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2013年11月10日 (日)

ウィーン・フィルよりもウィーン的 ヨーゼフ・クリップス指揮ロンドン交響楽団「ベートーヴェン交響曲全集」

ウィーン生まれのウィーン育ち。生粋のウィーンっ子として親しまれた指揮者のヨーゼフ・クリップス。モーツァルトなどを得意とし、評価も高いものがありましたが、録音点数はそれほど多くない指揮者です。

そんな、ヨーゼフ・クリップスがロンドン交響楽団を指揮して録音した「ベートーヴェン交響曲全集」。1960年に行われたステレオによるスタジオ録音です。エベレスト・レーベルによる収録ですが、音質に問題があり、最近になってイタリアのMEMORIESによる復刻が行われて、ようやく音が鮮やかさを取り戻しました。

ヨーゼフ・クリップス指揮ロンドン交響楽団「ベートーヴェン交響曲全集」

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮して「ベートーヴェン交響曲全集」を完成させた指揮者は何人もいますが、クリップスとロンドン交響楽団による「ベートーヴェン交響曲全集」はそれらのどれよりもウィーン的です。クリップスの指揮棒によって引き出されたロンドン交響楽団の音には気品があり、クリップスの生み出す音楽は格調が高く、しなやか。本場のウィーン以上にウィーン的で、猛々しさのない、洒落の分かるベートーヴェンです。

ヨーゼフ・クリップス指揮ロンドン交響楽団 「ベートーヴェン交響曲全集」(MEMORIES)タワーレコード

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2013年4月13日 (土)

朝比奈隆以来の快演 クラウス・テンシュテット指揮バイエルン放送交響楽団 ブルックナー 交響曲第3番「ワーグナー」

ブルックナーの交響曲というと、後期の交響曲第7番、第8番、第9番の他に第4番「ロマンティック」も人気がありますが、交響曲第3番「ワーグナー」と第5番も隠れた人気曲です。
今回紹介するのは交響曲第3番の方。「ワーグナー」というタイトルが付いていますが、これはブルックナーがワーグナーの大ファンであり、ワーグナーに献呈されたことに由来します。

ブルックナーの交響曲は後期の三大交響曲ともいうべき作品群には名演が多いのですが、初期の交響曲第1番、第2番、第3番(他に交響曲00番、0番などもあります)はコンサートに取り上げられる回数も少なく、名盤と呼べるものも少ないのが現状でした。

これまでにリリースされたCDでは、朝比奈隆が晩年に手兵である大阪フィルハーモニー交響楽団とスタジオ録音したキャニオン・クラシック盤がスケール雄大で迫力もあり、他を圧している格好でしたが、久しぶりに朝比奈に匹敵するCDを見つけたので紹介します。
クラウス・テンシュテット指揮バイエルン放送交響楽団盤です。profilレーベル。1976年の録音です。約20年後に録音された朝比奈隆盤以来の名演というのは変な格好ですが、テンシュテット盤は数年前にリリースされたばかりなのでそう表現するしかありません。

クラウス・テンシュテット指揮バイエルン放送交響楽団 ブルックナー 交響曲第3番「ワーグナー」クラウス・テンシュテットは旧東ドイツ出身の指揮者。長く東側のみで指揮活動を行っていたため、西側の諸国にはその存在や録音が知られない状況が続いていましたが、1971年に西側に亡命。1977年にニューヨーク・フィルハーモニックへの客演で大成功を収めると、その桁外れの実力に「五十代の大型新人」と称され、ヘルベルト・フォン・カラヤンがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督の後任としてに直々に推すのではないかと言われたほどでした。特に1980年代のロンドン・フィルハーモニー管弦楽団音楽監督時代の人気はもの凄く、ロンドンっ子を大いに沸かせ、オットー・クレンペラー以来の大巨匠扱いを受けました。しかし、酒好きで、リハーサル中にも袖にウィスキーの小瓶を忍ばせ、上手くいかない箇所に来ると小瓶を取り出して一口あおるという癖のあったテンシュテットはおそらくそれも遠因となって1985年に咽頭癌が見つかり、以後は闘病のため指揮台に立つ回数が減り、「テンシュテットのいないロンドン・フィルはミック・ジャガーのいないローリング・ストーンズ」のようだとロンドンの聴衆を嘆かせました。1990年代に入ると指揮活動はほとんど行えないほど病状が悪化、1998年に亡くなっています。

