カテゴリー「韓国映画」の19件の記事

2020年12月 1日 (火)

これまでに観た映画より(229) 「詩人の恋」

2020年11月24日 京都シネマにて

京都シネマで、韓国映画「詩人の恋」を観る。2017年の制作。第18回韓国女性映画祭脚本賞、第18回釜山映画批評家協会賞脚本賞などを受賞している。監督・脚本:キム・ヤンヒ(女性映画祭脚本賞を受賞していることからも分かる通り女性である)。出演:ヤン・イクチュン、チョン・ヘジン、チョン・ガラムほか。

「韓国のハワイ」というベタなキャッチフレーズでもお馴染みのリゾート地、済州島を舞台とした作品であるが、リゾート的な場面はほとんど出てこない。

済州島で生まれ育った詩人のヒョン・テッキ(ヤン・イクチュン)は、6年ほど前には文学賞などを受賞したこともある詩人だが、そもそも詩は売れないものである上に最近はスランプ気味。小学校の放課後の作文教室の講師なども始めたが稼ぎには乏しく、月収は30万ウォン(日本円だと3万円に届かない。ちなみに韓国は経済発展が堅調で、物価自体はもう日本と余り変わらない)ほどで、妻のガンスン(チョン・ヘジン)の収入に頼り切りの生活である。趣味はサッカーのテレビゲームのようで運動不足により肥満気味。詩を書くこと以外は「冴えない」感じの中年男性である。幼なじみで漁師のボンヨン(キム・ソンギュン)によると、高校の頃から詩にしか興味のない変わった男だったらしい。済州島の詩のサークルに参加しており、自作を朗読するシーンがある。耽美的な作風を持つが、「美しいだけが詩ではない」と批判されて不貞腐れながら帰路に就くテッキ。
妻のガンスンは下ネタ好きで、詩人の妻らしくない開けっぴろげな性格だが、子どもを望むようになっている。結婚した当初は二人でもいいかと思っていたが、年齢的に最後のチャンスということで夫にせがむ。テッキは余り積極的にはなれない。

夫婦で診察を受けたところ、ガンスンは年齢に比べると胎内も綺麗で問題はなさそうとのことだったが、テッキは乏精子症と診断される。健康な男性に比べて精子の数が少なく、女医によると少ない精子も「怠け者」だそうである。女医は、テッキの職業が詩人と知って、「じゃあストレスの少ない仕事ですね」と発言するなど、いちいちテッキの気に触るようなことを言う。

テッキの家の近くにドーナツ屋がオープンする。テッキは、店先で店員の美少年、セユン(チョン・ガラム)を見かけ、不思議な気持ちにとらわれる。

セユンのことが気になり始め、「自分は同性愛者だったのか?」と驚くことになるテッキ。

同性愛っぽくなるところもないではないのだが、「おっさんずラブ」だとかBLだとかとは違った路線の映画である。テッキもセユンも両親からは余り愛されていないという共通点がある。セユンの父親は病気で寝たきりであり、母親は金にがめつく、情が深いタイプでもない。セユンは高校を中退してドーナツ屋でアルバイトをし、夜は悪友達と飲み歩くという生活を続けていたが、そのことを母親からなじられている。
テッキは父親を早くに亡くしている。父親との関係についてはよくわからないが、母親とは余り上手くいっていないようである。
そんな肩身が狭い、相似形の二人の物語である。

テッキはセユンとの新しい生活を試みるが、世の中の常識に負け、「あるべき家庭人像」の前に屈することになる。詩人としての敗北。ソウルならともかくとして、ここは観光が売りの、革新性とは無縁の島、済州島である。上手くいくわけはない。

数年後、テッキは名誉ある詩人賞を受賞。子どもも産まれて、子どもの1歳の誕生日を民族衣装を着けた一族全員が祝う。そんな伝統的な幸福の中にあって、テッキは破れなかった常識と築けなかった「新しい生き方」にふと涙することになる。

