カテゴリー「韓国」の20件の記事

2025年10月11日 (土)

コンサートの記(924) 韓国・大邱国際オーケストラ・フェスティバル日本特別公演 大邱市立交響楽団来日演奏会@ザ・シンフォニーホール

2025年9月25日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後7時から、大阪・福島のザ・シンフォニーホールで、韓国・大邱(テグ)国際オーケストラ・フェスティバル日本特別公演、大邱市立交響楽団の来日演奏会を聴く。今回、大邱交響楽団が来日演奏を行うのは、アクロス福岡の福岡シンフォニーホールと、ザ・シンフォニーホールのみのようで、東京にも行かないようである。

ソウル(首都という意味で、長くオリジナルの漢字表記がなかったが、公募により首尔に決まった)。日本の漢字では首爾になるが、日本語はカタカナ表記があり、これまでも一般的であったため、定着はしないだろう)、釜山(プサン)、仁川(インチョン)に次ぐ韓国内人口第4位の都市である大邱。ただトップ3に比べると知名度は低いと思われる。
個人的には、韓国プロ野球の三星(サムスン)ライオンズが大邱広域市をホームタウンとしており、元読売巨人軍の新浦壽夫がエースとして活躍しているのをテレビで見て、大邱という街を知った。まだ日本出身者は在日韓国人しか韓国プロ野球でプレー出来なかった時代の話である。今は先祖代々日本人でも韓国プロ野球でプレーすることは可能だ。
サムスン電子も当時は国外ではまだそれほど有名な企業ではなかったのだが、今やスマートフォンや薄型テレビの世界シェアナンバーワン、「世界のSAMSUNG」になっている。
なお、サムスン電子の本社は北部の水原(スウォン)市にあり、大邱とは遠く離れている。日本でも北海道日本ハムファイターズの本拠地はエスコンフィールドHOKKAIDOであるが、日本ハムの本社自体は大阪市北区のブリーゼタワーにあるので、親会社と野球チームの本拠地が離れていても特に珍しくはない。楽天もDeNAもソフトバンクも東京に本社を置く会社である。考えてみれば親会社とプロ野球チームが同じ街にある方が少ない。ロッテは千葉市に本社を移そうとして失敗している。

 

さて、韓国のクラシック音楽の現状であるが、ソリストはとにかく凄い。チョン三姉弟を始め、世界の第一線で活躍する人が次々に出てくる。
一方、オーケストラに関しては、1990年代末に行われたインタビューで、チョン三姉弟の末弟で、指揮者&ピアニストのチョン・ミョンフンが、「日本より20年遅れている状態」と嘆いていた。この時代は東京を本拠地とするオーケストラが世界的大物指揮者をシェフに招いて躍進していた時代である。チョン・ミョンフンもこの後、東京フィルハーモニー交響楽団のスペシャル・アーティスティック・アドバイザーに就任して、長足での成長に一役買っている。
その後、2000年代に、「アジアオーケストラウィーク」が発足。日本のオーケストラも参加し、東京と大阪で東アジアや東南アジアのオーケストラが演奏を行っている。その中の一つとして、ソウル・フィルハーモニック管弦楽団の演奏をザ・シンフォニーホールで聴いたことがある。ソウルには、日本語に訳すとソウル・フィルハーモニック管弦楽団になる団体がなぜか2つあるそうで、どちらだったのかは分からないが、「20年遅れている状態」から「10年遅れ」まで詰めてきたような印象のある良いアンサンブルであった。

東日本大震災が起こってからは、「アジアオーケストラウィーク」は東京と東北地方で行われるようになったが、昨年は「アジアオーケストラウィーク」が京都コンサートホールのみで行われ(シンガポール交響楽団と京都市交響楽団が参加)、今年の「アジアオーケストラウィーク」は香港フィルハーモニー管弦楽団が西宮北口の兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールで演奏するが、ピアノのソリストが反田恭平であるため、チケット完売になっている。

ソウル・フィルハーモニック管弦楽団以来となる韓国のプロオーケストラの鑑賞。ポディウムと2階席のステージ横、3階席は開放されていないが、それ以外は思ったよりも埋まっている。企業による団体での鑑賞も行われているようだったが、普通の企業ではなく音楽関係のようで、マナーも良かった。

 

曲目は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番(ピアノ独奏:金子三勇士)とラフマニノフの交響曲第2番。

お馴染みの存在となりつつある金子三勇士(みゅうじ)。日本とハンガリーのハーフである。生まれたのは日本だが、6歳の時に単身、ハンガリーに留学、11歳でハンガリー国立リスト音楽院に入学。16歳で日本に帰り、東京音楽大学付属音楽高等学校に編入。2008年のバルトーク国際ピアノコンクールで優勝し、以後、国内外で活躍している。
「技巧派」と呼ぶのが最も相応しいピアニストである。

大邱市立交響楽団は、コンサートマスターが女性(コンサートミストレス)なのは今では普通だが、第1ヴァイオリンも第2ヴァイオリンも全員女性である。流石にこんなオーケストラは見たことがない。ヴィオラ、チェロ、コントラバスも男性は2人ずつで後は全員女性。他のパートも男女半々であり、男性しかいないのは、クラリネットと打楽器、後半のみに加わったトロンボーンとテューバ(1台のみ)だけである。背の高い男性の方が有利と思われるコントラバスで、これほど女性が揃ったオーケストラはかなり珍しい(7人中5名が女性)。
アメリカ式の現代配置での演奏。韓国は文化面でも日本よりも遙かに強くアメリカの影響を受けており、K-POPなども明らかにアメリカの真似で、このままでは自国の音楽文化が損なわれるのではないかと心配になる。日本はアメリカ文化を相対化しており、日本ならではのポピュラーミュージックも盛んである。