死後も評価は下がるどころか、毎年のように未発表録音が発売されているという人気指揮者であり続けているという稀有な存在です。

この演奏は残響が長い場所で録音されており、それが気になる人はいるかも知れませんが、冒頭からスケール、燃焼度は他の演奏とは比べものにならないほどであり、極めてドラマティックな演奏が展開されます。
朝比奈隆のキャニオン・クラシック盤に匹敵する唯一のCDとして高く評価したい一枚です。

クラウス・テンシュテット指揮バイエルン放送交響楽団 ブルックナー 交響曲第3番「ワーグナー」(profil)タワーレコード

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2013年4月 8日 (月)

ロヴロ・フォン・マタチッチによる巨大なモーツァルト&ベートーヴェン ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮NHK交響楽団 モーツァルト 交響曲第25番&38番「プラハ」、ベートーヴェン「大フーガ」

NHK交響楽団の名誉指揮者として一時代を築いたロヴロ・フォン・マタチッチ。旧ユーゴスラビア(現在の地理でいうとクロアチア)出身という、ヨーロッパ音楽界では不利な出自でありながら一部で高い評価を受け、日本のクラシック音楽界においてはウォルフガング・サヴァリッシュと並ぶかそれ以上の貢献を行いました。

1985年に亡くなっており、N響との録音も3点ほどしか残さなかったため、実演に接したことのない人には実力を確かめる機会が少ない指揮者でしたが、21世紀に入ってからNHKが過去の演奏会の録音をキングレコードやAltusレーベルからリリースすることを許し始めたため、マタチッチの力量を確かめることが可能になりました。

ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮NHK交響楽団 モーツァルト 交響曲第25番&38番「プラハ」、ベートーヴェン「大フーガ」マタチッチのレパートリーはドイツ正統派であり、特にブルックナーには定評があって、日本でのブルックナー人気向上に多いに貢献しました。
スケールの大きな演奏をするというイメージから、マタチッチ指揮のモーツァルトというとイメージ的にピンとこなかったのですが、実際は巨大なスケールを保ったまま典雅さも兼ね備えているという独自の名演であり、小編成、中編成で演奏される愛らしいモーツァルトとは異なる偉大なモーツァルト象が浮かび上がります。

疾風怒濤の台風版ともいえる交響曲第25番小ト短調、マタチッチの風貌からは想像もつかないほど典雅な交響曲第38番「プラハ」などは唯一無二の魅力を湛えています。

得意レパートリーだったベートーヴェンも流石の名演。

昨今の演奏とは違ったタイプのモーツァルトを聴きたい方にはお薦めのCDです。

ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮NHK交響楽団 モーツァルト 交響曲第25番&第38番「プラハ」、ベートーヴェン「大フーガ」(キングレコード)タワーレコード

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2012年12月29日 (土)

第九あれこれ 2012 NHK交響楽団1970年代の第九

今や年末の風物詩となったベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」演奏会。第九がこれほど演奏されるのは日本だけと言われていますが(ドイツでは以前は年末の第九演奏の習慣があったが、現在も続いているのはライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団だけと言われている)、その年末の第九演奏会を始めたのがNHK交響楽団の前身である新交響楽団や日本交響楽団であるというのは事実として求められています。そんな「年末の第九演奏」の本家であるNHK交響楽団の1970年代の第九演奏をまとめたCDボックスが出ています。NHKによる録音、公益財団法人日本伝統文化振興財団(レーベルはAudio Meister)の制作・発売。
全て、1973年6月にオープンした東京・渋谷のNHKホールでのライブ収録です。

6人の指揮者によるN響の第九1973年6月にオープンした渋谷のNHKホール。愛宕山にあった旧NHKホールの倍以上のスケールを誇る多目的ホールで収容人数は約4000人。クラシック音楽を演奏するには大きすぎると言われ、音響に難有りとされるホールですが、N響の定期演奏会ではそれでも満員になるというのがN響の人気を示しています。