正直、余り良い映画だとは思わなかったが、「ありきたりの生き方」の桎梏から逃れようとして叶わなかった詩人の喪失感を描いた映画として、文学的側面からは一定の評価が出来るように思う。映画でなく小説だったら、もっと良いものになったのではないだろうか。

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2020年10月22日 (木)

これまでに観た映画より(220) 「愛と、死を見つめて」

2006年4月8日

DVDで韓国映画「愛と、死を見つめて」を観る。アン・ジェウク、イ・ウンジュ主演。ほぼ同じタイトルの書簡集が、かつて日本でベストセラーになり、それを基にしたドラマが最近リメイクされたが(「愛と死をみつめて」。草彅剛、広末涼子主演)関係は全くない。

映画のメイクアップアーチストをしているヨンジェ(イ・ウンジュ)は27歳の若さで胃ガンを患い、常に死を意識して生きている(イ・ウンジュにはこういう不幸な役しか来ないのだろうか?)。ある日、助監督をいびる監督の態度に激怒して暴言を吐いたヨンジェは助監督ともどもクビになってしまう。すぐには職が見つからず、仕方なくホステスを始めたヨンジェは客としてきていた医師のオソン(アン・ジェウク)に自分が胃ガンであることを見破られ……。

ある日本映画のリメイクなのだが、実は契約の手違いで日本側の許可を取らないまま映画は完成してしまった。そのためか日本未公開映画となっている。

基本的には悲劇なのだが、笑えるシーンもあり、ヨンジェの死の場面を描かないことで、後味爽やかな映画になっている。くさいセリフも笑いとして生きており、この手の映画にありがちなお涙頂戴路線とは一線を画している。優れた映画ではないかも知れないが、一見の価値あり。

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2020年9月 5日 (土)

これまでに観た映画より(203) シム・ウナ主演「インタビュー」

2005年11月16日

韓国映画「インタビュー」を観る。主演は、元韓国のトップ女優シム・ウナ。そして「イルマーレ」、「純愛譜」のイ・ジョンジェ。

映画監督のチェ・ウンスク(イ・ジョンジェ)は、様々な人々の恋愛に関するインタビューをまとめた映画を作ろうとしている。ある日、女優のクォン・ミンジュン(クォン・ミンジュン。本人役での出演)へのインタビューを申し込んだADが、たまたま一緒にいたミンジュンの友人イ・ヨンヒ(シム・ウナ)のインタビューも一緒に撮ってくる。美人だが地味で影のあるヨンヒにウンスクは一目で惹かれ……。

事前にパソコン通信などで出演者を募り、その人自身の恋愛話の数々を収録。シム・ウナ以外の人々へのインタビューはノンフィクションである。

ただ、知らない人の恋愛話というのは退屈なもので、本人達にとっては素敵な話なのかも知れないが、客観的に見るとそうでもない。単なるのろけや自慢話が続く。

そこへ、イ・ヨンヒへのインタビューという形でフィクションが紛れ込んでくるという仕掛けである。

ヨンヒの話はほとんどが嘘であり、時間が経つに連れて真相が明らかになっていくという展開。ヨンヒの恋愛話も特に目新しいものではないが、ノンフィクション場面の出演者達が得意になって答えているのに比べると、好感が持てる。それがこの映画の狙いなのでそれは当然である。

バレリーナを夢見ていたヨンヒ。しかし恋人に死なれ、魂の抜け殻のようになっている。そんなヨンヒにウンスクは急速に惹かれていくのだが、誰の目にもウンスクがヨンヒに恋をしたのは明らかであり、分かり易すぎるのは難点かも知れない。もっと葛藤のようなものも欲しい気がする。

ウンスクがパリに留学していた時期に撮った映画に、フランス人女性が死んだ恋人の墓の前で苦悩を一人語りする場面が登場する。かなり嘘くさいシーンだが、何と全く同じセリフをヨンヒが言う場面があり、こちらは聴き手としてカメラを持ったウンスクが目の前にいるので一人で悲劇のヒロインを気取っているようには見えず、こちらの胸に迫ってくるものがある。同じセリフでも場面設定によって真実味が異なるということを示したかったのであり、ある程度成功しているように見える。