指揮者は、ペク・ジンヒョン。2023年から大邱市立交響楽団の音楽監督兼指揮者を務めている。2003年から2011年まで馬山市立交響楽団の音楽監督、2018年から2022年までは慶北(キョンボク)フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督であった。マンハッタン音楽院で修士号取得、ハートフォード大学でアーティスト・ディプロマを得て、ロシアファーイースタン国立芸術アカデミーで音楽芸術博士号を獲得している。現在、東西大学大学院の指揮法教授を務めるほか、釜山国際音楽祭と釜山フェスティバルオーケストラの芸術監督でもある。
聴いてみて分かったが、速めのテンポを好む人であった。

金子三勇士のピアノは、最近流行りの一音一音の粒立ちが良いものとは正反対。ダンパーペダルを踏み続け、意図的に音を少し溶け合わせて温かみを生んでいる。どちらの演奏スタイルも当然ながら「あり」だが、金子のようなスタイルの方が人間らしく聞こえる。良い意味でアナログ的なのだ。
ソフトペダルは特に高音を弾くときに使っていた。

指揮のペク・ジンヒョンは、金子のテンポに合わせて大邱市立交響楽団を運ぶが、オーケストラだけの部分になると急にスピードアップするのが面白い。
大邱市立響はメカニックも音楽性も高く、「10年遅れから大分時が経ったから、日本のオーケストラにも肉薄しつつあるな」という印象を受ける。

 

演奏が終わり、立ち上がって頭を下げてから退場した金子だが、再び出てきた時に指揮者のペクにピアノの座椅子を示される。アンコール演奏。金子は、客席に向かって「ありがとうございました」と言い、オーケストラには「カムサハムニダ」と述べる。
「リストのコンソレーション(第3番)」と曲名を告げてから金子は演奏開始。リストなので技術的に高難度だが美演であった。

 

ラフマニノフの交響曲第2番。やはりラフマニノフは秋に聴くのが相応しい作曲家であるように感じる。
ペク・ジンヒョンは、想像通り速めのテンポを採用。これまでに実演で聴いたラフマニノフの交響曲第2番の中で最も演奏時間が短いと思われる。私は実演ではラフマニノフの交響曲第2番は全曲版でしか聴いたことがない。カット版はジェームズ・デプリースト指揮東京都交響楽団盤で聴いただけである。

ドイツの楽団を理想とするNHK交響楽団や大阪フィルハーモニー交響楽団。N響に対抗してアメリカのオーケストラスタイルを目指した、解散宣告と争議前の日本フィルハーモニー交響楽団。「札幌交響楽団を日本のクリーヴランド管弦楽団にする」と宣言した岩城宏之。その岩城が初代音楽監督を務めた日本初の常設のプロ室内管弦楽団であるオーケストラ・アンサンブル金沢。
日本のオーケストラは、欧米のオーケストラを理想としていることが多い。クラシック音楽を生んだのは欧米なので、それは当然なのだが、今日の大邱市立交響楽団の演奏は「東アジア的なるもの」を入れて、自分達なりの演奏を目標としているように思える。輝かしい部分では、今の日本のオーケストラは光の珠が爆発したかのように明度が高いが、大邱市立交響楽団は、輝きの中に僅かに陰が差す。多くの色が混ざった液体の中に一滴だけ墨を入れる。そういった隠し味のようなものが印象的であった。そうすることで意図的に東洋的なものが音楽の中に染みていく。
日本と韓国のポピュラー音楽とクラシック音楽で逆のことが起こっているようでもある。
なお、演奏中に男性のフルート奏者が楽譜を床に落とす。バサッという音がする。フルート奏者はフルートも第2ヴァイオリンも休みの箇所を狙って、楽譜を拾ったが、前にいる第2ヴァイオリン奏者(当然女性)に右肘で、「あんた邪魔。さっさと拾いなさいよ」と急かされていた。その直後に第2ヴァイオリンが弾き始めている。

ペク・ジンヒョンは早足で下手袖に退場、と思ったらすぐにまた早足で出てくる。せっかちな性格のようである。そのこととテンポが速めであることとに相関性があるのかは分からないが。

 

アンコール演奏は、リムスキー=コルサコフの歌劇「サルタン皇帝の物語」より“くまんばちの飛行”。リムスキー=コルサコフの“くまんばちの飛行”には様々なアレンジがあるが、おそらく歌劇の場面から抜き出したリムスキー=コルサコフのオリジナル版による演奏だと思われる(YouTubeに載っている映像の中では、WDRの第2オーケストラによる演奏が一番近い)。描写力が高く、最後は爽快な出来であった。

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2025年4月 6日 (日)

コンサートの記(897) 沖澤のどか指揮京都市交響楽団第698回定期演奏会 フライデー・ナイト・スペシャル

2025年3月14日 京都コンサートホールにて

午後7時30分から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団の第698回定期演奏会 フライデー・ナイト・スペシャルを聴く。今日の指揮者は、京都市交響楽団第14代常任指揮者の沖澤のどか。

曲目は、陳銀淑(チン・ウンスク)の「スピト・コン・フォルツァ」とリヒャルト・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」

陳銀淑は、1961年、ソウル特別市生まれの女流作曲家。ハンブルクでジェルジ・リゲティに学び、以後もドイツを本拠地として活動している。国籍を変えたのかどうかは不明である。1980年代には電子音楽の作曲を行い、1990年代以降は各地のオーケストラのコンポーサー・イン・レジデンスを務め、主に管弦楽曲を発表しているようである。

 

午後7時頃から、沖澤のどかのプレトークがある。
ステージに登場した沖澤はまず、「最初にご報告があります。11月にお休みを頂きましたが、無事、出産しました」と二児の母親となったことを告げた。
今回の定期演奏会は、3日間の事前のものも含めて、出雲路の練習場ではなく全て京都コンサートホールでリハーサルを行ったことを明かし、4月からの新シーズンは、リハーサルの公開などを行う計画のあることなども知らせていた(「クラオタ市長」こと松井孝治京都市長の発案)。