このCDにはNHKホールの杮落とし演奏となった、1973年6月6月27日のウォルフガング・サヴァリッシュ指揮の第九を始め、1973年から1979年までの年末の第九の演奏が収められています。
年末の第九の指揮者は、名誉指揮者であったロヴロ・フォン・マタチッチ(1973年、1975年。キングレコードから単売されてもいる)、同じくN響名誉指揮者のオトマール・スウィトナー(1974年、1978年)、フェルディナント・ライトナー(1976年)、ホルスト・シュタイン(N響名誉指揮者。1977年)。イルジー・ビェロフラーヴェク(1979年)の計8人、8回の第九演奏です。

この中では、サヴァリッシュ指揮の第九が最も安定感があり、バイエルン国立歌劇場の総監督という実はかなり高い立場にあった指揮者の底力が感じされます。合唱終了後のオーケストラのみによる終末の演奏のテンポが最も遅いのもサヴァリッシュです。なお、合唱はこの演奏会のみ東京藝術大学。その他は国立音楽大学が合唱を担当しています。

これに比べると、音楽の重心がぐっと低くなるのがロヴロ・フォン・マタチッチの第九。第4楽章で弦楽のみによる歓喜の歌が歌われる部分に管楽器を足して音を増補しているのも特徴です。音の重心が低いため、サヴァリッシュの第九よりもテンポが遅く聞こえますが、実は演奏時間はそれほど変わりません。1973年年末の第九では、新しいNHKホールの空間に戸惑った独唱者が、声を張り上げ、ほとんど怒鳴るように歌っているのが特徴。まだNHKホールの音響を把握し切れていなかった結果だと思われます。

テンポが遅く、唯一70分を超える演奏をしている指揮者がオトマール・スウィトナー。1978年の第九はテンポが遅いだけでなく、強弱の幅も最も大きく、スケールの大きな演奏となっています。

今では知る人も少なくなったフェルディナント・ライトナーの第九は、他の指揮者よりも管楽器の浮かび上がらせ方が上手く、聞きやすい演奏になっています。

特異な風貌が特徴であったホルスト・シュタインの音楽はその容貌とは裏腹に極めて端正。場面によってはスタイリッシュであったりもします。このBOXの中では最も聴きやすい第九でしょう。

演奏当時33歳と若かったイルジー・ビエロフラーヴェクの第九。欧米では第九は特別な音楽とされており、30代の指揮者はまず振らせて貰えない曲ですが、年末になると必ず各地で第九が演奏される日本ということで、若くして第九を指揮しています。明晰な指揮でわかりやすい一方で、音の強弱の変化は最も乏しく、第4楽章で低弦が「歓喜の歌」のメロディーを弾き出すときに、不自然に速いテンポを採るなど、若さ故の弱点が露呈されていたりもします。
この後、ビエロフラーヴェクはチェコ出身の気鋭の指揮者として活躍、1990年にはチェコ最高のオーケストラであるチェコ・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督兼首席指揮者に就任しますが、オーケストラから「実力不足」と見なされて2年で解雇。当時のチェコスロヴァキア政府がビエロフラーヴェクを続投させるよう指示するもオーケストラが拒否するという自体に発展。ビェロフラーヴェクは新たにプラハ・フィルハーモニー管弦楽団を組織。チェコ・フィルはビエロフラーヴェクの前任者であるヴァーツラフ・ノイマンを指揮者として招きますが、ノイマンの死後はチェコ出身の有力指揮者がいなくなり、ドイツ人であるゲルト・アルブレヒトを迎えるもかつての敵国の指揮者を招いたということで混乱が起きたりしています。
ビエロフラーヴェクはその後、路上強盗に遭ったのがニュースになったりしましたが、イギリスのBBC交響楽団の首席指揮者として地味に活躍。今年、再びチェコ・フィルハーモニーの首席指揮者に返り咲いています。本CDボックスの指揮者の中では唯一の現役の指揮者です。

1970年代のライヴ録音ですが、Xrcd24による復刻で音質に不満はありません。
好事家向きではありますが、6人の指揮者による8様のN響の第九として楽しめるCDボックスです。

