カテゴリー「映画」の430件の記事

2024年4月 5日 (金)

これまでに観た映画より(328) 「ラストエンペラー」4Kレストア

2024年3月28日 アップリンク京都にて

イタリア、中国、イギリス、フランス、アメリカ合作映画「ラストエンペラー」を観る。4Kレストアでの上映である。監督はイタリアの巨匠、ベルナルド・ベルトルッチ。中国・清朝最後の皇帝である愛新覚羅溥儀(宣統帝)の生涯を描いた作品である。プロデューサーは「戦場のメリークリスマス」のジェレミー・トーマス。出演:ジョン・ローン、ジョアン・チェン、ピーター・オトゥール、英若誠、ヴィクター・ウォン、ヴィヴィアン・ウー、マギー・ハン、イェード・ゴー、ファン・グァン、高松英郎、立花ハジメ、ウー・タオ、池田史比古、生田朗、坂本龍一ほか。音楽:坂本龍一、デヴィッド・バーン、コン・スー(蘇聡、スー・ツォン)。音楽担当の3人はアカデミー賞で作曲賞を受賞。坂本龍一は日本人として初のアカデミー作曲賞受賞者となった。作曲賞以外にも、作品賞、監督賞、撮影賞、脚色賞、編集賞、録音賞、衣装デザイン賞、美術賞も含めたアカデミー賞9冠に輝く歴史的名作である。

清朝最後の皇帝である愛新覚羅溥儀(成人後の溥儀をジョン・ローンが演じている)。弟の愛新覚羅溥傑は華族の嵯峨浩と結婚(政略結婚である)して千葉市の稲毛に住むなど、日本にゆかりのある人で、溥儀も日本の味噌汁を好んだという。幼くして即位した溥儀であるが、辛亥革命によって清朝が倒れ、皇帝の身分を失い、その上で紫禁城から出られない生活を送る。北京市内では北京大学の学生が、大隈重信内閣の「対華21カ条の要求」に反対し、デモを行う。そんな喧噪の巷を知りたがる溥儀であるが、門扉は固く閉ざされ紫禁城から出ることは許されない。

スコットランド出身のレジナルド・フレミング・ジョンストン(ピーター・オトゥール)が家庭教師として赴任。溥儀の視力が悪いことに気づいたジョンストンは、医師に診察させ、溥儀は眼鏡を掛けることになる。ジョンストンは溥儀に自転車を与え、溥儀はこれを愛用するようになった。ジョンストンはイギリスに帰った後、ロンドン大学の教授となり、『紫禁城の黄昏』を著す。『紫禁城の黄昏』は岩波文庫から抜粋版が出ていて私も読んでいる。完全版も発売されたことがあるが、こちらは未読である。

その後、北京政変によって紫禁城を追われた溥儀とその家族は日本公使館に駆け込み、港町・天津の日本租界で暮らすようになる。日本は満州への侵略を進めており、やがて「五族協和」「王道楽土」をスローガンとする満州国が成立。首都は新京(長春)に置かれる。満州族出身の溥儀は執政、後に皇帝として即位することになる。だが満州国は日本の傀儡国家であり、皇帝には何の権力もなかった。

満州国を影で操っていたのが、大杉栄と伊藤野枝を扼殺した甘粕事件で知られる甘粕正彦(坂本龍一が演じている。史実とは異なり右手のない隻腕の人物として登場する)で、当時は満映こと満州映画協会の理事長であった。この映画でも甘粕が撮影を行う場面があるが、どちらかというと映画人としてよりも政治家として描かれている印象を受ける。野望に満ち、ダーティーなインテリ風のキャラが坂本に合っているが、元々坂本龍一は俳優としてのオファーを受けて「ラストエンペラー」に参加しており、音楽を頼まれるかどうかは撮影が終わるまで分からなかったようである。ベルトルッチから作曲を頼まれた時には時間が余りなく、中国音楽の知識もなかったため、中国音楽のCDセットなどを買って勉強し、寝る間もなく作曲作業に追われたという。なお、民族楽器の音楽の作曲を担当したコン・スーであるが、彼は専ら西洋のクラシック音楽を学んだ作曲家で、中国の古典音楽の知識は全くなかったそうである。ベルトルッチ監督の見込み違いだったのだが、ベルトルッチ監督の命で必死に学んで民族音楽風の曲を書き上げている。
オープニングテーマなど明るめの音楽を手掛けているのがデヴィッド・バーンである。影がなくリズミカルなのが特徴である。

