カテゴリー「日本映画」の201件の記事

2024年4月 2日 (火)

これまでに観た映画より(327) TBSドキュメンタリー映画祭2024 「坂本龍一 WAR AND PEACE 教授が遺した言葉たち」

2024年3月28日 アップリンク京都にて

TBSドキュメンタリー映画祭2024「坂本龍一 WAR AND PEACE 教授が遺した言葉たち」を観る。監督は金富隆。前半は坂本龍一が「NEWS23」に出演したり「地雷ZERO 21世紀最初の祈り」の企画に参加したりした際の映像を中心とし、後半はTBSが収録したドキュメンタリーの映像の数々が登場する。

出演:坂本龍一、筑紫哲也、細野晴臣、高橋幸宏、DREAMS COME TRUE、佐野元春、桜井和寿(Mr.Children)、大貫妙子、TERU(GLAY)、TAKURO(GLAY)、Chara、シンディ・ローパー、デヴィッド・シルヴィアン、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)ほか。

筑紫哲也がキャスターを務めたTBS50周年特別企画「地雷ZERO」で、坂本龍一がモザンビークの地雷撤去作業地域を訪れるところから映画は始まる。2001年のことである。坂本龍一は、地雷撤去のための資金を集めるためにチャリティー音楽「ZERO LANDMINE」を作成することを思い立ち、デヴィッド・シルヴィアンの作詞による楽曲を完成。シンディ・ローパーなど海外のアーティストも参加した作品で、国内からも多くのミュージシャンが参加した。

その後、植樹の活動(モア・トゥリーズ)なども始めた坂本龍一。環境問題に取り組み、ライブのための照明も水力発電によるものを買って使用するようになる。

2001年9月11日。アメリカで同時多発テロが発生。発生時、ニューヨークの世界貿易センター(ワールドトレードセンター)ビルから1マイルほどのところにいた坂本はカメラで炎上する世界貿易センタービルを撮影。その後、ツインタワーであった世界貿易センタービルは倒壊し、土煙を上げる。アメリカは報復措置として、アフガン空爆、そしてイラク戦争へと突入する。坂本は「世界に60億の人がいても誰もブッシュを止められない」と嘆く。
「ニュース23」の企画で、戦争反対の詩を募集し、坂本の音楽に乗せるという試みが行われる。全国から2000を超える詩の応募があり、中には6歳の子が書いた詩もあった。その中から坂本自身が19編の詩を選び、作者のナレーションを録音して音楽に乗せる作業を行う。作業はコンピューターを使って行われるのだが、微妙なズレを生むために何度も繰り返し行われる。

日本では安保法案改正問題があり、坂本も反対者の一人として国会議事堂前でのデモに参加し、演説も行う。都立新宿高校在学時の若き坂本龍一がアジ演説を行っている時の写真も紹介される。

2011年3月11日。東日本大震災が発生。福島第一原子力発電所ではメルトダウンが起こる。
坂本は原発稼動への反対を表明。電気よりも命を優先させるべきだと演説し、50年後には電気は原発のような大規模な施設ではなく、身近な場所で作られるものになるだろうとの理想を述べる。
東日本大震災では家屋にも甚大な被害が出たが、坂本は植樹運動で育てた樹を仮設住宅に使用する。
その後、東北ユースオーケストラを結成した坂本。東北の復興のために音楽で尽力する。東北ユースオーケストラは坂本が亡くなった現在も活動を続けている。

坂本の最後のメッセージは、明治神宮外苑再開発による樹木の伐採反対。交流があった村上春樹も反対の声明をラジオで発しているが、東京23区内で最も自然豊かな場所だけに、再開発の影響を懸念する声は多い。

名物編集者、坂本一亀(かずき)の息子として生まれた坂本龍一。若い頃には父親への反発から文学書ではなく思想書ばかり読んでいたというが(音楽家になってからも小説などはほとんど読まなかったようである)、若き日に得た知識の数々が老年になってからもなお生き続けていたようである。また、音楽家が自らの思想を鮮明にするアメリカに長く暮らしていたことも彼の姿勢に影響しているのかも知れない。

