これまでに観た映画より(430) 中山美穂主演・岩井俊二監督作品「Love Letter」
2025年4月7日 TOHOシネマズ二条にて
TOHOシネマズ二条で、岩井俊二監督作品「Love Letter」を観る。京都府内ではTOHOシネマズ二条のみでの上映である。1995年の作品。岩井俊二監督の長編映画第1作である。この時、助監督を務めていたのが行定勲監督で、行定監督は後に自身の長編第1作として、「Love Letter」へのオマージュともいうべき「ひまわり」という作品を制作している(主演:麻生久美子)。
公開30年を記念した4Kリマスター上演。映像の美しさに定評のある岩井俊二監督であるが、画像の鮮度が全く落ちておらず、30年前の作品とは思えないほどの瑞々しさと臨場感を湛えている。以前は、30年も前の映像と言ったら、劣化しているのが当たり前で、いかにも「昔の作品」という感じだったが、これからの俳優は恵まれていると言える。だが、恵まれているはずの本作の主演女優、中山美穂は昨年(2024)12月に54歳の若さで死去。佳人薄命を地で行く生涯となってしまった。公開から30周年という話は岩井監督と中山の間で交わされていて、舞台になった「小樽にもう一度行こうよ」という話も出ていたようだが、叶うことはなかった。
出演:中山美穂、豊川悦司、酒井美紀、柏原崇、范文雀、篠原勝之、鈴木慶一、田口トモロヲ、加賀まりこ、光石研、鈴木蘭々、塩見三省、神戸浩、酒井敏也、山崎一、徳井優ほか。
光石研、酒井敏也、山崎一、徳井優らは、ロードショー時点ではほぼ無名に近い存在。彼らは90年代も終わりに近くなってから売れ出している。
一応、中山美穂と豊川悦司のW主演となっているが、実質的には中山美穂の単独主演作と捉えて間違いないだろう。豊川悦司は、映画賞によって主演男優賞だったり助演男優賞だったりと見られ方が異なっている。
神戸と小樽が主な舞台となっている。どちらも風光明媚で知られる街だが、観光名所となっているようなところでのロケは行われていない。
音楽:REMEDIOS。
渡辺博子(中山美穂)の彼氏である藤井樹(いつき)が登山中に遭難して命を落とす。彼の三回忌に、博子は、樹の中学の卒業アルバムを見て、彼の中学時代の住所を知る。小樽の銭函二丁目という場所だった。今は国道が敷かれて、家は存在していないとのことだ。博子は、「どうせ届かないなら」とその住所に宛てて手紙を出す。すると返事が来た。実は同級生に同姓同名の藤井樹という女性(中山美穂二役)が存在しており、博子が樹の住所だと思ったものは、女性の方の藤井樹の住所だったのだ。
二役であるが、外見上は区別を付けておらず、話し方が樹はナチュラル、博子は内気そうに囁くように喋るという違いで演じ分けを行っている。なのでぱっと見だと今どっちなのか分かりにくい場面もある。
小樽の藤井樹は、市立図書館で司書をしている。当時はまだワープロ(ワードプロセッサー)が普及していて、樹は、ワープロで返事を書いている。樹は風邪を患っており、中々抜け出すことが出来ない。それでも体調不良を押して働いている。
博子は、実は謎が多い存在で、神戸在住なのに標準語を話す(他の登場人物は関西の言葉を話している)ため、関西出身でないことが分かるが、職業などに関しても直接的な描写はない。彼氏だった樹の友人であった秋葉茂(豊川悦司)の工房をよく訪ねる博子。秋葉はガラス工芸の職人であり、松田聖子の「青い珊瑚礁」をよく歌っている。工芸の技術は大学で身につけたようで、芸術系の大学を卒業しているのだと思われる。そんな秋葉から博子は、「小樽に行かないか」と誘われる。小樽で博子と樹は何度かニアミスすることになる。
博子に聞かれて、樹は、自身と男の藤井樹について書き始める。中学時代の話だ。女の樹は酒井美紀が、男の藤井樹は柏原崇が演じている。同姓同名で、中学時代、3年間同じクラス(正確に書くと男の藤井樹は3年の3学期に転校)だった二人の藤井樹。樹は、「いつき」の他に「たつき」や「たつる」とも読むが、今回はたまたま「いつき」だったということである。酒井美紀と柏原崇は、この翌年に青春ドラマの金字塔「白線流し」で主役クラスのメンバーとして共演している。柏原崇は、その後、不祥事を起こして仕事が減り、最終的には俳優を引退。現在は、内田有紀の内縁の夫兼マネージャーを務めている。
酒井美紀は女優業の傍ら、亜細亜大学を卒業し、その後に三十代で東洋英和女学院大学大学院修士課程を修了し、「インテリ女優」枠でクイズ番組でも活躍している。
同姓同名であるため、カップルのように扱われたりもする二人。ついには勝手に二人で図書委員にさせられてしまう。男の樹の方は、仕事をせず、誰も読まないような本を借りて、図書カードに名前を書き、結局は読みもしないという行動を繰り返す。
また、自転車で走っている女の樹に自転車で近づいて、相手の頭に袋をかぶせるといった意地悪を行うのだが、「好きな子には意地悪をしてしまう」男性は一定数いて、男の樹はそのタイプであることが見ていて分かる。図書カードに書いた「藤井樹」の名も自分の名前だったのかどうか。種明かしはラストで行われる。
成人した女の藤井樹は、風邪をこじらせ、41.8度の高熱を出して倒れてしまう。
一方、博子は男の藤井樹が命を落とした山の麓に秋葉と向かい、「お元気ですかー?! あたしは元気です」と叫ぶのだった。
世界的にヒットした映画であり、特に韓国では、「お元気ですかー?!」は流行語になっている。
無理があると言えば無理のある展開で、「そんなに似た人と生涯何度も会うわけないだろ!」と突っ込みたくもなるのだが、映画の見せ方としては上手いものを感じる。ただ岩井俊二監督はこれよりも出来の良い映画を何本も撮っており、あくまで入門編として観るべき映画という気もする。
実は公開時には、豊川悦司の大阪弁によるセリフも話題になっている。
豊川悦司は大阪府八尾市の出身なので、関西(かんせい)学院大学を中退して上京するまでは大阪弁は日常的に使ってきた言葉なのだが、この時点では全国区になったばかりであり、トヨエツ=大阪というイメージが全くなかったため、新鮮に感じられたようである。なお、豊川悦司は監督として、中山美穂を主演に迎えた大阪を舞台とするドラマを制作している。この時は、中山美穂も大阪弁のセリフを話していたはずである。
画像的には今と変わらないのに、ワープロ、ポラロイドカメラ、手書きの手紙など、今ではほぼ見られなくなった品々が登場するのもノスタルジアを掻き立てられる。
ラストに英語で、「天国にいる中山美穂にこのフィルムを捧げる」というメッセージが映された。








































































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