陳銀淑についてだが、ベルリンで一度会ったことがあるそうで、頭の回転が速く、知識が豊富でユーモアに富んだ人だったそうである。
「スピト・コン・フォルツァ」は、ベートーヴェンのメロディーをいくつも利用した作品で、「ネタバレになるんですけど、『コリオラン』序曲で始まって」と紹介していた。

リヒャルト・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」については、常任指揮者になったら必ず取り上げなければならない曲とした上で、「非常に難しい」。特にコンサートマスターのソロは「ソロを聴くために『英雄の生涯』を聴くという人もいるほど」有名だが難しいとし、(今日のコンサートマスターの)会田さんにもお聞きしたんですけれど、「協奏曲のソロより難しい。協奏曲はある程度自由があるが、『英雄の生涯』のソロはオーケストラの中でやらねばならない」と難度の高さを示していた。
その他にも語りたいことがあったのだが、「失念しました」ということで、京都コンサートホールにタクシーで向かう途中に衣装を忘れたことに気付いたため、いったん取りに戻ったり、次の日は財布を持ってくるのを忘れてスタッフさんにごちそうになったりと、ドジ話の開陳になってしまっていた。
沖澤はベルリン在住だが、ドイツに住んでいると、ドイツ音楽とドイツ語の親和性に気付くそうである。先月は松本で「カルメン」を指揮していた沖澤だが、「フランス語は音が抜ける。フランスのお菓子もサクサクと息の通る。ドイツのお菓子は『なんでこんなに砂糖入れるんだろう?』。日本のお菓子は丁度良いサイズで……、ええと何の話をしてたんでしたっけ? あ、言葉と音楽は結びついているということで」と話していた。

 

今日のコンサートマスターは、京響特別客演コンサートマスターの会田莉凡(りぼん)。フォアシュピーラーに泉原隆志。ヴィオラの客演首席奏者として柳瀬省太が入る。ドイツ式の現代配置での演奏。陳銀淑の「スピト・コン・フォルツァ」で使われる、ピアノ、鉄琴、木琴などはステージ下手端に並ぶ。
管楽器の首席奏者は、リヒャルト・シュトラウスのみの出演である。

 

見た目も声も明るめで、明るい音楽をやりそうな雰囲気のある沖澤だが、実際は渋い音色を駆使することが多い。陳銀淑の「スピト・コン・フォルツァ」(演奏時間約5分の短い曲)でも音は渋めである。
「コリオラン」で始まる曲だが、すぐに打楽器が入り、別の曲へと移行する。ピアノが「皇帝」のメロディーを奏でたり(ピアノ:沼光絵理佳)、弦楽器が「田園」交響曲の嵐の部分の音型を奏でたり、金管楽器が調は違うが運命動機を吹いたりとベートーヴェンへのオマージュが続く。この曲は2020年のベートーヴェン生誕250年を記念して作曲されたものである。

 

リヒャルト・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」。
この曲でもかなり渋い音を沖澤は京響から引き出す。ドイツ本流、それも一昔前、オイゲン・ヨッフムや沖澤がレッスンを受けたことのあるクルト・マズアなどのドイツ人指揮者が第一線で活躍していた時代のシュターツカペレ・ドレスデンやライプツィッヒ・ゲヴァントハスス管弦楽団、バンベルク交響楽団などが出していたような深くコクのある音色である。現在は世界的に活躍している独墺系指揮者の数が少なくなったということもあり、余り聴かれなくなった音だ。
系統でいうとクリスティアン・ティーレマン、とは大袈裟かも知れないが、音楽性に関しては同傾向にあると思われる。
沖澤は藝大大学院修士課程修了後に渡独し、ハンス・アイスラー音楽大学ベルリンの大学院修士課程も修了。ベルリン・フィルのカラヤン・アカデミーで学び、ベルリン・フィル芸術監督のキリル・ペトレンコのアシスタントを務めていたが、そうした中でドイツの音を基調とするようになったのかも知れない。京響の常任指揮者の前任で、透明度の高い音を特徴とした広上淳一とは正反対の音楽性といえる。
渋いだけでなく堅固な演奏。指揮姿はオーソドックスで分かりやすく、音の運び方も巧みである。正真正銘のドイツ的な演奏なので、実のところ好き嫌いが分かれそうな気もするのだが、現時点では沖澤の音楽作りは好評を得ている。好き嫌いはともかくとして、日本のオーケストラからこれほどドイツ的な音を引き出す指揮者も珍しい。オーソドックスなイメージを持たれているが、実際はかなりの個性派指揮者である。常任になって自分のカラーを鮮明に打ち出すようになったということで、これまで客演での演奏を聴いて語られて来た沖澤評は実は全て間違いの可能性もある。
物語的な展開を見せるこの曲だが、沖澤は語り口よりも響きと構築感を重視。音の生み出すものよりも音そのもので語る演奏となった。
会田莉凡のソロも巧みであり、終盤のノスタルジアの表出にも長けている。これまで聴いてきた「英雄の生涯」とはひと味違った、「堅牢」な演奏が展開された。

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2025年4月 5日 (土)

これまでに観た映画より(382) 韓国映画「ケナは韓国が嫌いで」

2025年3月12日 京都シネマにて

京都シネマで、韓国映画「ケナは韓国が嫌いで」を観る。2015年に発売されたチャン・ガンミョンのベストセラー小説『韓国が嫌いで』の映画化である。監督・脚本:チャン・ゴンジェ。出演:コ・アソン、チュ・ジョンヒョク、キム・ウギョム、イ・サンヒ、オ・ミンエ、パク・スンヒョンほか。