場面の重複や前後する時間などの技法も用いられているが、成功と失敗が半々といったところだ。

舞踏を学んでいたシム・ウナのダンスシーンや映像や風景の美しさなど見所は多い。ただ心理的な動きはあってもそれがダイナミックなドラマへと発展することはないので物足りなく感じる人も多いような気がする。

現時点でシム・ウナ最後の映画出演作であり、彼女が好きな人は必見。芸術映画に興味がある人も観ておいた方がいいだろう。ただストーリー性のあるドラマティックな恋愛ものが好きな人にはあまりお薦め出来ない。

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2020年7月14日 (火)

これまでに観た映画より(192) 「子猫をお願い」

2005年7月5日

DVDで韓国映画「子猫をお願い」を観る。監督は女流監督:チョン・ジェウン。出演は、ペ・ドゥナ、イ・ヨウォン、オク・チヨン、イ・ウンシル、イ・ウンジュ(2005年に自殺した有名女優と同じ名前であるが別人である。イ・ウンジュとイ・ウンシルは実の双子)、オ・テギョンほか。

高校を出た20歳前後の女の子5人の青春ストーリー。ただし、かなり暗めである。

仁川の商業高校を出たものの、韓国の厳しい学歴社会に阻まれ、5人のうち4人は仕事に就くことができなかった。双子の姉妹、オンジョ(イ・ウンジュ)とピリュ(イ・ウンシル)はマーケットなどをやってそれなりに楽しくやっているようだが、テヒ(ペ・ドゥナ)は実家の料理店で働き、脳性麻痺の青年の作る詩を代筆するボランティアをしている。ジヨンは家が貧しいためデザインの勉強をすべく海外留学を希望するも叶わず、両親もいないため就職も出来ないでいる。

一人、ソウルの大手の証券会社に就職し、若いということもあってチヤホヤされていたへジュ(イ・ヨウォン)も大卒の優秀な人材が入ってくると次第に男性社員も遠ざかっていき、尊敬する女性上司から「学位がないと一生雑用係よ」と言われ、社会の苦さを味わう。

蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督作品並みに苦い味わいを持つ 画なのだが、女性が監督したということもあってか、まだ何とか救いを感じることが出来る。

ラストは夢へ向かっての旅立ちなのか、それともさらなる転落が待っているのかわからないが、とにかく一歩を踏み出したという明るさは感じることが出来る。テヒを演じるペ・ドゥナは日本人的な顔立ちで、吉本興業の武内由紀子にどことなく似ている。

携帯メールやタイプライターなどの文字をスクリーン上に堂々と映し出す演出が面白い。また韓国映画に多いことだが、この作品でも省略が多く、場面が飛ぶ箇所がある。

韓国の若い世代の現実を知る上で興味深い作品である。映画としてのクオリティが十分でないような場面もあるが、ほろ苦い青春映画として一見の価値がある。

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2020年7月 8日 (水)

これまでに観た映画より(187) 「ブラザーフッド」

2005年6月20日

DVDで「ブラザーフッド」を観る。朝鮮戦争を舞台とした韓国映画。チャン・ドンゴン、ウォンビン主演。イ・ウンジュがチャン・ドンゴン演じるジンテの恋人ヨンシン役で出ている。

とにかく戦闘シーンがもの凄い迫力だ。人海戦術にCG、特撮、スタントを駆使して阿鼻叫喚の世界を現出してみせる。

同じ民族でありながら、時には同じ韓国人でありながら疑い合い、殺し合わなければならない人間の愚かしさを、これでもかというほどに熱いタッチで描く。チャン・ドンゴン演じるジンテとウォンビン演じるジンソクの兄弟愛の強さ。韓国人の血に対する思いに心打たれる。悔しいが、こういったタイプの映画は日本人には撮ることは出来ないだろう。韓国人を語る時に必ず出てくる「恨(ハン)」の成せる技だ。

イ・ウンジュは共産主義者との関係を疑われ、味方であるはずの韓国人の手によって無惨に撃ち殺されてしまう役。彼女はこうした不幸な役が多い。幸せな役を演じる彼女をもっと観てみたかった。