なお、限定発売であり、在庫には限りがありますので購入したい方はお早めに。

6人の指揮者による8種のN響の第九(HMV) icon

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2012年10月29日 (月)

サー・チャールズ・マッケラスの遺言 チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」

2010年に亡くなったオーストラリア出身の指揮者、サー・チャールズ・マッケラスの最晩年の録音を紹介しようと思います。フィルハーモニア管弦楽団を指揮した、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」とメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」序曲。いずれもライブ録音です。signum CLASSICSレーベル。

サー・チャールズ・マッケラス指揮フィルハーモニア管弦楽団 チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」アメリカ生まれのオーストラリア育ち、南半球出身の巨匠指揮者サー・チャールズ・マッケラス。シドニー交響楽団のオーボエ奏者を経て、英国とチェコスロヴァキアに留学。チェコのモラヴィアの作曲家であるヤナーチェクの作品とめぐり逢い、ヤナーチェク演奏、研究の第一人者となります。

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのヤナーチェク録音が有名ですが、その他にも様々な演奏を世に送り出してきました。ただ玄人受けするタイプだっただけに日本での知名度は今一つ。ヨーロッパでは巨匠扱いでありながら、日本では「名前ぐらいは知っている」というクラシックファンが多かったような気がします。

サー(イギリスのナイトの称号「卿」)の称号を得ていることからか、どちらかといえば穏健派のイメージをもたれがちだったマッケラス。しかし、実際は、ベートーヴェンのメトロノーム指示に忠実な演奏を行ったり、通奏低音としてチェンバロを用いたモーツァルト交響曲全集を完成させたり、スコットランド室内楽団を指揮したすっきりとしたブラームスを演奏したり、ピリオド奏法を巧みに取り入れたベートーヴェン交響曲全集を作成したりと、進取の精神に富んだ名指揮者でした。

「悲愴」交響曲も「真夏の夜の夢」序曲も、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでのライブ録音。ただ聴衆の拍手が入っていなければライブ録音であることに気付かないほどの完成度の高さです。

交響曲第6番「悲愴」では、低音を強調して不吉さを増したり、第2楽章を速めのテンポで演奏したりしてわざと不安定な印象を聴く者に与えたりという工夫が随所に聴かれます。

「真夏の夜の夢」序曲も華やかなだけではない味わい深い演奏。

最後の最後まで革新的精神を忘れなかったマッケラスの音楽家魂に触れることの出来る演奏です。

サー・チャールズ・マッケラス指揮フィルハーモニア管弦楽団 チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」(signum CLASSICS)タワーレコード

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2011年12月31日 (土)

第九あれこれ 2011 朝比奈隆 N響との唯一の第九

朝比奈隆指揮NHK交響楽団、東京藝術大学合唱団ほかによるベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」を紹介します。NHK交響楽団第990回定期演奏会のライブ収録。フォンテック・レーベル。

日本におけるベートーヴェン演奏に第一人者といわれた朝比奈隆(1908-2001)。朝比奈は大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽総監督でしたが、NHK交響楽団の音を「日本一の音色」と評価し、「NHK交響楽団は日本一のオーケストラなのだから、もっとしっかりして貰わないと困る」と苦言を呈したこともありました。

年末になると日本では全国各地で第九が演奏されますが、この嚆矢となったのもNHK交響楽団で、ローゼンシュトックが「ライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団が年末に第九を演奏する」と紹介し、戦後に尾高尚忠の指揮で年末に第九を演奏したところ、これが大好評で、N響(当時の名前は日本交響楽団)は毎年、年末に第九を演奏するようになり、他の日本のオーケストラもこれを真似て、「日本の年末といえば第九」が定番となりました。今や「年末の第九」は日本の風物詩です。

