2026年4月27日
Netflixドラマ「地獄に堕ちるわよ」が配信開始。全9話同時配信のようである。流石に全9話を一気には見られないので、細切れで見ていく。
占い本の売り上げがギネス記録になっている一方で、暴力団との直接的な関係を利用した恐喝など裏社会を利用した悪女でもある細木数子の一生を描くドラマ。主演:戸田恵梨香(細木数子役。ナレーション兼)。出演:伊藤沙莉(ナレーション兼)、富田靖子、高橋和也、細川岳、田村健太郎、余貴美子、根岸季衣、市川実和子(ナレーション兼)、田中要次、杉本哲太、生田斗真、三浦透子、青山テルマ、ヒコロヒー、細田善彦、石橋蓮司ほか。監督は、瀧本智行(友人に名前が似ている)と大庭功睦(おおば・のりちか)。脚本は真中もなか。音楽は、「どうする家康」の稲本響。
「SPEC」などでエキセントリックな人物も演じている戸田恵梨香。怪物クラスの人物である細木数子も、妖艶かつ時折凄みを出して演じている。終戦後、母(富田靖子)と四人姉弟でひもじい思いをした細木数子。弟や妹には街角のお供え物を与え、自分は仕方がないのでミミズを口にした。その味は、生涯忘れないと語る。一家でおでん屋を立ち上げた数子。早泣きが得意で、客から喝采を受ける。早くに稼ぐために高校時代にクラブデビュー。クラブではナンバーワンとなりやっかみを受けるもオーナーの落合元(奥野瑛太)に気に入られ、初めての体験をする。しかし、落合には裏の顔があった。自殺を図った数子だが、命を取り留める。高校を辞めた数子は、おでん屋の常連だった中園榮一(高橋和也)の紹介で、スタンド食堂「ポニー」を立ち上げる。店は繁盛するが、事実はどうか知らないが、数子は窓口係で食事の多くを姉が作ったため、姉が憤る場面がある。そのスタンドは半年で計画的にやめ、新橋にクラブ「潤」を起こす。水商売の女は教養がないと馬鹿にされるため、新聞を読み、更に大学に潜り込んで授業を受ける。どの大学なのかは明らかにしていないが、ロケでは立教大学が用いられている。 一つの大学だけに潜るとは限らないが、交通費が掛かるため、複数の大学で学ぶということはなかったと思われる。
新橋の店が繁盛すると、今度は目標の地である銀座に「カズサ」という店を出す。オープン前に出資者の中園に土下座する場面がある。カズサというと千葉県の中部である上総を連想するが、彼女と千葉県には接点がない。織田上総介信長が、「総ての上に立つ」という意味で上総介を自称したが、あるいはそれを見抜いたのか。単に「カズコ」の「カズ」なのか。
数子は、最初は上司に連れられて来てその後は一人で週3回ペースで訪れるようになる三田麻呂彦(田村健太郎)のことが気になる。このままだと破産するのではと心配するが、実は三田は静岡の大地主の息子であった。三田の父親が亡くなった日、静岡に帰る三田との結婚を決意する数子。ただそれ以外の部分で三田に惚れたというより、金銭的な上がりを意識して三田と結婚したように見えてしまう。
これが第2話までの細木数子の人生である。
二番目にクレジットされている伊藤沙莉は小説家役である。伊藤沙莉本人も小説家という職業に憧れを持っているが、1から増やしていくことは出来るても、0から1を生み出す才能はないため、来世ではそうした才能を持つ天才作家になりたいようだ。おそらく蓬莱さんに惚れたのもそこだろう。売れない作家とクレジットされた魚澄美乃里であるが、実際は文芸新人賞を受賞した実力の持ち主である。しかし次の作品が書けなくなってしまい、書けないと金にはならないのでクリーニング工場でアルバイトをしている(余談だが、伊藤沙莉は若い頃にクリーニング工場ならぬクリーニング店でアルバイトをしていたことがあり、その時のことは著書やネットラジオで語られている)。細木数子のことを小説に書くことで再起を狙っている美乃里。美乃里のことは編集者が推薦し、細木からも「期待してるわ」と言われる。細木の自宅でのインタビューも行えていることから、全くの無名作家という訳でもないらしい。今後、対立が予想されるが、今のところ不仲という訳ではない。伊藤沙莉も取材対象を観察して「何でも書いてやる」と意気込んでいるためか、いつにもましてキリッとした姿勢である。