映画の中でも語られるように、人間を不幸にしても構わないほど思想とは大切なものなのか、と深く考えさせられる。

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2020年5月 4日 (月)

これまでに観た映画より(170) 「カル Tell me something」

※この記事は2004年9月17日に書かれたものです。

DVDで韓国映画「カル Tell me something」を観る。チャン・ユニョン監督作品。東京でサラリーマンをしていた頃に買ったもの。

謎が謎を呼ぶ迷宮映画である。気絶した人間を生きたまま切り刻んで血が噴き出したり、ゴミ袋から生首が飛び出したりするシーンがあるので心臓の悪い方は注意されたし。

主演は韓国のトップスター、ハン・ソッキュ(韓石圭)とシム・ウナ(沈銀河)。

チョ刑事を演じるハン・ソッキュが格好いい。そしてシム・ウナも美しい。こういう女性が猟奇的な部分を見せると怖い。幽霊役と殺人鬼役は美女に限る。もっとも、この映画ではシム・ウナ演じるチェ・スヨンが異常者であることは、仄めかされるだけで直接的には描かれていない。

次から次へとバラバラ死体が発見される。怪しいと思われた男もバラバラ死体となって見つかる。皆それぞれ体の一部が無くなっている。

最後に首のない縫合死体が見つかる。首はおそらく、チョ刑事のものを載せる予定だった。少なくともチョ刑事はそう思っていることがわかる。

韓国で公開時、観客はこの映画の主犯は誰で何を言いたかったのかを皆で推理しあい、何度も映画館に足を運んだそうで、興行的には大成功した。映像ははスタイリッシュであり、またアジア映画の弱点として音楽や音の使い方が下手というの点が上げられたのだが、この映画は本当に音と音楽の使い方が巧みである。特にエンヤのヴォカリーズ曲「Boadicea」の使い方は絶妙だ。韓国でよく起こる贈収賄事件を始め、警察の不祥事、盗聴・盗撮問題、児童虐待などにも触れている。

本当に「Tell me something」で何が何だかわからない部分があるが、わけのわからない怖さがあるのも確かである。

チョ刑事を車で轢こうとしたのはおそらくスヨンであろう。影から見てもこれはほぼ間違いないと思われる。

ただ写真に何が写っていたのか、子供の死はどういう関係があるのかないのかはっきりしない。

スヨンが父親から虐待されたことでおかしくなったことや、同性愛者であることなどは、はっきり示されてはいないが何となくわかる。

死体を切り刻んでいたスンミンは最後は全ての罪を自分で被ろうとしたのだろうか? スヨンを殺して自分も死のうと。

黒沢清の映画にも通じるところがあるのでネオクロサワファンは必見である。

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2019年12月16日 (月)

これまでに観た映画より(148) 「完璧な他人」

2019年12月11日 京都シネマにて

京都シネマで、韓国映画「完璧な他人」を観る。イタリア映画「おとなの事情」のリメイク。監督:イ・ジェギュ、出演:ユ・ヘジン、ヨム・ジョンア、チョ・ジヌン、キム・ジス、イ・ソジン、ソン・ハユン、ユン・ギョンホ。

幼馴染み4人とその妻が、新居完成祝いに集まり、自分達の間に秘密はないとして、互いのスマホに掛かってくる電話やメールを公開する(電話はスピーカーモード使用、メールは読み上げソフトを使う)という、誰がどう考えてもやらない方がいい「ゲーム」を始めてしまったがために起こるシチュエーションコメディ。喜劇ではあるが「俯瞰で見ると」という喜劇で、かなりビターな味わいのある大人のための作品である。そして、出演者がやらずもがなのことをするたびに客席から「あー!」といったような叫びが起こる。このスクリーンと客席との絶妙の一体感。映画館で観るべき作品といえる。

登場する男性達は全員同級生の45歳という設定であり、今の私と丁度同い年だ(韓国は数え年なので厳密に言うと少し違う)。全員がミッドライフクライシスを抱えており、家庭、男女間、仕事などでそれぞれが問題に直面している。