そのため、NHK交響楽団も第九の演奏には誇りがあり、良い指揮者でない限り第九を振らせることはありません。年末の第九は外国人著名指揮者の招聘が続いています。

そんな中で、N響の第九を振った日本人指揮者が朝比奈隆でした。

朝比奈隆指揮NHK交響楽団 ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」 この第九は実は年末の第九ではありません。演奏が行われたのは1986年4月25日。しかも当初の指揮者は朝比奈ではなく、ギュンター・ヴァントの予定でした。ただ、ヴァントは厳しい練習を課すことで知られた指揮者でしたので、結局この時はN響側の提示した条件にヴァントが納得せず、キャンセルとなりました。そこで代わりに指揮台に立つことになったのが朝比奈隆でした。年末以外の第九となると、年末の第九以上に指揮者は厳選されます。その中で朝比奈が選ばれたのです。

朝比奈がN響と第九の演奏を行ったのはこの時だけですので、それだけでも貴重な記録です。

演奏ですが、朝比奈らしい、巨大なスケールを誇ります。客演でもあり、また相手がNHK交響楽団ですので、手兵の大阪フィルや、東京における拠点オーケストラだった新日本フィルハーモニー交響楽団を指揮した時ほどには朝比奈は自由には振る舞っていませんが、日本で一番ドイツ的な音を出すNHK交響楽団を指揮しただけあって、重厚で渋い演奏を味わうことが出来ます。
日本音楽史上に残るベートーヴェン指揮者の朝比奈隆と、朝比奈が「日本一」と認めたNHK交響楽団による第九。ベートーヴェン好きなら一度は聴いておきたい演奏です。

朝比奈隆指揮NHK交響楽団 ベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」(フォンテック)タワーレコード

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2011年12月30日 (金)

没後20年 山田一雄指揮札幌交響楽団 「ベートーヴェン交響曲全集」

情熱的な指揮で人気のあった山田一雄(愛称は「ヤマカズ」。1912-1991)。今年はヤマカズさんの没後20年に当たります。
ベートーヴェンを得意としたヤマカズさん。そんなヤマカズさんが最晩年に札幌交響楽団とベートーヴェン交響曲チクルスを行い、ライブ録音が行われて、「ベートーヴェン交響曲全集」となりました。なお、交響曲第1番だけは山田一雄急死のため、矢崎彦太郎の指揮代行で演奏が行われ、録音されています。

山田一雄指揮札幌交響楽団 「ベートーヴェン交響曲全集」

1989年から1991年にかけて、札幌の北海道厚生年金会館大ホールで行われたライブ収録。

20年前の札幌交響楽団は今よりもアンサンブルが粗めで、ヤマカズさんは「振ると面食らう」と言われたほど棒がわかりにくい指揮者だったということもあり、ライブ特有の傷もあります。しかし、それを補って余りある快演揃いです。札幌交響楽団の演奏も鑑賞に十分堪える水準で、20世紀の日本を代表する指揮者の一人であるヤマカズさんのベートーヴェンを堪能出来ます。

なお、録音は日本コロムビアによって行われましたが、長く廃盤になっており、タワーレコードが日本コロムビアの協力を得て、復刻しています。ですのでタワーレコードのみでの限定販売です。

山田一雄指揮札幌交響楽団 「ベートーヴェン交響曲全集」(タワーレコード)

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2011年12月18日 (日)

没後10年 朝比奈隆指揮NHK交響楽団 ブルックナー 交響曲第8番

今年が没後10年にあたる朝比奈隆(1908-2001)の代表的録音の一つ、NHKホールでライブ録音された、NHK交響楽団とのブルックナー交響曲第8番のCDを紹介します。フォンテック。

実は私はこの演奏を生で聴いています。1997年5月6日。3階席の上の方でしたが、NHK交響楽団がこれまで聴いたことがないような温かい音色を奏でたのが印象的でした。

朝比奈隆指揮NHK交響楽団 ブルックナー 交響曲第8番 録音には残念ながら、朝比奈がN響から引き出した温かな音色は収録されていません。あれはマイクに入る類のものではないからです。

朝比奈御大は演奏終了後に、N響の団員からメッセージカードと花束を受け取ったそうです。
テレビで、「N響のメンバーというのは意地が悪いので、また何か言ってきたかと思ったらプレゼントだった」と朝比奈が語っていたのが印象的でした。

温かな音こそ入っていませんが、立派な造形と密度の濃い音楽性、高齢の指揮者とは思えないほどの若々しい歌で聴かせてくれます。
生涯青年であり続けた、朝比奈隆の貴重な記録です。

