤沙莉)の母校、明律大学のモデルである明治大学博物館の特別展示室で行われています。アカデミーコモンの地下1階です。

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明治大学のゆるキャラである、めいじろうも法服姿でお出迎え。

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伊藤沙莉さんのアップ写真、目立ってます。

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猪爪はる(石田ゆり子)と桂場等一郎(松山ケンイチ)がエントランスで出迎えます。

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この左横のモニターに、伊藤沙莉さんが「虎に翼」展のためだけに撮ったメッセージが映っているのですが撮影不可。

また伊藤沙莉座長が、「虎に翼」チームのために発注したTシャツとトートバッグもあるのですが、こちらも撮影禁止です。


寅子と優未(毎田暖乃)が親子二代に渡って着た黄色いワンピース。

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寅子は花岡悟(岩田剛典)にアピールしたくて、はるや花江(森田望智)の手を借りて手作りしたのですが、思いが花岡に届くことはありませんでした。ただ花岡だけはワンピースを褒めてくれました。

高等試験司法科試験合格証書

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寅子は日本人初の女性弁護士の一人となりました(女性はまだ裁判官になることは出来ない)。しかし、先駆者の苦悩が待ち受けています。

寅子の父親、猪爪直言(岡部たかし)が愛娘の記事を集めていたスクラップブック。寅子が高等試験司法科(現在の司法試験に相当)に合格した時には、戦前ですので右から左に「でかした」と記しました。

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はるが寅子に買い与えた六法全書。寅子にとっての初の翼となりました。はるさんが定義した「地獄」は、「頭の良い女が頭の良い女のまま生きること」。「男と競争して女が女として生きること」。「道なき道を行くこと」。米津玄師の主題歌「さよーならまたいつか!」の歌詞に、「人が宣う地獄の先に私は春を見る」とあるため、地獄とは誰かが宣った、つまり定義している訳ですが、最初に定義を行っているのは、はるさんです。

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司法修習を終えて、晴れて弁護士となった寅子でしたが、若い独身の女性弁護士ということで依頼人からの信頼が得られず、全く仕事がありません。信用を得るために結婚を考える寅子。

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打算で猪爪家の元書生であった佐田優三(仲野太賀)と結婚した寅子でしたが、多摩川の河原で一緒に焼き鳥を食べながら話しているうちに瞬く間に恋に落ちます。しかし優三も出征。子を宿した寅子は、「自分がなんとかしないと女性法曹の道が絶たれる」と焦ります。穂高先生(小林薫)に相談しますが、穂高先生は自分の考えで物事をどんどん推し進めていくタイプでこれは失敗。穂高先生が「犠牲」と失言をしたため裏切られた気持ちになります。よね(土居志央梨)に相談しなかったことで彼女からの信頼も失い、結局、降参。失職します。

失意の日々の中で、たまたま買った優三との思い出の品、焼き鳥を包んでいた新聞紙に日本国憲法の全文を発見した寅子。それはあたかも優三からのプレゼント。声を出して泣く寅子。新生、寅子の産声です。

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甥の直治(今井悠貴)のサックス。サックスは管楽器の中では歴史が浅いということもあって音が出しやすく、指使いもリコーダーと一緒で吹きやすい楽器ではあります。ジャズでは花形で、服部良一は「サックスが吹ける」というだけで大阪では引っ張りだこでした。直治が音楽好きになったきっかけは、寅子にコンサートに連れて行ってもらったことですが、何のコンサートなのかは描かれていません。「愛のコンサート」は、猪爪家ではラジオで聴いていましたので、「愛のコンサート」でないのは確かです。服部良一は、父親に「音楽乞食なんて辞めて魚屋を継げ」と言われたそうですが、音楽家の身分が相当低い時代でもありました。

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寅子と優三のパネル。初々しい学生時代の姿。この頃は可愛らしかった伊藤沙莉さんですが、どんどん美人になっていって、「何が起きてるの?」と不思議に思いました。


伊藤沙莉さんのサイン。着物の柄もあって読み取りにくいです。

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こちらは仲野太賀さんのサイン。読み取りやすいです。

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俺たちの轟グッズ

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轟太一役の戸塚純貴さんは、三谷幸喜脚本・監督の映画「スオミの話をしよう」にも重要な役で出ていました。

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山田よねの衣装。出番は多いのに、最後まで謎の多い役でした。ただ男でも女でもなく山田よねとして生きてくれたのは嬉しく思います。

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法服。中田正子さんのものです。


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こちらは現代の法服(男性用)。黒一色なのでピントが合わせにくいです。


花岡悟(岩田剛典)。岩田さんは名古屋の人で、今回は名古屋でのロケも多かったため、故郷に錦を飾れたんじゃないでしょうか。

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明治大学専門部女子部設立の趣旨。明治大学は進取の気質に富む大学で、共学の私立大学として初めて女子教育に力を入れたほか、私立大学初の商学部の設置、日本初の経営学部の創設などを行っています。
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番組台本 作・吉田恵里香