ソクホ(チョ・ジヌン)とイェジン(キム・ジス)は医師同士の夫婦である。ソクホは「韓国の東大」として日本でも知られるソウル国立大学校医科大学出身の美容外科医、イェジンは精神科医である。二人には二十歳になる娘がいるが、イェジンは二十歳はまだ子どもだとして娘が男性と付き合うことに猛反対している。ちなみにソクホもイェジンとの結婚をイェジンの父親に猛反対されたらしく、職場に乗り込んでの嫌がらせをされたりもした過去があったようだ。

テス(ユ・ヘジン)もソウル国立大学校のおそらく法科大学出身で弁護士。亭主関白である。二人の高校時代の恩師からの電話も入るのだが、「ソウル国立大学校に入るという快挙」というセリフがあるため、二人の出身大学がわかる。テスの妻・スヒョン(ヨム・ジョンア)は専業主婦だが、文学講座に通っており、韓国の有名詩人の詩をそらんじている。

ジュンモ(イ・ソジン)はレストラン経営者だが、これまで様々な事業で失敗を重ねており、学歴面で皆に及ばないことでコンプレックスを抱いていることを告白するセリフがある。また、カンボジアでタピオカのビジネスを始める計画を語って、皆から一笑に付される場面もある。かなりのプレイボーイで女性に不自由したことはない。妻のセギョン(ソン・ハユン)は獣医だが、これまたいかにも男にもてそうなタイプであり、さりげない嫌みで場の空気を掻き乱すのを得意としている。

校長の息子で、教員を辞めたばかりのヨンベ(ユン・ギョンホ)は、バツイチであり、新しい恋人を連れてくると言ったが、風邪で寝ているということで一人で来る。いかにもわけありそうで、実際のところ多くの人が予想するであろう通りの結果なのだが、とある事情でテスとスマホを交換することになり、そのことがあらぬ疑いを招く結果となってしまう。
なお、ヨンベが新居完成祝いとして大量のトイレットパーパーを持ってくるシーンがあるが、韓国ではトイレットパーパーを送ることは「末永く幸せが続くことを祈る」という意味があるそうで、新居完成や引っ越し祝いの定番だそうである。日本人が見ると奇異に感じるが、ヨンベがおかしなことをしているというわけではない。

男性と女性とでは、そもそも脳の仕組みが違うというセリフがあり、それぞれがスマートフォンに例えられるのだが、男性はAndroidで、「安くて効率が良くてアップデートしないと使い物にならない」、女性はiPhoneで、「美しくて機能的だが高くて互換性がなく、生意気」らしい。ちなみスマホの世界シェアトップはサムスンで、当然ながら韓国ではAndroidが主流である。

ということで、ソクホのスマホには娘から「彼氏と一夜を共にしたい」という内容の電話が入り、スヒョンのスマホには文学講座の仲間から電話が入るのだが、影でイェジンに対する悪口雑言を並べていることがバレてしまう。イェジンには実父からの電話があり、イェジンの手術を夫のソクホに任せることはまかり成らんというお達しがある。イェジンの父親が今もソクホのことを馬鹿にしていることもわかる。
セギョンには元彼からの電話がある。ジュンモは「俺は元カノの電話には出ない」と怒るが、元彼が愛犬の対処法を頼んでいるということで、スピーカーモードでの施術が行われる。だが、下のことであるため、妙な雰囲気が漂ってしまう。

ソクホの投資へ失敗、ジュンモの部下との浮気(更に他の女性とも浮気をしている)、ヨンベが教師を辞めたわけなど、人生の真ん中に差し掛かった男と女の「よくあるが深刻な危機」が描かれており、秘密にして誰にも明かしていない部分ということでよそ目には「完璧な他人」であるが、内情は誰もが経験する可能性のあることであり、特に私は彼らと同世代ということで、「あり得たかも知れない自分」を彼らの中に見出すことになった。そう感じる人は私一人だけではないはずで、彼らは全員「あなたに似た人」でもある。
暴露だけではなく、勘違いが勘違いを生むというシチュエーションコメディの王道を行く展開もあり、「面白ろうてやがて悲しき」悲喜劇となっている。

