カテゴリー「台湾映画」の4件の記事

2019年10月21日 (月)

これまでに観た映画より(134) 「ラブゴーゴー」(デジタルリストア版)

2019年10月15日 京都シネマにて

京都シネマで台湾映画「ラブゴーゴー」(デジタルリストア版)を観る。1997年の作品。監督・脚本:陳玉勲(チェン・ユーシュン)。出演:タン・ナ、シー・イーナン、リャオ・ホイヂェン、チェン・ジンシンほか。第34回金馬奨で最優秀助演女優賞(リャオ・ホイヂェン)と最優秀助演男優賞(チェン・ジンシン)を受賞している。

実は20年ほど前のロードショー時に渋谷のユーロスペースで観ており、かなり久しぶりの再会となる。あの頃は20年後に京都で再び観ることなるとは思ってもいなかった。

エドワード・ヤン、候孝賢、蔡明亮など優れた悲劇作品を生み出す映画監督が多いという印象の台湾映画であるが、「ラブゴーゴー」はコメディである。ただ、数組の恋愛弱者を描いており、抱腹絶倒の笑劇といった感じではない。

台北。パティシエをしている冴えない男、劉啓興(チェン・ジンシン)の店である「グレープバイン」に、片足を引きずりながら歩く美女(タン・ナ)が毎日のように訪れ、レモンタルトを買っていく。彼女は実は劉の小学生時代の同級生なのだが、劉はそれを言い出すことが出来ず、片思いの状態が続く。

劉の家に同居する、ウー・リリーというおデブちゃんの女の子(リャオ・ホイヂェン)は、ある日ポケベルを拾う(ポケベルの時代の物語である)、ポケベルに浮かんだ番号に電話したリリーは、録音されたメッセージの声に興味を持つ。ある停電の日、リリーはまた電話してメッセージを吹き込むが相手が出た。自殺を考えていたという相手の男を止めるため、リリーは見栄を張ってそこそこ美人だと嘘をついてしまう。2週間後に相手と会う約束をしたリリーは思い切ってダイエットに取り組むが、なかなか痩せることが出来ない。そして当日……。

護身用具のセールスマンであるアソンは、グレープバインでのセールスに失敗。その後も上手くいかず、21世紀ビルディングにある美容院を訪れた。その美容院の店長が実はグレープバインにレモンタルトケーキを買いに来る女性、リーホァだった。リーホァは独身だったが、妻のいる男性と不倫関係にある。実はレモンタルトは不倫相手の男のお気に入りだったのだ。

たどり着けない3つの愛が、台北の空を浮遊しているようなラブコメディで、レモンのような苦くも甘い後味がある。誰も恋を実らせることは出来ず、恋愛の不毛を感じさせるが、それでも心を通い合わすことの出来たわずかな時間が、頬を緩ませてくれるような淡い喜びとして残る。

 

実は、劉役のチェン・ジンシンは映画の裏方スタッフであり、リリー役のリャオ・ホイヂェンはテレビ業界のマネージャーで、二人とも見た目からしてそうだが俳優ではない。ある意味、光の当たらない人物を表に出すことで、市井の人々のさりげない悲しみと喜びを浮かび上がらせることに成功しているように思う。

チェン・ユーシュンは、その後、映画監督から離れてしまっているそうで、現時点でも「ラブゴーゴー」は監督2作目にして最後の作品となっているようだ。台湾映画がある意味最もポップであり得た時代の記念碑的作品である。

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2018年9月22日 (土)

これまでに観た映画より(107) 「ラスト、コーション」

DVDで、米・中・台湾・香港合作映画「ラスト、コーション」を観る。アン・リー監督作品。トニー・レオン&湯唯:主演。

日中戦争の時代を舞台としたサスペンス映画である。香港に渡り、嶺南大学の学生となった王佳芝(湯唯)は、学生劇団に参加。劇団仲間は日本の手下である易という男(トニー・レオン)が、香港に来ていることを知り、易殺害の計画を練る。王佳芝も易殺害のために協力するのだが……。
激しいラブシーンが話題になったが、想像以上に激しい。中国の俳優がこういったシーンをやるのは少し前まで考えられなかったことだ。