学歴社会・競争社会である韓国。ヒロインのケナ(コ・アソン)はそんな韓国に嫌気が差し、ニュージーランドへの移住を図る。

学歴主義社会として知られる韓国。SKYと呼ばれる、ソウル国立大学校、高麗(コリョ)大学校、延世(ヨンセ)大学校の3校に入れば将来が約束されるため、これらの大学を目指す高校生はとても多く、その他の大学志望者も少しでも良いとされる大学に行くために熾烈な競争を繰り広げる。韓国は高校までは義務教育であるため、受験は1回切りで、多くの人が全力を尽くす。一方で波に乗れず、ドロップアウトしていく人も多い(そうした人々を描いた作品も複数ある)。
受験で勝利しても、就職したらしたでまた苛烈な出世競争が待ち受けている。ケナは「ヘル・チョソン」「ヘル・コリア」(いずれも「地獄の韓国」)という流行り言葉を口にする。

日本でもお馴染みのペ・ドゥナが主演した、「子猫をお願い」という映画では、商業高校を卒業して社会に出た18歳の女の子達が社会の壁にぶち当たる様が描かれていたが、この映画の登場人物は、それなりの大学校を出てそれなりの企業で働いているようであり、祖国が嫌いになるだけの強い要因が曖昧であるように感じられる。「生まれた国だからといって嫌いになってはいけないわけではない」という言葉もあるが、上手くいっているように見えるのにどうして? という気持ちは拭えない。
ヒロインも、「韓国は先進国の中でもGDPは20位以内で、イタリアやスペインに匹敵する」とヨーロッパの先進国(ただイタリアもスペインも先進国の中では経済力最下位争いで、デフォルトが起きてもおかしくないと言われている)並みなのに、何が不満なのだと言われる。ケナは、「自殺率は先進国の中で1位」とデータを示し、生きにくさを強調するが、少なくともこの映画の中に登場する韓国に生きにくさを見出すことは難しい。芸能人の自殺も多いことで知られる韓国だけに、自殺に追い込まれる仕組みなどが明らかにされてもよいように思うのだが、それもないため、わがままで「韓国が嫌い」と言っているように見えてしまう。ケナが通勤に片道2時間、それも満員のバスと電車を乗り継ぐのが大変という描写から入るが、私も二十代の頃は、満員のバスと電車を乗り継いで片道2時間掛けて東京の会社に通っており、彼女がとりわけ大変という風にも思えない。
実際にニュージーランドに移るケナ。最大の都市であるオークランドに住むようだ。ワーキングホリデーの仕組みを利用し、大学で会計学を学びながらアルバイトをこなして、最終的にはニュージーランドの永住権を獲得しようとする。ここでニュージーランドでの生きづらさが描かれても良いはずなのだが、実際はアルバイト先のブティックで、白人の先輩社員に靴を注意されるだけである。ケナはスニーカーを履いていたのだが、「TPOに合わせてハイヒールを履くべき」と注意される。もう一人の白人の先輩が、「彼女は歩きながら仕事をしているので、ハイヒールは無理」とかばってくれた。一見すると分かりにくいが、これは人種差別の一種のようである。同じニュージーランド人、もしくは白人だったら、靴のことで注意を受けたりはしないようだ。助けてくれたニュージーランド人の女性がケナにそう語る。ただそれ以外はニュージーランドでの生活は順調。パラグライダーでビルの屋上から飛び降りた友人の女性を撮影して、動画サイトに映像を載せたことで警察が家にやって来て、「国外追放になるかも知れない」とケナが語る場面があるが、結局は大目に見られたようである。

というわけで、韓国が嫌いで仕方がない理由も、ニュージーランドが良いとされる根拠も今ひとつハッキリしない。ケナには分かっているのだろうが、見る者にはそれは伝わってこない。

面白いのは、主人公のケナを始め、韓国人女性が煙草を吸うシーンが多いこと。日本では、女性の10人に1人が喫煙者というデータがあるようだが、韓国、そして中国でも煙草を吸う女性は「売春婦」が定番になっているため、喫煙率はちょっと前まで1%~3%弱と低く、それでも煙草を吸う女性は蓮っ葉(ビッチ)と見られがちであった。京都造形芸術大学舞台芸術コース在学中に、韓国からの留学生であるパクという女の子と日本人女子学生のNと私と3人でエチュード(即興で行う演技の稽古)を行ったのだが、パクがNを悪く言う際、「この女、煙草を吸ってました」を繰り返しており、韓国で煙草を吸う女がいかにイメージが悪いかが分かった。今回の映画では煙草を吸う女性が複数出てくるが、現在では状況が変わったのか、それともケナがちょっと嫌な女であることを示すために喫煙シーンを入れたのかは不明であるが、煙草をポイ捨てしたりしているため、マナー的にはやはり良くないという設定ではあるのだろう(データによると、韓国の若い女性の喫煙率は増加傾向にあり、日本並みに増えているようだ)。

ケナを演じるコ・アソンは子役上がりだが、確かな演技力が感じられる一方で美人という訳ではない。整形が当たり前の韓国であるが(今でもそうなのかは知らないが、美形でないと就職出来なかったり、「美人でないのは失礼だ」などと言われたりしていて、社会が美容整形を後押ししていた)、彼女は整形はしていないと思われる。余り洗練されていない素朴な印象だが、親しみの持てる風貌である。

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2020年5月27日 (水)

コンサートの記(638) アジアオーケストラウィーク2004 金洪才指揮 ソウル・フィルハーモニック管弦楽団

2004年10月5日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

大阪、ザ・シンフォニーホールでソウル・フィルハーモニック管弦楽団の来日公演を聴く。どうでもいいが、一瞬、ソウルフル・ハーモニーと勘違いしそうな名前を持つ楽団である。ソウル・フィルというオケは何故か2つあるようだが(紛らわしいな)、こちらは1945年創設の韓国一長い歴史を持つオーケストラ。