国家戦略として映画に国を挙げて取り組んでいる韓国。この映画でも思い切ったアングルを用いたり、他のものに託して心理描写を行うなど意欲的な仕上がりとなっている。

 

2005年に自殺してしまった女優、イ・ウンジュの最後の連続ドラマとなった「火の鳥」(2004)で相手役を務めていたイ・ソジン。最初はイ・ソジンじゃ笑っちゃうということだったのかイ・スジン表記だったがまあそれはいい。アメリカで演技を学んだ本格派で(当初は映画監督志望だったが両親に反対されたため、俳優の道に進んでいる)インテリを演じることが多かったのだが、この映画では女の敵ともいうべき遊び人役であり、ものにしている。

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2018年5月 2日 (水)

これまでに観た映画より(103) 「親切なクムジャさん」

DVDで韓国映画「親切なクムジャさん」を観る。「宮廷女官チャングムの誓い」のイ・ヨンエが悪女役に挑んだ復讐劇。パク・チャヌク監督作品。

強烈な残虐シーンがあるなど、人間の暗部に切り込む劇である。韓国ではR18、日本ではR15の指定を受けたそうだが、うなずける。

演出面ではかなり意欲的であり、実験的要素も多い。

韓国映画はアメリカと同じスターシステム。スターに注目が集まるが、その分、芸能人は叩かれやすくもある。私はイ・ヨンエの著書を読んだことがあるけれども、彼女もこれまで善人役やお嬢さん役が多く、新しい役に挑む度に、「こんな役がイ・ヨンエに出来るのか?」などと書かれるという。それだけにイ・クムジャ役は、女優としての幅を広げるための挑戦以上の意味を持っていたと思われるが、かなり難しいと思われる表情作りにも成功しており、チャレンジは成功とみていいだろう。

好き嫌いのはっきりと分かれる映画だと思われ、嫌いな人は徹底的に嫌うと思うが、表現をしている人間や表現を志している人間は観ておいて損はしない映画だと思う。内容も表現方法も、頭を内側から叩かれるような衝撃力を持っている。

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2014年1月16日 (木)

これまでに観た映画より(61) 「真実ゲーム」

DVDで韓国映画「真実ゲーム」を観る。1995年に韓国のヒップホップデュオ“deux(デュース。フランス語のdeuxを英語読みに変えたもの)”のメンバーで知日家でもあったキム・ソンジェが急死し、恋人を名乗る女性が殺人罪で逮捕されたという事件をモチーフにした映画である。キム・ソンジェ事件の他にやはり同時期に韓国音楽界で問題になった盗作騒動(当時、韓国においては日本の音楽を放送で流したり、日本の歌手のCDを売ったりすることは禁じられていた。しかし音楽業界人の間ではジャパニーズポップは比較的熱心に聴かれていた。そして一般人が日本の歌を聴くことが出来ないことを悪用して日本の楽曲を自作として発表するミュージシャンが相次いで登場。しかし悪事は露見するもので、社会問題になっていた)も取り入れ、一人の女子高生がなぜ人気歌手を殺害したのか、その謎に検事が迫るというミステリー映画である。
ある雨の日、一人の女子高生が「人気歌手のチョ・ハロを殺害した」と警察に自白の電話をかけてくる。その女子高生ハン・タヘ(ハ・ジウォン)はチョ・ハロにレイプされたため、かってなって殺したと供述。しかし検事のチョ・ジェヒョン(アン・ソンギ)は、事件の起こった8時間後にタヘが警察による身体検査を受けた際、彼女の体内からチョ・ハロの精液は検出されなかったことから、タヘの供述は嘘なのではないかという疑いを強めていく。

ハ・ジウォン、アン・ソンギという韓国を代表する俳優のぶつかり合いが見物である。観る前はそれほど期待していなかったのだが面白かった。筋書き自体は目新しいものではないし、ラストも人によっては無理を感じるかも知れない(それゆえにチョ検事が真実を見抜けなかったということでもあるのだが)。だが俳優の演技も良く、演出も飽きさせない。