最後の30分ほどにサスペンスシーンは凝縮されており、それまでの展開は慎重に慎重を重ねているためジリジリとしたもので、ここで飽きる人は飽きてしまうかも知れない。ただ展開が遅い分、ラスト30分が生きているともいえる。
サスペンスとしての出来は必ずしも良いものではないかも知れないが、映画としては一級品。見終わった後に不思議な印象の残る映画であった。

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2008年6月 4日 (水)

これまでに観た映画より(24) 「藍色夏恋」

DVDで台湾映画「藍色夏恋」を観る。イー・ジーイェン監督作品。チェン・ボーリン、グイ・ルンメイ主演。2001年の作品。
高校を舞台にした恋愛映画である。

師範大学付属高に通う女子高生のモン・クーロウ(グイ・ルンメイ)は、親友のリン・ユエチェン(リャン・シューフイ)と、ユエチェンが好きなチャン・シーハオ(チェン・ボーリン)という男の子の間を取り持とうとする。しかし、チャン・シーハオにユエチェンを紹介しようとしたところ、肝心のユエチェンが姿を消していた。チャンは「ユエチェンなんて本当はいないんだろう」と決めつけ、モン・クーロウを好きになり始めてしまう。

まず独特の色彩美に溢れる映像が美しい。肝心なシーンではセリフをほとんど使わず、動作で心理を表現する手法も上手いと思う。
爽やかな青春映画ではあるけれど、単純な青春賛美には終わらず、かといって暗さは排除してある。
ピアノによるシンプルな映画音楽も素敵だ。
傑作ではないかも知れないけれど、愛すべき佳編である。

ちなみに劇中に、「木村拓哉」の名前が出てくる。キムタクが台湾でも大変な人気であることがわかる。

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2007年7月 5日 (木)

これまでに観た映画より(3) 『河』

ビデオで映画『河』を観る。台湾映画。蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督作品。

シャオカンは街でたまたま知り合いの女性と出会う(何と台北の三越の前でである)。彼女は映画関係の仕事をしていて、シャオカンは何故か河に浮かぶ死体役を演じる羽目になる。それ以来、シャオカンは首の痛みにつきまとわれるようになり…。

「河は遠くから見ると綺麗だが、近くで見ると汚れている。現代社会もそうだ」と蔡明亮監督がインタビューで語っていたのを以前雑誌で読んだことがある。

シャオカンの家族は静かに暮らしている。だが実際は父親は男色に耽り、母親は不倫をしている。シャオカンは職もなく友達もいないというひたすら孤独な日常を過ごしている。

水のイメージが全体を支配している。河の流れ、シャオカンの家族が暮らすアパートの上の部屋からへ水が漏れてきており、ついには床を水浸しにしてしまう。河につかったことから首の病に取り憑かれたことと、これはリンクしている。逆らえない何かに心身共にハイジャックされたような心象風景として。
ゲイのサウナクラブ(というものが台湾にはあるらしい)の一室の闇の中でシャオカンはある男に抱かれる。ところが明かりを点けてみると何とそれは父親だった。近くにいる家族の闇。その不気味さ。ゲイのサウナクラブの暗い廊下をさまようシャオカンの姿がそれを象徴的に表す。
ラストでシャオカンはビルのテラスに出る。飛び降りようとしたがそれも叶わなかったようだ。
この映画の特徴はセリフの極端な少なさ。みなほとんど喋らないのである。黙然としている人物をカメラは長回しで捉えている。
エンドテロップにも音楽は流れない。音楽という救済を捨ててしまったかのような絶望と孤独感が息苦しくなるほどに迫ってくる。

蔡明亮監督は2002年に来日。京都にも訪れ、京都国際交流会館イベントホールでの『ふたつの時、ふたりの時間』の上映会に参加。トークを行った。私もこれを見に行っている。『ふたつの時、ふたりの時間』はクロスカッティングの手法、かと思いきや、二つの世界は最後まで重ならないという救いがたい絶望を描いた映画だった。

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