指揮は在日指揮者、金洪才(キム・ホンジェ)。

韓国といえば、20世紀後半にクラッシック界の逸材を多く生み出したことで知られる。特にヴァイオリンのチョン・キョンファ(鄭京和)と、彼女の弟で指揮者・ピアニストのチョン・ミョンフン(鄭明勲)が有名である。ただオーケストラの充実は大分遅れ、10年前のインタビューでチョン・ミョンフンは「(韓国のオーケストラは)日本より20年は遅れている」と語っていた。

しかし、今日の演奏を聴くと大分腕を上げてきたなという感じを受ける。弦がやや薄いが、日本のオーケストラとも十分に渡り合えそうだ。


1曲目は金成珍(キム・ソンジン)の「帰天」。ソプラノ独唱は姜権洵(カン・グォンスン)。チマチョゴリでの登場だ。
ソウル・フィルの音はやや暗め。少し淡泊で墨絵のような味わい。音楽は韓国らしさを感じさせるものだが、露骨に韓国していないのがいい。この曲は今年作曲された新作だ。


ドヴォルザークのチェロ協奏曲。独奏は梁盛苑(ヤン・ソンウォン)。音は相変わらずやや地味、独奏の梁の演奏も渋いが深みがある。これ見よがしのテクニックを披露するのではなく、音を誠実に奏でていくタイプだ。演奏終了後、梁はJ・S・バッハの無伴奏チェロ組曲第1番よりプレリュードをアンコールとして演奏した。

ドヴォルザークのチェロ協奏曲は、あのブラームスをして「こんな曲がチェロで書けると知っていたら私も書いていたのに」と言わしめた傑作である。


後半の曲はあのブラームスの交響曲第4番。多分狙ったプログラミングのはずである。ソウル・フィルの音は今度はやや華やか。金の指揮も若々しく、名演となった。


アンコールは韓国民謡「イムジン河」のオーケストラ編曲版。しみじみとしていい演奏である。

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2019年12月16日 (月)

これまでに観た映画より(148) 「完璧な他人」

2019年12月11日 京都シネマにて

京都シネマで、韓国映画「完璧な他人」を観る。イタリア映画「おとなの事情」のリメイク。監督:イ・ジェギュ、出演:ユ・ヘジン、ヨム・ジョンア、チョ・ジヌン、キム・ジス、イ・ソジン、ソン・ハユン、ユン・ギョンホ。

幼馴染み4人とその妻が、新居完成祝いに集まり、自分達の間に秘密はないとして、互いのスマホに掛かってくる電話やメールを公開する(電話はスピーカーモード使用、メールは読み上げソフトを使う)という、誰がどう考えてもやらない方がいい「ゲーム」を始めてしまったがために起こるシチュエーションコメディ。喜劇ではあるが「俯瞰で見ると」という喜劇で、かなりビターな味わいのある大人のための作品である。そして、出演者がやらずもがなのことをするたびに客席から「あー!」といったような叫びが起こる。このスクリーンと客席との絶妙の一体感。映画館で観るべき作品といえる。

登場する男性達は全員同級生の45歳という設定であり、今の私と丁度同い年だ(韓国は数え年なので厳密に言うと少し違う)。全員がミッドライフクライシスを抱えており、家庭、男女間、仕事などでそれぞれが問題に直面している。

ソクホ(チョ・ジヌン)とイェジン(キム・ジス)は医師同士の夫婦である。ソクホは「韓国の東大」として日本でも知られるソウル国立大学校医科大学出身の美容外科医、イェジンは精神科医である。二人には二十歳になる娘がいるが、イェジンは二十歳はまだ子どもだとして娘が男性と付き合うことに猛反対している。ちなみにソクホもイェジンとの結婚をイェジンの父親に猛反対されたらしく、職場に乗り込んでの嫌がらせをされたりもした過去があったようだ。

テス(ユ・ヘジン)もソウル国立大学校のおそらく法科大学出身で弁護士。亭主関白である。二人の高校時代の恩師からの電話も入るのだが、「ソウル国立大学校に入るという快挙」というセリフがあるため、二人の出身大学がわかる。テスの妻・スヒョン(ヨム・ジョンア)は専業主婦だが、文学講座に通っており、韓国の有名詩人の詩をそらんじている。

ジュンモ(イ・ソジン)はレストラン経営者だが、これまで様々な事業で失敗を重ねており、学歴面で皆に及ばないことでコンプレックスを抱いていることを告白するセリフがある。また、カンボジアでタピオカのビジネスを始める計画を語って、皆から一笑に付される場面もある。かなりのプレイボーイで女性に不自由したことはない。妻のセギョン(ソン・ハユン)は獣医だが、これまたいかにも男にもてそうなタイプであり、さりげない嫌みで場の空気を掻き乱すのを得意としている。

校長の息子で、教員を辞めたばかりのヨンベ(ユン・ギョンホ)は、バツイチであり、新しい恋人を連れてくると言ったが、風邪で寝ているということで一人で来る。いかにもわけありそうで、実際のところ多くの人が予想するであろう通りの結果なのだが、とある事情でテスとスマホを交換することになり、そのことがあらぬ疑いを招く結果となってしまう。
なお、ヨンベが新居完成祝いとして大量のトイレットパーパーを持ってくるシーンがあるが、韓国ではトイレットパーパーを送ることは「末永く幸せが続くことを祈る」という意味があるそうで、新居完成や引っ越し祝いの定番だそうである。日本人が見ると奇異に感じるが、ヨンベがおかしなことをしているというわけではない。

男性と女性とでは、そもそも脳の仕組みが違うというセリフがあり、それぞれがスマートフォンに例えられるのだが、男性はAndroidで、「安くて効率が良くてアップデートしないと使い物にならない」、女性はiPhoneで、「美しくて機能的だが高くて互換性がなく、生意気」らしい。ちなみスマホの世界シェアトップはサムスンで、当然ながら韓国ではAndroidが主流である。