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「虎に翼」収録の前に、法律を学ぶ役の6人の女優が明治大学で特別講義を4コマ受けたという話は伊藤沙莉が何度もしているが(法律を学ばない花江役の森田望智もなぜかついてきたらしい。森田望智は大卒だが、明治大学ではなかったはずで、他の大学の雰囲気を味わいたかったのかも知れない)、こぼれ話が紹介されている。

伊藤沙莉は、ネットラジオなどを聴くと、大変頭の回転が速い人であることが分かるのだが、小難しい話は余り得意ではないようで、最初の授業は最前列で聴いていたが、2コマ目、3コマ目と授業が進むごとにどんどん後ろの席に下がっていったそうで、先生達も苦笑していたという。

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2024年10月15日 (火)

「あさイチ Kira KIra キッチン」 麻生久美子 2024.10.8

2024年10月8日

NHK総合「あさイチ」。今日は「Kira Kira キッチン」と称して、調理を行いながら番組が進行するという趣向。ゲストは女優の麻生久美子。
麻生さんは、現在、NHK連続テレビ小説「おむすび」(橋本環奈主演)に主人公のお母さん役として出演中である。と書いていながら私は見ていない。「ブギウギ」は、笠置シヅ子をモデルとした音楽の話で、同い年の草彅剛が音楽家役で出ているので見たし、「虎に翼」は、日本初の女性法曹で、母校である明治大学出身の三淵嘉子がモデルであり、私も寅年(五黄の寅ではなく八白の寅)、主役を演じるのが同郷の伊藤沙莉ということで見る要素があったのだが、「おむすび」は麻生久美子が出てはいるがヒロインではないし、それだけではちょっと弱い。橋本環奈は嫌いではないが特に好きではない。そもそも彼女が出演した作品を数えるほどしか見ていないということで食指が動かなかったのである。同い年の北村有起哉など、良い俳優も出ているのであるが、舞台が福岡と神戸なので、余り惹かれないということもある(NHK大阪放送局=BK制作)。

神戸が舞台の一つということで、阪神・淡路大震災も絡んでくるはずである。

主人公は栄養士を目指すのだが、福岡には九州限定で栄養士の名門として知られる中村学園大学があり(全国区の知名度はない)、九州で栄養士を目指す子は大体、そこを目指すのだが、主人公は関西に出てきてしまうようである。「虎に翼」で主人公の伊藤沙莉演じる猪爪(佐田)寅子(ともこ)の母親、はるさん役を演じていた石田ゆり子は女子栄養大学の二部だったか、短期大学部だったかの出身で、栄養士のお母さん役には最適だったのだが、先の朝ドラに出てしまったので、今回は出られない。

麻生久美子は、1978年6月17日生まれ。千葉県山武(さんぶ)郡山武町(さんぶまち)の出身。現在は合併により山武(さんむ)市となっている。山武郡山武町は千葉県の中でも一番の田舎といわれているところで、映画「SF ショートフィルム」で麻生久美子の実家付近でのロケが行われているのだが、感心してしまうくらい何もないところである。ちなみに麻生久美子の実のお母さんとお婆さんが出演されている。
両親の中が悪く、離婚。父親は金遣いが荒くて粗暴でちょっと困った人だったようで、夫婦喧嘩の時に包丁を持ちだして、幼い麻生久美子が楯になって母親をかばったという話がある。弟と二人、母子家庭で育つこととなる。母親はスーパーで働いていたのだが、「ハンバーグやミートボールを貰ってきてくれるんですけど、どっちも一緒じゃないですか」という環境で育った。ザリガニを釣って、食べたこともあるのだが、後で「食べちゃいけない。細菌なんかがいるから」と言われたらしい。ただザリガニはエビの味がするのでごちそうだったそうである。

私も幼い頃に千葉県内にある母方の実家(田舎にある)でザリガニ釣りをして遊んだが、勿論、食べず、釣ったザリガニは祖父が海釣りのエサにしていた。余談だが、東京にはザリガニ料理が食べられる店があるらしい。