ロードショー時に日本ではカットされていた部分も今回は上映されている。日本がアヘンの栽培を促進したというもので、衝撃が大きいとしてカットされていたものである。

後に坂本龍一と、「シェルタリング・スカイ」、「リトル・ブッダ」の3部作を制作することになるベルトルッチ。坂本によるとベルトルッチは、自身が音楽監督だと思っているような人だそうで、何度もダメ出しがあり、特に「リトル・ブッダ」ではダメを出すごとに音楽がカンツォーネっぽくなっていったそうで、元々「リトル・ブッダ」のために書いてボツになった音楽を「スウィート・リベンジ」としてリリースしていたりするのだが、「ラストエンペラー」ではそれほど音楽には口出ししていないようである。父親が詩人だというベルトルッチ。この「ラストエンペラー」でも詩情に満ちた映像美と、人海戦術を巧みに使った演出でスケールの大きな作品に仕上げている。溥儀が大勢の人に追いかけられる場面が何度も出てくるのだが、これは彼が背負った運命の大きさを表しているのだと思われる。


坂本龍一の音楽であるが、哀切でシリアスなものが多い。テレビ用宣伝映像でも用いられた「オープン・ザ・ドア」には威厳と迫力があり、哀感に満ちた「アーモのテーマ」は何度も繰り返し登場して、特に別れのシーンを彩る。坂本の自信作である「Rain(I Want to Divorce)」は、寄せては返す波のような疾走感と痛切さを伴い、坂本の代表曲と呼ぶに相応しい出来となっている。
即位を祝うパーティーの席で奏でられる「満州国ワルツ」はオリジナル・サウンドトラック盤には入っていないが、大友直人指揮東京交響楽団による第1回の「Playing the Orchestra」で演奏されており、ライブ録音が行われてCDで発売されていた(現在も入手可能かどうかは不明)。
小澤征爾やヘルベルト・フォン・カラヤンから絶賛されていた姜建華の二胡をソロに迎えたオリエンタルなメインテーマは、壮大で奥深く、華麗且つ悲哀を湛えたドラマティックな楽曲であり、映画音楽史上に残る傑作である。

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2024年4月 2日 (火)

これまでに観た映画より(327) TBSドキュメンタリー映画祭2024 「坂本龍一 WAR AND PEACE 教授が遺した言葉たち」

2024年3月28日 アップリンク京都にて

TBSドキュメンタリー映画祭2024「坂本龍一 WAR AND PEACE 教授が遺した言葉たち」を観る。監督は金富隆。前半は坂本龍一が「NEWS23」に出演したり「地雷ZERO 21世紀最初の祈り」の企画に参加したりした際の映像を中心とし、後半はTBSが収録したドキュメンタリーの映像の数々が登場する。

出演:坂本龍一、筑紫哲也、細野晴臣、高橋幸宏、DREAMS COME TRUE、佐野元春、桜井和寿(Mr.Children)、大貫妙子、TERU(GLAY)、TAKURO(GLAY)、Chara、シンディ・ローパー、デヴィッド・シルヴィアン、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)ほか。

筑紫哲也がキャスターを務めたTBS50周年特別企画「地雷ZERO」で、坂本龍一がモザンビークの地雷撤去作業地域を訪れるところから映画は始まる。2001年のことである。坂本龍一は、地雷撤去のための資金を集めるためにチャリティー音楽「ZERO LANDMINE」を作成することを思い立ち、デヴィッド・シルヴィアンの作詞による楽曲を完成。シンディ・ローパーなど海外のアーティストも参加した作品で、国内からも多くのミュージシャンが参加した。