ということで、ソクホのスマホには娘から「彼氏と一夜を共にしたい」という内容の電話が入り、スヒョンのスマホには文学講座の仲間から電話が入るのだが、影でイェジンに対する悪口雑言を並べていることがバレてしまう。イェジンには実父からの電話があり、イェジンの手術を夫のソクホに任せることはまかり成らんというお達しがある。イェジンの父親が今もソクホのことを馬鹿にしていることもわかる。
セギョンには元彼からの電話がある。ジュンモは「俺は元カノの電話には出ない」と怒るが、元彼が愛犬の対処法を頼んでいるということで、スピーカーモードでの施術が行われる。だが、下のことであるため、妙な雰囲気が漂ってしまう。

ソクホの投資へ失敗、ジュンモの部下との浮気(更に他の女性とも浮気をしている)、ヨンベが教師を辞めたわけなど、人生の真ん中に差し掛かった男と女の「よくあるが深刻な危機」が描かれており、秘密にして誰にも明かしていない部分ということでよそ目には「完璧な他人」であるが、内情は誰もが経験する可能性のあることであり、特に私は彼らと同世代ということで、「あり得たかも知れない自分」を彼らの中に見出すことになった。そう感じる人は私一人だけではないはずで、彼らは全員「あなたに似た人」でもある。
暴露だけではなく、勘違いが勘違いを生むというシチュエーションコメディの王道を行く展開もあり、「面白ろうてやがて悲しき」悲喜劇となっている。

国家戦略として映画に国を挙げて取り組んでいる韓国。この映画でも思い切ったアングルを用いたり、他のものに託して心理描写を行うなど意欲的な仕上がりとなっている。

 

2005年に自殺してしまった女優、イ・ウンジュの最後の連続ドラマとなった「火の鳥」(2004)で相手役を務めていたイ・ソジン。最初はイ・ソジンじゃ笑っちゃうということだったのかイ・スジン表記だったがまあそれはいい。アメリカで演技を学んだ本格派で(当初は映画監督志望だったが両親に反対されたため、俳優の道に進んでいる)インテリを演じることが多かったのだが、この映画では女の敵ともいうべき遊び人役であり、ものにしている。

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2019年11月 3日 (日)

美術回廊(42) KYOTO EXPERIMENT 2019 グループ展「ケソン工業団地」

2019年10月26日 京都芸術センターにて

京都芸術センターへ。現在、館内各所で京都国際舞台芸術祭(KYOTO EXPERIMENT、KEX)2019参加作品である「ケソン工業団地」の展示が行われている。エントランスに映像展示と説明文があり、ギャラリー南では、ケソン工業団地で働いていた南側と北側の人々の写真展示がある。

南北朝鮮の協働によって開発されたケソン工業団地。北朝鮮国内で最も南に位置する大都市のケソン(開城)の経済特区に置かれ、北朝鮮が土地と労働力を韓国が技術と資本を提供して2004年にスタートした。いわゆる金大中の太陽政策の一環であり、北側と南側の人々が一緒に働くこの場所は、「南北統一の先駆け」と評価されたという。普段は一般市民は国境を越えることは出来ないが、ケソン工業団地に勤める韓国側の人々は、日々国境を越えて通勤していたという。
だが、2013年に北朝鮮が核開発を行ったことで韓国側が撤退を表明。2016年には操業がストップして、南北朝鮮が見た夢は12年の歴史で幕を下ろすことになった。

「ケソン工業団地」は、そこで働いていた一人一人に焦点を当てた3人のアーティスト(イ・ブロク、イム・フンスン、ユ・ス)による展示会であり、2018年の夏にソウルでの展示会が行われ、このたび京都でも開催されることになった。

 

ギャラリー南には、ケソン工業団地で働いていた人々の等身大と思われるパネルがある。入って来た側に並んでいるのが北朝鮮の人々、裏側が韓国の人々である。ぱっと見では北側の人なのか南側の人なのかはわからない。顔は勿論、服装でもである。
誰が見ても美少女と思えるような若い女性の写真もある。胸に金日成のバッジを着けており、北側の人だとわかるのだが、余り北っぽさはない。北朝鮮は美人の産地として知られており、ここのパネルでは北側の女性の方が綺麗に見えるが、サンプル数が少ないので「北側の方が美人」と断言は出来ない。意図的に綺麗な人が選ばれた可能性もある。
背後にはケソンの一帯の風景写真が壁一面に広がっていた。

 

講堂では映像展示が行われている。中央にスクリーンが立ち、両側から別々の映像が照射されている。入り口に近い方は棺桶を担いで歩く人物の映像、裏側はニュースなどを中心とした映像である。両方の映像は時折クロスする。

その奥の大広間には、ケソン工業団地の内部を再現したコーナーが設けられている。大広間は畳敷きであるが、今回は畳は取りのけられており、板敷きでの公開となっていた。ミシンがずらりと並び、キャビネットにはハングル文字の書かれた袋に入ったお菓子などが並んでいる。

 

3階のミーティングルーム2では、ケソン工業団地で作られた布袋の展示や、写真資料、映像展示などが行われている。布袋にはいかにも共産圏らしいデザインのものもあるが、中には偶然東京ヤクルトスワローズカラーになっているものもあって微笑ましい。

 

南北共通の夢が、短い間ではあったが達成されたことを物語る貴重な展示であった。

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2019年3月24日 (日)

コンサートの記(536) 創作オペラ「ザ・ラストクイーン 朝鮮王朝最後の皇太子妃」2019大阪

2019年3月10日 大阪・大手前のドーンセンター7階ホールにて

午後5時から、大阪・大手前のドーンセンター7階ホールで、創作オペラ「ザ・ラストクイーン 朝鮮王朝最後の皇太子妃」を観る。元李氏朝鮮王朝の李垠(り・ぎん)殿下の妃となった李方子(まさこ)の生涯を描いたモノオペラである。
ちなみにドーンセンターのすぐ南には追手門学院小学校と追手門学院大手前中学・高等学校があるのだが、李垠と方子は1940年代に大阪で暮したことがあり、次男である李玖は追手門学院小学校の前身である大阪偕行社附属小学校に通っていたそうである。