朝比奈隆指揮NHK交響楽団 ブルックナー 交響曲第8番(フォンテック)タワーレコード

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2011年12月11日 (日)

没後15年 岩城宏之指揮 「弦楽のためのレクイエム 岩城宏之」

2006年に惜しまれつつも亡くなった、名指揮者の岩城宏之(1932-2006)。その追悼盤を紹介します。亡くなった直後にリリースされていますが、死後5年ということでの紹介です。

「弦楽のためのレクイエム 
岩城宏之」

1961年、NHK交響楽団初のスタジオレコーディングが文京公会堂で行われましたが、その時の指揮者が岩城宏之であり、大部分はこのN響初レコーディングから取られています。
曲目は表題作となった、武満徹の「弦楽のためのレクイエム」、外山雄三の「ラプソディ(管弦楽のためのラプソディ)、外山雄三の「子守唄」、小山清茂の「管弦楽のための木挽歌」、尾高尚忠のフルート協奏曲(フルート独奏:吉田雅夫)。
そして、岩城が東京混声合唱団を指揮して録音したメシアンの「ばら色の扉~5つのルシャン」と同じくメシアンの「天国の色彩」(演奏担当はNHK交響楽団と新日本フィルハーモニー交響楽団の混成メンバーからなる、東京コンサーツ。ピアノは岩城宏之夫人である木村かをり)が収められています。メシアンの「天国の色彩」は1973年の録音。

1961年の録音ですが、NHK交響楽団はなかなかの健闘振りで公演です。
メシアンの「天国の色彩」入ったアルバムは日本では不評で、出て2年も経たずに廃盤になったそうですが、メシアン本人に認められて、フランスで発売され、なんと名誉あるACCディスク大賞を受賞。日本盤としては初の受賞でした。当時の日本とヨーロッパのクラシックシーンに開きがあったことがわかる重要な証言者となった録音でもあります。

「弦楽のためのレクイエム 岩城宏之」(キングレコード)タワーレコード

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2011年9月18日 (日)

名匠ヘルベルト・ブロムシュテットの超絶的美演 モーツァルト交響曲第35番「ハフナー」&ドヴォルザーク交響曲第8番

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるモーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」とドヴォルザークの交響曲第8番のCDを紹介します。Helicon Classics。2005年11月3日から5日にかけて、イスラエル・フィルの本拠地である、テルアビブのマン・オーディトリアムでライヴ収録されたもの。

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団 モーツァルト交響曲第35番「ハフナー」&ドヴォルザーク交響曲第8番

NHK交響楽団現役唯一の名誉指揮者としておなじみのヘルベルト・ブロムシュテット。しかし、日本では良くあることですが、よく日本のオーケストラを振りに来る海外の指揮者は過小評価される傾向があります。ブロムシュテットもその一人。しかしこのCDを聴けば、ブロムシュテットがいかに卓越した指揮者であるかがわかるでしょう。

イスラエル・フィルは弦楽の美しさで知られていますが、ブロムシュテットはそんなイスラエル・フィルの特性を十分に引き出し、「絹のような」という常套句が全く大袈裟でないほどの美音を弦から引き出します。弦だけでなく管もまたまろやかで夢見るような美しさ。

モーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」は旧スタイルによる演奏ですが、天国的な演奏です。

ブロムシュテットは、シュターツカペレ・ドレスデンを指揮した、ドヴォルザークの交響曲第8番で録音デビューしており、情熱の迸りが見えるかのような個性的な演奏ですが、今回の、イスラエル・フィルを指揮したドヴォルザークの交響曲第8番は、また別の意味で個性的な演奏。第1楽章冒頭から、曲の持つスラヴ的な渋さよりも、音色の美しさを強調した純音楽的解釈。音色に濁りが全くありません。第3楽章がこれほど清澄な美しさでもって歌われたのは初めてなのではないでしょうか。情熱と美音を共存させた第4楽章の至芸も驚異的です。

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団 モーツァルト 交響曲第35番「ハフナー」&ドヴォルザーク 交響曲第8番(タワーレコード)

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