映画のラストで流れるのは、「NEWS23」のエンディングテーマであった「put your hands up」のピアノバージョン(「ウラBTTB」収録)。心に直接染み渡るような愛らしい音楽である。

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2024年3月 6日 (水)

これまでに観た映画より(323) 「ゴジラ-1.0」

2024年2月22日 MOVIX京都にて

MOVIX京都で、日本映画「ゴジラ-1.0」を観る。山崎貴監督・脚本・VFX作品。出演:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介ほか。
音楽:佐藤直紀、伊福部昭。

放射能が生んだゴジラ。だが今回はそれよりも先に生まれていたゴジラの話である。

1945年、戦争末期の大戸島。特攻隊の敷島浩一(神木隆之介)は特攻を避けるため、零戦の機体に故障があったと嘘をつき、大戸島の整備所に着陸する。整備士の橘(青木崇高)は敷島の嘘をすぐに見抜くが、その夜、謎の怪物が大戸島に現れる。ゴジラ(呉爾羅)と呼ばれるその怪物により、敷島と橘を除く大戸島の整備士達は全滅する。

東京に戻った敷島は、隣家の太田澄子(安藤サクラ)から、敷島の両親が空襲で亡くなったことを伝えられる。
その後、闇市で出会った大石典子(浜辺美波)から赤ん坊を頼まれた敷島。赤ん坊の明子は典子の子ではなく、拾った子だった。やがて敷島と典子と明子は結婚しないままの共同生活を始める。敷島は米軍の機電撤去の仕事に就き、そこで出会った秋津淸治(佐々木蔵之介)、野田健治(吉岡秀隆)、水島四郎(山田裕貴)と共に、木造船・新生丸の乗り込み、海を回る。
新居を建てた敷島。新生丸の乗組員達を招いて紹介するが、典子と籍を入れていないことを知られ、けじめを付けるよう促される。

1946年にビキニ環礁での水爆実験があり、ゴジラは肥大化。その肥大化したゴジラが東京目指して北上してくる。

1947年。明子が大きくなったということもあり、典子は自立を目指して銀座で事務の仕事を始める。そんな中、ゴジラが東京に向かっていることを知った敷島達は新生丸でゴジラを止めるよう命令されるが、巨大化したゴジラに全く歯が立たない。ゴジラは前線を突破し、品川沖から銀座に上陸。朝の連続テレビ小説「ブギウギ」の日帝劇場のモデルとなっている日本劇場(現在の有楽町マリオン)や銀座のシンボルである和光を破壊する。その時、典子は銀座を走る列車に乗っていた。


焦土からの復興を目指す戦後2年目の東京を襲撃するゴジラということで、戦争の脅威をゴジラがなぞる形となっている。
そこに、敷島と典子のラブストーリーが重なるわけだが、展開がやや不自然であり、人間ドラマとしての完成度をやや損ねているように感じられた。
VFXを使った映像には迫力があり、敷島のトラウマからの解放なども(ややベタだが)見応えを上げていたように思われる。

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2024年2月29日 (木)

これまでに観た映画より(322)「風よ あらしよ 劇場版」

2024年2月19日 京都シネマにて

京都シネマで、日本映画「風よ あらしよ 劇場版」を観る。甘粕事件によって28歳で散った伊藤野枝を主人公とした作品。2022年にNHKBSで放送され、今回劇場版が上映される運びとなった。原作:村山由佳、脚本:矢島弘一、演出:柳川強。音楽:梶浦由記。出演:吉高由里子、永山瑛太、稲垣吾郎、松下奈緒、美波、山田真歩、音尾琢真、石橋蓮司ほか。

「青鞜」後期の編集者として、また無政府主義者・大杉栄との関係で知られる伊藤野枝の生涯に迫る作品である。

東京の上野高等女学校に通う伊藤ノヱ(後のペンネーム・伊藤野枝。演じるのは吉高由里子)は、生まれ故郷の福岡で無理矢理結婚させられそうになる。「家にあっては父に従い、嫁しては夫に従い、夫が死んだ後は子に従う」という男尊女卑の文化が当たり前であった大正時代にあって伊藤野枝はそれに反発。上野高等女学校の教師だった辻潤(稲垣吾郎)に文才を見出され、平塚らいてうの主宰する青鞜社に就職し、女性の地位向上を唱えるが、青鞜社が傾くようになり、平塚らいてうから雑誌「青鞜」を受け継ぎ、編集をこなすが、結果的には「青鞜」は廃刊になってしまう。一方、辻と結婚した野枝であるが、辻は自堕落な生活を送るようになる。そんな中、野枝は無政府主義者の大杉栄(永山瑛太)と出会い……。