その後、植樹の活動(モア・トゥリーズ)なども始めた坂本龍一。環境問題に取り組み、ライブのための照明も水力発電によるものを買って使用するようになる。

2001年9月11日。アメリカで同時多発テロが発生。発生時、ニューヨークの世界貿易センター(ワールドトレードセンター)ビルから1マイルほどのところにいた坂本はカメラで炎上する世界貿易センタービルを撮影。その後、ツインタワーであった世界貿易センタービルは倒壊し、土煙を上げる。アメリカは報復措置として、アフガン空爆、そしてイラク戦争へと突入する。坂本は「世界に60億の人がいても誰もブッシュを止められない」と嘆く。
「ニュース23」の企画で、戦争反対の詩を募集し、坂本の音楽に乗せるという試みが行われる。全国から2000を超える詩の応募があり、中には6歳の子が書いた詩もあった。その中から坂本自身が19編の詩を選び、作者のナレーションを録音して音楽に乗せる作業を行う。作業はコンピューターを使って行われるのだが、微妙なズレを生むために何度も繰り返し行われる。

日本では安保法案改正問題があり、坂本も反対者の一人として国会議事堂前でのデモに参加し、演説も行う。都立新宿高校在学時の若き坂本龍一がアジ演説を行っている時の写真も紹介される。

2011年3月11日。東日本大震災が発生。福島第一原子力発電所ではメルトダウンが起こる。
坂本は原発稼動への反対を表明。電気よりも命を優先させるべきだと演説し、50年後には電気は原発のような大規模な施設ではなく、身近な場所で作られるものになるだろうとの理想を述べる。
東日本大震災では家屋にも甚大な被害が出たが、坂本は植樹運動で育てた樹を仮設住宅に使用する。
その後、東北ユースオーケストラを結成した坂本。東北の復興のために音楽で尽力する。東北ユースオーケストラは坂本が亡くなった現在も活動を続けている。

坂本の最後のメッセージは、明治神宮外苑再開発による樹木の伐採反対。交流があった村上春樹も反対の声明をラジオで発しているが、東京23区内で最も自然豊かな場所だけに、再開発の影響を懸念する声は多い。

名物編集者、坂本一亀(かずき)の息子として生まれた坂本龍一。若い頃には父親への反発から文学書ではなく思想書ばかり読んでいたというが(音楽家になってからも小説などはほとんど読まなかったようである)、若き日に得た知識の数々が老年になってからもなお生き続けていたようである。また、音楽家が自らの思想を鮮明にするアメリカに長く暮らしていたことも彼の姿勢に影響しているのかも知れない。

映画のラストで流れるのは、「NEWS23」のエンディングテーマであった「put your hands up」のピアノバージョン(「ウラBTTB」収録)。心に直接染み渡るような愛らしい音楽である。

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2024年4月 1日 (月)

これまでに観た映画より(326) 公開30周年「ピアノ・レッスン」4Kデジタルリマスター(2K上映)

2024年3月25日 京都シネマにて

京都シネマで、フランス、ニュージーランド、オーストラリア合作映画「ピアノ・レッスン(原題「The Piano」)」公開30周年4Kデジタルリマスターを観る(京都シネマでは2Kでの上映)。ニュージーランド生まれでオーストラリア育ちのジェーン・カンピオン監督作品。出演:ホリー・ハンター、ハーヴェイ・カイテル、サム・ニール、アンナ・パキンほか。音楽:マイケル・ナイマン。

第46回カンヌ映画祭でパルム・ドールに輝いたほか、米アカデミー賞では、アンナ・パキンが史上2番目の若さとなる11歳で助演女優賞の栄誉に輝いたことでも話題となった(ホリー・ハンターが主演女優賞を獲得した他、ジェーン・カンピオン監督も脚本賞も受賞している)。
ピーター・グリーナウェイ監督とのコンビで名を上げたマイケル・ナイマンが従来の「ミニマルミュージックの鬼」ともいうべき作風からロマンティックなものへと転換するきっかけとなった作品でもある。セルジュ・チェリビダッケの下で黄金時代を築いていたミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団が演奏を手掛けた音楽は評判となり、サウンドトラックは大ヒットした。オリジナル・サウンドトラックは私も購入したが、テーマ曲的存在のピアノ曲「楽しみの希う心」のミニスコアが入っていた。
この音楽に関して、公開当時、浅田彰と坂本龍一が対談で語っているのだが、二人して散々にこき下ろしているのが印象的だった。また映画本編に関してはシナリオライターの石堂淑朗が今では考えられない性差別発言を「音楽現代」誌に載せていた。それが30年前である。