ただ気になるのは、Episode2で、美乃里の書棚が映る場面があるのだが、マンガのほかは、よしもとばななななどの現代小説と茨木のり子などの現代詩しか見当たらない。それも女性の作品ばかりである。漱石、芥川、太宰といった近代文学の王道や、泉鏡花や谷崎潤一郎などの耽美派、日本の古典文学、外国文学などは見当たらない。処女作『透明な女たち』であるが、帯を見ると私小説らしいことが分かる。誰でも私小説なら1冊は書ける。上手いか下手かは別にして。本当に何冊もヒット作を生み出す小説家になりたいのならこの読書量なら明らかに勉強不足である。私小説として『透明な女たち』に全て書いてしまったら、もう何も書けないのはむしろ当たり前といえる。
ただ第1作で自分に向き合ったというのなら、第2作で向き合うのは細木数子。細木数子が美乃里にとっては初めて描く他人だ。
静岡の旧家である三田の家(浄土真宗門徒のようで「正信偈」が唱えられる。浄土と地獄の対比である)に嫁いだ数子。しかし、眉をうすくして、『犬神家の一族』に出てきそうな風貌になった麻呂彦の母キヨ(余貴美子)が家の支配権を握っているようである。
初夜の日、麻呂彦はこれがはじめてだそうで、数子に指南して貰う。その間、鶏の映像が流れる。翌朝、起きた数子は麻呂彦の手伝いをしようとするが、キヨから何もしなくていいと言われる。それでも何かしようとするが、女中の仕事を奪うということで、何とか鶏小屋の掃除だけさせて貰う。名家である三田家では、跡継ぎを生むことだけが嫁の仕事だった。弟で「カズサ」の経営を任せた久雄への長距離電話もキヨに止められる。女中達が自身の悪口を言っていることを耳にした数子は、女中達を追い出し、鶏を皆殺しにして、夕食の膳に総て鶏料理を並べて家を出て行く。ちなみに親子丼は持って東京へ帰る途中のバスの中で食べるが(バスの中での食事は余り褒められたものではないが)卵だけ産む鶏の肉だけに、美味しくはなかったようだ。
それほど面白い話ではないが、美乃里は声を上げて笑う。数子はその理由も見抜いていた。美乃里は新人賞受賞直後に編集者の男と結婚。一女を設けるが、2作目の小説を書けない美乃里は、夫から「お前には才能がない」「小説家の道を諦めて子育てに専念しろ」と暴言を浴びせられたため離婚。娘の親権も取っている。
夫に酷い目にあった女。その復讐心や開放感が笑いへと繋がったのだと。ただ美乃里の夫はそれほど悪い人物ではない。
1963年。翌年には東京オリンピックが開催される。都内は突貫工事だらけであった。そんな中、「シンザン」と「だりや」という新店舗を銀座に出した数子は、不動産会社を経営している須藤豊という男(中島歩)と出会う。
一方、法外なみかじめ料を取ろうとした暴力団員に割って入った客がいる。滝口宗次郎(杉本哲太)。滝口組の組長だった。ここで初めて暴力団との接点が出来る。
この時点では、数子は占いを全く信じていないようだが、母親のみね(富田靖子)が占いを頼りにしており、辻占い師(田中要次)に頼み、娘の将来が明るいことを喜ぶ。
富田靖子も髪の毛を薄くするなど、かなり思い切った老けメイクを行っており、パッと見、富田靖子だと気付かない人もいそうである。
Episode5。1964年。細木数子は銀座で3軒のバーを流行らせ銀座の女帝となった。
だが好事魔多し。須藤と共同で赤坂のクラブ「艶歌」をオープンさせる計画を立て、中園と手を切るが、資金の半分を提供するはずだった須藤が金を持ち逃げして消えてしまう。新事業に力を入れていた数子だったが、須藤に欺されることになった。須藤は以前から密かに数子の内偵と欺す手口を考えていた。
そんな折、母親が死去。辻占い師に「数子が地獄を見る」と言われたという。実家にまで借金取りが来ていたそうだ。
再び自殺を考えた数子。須藤と滝口はグルだったようで、滝口は「艶歌」を存続させる代わりに自分の「おもちゃ」になるよう要求した。数子は飲むしかなかった。
現代(といっても2000年代)。細木数子は日本で最も有名な占い師となっていた。六星占術の本は世界で最も売れた占いの本として、ギネス記録になっていた。
だが、細木数子の本を書こうとしている魚澄美乃里役の伊藤沙莉は、観察の意味もあってか、厳しい眼差しを崩さない。細木数子への個人診断は10万円もし、その価格に見合うだけの診断を行っているとも思えない。やたら先祖供養を勧めるが、高い墓石を紹介し、美乃里のナレーションによると、細木はバックマージンを受け取っているという。