    1979年生まれのハ・ジウォンは、一時、イ・ウンジュ(1980-2005)のライバルと目されていた女優。ともに黒髪が印象的な美女であり、デビューも同時期。そして同じ大学の同じ学科(檀国大学芸術造形学部映画・演劇学科)の先輩後輩でもあった。ハ・ジウォンはデビュー以降、出演作にも恵まれ、現在では韓国を代表する女優の一人である。一方、イ・ウンジュは出演作に恵まれていたとはいえず、若くして不幸な最期を遂げている。
ハ・ジウォンが19歳だった頃に撮られた作品だが、この時期すでにハ・ジウォンは確かな才能を発揮している。相手役のアン・ソンギは韓国を代表する映画スターだが、ハ・ジウォンは一歩も引けを取っていない。なお、ハ・ジウォンはこの映画で韓国の権威ある新人女優賞を受賞しているが、実はその年の新人女優賞受賞の最有力候補といわれていたのが「虹鱒」に出演したイ・ウンジュであった。イ・ウンジュ本人も周囲もウンジュの受賞を確信していたのだが、発表式で呼ばれたのはハ・ジウォンという名前。
      悔しくて一晩中泣き明かしたと、イ・ウンジュはのちに告白している(ちなみにイ・ウンジュは翌年も同じ新人女優賞候補に挙げられ、この時は見事栄冠を手にしている)。

ミスター韓国映画とも呼ばれるアン・ソンギの迫力ある演技も素晴らしい。ところでこのアン・ソンギ、目元が役所広司そっくりに見える時がある。そういえばアン・ソンギと役所広司は映画で共演していたんだっけ。

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2011年2月22日 (火)

韓国映画「スカーレットレター」オリジナル・サウンドトラック

イ・ウンジュの遺作となった韓国映画「スカーレットレター」のオリジナル・サウンドトラック(EMI)を紹介しようと思います。なお、この「スカーレットレター」、映画としては出来が余り芳しくなく、DVDもオリジナル・サウンドトラックも廃盤となっています。手に入れようと思ったら、今のところ中古CDショップを当たるしか手はないようです。

韓国映画「スカーレットレター」オリジナル・サウンドトラック

イ・ウンジュの「Only When I Sleep」(オリジナルはアイルランドの兄妹バンド、ザ・コアーズによるもの)は追悼アルバム「ONLY ONE」にも収録されていますが、そちらは音声を復刻して男性シンガー、キム・テフンとのデュエット版に編集されたものと、ジャズセッション版なので、イ・ウンジュのソロによる正統的な「Only When I Sleep」は本CDでしか聴けません。

「スカーレットレター」の主人公、刑事のギフン(ハン・ソッキュ)がオペラ好きということもあって、サウンドトラックにはヴェルディの歌劇「運命の力」よりや、イ・ウンジュ演じるジャズシンガーのカヒとギフンと三角関係になる、ギフンの妻スヒョン(ソン・ヒョンア)がチェリストということもあって、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番より第1楽章などが使われるなど、クラシック音楽の用い方が上手いです。クラシックの楽曲はその他にもモーツァルトのセレナード「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」や、ドイツ国歌になったハイドンの弦楽四重奏曲「皇帝」などが収められています。なお、劇中で、イ・ウンジュ演じるカヒがシューベルトの「楽興の時」より第3番を弾くシーンがありますが、残念ながら、音源はイ・ウンジュの演奏によるものではないようです(イ・ウンジュは高校の途中まではピアニスト志望で音大を受験しようと思っていましたが、高校生の時にドラマに出演したことで演技の魅力に取り憑かれ、進路を変更して、檀国大学校芸術大学演劇映画学科に入学しています。そういうこともあって彼女のピアノの腕は玄人はだしで、映画「永遠の片想い」のエンディングテーマのピアノ演奏は彼女が手掛けています。なお、彼女が自殺したのは檀国大学校を卒業した直後でした)。
オリジナルの音楽もなかなか優れています。

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