貧乏という理由でいじめられることもあったそうで、彼女は額の見えにくいところに傷があるのだが、幼い頃に石を投げつけられて出来たものである。また走る車の前に突き飛ばされそうになり、この時は母親が他の子どもたちの家に怒鳴り込んだそうだ。このお母さん、結構、スパルタで、麻生久美子がちょっと悪いことをしたら木に縛りつけて泣いてもわめいてもなかなか許さないということもあったらしい。そんな彼女であるが、幼い頃は、「自分は世界で一番可愛い」と思い込んでいるような、「今振り返ると嫌な子」だったようで、西田ひかるのファンであり、西田ひかるの顔のほくろがある場所をいじっていたら、ほくろが出来たという話もある。
お菓子系と呼ばれたライトなエロ目の雑誌にモデルとして出るようになり、コンビニかどこかに買いに行って、「お菓子系なのに、これ私」と周りに自慢して回ったという彼女らしいエピソードもある。
授業態度は真面目で、成績も良かったようだが、学区的には県立佐倉高校一校だけが飛び抜けた進学校で、その他は、誰でも入れるレベルの高校ということで、成績が良くても佐倉高校に行けるだけの学力はなかっためか、県立佐倉南高校に進学することになり、残念そうな発言をしていた記憶がある。「高校時代にはいじめられるし」と発言しているが、どちらかというとハブられていたというより、自分から壁を作っていて、余り周りとは仲良くしなかったようである。容姿的には幼い頃から別格扱いではあったらしい。
十代の頃は哀川翔に片思いしていて相手にされなかったようだが、哀川翔に「カンゾー先生」への出演を勧められ、ブレークすることになった。

割と開けっぴろげで、明るく、豪快に笑う性格。映画に出まくっているが、映画自体はそれほど好きではなく、余り映画は観ない。そのことで事務所に怒られたこともある。ただ映画が好きではないのに映画女優としてフィルムに収まることに疑問を感じた時代もあったようだ。

麻生久美子さんの映画の舞台挨拶には、二度ほど行ったことがあるのだが、最初はテアトル新宿で行われた、「贅沢な骨」の舞台挨拶付き上映。この頃はまだフィルムを使っていたので、フィルムトラブルがあって、上映が始まってすぐにフィルムが丸まって動かなくなってしまうため、3度やり直すという事件があった。
麻生さんによると、「贅沢な骨」は、上映出来るのかどうかまだ分からないまま撮り始めた映画であるとのことだった。
舞台挨拶が終わり、上手通路から退場する時に、お客さんの一人が手を差し伸べたらしいのだが、麻生さんは、「わー! 握手握手!」とはしゃいで自分から握手に行き、その後ろの席の人とそのまた後ろの人ーー多分、二人は手を差し出していなかったと思われるのだがーーとも握手をして、「アーッハッハッハッハッ!」と豪快な笑い声を残して去って行ったのをよく覚えている。「あー、この人、やっぱり千葉の女だわ」と思ったものだ(千葉の女性は豪快に笑う人が多い)。
好きな女優さんなので、色々知識があるんですね。ずっと書いていられるけれど、そんなことしても仕方がないので、今日の内容へ。


で、ここからが本編。番組が始まった時から、すでに麻生さんは調理中である。麻生さんは包丁でタマネギを刻んでいる。カメラが寄ってきて、「おはようございます」挨拶を行う麻生さん。今日の番組内容を紹介して。「嫌だもう、朝からすみません。恥ずかしい」と言う。その後も料理を行いながら喋っていく。指導は秋元さくらシェフ(フレンチ)。ひき肉のピカタを作っていく。

鈴木菜穂子アナウンサーに「お料理大好き」と言われた麻生さんは、「いやーもう、そんなに」と謙遜する。

後は基本的に調理が進んでいく。女優さんの家庭的な部分を見る機会は余りないので、貴重ともいえる。


麻生久美子のお気に入りの紹介。
ドイツの一口バウムのチョコレートがけとシンガポールのピリ辛ポークジャーキー。いずれも国内に店舗があるそうである(ポークジャーキーは東京のみ)。
多分、食べに行くことはないな。
手料理の紹介もある。ハンバーグ、春巻き、ブリの照り焼き。普通のお母さんの料理である。子どもたちが喜ぶので、春巻きを作ることが一番多いそうだ。


続いて山野辺仁(やまのべ・ひとし)シェフの指導で、秋のみそぼろ丼の調理。
基本的に麻生さんが料理しているだけの展開である。正直、大女優を使ってやることなのかどうか分からない。麻生さんは基本的にかなり良い人なので何でもやってくれるけれど。
今日は朝のNHKなので比較的落ち着いているけれど、実際はキャピキャピした明るい人である。

朝ドラ「おむすび」では、今のところギャルが重要なポジションを占めているようなのだが、麻生久美子も「ギャルやってみたかった」と述べた。実際にギャルであったこともないが(それほど彼女をよく知っているわけではないが、性格的に多分無理である)、麻生久美子がギャルを演じたこともおそらく一度もないと思われる。数多くの映画やドラマに出ている麻生久美子だが、実際の年齢より上の女性を演じることも比較的多く、落ち着いた役が多い。悪女役もやっていて、私は映画「ハサミ男」の知夏役が結構好きである。あの作品は、原作者も監督も残念なことになってしまったけれど。

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