企画・構成・台本・主演は、田月仙(チョン・ウォルソン。ソプラノ)。作曲、指揮は孫東勲(Song Donghoon)、台本は木下宣子、演出は新宿梁山泊の金守珍(Kim SuJin)、プロデューサー・総監督は太田慎一。
演奏は、富永峻(ピアノ)とCALAFミュージックアンサンブル(桜田悟、花積亜衣、若狭直人、村山良介)。合唱はCALAFヴォーカルアンサンブル(田中由佳、星野律子、石山陽太郎、相原嵩)。李垠役はバレエダンサーの相沢康平が務める。歌もセリフもなく、李垠の化身としてダンスのみの表現となる(殿下の声:キム・テグワン)。ナレーションは濱中博久。韓国舞踊:金姫玉韓国伝統舞踊研究所。

日本語歌唱、字幕付きでの上演。ステージ後方にスクリーンがあり、そこに映像が投影される。


15歳の時に、日本に留学していた元大韓帝国の皇太子・李垠との婚約を新聞で知った梨本宮方子(田月仙)。完全な政略結婚であり、一方的に婚約を決められた方子は嘆くが、日韓双方の架け橋となるために嫁ぐことを決意する。
韓国併合により李垠は日本の王族となり、皇族に準ずる待遇を得ていた。かつての李王家邸は赤坂プリンスホテル旧館(現・クラシックハウス)となっており、私も前を通ったことがある。
敗戦後、李垠と方子は臣籍降下されることになり、国籍も失う。韓国に帰ろうとする李垠だったが、李承晩の妨害に遭って難航する。その後、朴正熙によって帰国が認められるが、李垠はすでに病身であり、7年後に死去。残された方子は、知的障害児のための学校を興すなどして韓国社会のために尽力。「韓国の母(オモニ)」と呼ばれるようになる。

激動の人生を歩んだ李方子であるが、その障害をモノオペラで描くのはかなり困難であることが予想される。実際、次から次へ休みなく様々なドラマが起こるため、逆に焦点が定まらず、盛りだくさんだが詰め込みすぎてドラマとしての起伏がないという印象も受けた。テレビドラマなどには向いているのだろうが。
感情表現やセリフの用い方にも疑問あり。歌詞に飛躍があるようにも感じられる。


東京音楽大学芸術音楽作曲科出身である孫東勲による音楽は充実しており(婚礼のバレエの場面では、意図的にショパンの「軍隊ポロネーズ」を模した音楽が流れる)、田月仙のドラマティックな歌唱も見事。相沢康平のバレエと金姫玉韓国伝統舞踊研究会による踊りも華やかで良い味を出している。

オペラとして成功作なのかどうかわからないが、李方子という女性には興味を持った。色々と調べてみたくなる。

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2018年2月22日 (木)

イ・ウンジュ 「Only When I Sleep」

サランヘヨ

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2017年11月21日 (火)

コンサートの記(327) 「京都市交響楽団 meets 珠玉の東アジア」

2017年11月5日 京都コンサートホールにて

午後2時30分から、京都コンサートホールで、「京都市交響楽団 meets 珠玉の東アジア」を聴く。指揮は京都市交響楽団常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーの広上淳一。
日中韓3カ国の楽曲と出演者による音楽の祭典。


曲目は、第1部が、チェ・ソンファンの管弦楽曲「アリラン」、リュー・ツェシャン&マオ・ユァンの「瑶族舞曲」、外山雄三の「管弦楽のためのラプソディー」、第2部がビゼーの歌劇「カルメン」(ハイライト)。

今日のコンサートマスターは渡邊穣、フォアシュピーラーに片山千津子。ドイツ式の現代配置だが、今日は下手に打楽器が並ぶため、ホルンは下手ではなく上手奥に陣取る。「カルメン」の演奏会形式上演があり、歌手が出入りするため、すり鉢式のステージは用いず、弦は平土間の上での演奏である。
P席は第2部で合唱(京響コーラス)が用いるため、今日は販売されていない。


チェ・ソンファンの管弦楽曲「アリラン」。
チェ・ソンファンは朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の作曲家。管弦楽曲「アリラン」は朝鮮半島を代表する民謡をチェ・ソンファンが1976年にアレンジしたもの。現在では韓国と北朝鮮の両国で盛んに演奏されている。
広上指揮の京響は透明感のある音でムクゲの香りが会場を満たすかのような典雅な演奏を繰り広げる。


リュー・ツェシャンとマオ・ユァンの「瑶族舞曲」。中国南部の少数民族・瑶族(ヤオ族)の民謡を基にリュー・ツェシャンとマオ・ユァンが二人で作曲したものである。ヴァイオリンが二胡を模したレガート奏法を行うなど、中華的な色彩に富んだ楽曲である。
広上は音のパーツパーツを絶妙のタイミングで組み込んでいく。キビキビとした音運びと滑らかな歌も印象的である。


外山雄三の「管弦楽のためのラプソディー」。広上は冒頭をきっちりと三つに振る。今日はすり鉢状のステージを採用していないということもあり、低弦が弱めで音の重心も高いが、アンサンブルの精度は高く、リズム感も万全である。土俗感と叙情味の表出も上手い。