伊藤野枝という人が極めて行動的で積極的な人柄であることが分かるような描き方がなされている。率先して「青鞜」を受け継ぎ、憧れの存在であった辻潤や大杉栄とも対等に渡り合う。

大河ドラマ「光る君へ」に紫式部役で主演している吉高由里子。彼女の個性である甘ったるい声はやはり気になるが、不自由な時代を全力で駆け抜ける勇ましさが出ていた。永山瑛太の存在感、アンニュイな男を演じさせたらピカイチの稲垣吾郎の魅力も十分に発揮されていたように思う。

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2024年2月19日 (月)

これまでに観た映画より(321) 「カラオケ行こ!」

2024年2月5日 MOVIX京都にて

MOVIX京都で日本映画「カラオケ行こ!」を観る。和山やまのマンガが原作。ヤクザと男子中学生の音楽を通した不思議な友情を描いた作品である。脚本は、「逃げるは恥だが役に立つ」の野木亜紀子。出演:綾野剛、齋藤潤、芳根京子、橋本じゅん、やべきょうすけ、坂井真紀、宮崎吐夢、ヒコロヒー、加藤雅也(友情出演)、北村一輝ほか。音楽:世武裕子、監督は、「リンダ リンダ リンダ」の山下敦弘。

大阪が舞台。大阪の合唱コンクール中学校の部が行われた日に、ヤクザの成田狂児(綾野剛)は、大会で3位に入った中学校の部長でボーイソプラノを務める岡聡実(齋藤潤)に、「カラオケ行こ!」と誘う。成田が加わっている四代目祭林組の組長(北村一輝)はカラオケにうるさく、カラオケ大会を開いては「歌下手王」になった部下に入れ墨を彫るのを習慣としている。しかし組長には絵心がなく、入れ墨を入れられるものは大変な屈辱を受けるという。成田は「歌下手王」」になるのを避けるために、岡にカラオケのレッスンを頼むのであった。最初のうちは困惑していた岡だったが、自身が変声期でボーイソプラノとしては限界に来ているということもあり、成田の声質にあった曲を選ぶなど次第に打ち解けていく。

岡が通う学校の合唱コンクールと、祭林組のカラオケ大会が行われるのがちょうど同じ日になる。岡はボーイソプラノに自信がなく、行くのを渋っていたが、出掛けることにする。その途中、成田と岡がいつもカラオケを楽しんでいる店の前で事故が起こっているのを目にする。成田の車は大破していた。成田のことが気が気でない岡は合唱コンクールの会場から飛び出す。


一応、任侠ものなのだが、綾野剛演じる成田狂児が優しいということもあり、全体的に温かい感じの物語となっている。岡が通う中学校の様子も描かれ、青春映画としての要素も加わった親しみやすい作品に仕上がっていた。

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2024年2月 5日 (月)

これまでに観た映画より(320) 「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」

2024年1月11日 MOVIX京都にて

MOVIX京都で日本映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」を観る。原作:汐見夏衛。監督・脚本:成田洋一。出演:福原遥、水上恒司、中嶋朋子、伊藤健太郎、島﨑斗亜、上川周作、小野塚勇人、出口夏希、坪倉由幸、松坂慶子ほか。主題歌:福山雅治「想望」

タイムスリップが加わる戦時下ドラマで、昭和20年6月にタイムスリップした女子高生が、特攻隊員の早大生とほのかな恋に落ちるという恋愛ドラマである。


加納百合(福原遥)は成績優秀で、高校の進路相談で担任教師(坪倉由幸)から大学への進学を勧められるが、百合本人は就職を希望していた。百合は父親を早くに事故で亡くした母子家庭で育っており、母親の幸恵(中嶋朋子)は魚屋とコンビニでの仕事を掛け持ちしており、そのことが百合が進学をためらう一因となっていた。
進路相談を終えた日。百合は幸恵と喧嘩して家を飛び出し、かつての防空壕跡に泊まり込むが、目が覚めると外は昭和20年6月となっており……。