眼差しの演技が特徴的な伊藤沙莉。普段は強い眼差しを続けているので、それ以上のことは分からないが、細木数子が一万円札を燃やしたときに、最初は何が起こっているのか分からないという眼差しをし、その後、動揺を気取られないよう目を無表情に近づける。2枚目の一万円札に火を付けた時は流石に怒るが、これで1枚目を燃やしたことの意味が出る。火を付けてすぐ怒ったらドラマにならない。
細木数子が「最良の年」と呼んだ1964年が終わり、1965年。銀座の店は悉く閉店。数子は、「艶歌」の中では自由だが、滝口の情婦で外に一人で出ることも出来ない。滝口の求めにも応じなければならなかった。ある日、滝口の部下達が「艶歌」で騒ぐ。それを静めたのが江戸川一家の堀田雅也(生田斗真)だった。遅れてきた滝口を博打に誘う堀田。しかし堀田は博打の腕は確かであり、滝口を追い込むつもりだった。最終的には滝口は大負けし、負債を追う。そして復讐のために堀田を撃ちに現れる。
1973年。オイルショック。時短営業が求められ、「艶歌」の営業も上手くいかない。コロナを連想させる出来事だ。そんなある日、数子はついに占いに出会う。辻占い師だったが、「占いは統計学だから」(そう言いながら、占いの統計を取っている人はいないと思われる)ということで、「今付き合っている人とは相性が良いが、良すぎるかも知れない。そして新しいことを始めるのが良いかも知れない。あなたは人の何倍もエネルギーがある」
それを本気にしたのか分からないが、数子は「艶歌」をディスコ「マンハッタン」に模様替えすることにする。人一倍商才に長けた数子は再び時流に乗るが、車を運転している時に、橋から飛び降りようとしている女性を見かけ、声を掛ける。その女性は当代一の人気女性歌手、島倉千代子(三浦透子)であった、彼氏が出した手形に署名しているうちに借金が4億3千万を超え、マスコミが報じることに。数子は千代子を保護し、新宿コマ劇場でのリサイタルを完走させるのだった。
映画「ドライブ・マイ・カー」のドライバー役で注目された三浦透子。伊藤沙莉の友人である。東京理科大学数学科卒という理系の中の理系。今度、イギリスで生まれた一人芝居に挑む予定である。伊藤沙莉は高校の時にテストで0点を取ったと明かしているが、おそらく数学の試験においてであると思われるので、数学について語った場合は全く話が通じないと思われる。
伊藤沙莉がなかなかオーディションに受からず、受かったと思ってもエキストラだった時に、役を貰っていた三浦透子と昼ご飯を食べ、「ここじゃないから、沙莉のいる場所は」と言ってくれたという話がある。
Netflixドラマ「地獄に堕ちるわよ」Episode7からEpisode9(最終話)。
眼差しが険しかった美乃里だが、細木数子の話を聞いているうちに段々視線が柔らかくなる。数子は島倉千代子のマネージャーを務め、稼がせるためにドサ回りから刑務所慰問まで何でもやらせる。年間200ステージの強行軍。更にレコード購入者限定のサイン会など、金になることなら何でもやらせた。そして円満のうちに関係解消。
だが、数子の弟で一緒にバーやディスコを手伝っていた久雄から「そんなの全部嘘に決まってるじゃん」と美乃里は告げられる。久雄はその後に二度逮捕されて有罪になっており、数子からは離縁されていた。数子は姉や妹からも距離を置かれており、家族には好かれなかった。
久雄が言うには、芸能界と暴力団の両方に詳しいフィクサーから堀田に連絡があり、島倉千代子と面会し、傘下に置くことになかった。橋で千代子と会ったというのは大嘘だった。
数子が千代子に課した仕事そのものには嘘はないようだが、得た金の大半を懐に入れていた。千代子は月3万円を給料として貰っていたが、千代子の元マネージャーで今は新人のマネージメントを行っている男に聞くと、明らかにおかしいらしい。島倉千代子クラスなら、呼ぶだけで200万から500万かかるため、借金の4億円など1年で返せるという。数子は1年で稼いだという1億5千前円を出して、これで山分けとしていたがそんなはずはないというのだ。欺されたことを知り、週刊誌に離別の記事を載せて、「これで手切れ」としたようだ。美乃里は、テレビ局に島倉千代子を訪ねるが、千代子は数子への感謝を述べ、着服されたことについても「欺されたことに気付かない方が幸せなこともあるのよ」と取り合わなかった。そして数子が笑うようなタイミングで笑い声を上げる。数子の人に取り入る術を見せられる思いだ。