主舞台となるのは、まだ荒廃した土地であった19世紀のニュージーランドである。原住民のマオリ族の人々も多く登場する。
決められた結婚によりスコットランドからニュージーランドへと渡ったエイダ(ホリー・ハンター)。彼女には一人娘のフローラ(アンナ・パキン)がいる。エイダは6歳の時に話すのをやめ、会話は手話や文筆で行うようになる。当時、意識されていたのかどうかは分からないが、症状としては全緘黙(言語が分かり会話能力もあるのに全く話せなくなってしまう症状。21世紀に入ってから場面緘黙と共に広く知られることになる)に似ている。話せない代わりにエイダにはピアノの腕があり、ピアノを演奏することで言語表現の不自由感を補ってきた。エイダはニュージーランドに渡る時もボックス型のピアノを運んでいくが、新しい夫のスチュアート(サム・ニール)が家まで運ぶのが面倒と判断し、エイダの分身であるピアノは浜に置き去りにされる。ピアノはスチュアートの家の近くに住む、マオリ族の入れ墨を顔に入れたベインズ(ハーヴェイ・カイテル)が、スチュアートに川の向こうの土地との交換を提案して手に入れる。エイダはピアノのレッスンのためにベインズの家に通うことになるのだが、ベインズは自分では弾こうとせず、エイダの演奏を聴く。ベインズの要求は次第にエスカレートしたものになっていくが、エイダの心もベインズへと移っていく。

他人が決めた結婚に従わざるを得なかった時代に、自由を求める女性の話である。
スチュアートはエイダの分身ともいうべきピアノを浜に置き去りにする。普段は優しげな男であるが、そうした態度からも男尊女卑の考えの持ち主であることが分かる。またスチュアートはエイダとベインズの関係を知ると、家の窓に板を張り付け、外側からかんぬきを掛けてエイダを幽閉してしまう。女性が置かれた窮屈な環境を作り出す人物でもある。一方、ベインズは粗野で強引だが、ピアノには理解を示す。エイダが求めたのはスチュアートではなくベインズの方だった。
マオリ族の男達が漕ぐカヌーでニュージーランドを去るエイダとベインズ。カヌーにはピアノも載せられるが、エイダは途中でピアノを海へと捨てるように要求する。これまでの自分との決別だった。その後に再生を経たエイダは自立した女性として別のピアノに向かう。象徴的なシーンである。

一言もセリフを発しないという難役に挑んだホリー・ハンター。彼女自身が脚本に惚れ込み、ピアノが弾けるということをアピールして売り込んだそうだが、キリリとした表情で気高さを示し、男の所有物になることを拒否する女性を演じる。ナイマンのピアノ曲を演奏するほか、日本では「太田胃散」のCM曲として知られるショパンの前奏曲第7番を弾く場面もある。

旧世代を代表する人物であるスチュアートを演ずるサム・ニールは同時期にスピルバーグの「ジュラシック・パーク」に主演している。彼もまたニュージーランド人である。

出演当時9歳だったアンナ・パキンもアカデミー賞を受賞しているだけに達者な演技を示している。

ベインズを演じるハーヴェイ・カイテル。彼はこの映画で長髪にしているのだが、それを見た故宮沢章夫が、「俺も長髪にしなきゃ」と一時期髪を伸ばしていた。私が初めて出会った時の宮沢章夫は長髪だった。この話は宮沢本人から直接聞いたものである。

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2024年3月27日 (水)

これまでに観た映画より(325) ドキュメンタリー映画「アアルト」

2024年3月21日 京都シネマにて

京都シネマで、フィンランドのドキュメンタリー映画「アアルト」を観る。フィンランドのみならず北欧を代表する建築家にしてデザイナーであるアルヴァ・アアルトの生涯と彼の二人の妻に迫る作品。ヴィルビ・スータリ監督作。