現代の女子高生である百合が、若くして散ることが決まっている特攻隊員の佐久間彰(水上恒司)とほのかな恋に落ちることで成長していくという教養小説的な部分もある映画である。早稲田大学で教師を目指していた彰に感化された百合は、大学に進学して教師を目指すようになる。

出来としては可もなく不可もなくといったところだが、出演者はみな好演であり、空爆の悲惨さや、特攻隊員の暗いだけではない青春も描かれていて、異色の青春映画として一定の評価の出来る作品に仕上がっている。

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2024年2月 2日 (金)

これまでに観た映画より(319) 「PERFECT DAYS」

2024年1月17日 京都シネマにて

京都シネマで、ヴィム・ヴェンダース監督作品「PERFECT DAYS」を観る。主演の役所広司がカンヌ映画祭で最優秀男優賞を受賞した作品。出演は役所広司のほかに、田中泯、中野有紗、柄本時生、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、三浦友和ほか。

平山(役所広司)は、渋谷区の公衆トイレ(デザイナーズトイレ)の清掃員をしている。朝早く起き、身支度を整え、自宅アパート前の自動販売機で缶コーヒーを買い、運転する車の中で洋楽のカセットテープを流し、いくつものトイレを丹念に磨く日々。仕事帰りには銭湯に入り、浅草の地下で食を味わい、浅草の居酒屋で一杯やる。仕事から帰ってからは自転車で移動し、古本屋に立ち寄って本を買い、夜にはその本を読むという毎日。
昼食は神社の境内でサンドウィッチを食べ、同じく境内で食事をしているOLと挨拶をする。無口で不器用な男である。

仕事の部下というか同僚であるタカシ(柄本時生)がアイという女性(アオイヤマダ)と恋仲になる。アイが働くガールズバーでデートをしたいタカシは金がないことを嘆き、平山はタカシに金を貸すのだが、やがてタカシは仕事を辞めてしまい……。

一方、平山の姪(妹の娘)であるニコ(中野有紗)が、母親(麻生祐未)と喧嘩をして平山のアパートを訪ねてくる。

淡々とした日常の中に起こるちょっとした出来事が丁寧に描かれているという印象を受ける作品。平山の日常はほとんど毎日変わらないのだが、周囲の人々が少しずつ変わっていく。仕事を辞めたタカシ、突然訪ねてくるニコ、浅草の居酒屋のママ(石川さゆり)の元夫で癌を患っている友山(三浦友和)。平山の周囲を様々な人々が駆け抜けていく。そんな些細な日常の変化を上手く捉えた作品といっていいだろう。決して派手な映画ではなく、むしろ地味な作品に分類されると思われるが、ラストで説明される木漏れ日のようにたゆたう日常が不思議な浮遊感を伴って観る者の胸をとらえる。

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2022年12月20日 (火)

これまでに観た映画より(316) 「天上の花」

2022年12月12日 京都シネマにて

京都シネマで、没後80年「萩原朔太郎大全2022」記念映画「天上の花」を観る。原作:萩原葉子(『天上の花――三好達治抄――』)、監督:片嶋一貴。脚本:五藤さや香&荒井晴彦。出演:東出昌大、入山法子、浦沢直樹、萩原朔美、林家たこ蔵、鎌滝恵利、関谷奈津美、鳥井功太郎、間根山雄太、川連廣明、ぎぃ子、有森也実、吹越満ほか。

萩原朔太郎の弟子である三好達治(東出昌大)と朔太郎の一番下の妹である慶子(実際の名前はアイ。演じるのは入山法子)の短い同棲生活を描いた作品である。

東京帝国大学を出た詩人の卵である三好達治は、萩原朔太郎(吹越満)の妹である慶子と出会い、一目惚れする。だが三好は詩作や翻訳を行うだけで、帝大卒とはいえ、定職に就いていないということで、慶子は難色を示す。「就職していれば結婚の可能性がある」ということで、三好は、北原白秋の弟が経営するアルスという出版社に朔太郎の口利きで入れて貰い、慶子と婚約するが、アルスは三好の入社2ヶ月後に倒産。婚約も破談となり、三好は佐藤春夫の姪である智恵子と結婚し、二児に恵まれる。一方の慶子は、詩人の佐藤惣之助と結婚。しかし惣之助が亡くなり、未亡人となった慶子に三好は果敢にアプローチ。智恵子とは離婚に至り、三好と慶子は福井県の三国で同棲生活を送ることになるのだが……。

