笑いの林(13) 「小泉エリのマジカルおもちゃ箱~大阪場所~」
2013年9月21日 大阪・なんばの5upよしもとにて
なんばの、5upよしもとで、「小泉エリのマジカルおもちゃ箱~大阪場所~」を観る。午後7時開演。吉本所属のマジシャン、小泉エリによる単独ライヴ。マジック、漫談、コントからなる。「~大阪場所~」とあるのは、彼女が好角家であることにちなみ、名古屋でも公演が行われるが、そちらは「~名古屋場所~」となる。
まず5人の女性ダンサーが舞った後で、中に何も入っていない銀枠の小さな檻が登場する。後ろには赤い布が張られているが、檻を横に向けても厚みはない。だが、赤い布を伸ばして檻を多い、赤い布を今度は取り去ると檻の中に小泉エリがおり、檻から出てくる。赤い布は剥がされることは結局なかったし、注意を惹きつけない場所にいたことは間違いないのだが、どうなっているのかまではわからない。
続いてパイプ椅子2台を用意される。エリさんは、椅子の間を通って、何もないということを表現してみせる。椅子の上に戸板が乗せられ、その上にダンサーの一人が横になる。エリさんが椅子の一つを取りのけても、戸板が落ちることはない。更に戸板を下げてもダンサーの体は宙に浮いたままである。
エリさんはなにも手にしていないはずなのに、突然、バトンが右手から現れる。バトンを回してポーズを決めるエリさん。やはりマジックをやっている時の小泉エリは格好いい。
続いて、ボードを使っての「疑問と法律」という漫談であるが、服を買ったときに店員さんが「出口までお持ち致します」と言うことがあるが、あれはいらないので、それを断った場合は「サービス割り引きになる」。「男のメールはなぜそっけないのか?」、絵文字を使って欲しいので、「絵文字十一制度」を作りたいという。絵文字を使わなかったら、「十一(十日で一割のこと闇金融でよく使われる言葉である)」で資産が少なくなる。といった調子で、聞いていても早希ちゃんのような斬新な発想や論理の飛躍があるわけでもなく、常識的で普通の人という印象である。エリさんは吉本所属なので、お笑いもやるが、本職はマジシャンなので、特に笑いを取る必要もないといえばない。公演全体を通して見ても、客を引かせて笑いに変えようという計算が見えたが、そうした笑いで満足するのかどうかも疑問である。
エリさんは客席に向かって、年齢を聞き始める。「二十代の人」と声を掛けると手を挙げる人がちらほら、「三十代の人」は結構多い。十代もいる。ただ一番ボリュームがあるのは四十代の人であった。それ以上の年代の人もいる(ちなみに公演時間が延びたため、終電を気にしてその方達は途中で帰られてしまった)。早希ちゃんのファンも同様で、三十代後半から四十代前半の人が最多である。これには私もそうであるが第二次ベビーブーマーの人が含まれるため、まず絶対数が多いというのも大きい。二十代の人はアラサーの吉本芸人よりも同世代のアイドルに行くだろう。また第二次ベビーブーマーというのは人生常に逆風(空前絶後の大学受験戦争、歴史に残るほどの就職難。企業に入れても、より下の世代は採用そのものを控えてしまったため、いい歳になっても一番下っ端扱いの人も珍しくない)であるため、エリさんや早希ちゃんのような勉強も運動もいまいちだけれど一生懸命というタイプには癒されるし、励まされるのだと思う(実際は早希ちゃんは天才なので私は畏れも感じるし、エリさんも才女である)。
ゲストであるモンスターエンジンの、まずは大林が登場しての「乳輪診断」。大林にフリップに書かれた質問に答えてもらい、それによって大林の乳輪の形を当てるというコーナー。フリップに書かれていることは、いずれもその人の性格に直結したもので、いわゆるコールドリーディングを行うだけである。乳輪の絵を描いている間、エリさんは無言で、大林が仕方なくトークで繋いだ。乳輪の絵を描いた後で、エリさんはスタッフにキーボードを運んできて貰い、ギターの弾けるダンサーと二人で弾き語りを行う。作詞・作曲はエリさんであるが、特に書くべき美点も見つからない歌をエリさんは延々と歌う。これも敢えて客を引かせようというネタであるが、それにしても歌が長すぎた。
次のコーナーでは小泉エリの両親である、小泉純一郞元内閣総理大臣によく似たマジシャンの横木ショージと妻でアシスタントのレミ夫妻が登場。マジシャンの家の日常をコミカルに描く。
小泉エリが牛乳を欲すると、父親の横木ショージは、小さな器に入った牛乳を差し出す。それでは足りないというとより大きな器に移す。すると牛乳の量も増えている.更に大きい器に移すとまた牛乳は増え、という風に、どんどん牛乳の量が増えていく。
小泉エリが「ご飯が食べたい」というと、横木ショージは新聞紙の間や、雑誌のページの間から、米粒を出す。
玄関のチャイムが鳴り(ここでの芝居は明らかに素人演技。みんなあちこちに視線を飛ばすが、玄関のチャイムだとわかっていて玄関の位置を知らないはずはないのに、キョロキョロするのはおかしい)、NHKの集金が来る。横木ショージはバケツを手に、空気に手をやると、自然にコインがそこから出てくる。季節に合わない長袖のシャツを着ていたので、裾にコインを隠しているのだと思われるが、見ていても自然な感じなので、どうやってコインを取り出しているのかまではわからない。
モンスターエンジンの西森を迎えての「乳輪診断」。西森は、「始まってから30分ぐらい地獄のような空気だったぞ」と、漫談のひねりのなさを指摘する。
そして、診断が終わると、例によってキーボードを運び出して貰って、弾き語りを始める。芸人としては対応に苦慮するパターンである。この時に前述した上の世代の方が終電を気にして帰られてしまったので、西森は(勿論、なぜ席を立ったのかはわかっているが)「帰った! 曲聴いて、帰る人いる!」と叫ぶ。
エリさんの父親である横木ショージによるマジックショーを経て、最後はマジックコント。モンスターエンジンの二人も出演するが、十分な稽古をしてないことを突っ込むようなセリフを入れたり、「段取り悪い、押してる、早くせえ」などとアドリブを行ったりする。5upよしもとを午後9時までの予定で借りているようなのだが、もう9時を10分ほどオーバーしている。
コントの内容は「半沢直樹」をモチーフにしたもので、エリさん演じるOLが上司の二人(モンスターエンジンが演じている)にマジックで「倍返し」の復讐をするというもの。
西森は、小型のギロチンを使い、「野菜は切れるが人間の腕は切れない」というマジックを行い、大林には、「箱の中に入って貰って剣で刺しても無事」というマジックを行う予定だったと思われるのだが、大林が箱の中に入っている時に、下手袖からカンペが出されるのが見え(私は上手端の席に座っていたので見えたのである)、おそらく「時間がないのでここまで」という内容のものだったので、大林は箱の蓋は開けたまま、ただ剣で刺されるだけというオチのない内容で終わってしまう。全ての演目が終わったのは9時20分頃であり、20分押しであった。
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