母校のヘルシンキ工科大学が現在はアアルト大学に校名変更されていることからも分かるとおり、絶大な尊敬を集めたアルヴァ・アアルト(1898-1976)。「北欧デザイン」といわれて何となく頭に浮かぶイメージは彼が作り上げたものである。彼の最初の妻であるアイノは4つ年上であり、同じヘルシンキ工科大学の出身であった。
アアルトがヘルシンキ工科大学卒業後にユヴァスキュラに建築事務所を設立。従業員を募集し、それに応募してきたのがアイノであった。

アアルトの設計の最大の特徴は、「人間的」であること。また自然との調和も重視し、人間もまた自然の一部であるという発想はシベリウスを生んだフィンランド的である。
二人三脚で仕事を進めたアアルトとアイノ夫人。アイノもアアルトと同じヘルシンキ工科大学を卒業しているだけあって、アイデアも豊富でセンスにも長け、アアルトが起こしたデザイン企業アルテックの初期の家具などのデザインにはアイノ夫人の発案も多く取り入れられているようである。
ただ、二人とも家具職人ではないので、実用的な部分は専門家に任せていたのだが、彼が亡くなると家具デザイナーとしてのアアルトは全盛期を過ぎることとなる。
地中海を行く船上で行われた近代建築国際会議(CIAM)に出席し、ル・コルビュジエなどの知遇を得、パリ万博やニューヨーク万博のフィンランド館(パビリオン)、ニューヨーク近代美術館(MoMA)での個展などで注目を浴びたアアルト。作風を次々に変えながら、「人間的」という意味では通底したものを感じさせる建築を次々に発表。マサチューセッツ工科大学(MIT)の客員教授に就任し、MITの学生寮も設計。蛇行した川に面したこの学生寮は、全ての部屋から川面が見えるよう、建物自体もうねっているという独特のものである。

1948年にアイノ夫人が若くして亡くなると、3年後に24歳年下のアアルト事務所職員で同じヘルシンキ工科大学出身のエリッサと再婚。エリッサ夫人は、アアルトが亡くなると、彼が残した設計図を元に建築の仕上げなども行っているようである。

アアルトの最大の仕事は、ヘルシンキ市中心部の都市設計であったが、これはフィンランディアホールを完成させるに留まった。このフィンランディアホールは白亜の外観の美しさで有名であるが、それ以上に劣悪な音響で知られており、ヘルシンキのクラシック音楽演奏の中心は、現在ではヘルシンキ音楽センターに移っている。

晩年になると海外での名声は高まる一方であったアアルトであったが、フィンランド国内では逆に保守的な建築家と目されるようになり、国民年金協会本部や村役場、大学などの設計を行うことで、体制側と見なされることもあったという。

フィンランド以外での建築物としては、前記MITの学生寮、ハーバード大学のウッドベリー・ポエトリー・ルーム、ベルリン・ハンザ地区の集合住宅、ノイエ・ファールの高層集合住宅(ドイツ・ブレーメン)、フランスのルイ・カレ邸、ヴォルフスブルクの文化センター(ドイツ)、同じくヴォルフスブルクの精霊教会、エドガー・J・カウフマン記念会議室(アメリカ・ニューヨーク)、リオラの教会(イタリア)などがある。

ラジオなどで収録されたアアルト自身の肉声、アアルトが残した手紙などを朗読する声優(アアルトの声を当てているエグゼクティブ・プロデューサーで俳優でもあるマルッティ・スオサオは、ヴィルビ・スータリ監督の夫だそうである)の他に、建築家の仲間や専門家、大学教授などの証言を豊富に収めており、アカデミックな価値も高いドキュメンタリー映画である。

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2024年3月16日 (土)

これまでに観た映画より(324) ビクトル・エリセ監督作品「瞳をとじて」

2024年2月15日 京都シネマにて

京都シネマで、スペイン映画「瞳をとじて」を観る。ビクトル・エリセ監督が31年ぶりにメガホンを取った作品。出演:マノロ・ソロ、アナ・トレント、ホセ・コロナドほか。

1967年、映画「別れのまなざし」撮影中に主演俳優のフリオ・アレナスが失踪する。22年後、フリオの元親友で元映画監督、その後は小説家などとしても活動していたミゲルは、テレビ局からフリオ失踪事件の謎に迫るドキュメンタリー番組の取材を受ける。その後、フリオに似た男が海辺の町の養老院にいるという情報を得たミゲルは、海辺の町へと向かう。