三好も慶子も多分に不器用な人間であり、そうした不器用な人間のぶつかり合いが戦時を背景に破局へと向かっていく。普段は温和な三好だが、愛ゆえに束縛も強く、慶子へのそして詩の戦争抑止力の可能性を信じながら戦争礼賛の詩を書かねばならなかった自身への怒りが暴力へと向かっていく。ある意味、二人は似たもの同士であり、それが故に幸福には至れない運命だったのかも知れない。

スキャンダルまみれといった感じの東出昌大主演の映画だけに、観客は五指に余るほど。正直、興行的に成功するのは難しいだろう。とはいえ、東出昌大も入山法子もイメージには合っており(皮肉なことにスキャンダル後の東出昌大のイメージにまで合っている)不器用な文人達を描いた映画として一定の評価は出来るように思う。

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2022年11月22日 (火)

これまでに観た映画より(315) 「追想ジャーニー」

2022年11月21日 京都シネマにて

京都シネマで、日本映画「追想ジャーニー」を観る。谷健二監督作品。出演:藤原大祐、高橋和也、佐津川愛実、真凛、髙石あかり、岡本莉音(りおん)、伊礼姫奈(いれい・ひめな)、赤間麻里子、外山誠二ほか。上映時間60分ちょっとの中編である。

若手俳優が多数出ているため、若い人向けの作品かなとも思ったのだが、実際には中高年の背中を押すような作品であった。

文也(高橋和也)は48歳。アルバイトをしながら売れない俳優をしている。小劇場の舞台には出ているようだが、収入にはならず、駐車監視員(緑のおじさん)として何とか生計を立てている。久しぶりのテレビドラマの仕事があり、セリフはわずかだったが、それを見ていた人から、人を介してとある精神療法を紹介され……。

21世紀生まれの若い俳優達が瑞々しい演技を見せ、佐津川愛実や真凛といった中堅女優も魅力的である。それでありながら主役は高橋和也が演じる48歳の文也(18歳の文也を藤原大祐が演じている)であり、主に氷河期世代に当たる40代後半から50代前半に当たる人々への力強い応援歌が奏でられる。

予告編を観て気になり、観ることにした映画であり、設定からも「ありきたりなものなのかな」と悪い予感もしていたのだが、節目節目(劇中では「分岐点」という言葉が用いられている)でのエピソードも上手く凡庸に陥るのを回避しており、巧さを感じさせる。
「掘り出し物的逸品」と呼んでも大袈裟でないほどの好編であった。

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2022年11月10日 (木)

これまでに観た映画より(314) ドキュメンタリー映画「役者として生きる 無名塾第31期生の4人」

2022年11月1日 京都シネマにて

京都シネマで、ドキュメンタリー映画「役者として生きる 無名塾第31期生の4人」を観る。

仲代達矢が主宰する無名塾。1975年に仲代と妻の宮崎恭子と共に創設した俳優養成所である。入塾のための倍率は高く、文学座と共に「演劇界の東大」と呼ばれることもある。

無名塾に第31期生として入ったのは、上水流大陸(かみずる・たいりく)、中山正太郎、島田仁(じん)、朝日望(のぞみ。女性)の4人である。バックボーンは様々で、中山正太郎は日大一高演劇部から日大藝術学部演劇学科を卒業して入塾。上水流大陸は鹿児島高校の演劇部での活動を経て無名塾に入り、島田仁は国立香川高等専門学校の5年次に無名塾に合格、国立大学の編入試験にも合格していたが無名塾を選んでいる。朝日望は以前に無名塾に合格するも短大での学生生活より無名塾を優先させることがためらわれて一度辞退し(最終面接で、「短大は辞めて来て下さい」と言われたようである)、短大卒業後に無名塾を再度受けてまた合格し、第31期生となった。