数子が最初に占ったのは千代子だったが、本格的に占いを学ぶことに決める。初めて占って貰った先生(木村優子)に弟子入りし、「占いには10年掛けないと」と言われるが1年でマスター。本当にそんなことが可能だったのか分からないが、これをベースにした六星占術を生み出すきっかけとなる。ちなみに先生に借りた本はついぞ返しにこなかったという。
更に思想界の大物、安永正隆(石橋蓮司)にも近づく。最初は推命学を教えて欲しいと近づき、得意の泣き真似もする。最初の先生によると「安永正隆は易経の人」で四柱推命には詳しくないそうだが、各界に顔が利く正隆との付き合いにより、数子も顔と知名度を上げていく。正隆の娘の加藤十和子(市川実和子)によると、正隆には軽度の認知症があり、それを数子が見抜いたのではないかという。認知症は徐々に進んだようで、正隆と数子が二人で部屋で飲んでいる時に、危機感を覚えて駆けつけた十和子を「静子」と母親の名前で呼ぶ。そしてその時、数子は正隆に印鑑を押させていて、婚姻届を出す準備を整えていた。しかし婚姻については後に裁判により無効となる。
正隆の葬儀の日、駆けつけた数子は、心から絞り出したかのような泣き声を上げるが、元々泣きの演技は得意であり、数子に同情する人はいなかった。
正隆が推薦文を書いた六星占術の本は売れに売れ、数子はテレビ界に進出することになる。
「ヤクザの女」じゃなくて「女ヤクザ」と呼ばれた細木数子。テレビ局の前での出迎えは、テレビ局ではなく暴力団事務所の前のような光景である。
それでも数子を悪く言う人は少数派。番組ADは不満をぶつけるが、ディレクターは大絶賛。以前、10万円払って数子に見て貰った老婆も、状況は全く改善されていない上に高額の墓石まで買わされているが、「有名な方」に見て貰って嬉しいと、述べる本人が良いと言うなら良いで収まる結果となっている。
数子は、美乃里を鑑定することにする。放送には流さずカメラも回さないという条件下だ。美乃里は今書いている小説の話をする。モデルがいて、それが誰のことなのかは明かさなかったが、数子にはすぐに分かったはずだ。
1冊しか書けていないが、小説家の血が騒ぐ美乃里。ノートパソコンのワープロソフトに向かって縦書きで書く、とにかく書く、アルバイト先でも(本来の仕事はさぼってるが)書く。そうして文字を奏でた美乃里は、2冊目の小説となる『虚飾の自画像(原題『女の自画像』)』を書き上げる。週刊誌に細木数子のスキャンダルを連載する予定があり、美乃里の小説はそれに対して細木数子擁護の書籍となるはずだった。だが、美乃里は耳にしたままを小説にした。
美乃里は、「誰よりも先に読んで欲しい」ということで、出勤前の細木数子の家に向かい、プリントアウトしたばかりのA4用紙を入れた紙袋を車中の数子に手渡す。
実のところ、数子は美乃里が書いた小説に泣いた。感受性も強い人らしい。
しかし、再び美乃里と自宅であった数子は、「面白かった」と言いながら「嘘ばかりで表に出せない」と美乃里を責める。おそらく本は世に出ないだろう。だが美乃里と対峙した時にぶちまけた原稿を、数子は美乃里が帰ってから1枚1枚慈しむかのように丁寧に拾う。
虚飾と嘘に満ちた人生。知力、商才、胆力、演技力に長けながら、それを悪へと向かわせてしまった女。それでも人々は「虚飾には虚飾を」なのか、本来の数子に向けられたとは思わない言葉を掛ける。これは自分じゃない、それも自分じゃない、あんなものも自分じゃない。そんな中でただ一人、等身大の自分に向き合う人がいた。美乃里である。美乃里は自分のことを分かってくれていた。だが、この内容で出版する訳にはいかない。
翌2006年、週間「現代」が細木数子の数々のスキャンダルを書き立てた。数子はテレビ界から追放。表舞台から姿を消す。しかし死ぬまで「占いなんて信じてない」と言いながら占い師の仕事を続け、ケータイ向けの六星占術のサイトが爆発的にヒットするなど、占いに関わり続けた。また姪を養女に貰い、細木家を繋いだ。
「細木数子は欲しいものを全て手に入れた」ように見える。本当の理解者以外は。
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