第2部。ビゼーの歌劇「カルメン」(ハイライト)。
上演曲は、第1幕より子どもたちの合唱、「前奏曲」、第1幕より「ハバネラ」、第1幕より「セギディーリャ」、第2幕より「ジプシー・ソング」、第2幕より「闘牛士の歌」、第2幕より「花の歌」、第3幕より「カルタの三重唱」、第4幕より「合唱行進曲」、第4幕よりフィナーレ。
出演は、池田香織(カルメン。メゾ・ソプラノ)、ユン・ビョンギル(ドン・ホセ。テノール)、ジョン・ハオ(エスカミーリョ。バス)、チョン・ヨンオギ(フラスキータ。ソプラノ)、谷口睦美(メルセデス。メゾ・ソプラノ)
宮本益光が構成とナレーションを手掛ける。

今回は、「カルメン」の原作であるメリメの小説を基に再構成したテキストを宮本益光が読み上げることで物語が進行していく。ちなみに、メリメの「カルメン」と歌劇「カルメン」とでは大きく設定が異なる場面があるため、辻褄が合わなくなっている部分もある(原作ではカルメンは山奥で殺害されるため、今日読み上げられたテキストにあった「そしてホセはカルメンの亡骸を誰の目にも触れないところまで運び、埋めた」で良いのだが、オペラではカルメンは闘牛場の前、つまり街中で殺されるため、誰の目にも触れないところまで運んで埋めるのは不可能である)。

まず京都市少年合唱団のメンバーが現れ、横一列に並んで合唱を歌う。当初ではハイライト上演では子どもたちの場面はカットする方向でプランが進んでいたのだが、せっかく良い少年合唱団がいるのに使わないのは勿体ない、折角だから第1曲で、ということで一番最初に子どもたちの合唱が来たようだ。

宮本益光が、メリメの小説「カルメン」の冒頭を読み上げて本編(でいいのかな?)スタート。歌手達はドレスアップして登場し、演技も行う。一部では客席の通路も用いられた。

広上は、ジプシー・ソングの終盤で加速し、興奮を誘う。また「闘牛士の歌」では冒頭を思いっきりためて歌い、演劇的な感興を生み出していた。

歌手達も声の通りが良く、優れた歌唱を聴かせる。エスカミーリョ役のジョン・ハオだけはステージに馴染んでいない気がしたが、歌い慣れていないのかも知れない。

宮本益光は抑えた調子でナレーションを行い、効果的であった。

P席に並んだ京響コーラスも威力抜群の歌唱を聴かせる(P席に合唱が陣取ると、音響的にソリストの歌がかき消されそうになるようである)。

広上指揮の京響はフランス的な濃厚な色彩を発揮。見事であった。

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2017年3月22日 (水)

楽興の時(15) 「小澤征爾音楽塾オーケストラメンバーによるロビーコンサート」2017年3月18日

2017年3月18日 左京区岡崎のロームシアター京都2階共通ロビーにて
午前11時から、左京区岡崎にあるロームシアター京都の2階共通ロビーで、「小澤征爾音楽塾オーケストラメンバーによるロビーコンサート」を聴く。無料である。

演奏されるのは、サラサーテの「ナヴァラ」、ヘンデルの「パッサカリア」(ハルヴォルセン編曲)、久石譲の「いのちのなまえ」(映画「千と千尋の神隠し」より)、ガルデルの「ポル・ウナ・カベーサ」、簫泰然の「望春風」、ボロディンの弦楽四重奏曲第2番より第1楽章。

サラサーテの「ナヴァラ」は大藪英子(おおやぶ・えいこ)と尼﨑有実子(あまさき・ゆみこ)という日本人女性ヴァイオリン奏者二人、ヘンデルの「パッサカリア」は韓国人女性二人(ヴァイオリンのソン・アインとチェロのイ・セイン)、久石譲とガルデルと簫泰然は台湾出身の弦楽四重奏(1stVn:黄鈺婷、sndVn:李盼盼、Va:蔡孟珊、Vc:劉宛瑜)、ボロディンは京都市立芸大学在学中の女学生(のカルテット(1stVn:櫃本樹音、2ndVn:髙田春花、Va:江川菜緒、Vc:櫃本瑠音)による演奏である。韓国人や台湾人は名前の表記を見ても男性か女性か分からないのだが、今日は全員女性で、男性奏者は一人も参加していなかった。
若い人達のみによるコンサートであるが、オーディションを勝ち抜いた人達ばかりということもあり、実力者揃いである。楽器も良いものを使っているのだと思われるが、とにかく音が美しい。艶と張りがあり、並みの演奏家のそれとは段違いである。メカニックに関しても問題は一切ない。

小澤征爾音楽塾は今年はビゼーの歌劇「カルメン」を上演。「カルメン」の舞台はスペインで、サラサーテはスペイン人。ということで「ナヴァラ」が選ばれたと大藪英子が語る。「ツィゴイネルワイゼン」は午前中から演奏するには重いというので避けたようである。「ナヴァラ」は軽快で美しい曲だ。


ヘンデルの「パッサカリア」。イ・セインが「アンニョンハセヨ」と韓国語で挨拶をした後で英語でスピーチ。「日本語は喋れないのですがトライしてみたいと思います」と英語で言い、ソン・アインが紙を手に日本語で挨拶と楽曲紹介を行った。


台湾人のカルテットは、黄鈺婷が「おはようございます」と日本語で挨拶をした後で、英語でスピーチ。その後を受けて、蔡孟珊も英語でスピーチを行った。

ガルデルの「ポル・ウナ・カベーサ」は、ハバネラのリズムの曲であり、そのために選ばれたようである。


ボロディンの弦楽四重奏曲第2番第1楽章は「伊右衛門」のCMで使われて有名になった曲。第1ヴァイオリンとチェロは共に櫃本(ひつもと)という珍しい苗字であり、実の姉妹だと思われる。樹音(じゅね)と瑠音(るね)というフランス風の名前なので、ご両親がフランス好きなのだろう。


日韓関係は悪化しているし、中国と台湾の両岸問題も進展していないが、音楽に国境はないことが感じられて嬉しかった。

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