無名塾は学費無料だがアルバイトは原則禁止であり(新入生に仲代本人が説明する場面がある)、塾生(でいいのだろか)は常に俳優としてのスキルを上達させることが望まれる。
第31期生は2017年の入塾ということで、新型コロナによる中断を経て、2021年の11月に、総決算ともいえる「左の腕」(松本清張原作、仲代達矢の演出。能登演劇堂ほかでの上演)に全員が出演することとなる。

無名塾は自主稽古が多く、無名塾の先輩からの指導で稽古をすることも比較的多く、仲代が年4回ほどの直接指導を行う。

仲代は、「俳優はアスリート」と考えを持っており、身体訓練は自主的に行うことが求められる。第31期生も、近くの砧公園でランニングを行い、それぞれが成長を自覚しているようである。

養成課程修了後に関しては仲代は、「自由にしていい。ただ演劇は続けて欲しい。技術が必要になるから」と述べている。

4人の演劇観もそれぞれ異なり、小劇場指向で、「お金のために演技をしたくない。稼ぐにはアルバイトがあるので」と昔ながらの舞台俳優としての生き方を志すメンバーもいた。

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2022年8月11日 (木)

これまでに観た映画より(305) 「BLUE ISLAND 憂鬱之島」

2022年8月2日 京都シネマにて

京都シネマで、ドキュメンタリー映画「BLUE ISLAND 憂鬱之島」を観る。自由と民主を求める香港を舞台に、文化大革命、六七暴動、天安門事件によって香港へと亡命した人々や、香港を題材に撮影されているドラマなどを追ったドキュメンタリー。
監督・編集:チャン・ジーウン。香港と日本の合作で、プロデューサーは香港からピーター・ヤム、アンドリュー・チョイ、日本からは小林三四郎と馬奈木厳太郞が名を連ねている。映画制作のための資金が足りないため、クラウドファンディングにより完成に漕ぎ着けた。

「香港を解放せよ」「時代を革命(時代革命)せよ」というデモの声で始まる。
そして1973年を舞台としたドラマの場面。一組の若い男女が山を越え、海へと入る。文化大革命に反発し、香港まで泳いで亡命しようというのだ。この二人は実在の人物で、現在の彼ら夫婦の姿も映し出される。旦那の方は老人になった今でも香港の海で泳いでいることが分かる。

1989年6月4日に北京で起こった第二次天安門事件。中国本土ではなかったことにされている事件だが、当時、北京で学生運動に参加しており、中国共産党が学生達を虐殺したのを目の当たりにして香港へと渡り、弁護士をしている男性が登場する。本土ではなかったことにされている事件だが、香港では翌年から毎年6月4日に追悼集会が行われていた。それが2021年に禁止されることになる。男性は時代革命で逮捕された活動家や市民の弁護も行っているようだ。

六七暴動というのは日本では知られていないが、毛沢東主義に感化された香港の左派青年達が、イギリスの香港支配に反発し、中国人としてのナショナリズム高揚のためにテロを起こすなどして逮捕された事件である。
劇中で制作されている映画の中では、当時の若者が「自分は中国人だ」というアイデンティティを語る場面が出てくるが、その若者を演じる現代の香港の青年は、「そういう風には絶対に言えない」と語り、自らが「香港人である」という誇りを抱いている様子が見て取れる。1997年の返還後に生まれた青年であり、小学校時代には、「自分達は中国人」という教育を受けたようだが、今は中国本土からは完全に心が離れてしまっているようである。皮肉なことに現在は六七暴動とは真逆のメンタリティが香港の若者の心を捉えている。

青年達は、中国共産党の独裁打倒と中国の民主化を求めている。

だが中国共産党と香港政府からの弾圧は激しく、この作品に出演している多くの市民が逮捕され、あるいは判決を待ち、あるいは亡命して香港を離れている。

ラストシーンは、彼ら彼女らが受けた判決が当人の顔と共に映し出される。多くは重罪である。治安維持法下の日本で起こったことが、今、香港で起こっているようだ。歴史は繰り返すのか。

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