上映時間2時間49分の大作である。失踪事件のミステリーを描きながら、家族の事情、ミゲルの人生などにも踏み込んだ意欲作である。
劇中劇ならぬ映画中映画「別れのまなざし」で中国語が用いられているのも興味深い。
ラストは明かされることなく、観客に委ねられている。失われた歳月に思いをはせながら今を描いた作品である。

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2024年3月 6日 (水)

これまでに観た映画より(323) 「ゴジラ-1.0」

2024年2月22日 MOVIX京都にて

MOVIX京都で、日本映画「ゴジラ-1.0」を観る。山崎貴監督・脚本・VFX作品。出演:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介ほか。
音楽:佐藤直紀、伊福部昭。

放射能が生んだゴジラ。だが今回はそれよりも先に生まれていたゴジラの話である。

1945年、戦争末期の大戸島。特攻隊の敷島浩一(神木隆之介)は特攻を避けるため、零戦の機体に故障があったと嘘をつき、大戸島の整備所に着陸する。整備士の橘(青木崇高)は敷島の嘘をすぐに見抜くが、その夜、謎の怪物が大戸島に現れる。ゴジラ(呉爾羅)と呼ばれるその怪物により、敷島と橘を除く大戸島の整備士達は全滅する。

東京に戻った敷島は、隣家の太田澄子(安藤サクラ)から、敷島の両親が空襲で亡くなったことを伝えられる。
その後、闇市で出会った大石典子(浜辺美波)から赤ん坊を頼まれた敷島。赤ん坊の明子は典子の子ではなく、拾った子だった。やがて敷島と典子と明子は結婚しないままの共同生活を始める。敷島は米軍の機電撤去の仕事に就き、そこで出会った秋津淸治(佐々木蔵之介)、野田健治(吉岡秀隆)、水島四郎(山田裕貴)と共に、木造船・新生丸の乗り込み、海を回る。
新居を建てた敷島。新生丸の乗組員達を招いて紹介するが、典子と籍を入れていないことを知られ、けじめを付けるよう促される。

1946年にビキニ環礁での水爆実験があり、ゴジラは肥大化。その肥大化したゴジラが東京目指して北上してくる。

1947年。明子が大きくなったということもあり、典子は自立を目指して銀座で事務の仕事を始める。そんな中、ゴジラが東京に向かっていることを知った敷島達は新生丸でゴジラを止めるよう命令されるが、巨大化したゴジラに全く歯が立たない。ゴジラは前線を突破し、品川沖から銀座に上陸。朝の連続テレビ小説「ブギウギ」の日帝劇場のモデルとなっている日本劇場(現在の有楽町マリオン)や銀座のシンボルである和光を破壊する。その時、典子は銀座を走る列車に乗っていた。


焦土からの復興を目指す戦後2年目の東京を襲撃するゴジラということで、戦争の脅威をゴジラがなぞる形となっている。
そこに、敷島と典子のラブストーリーが重なるわけだが、展開がやや不自然であり、人間ドラマとしての完成度をやや損ねているように感じられた。
VFXを使った映像には迫力があり、敷島のトラウマからの解放なども(ややベタだが)見応えを上げていたように思われる。

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2024年2月29日 (木)

これまでに観た映画より(322)「風よ あらしよ 劇場版」

2024年2月19日 京都シネマにて

京都シネマで、日本映画「風よ あらしよ 劇場版」を観る。甘粕事件によって28歳で散った伊藤野枝を主人公とした作品。2022年にNHKBSで放送され、今回劇場版が上映される運びとなった。原作:村山由佳、脚本:矢島弘一、演出:柳川強。音楽:梶浦由記。出演:吉高由里子、永山瑛太、稲垣吾郎、松下奈緒、美波、山田真歩、音尾琢真、石橋蓮司ほか。

「青鞜」後期の編集者として、また無政府主義者・大杉栄との関係で知られる伊藤野枝の生涯に迫る作品である。

東京の上野高等女学校に通う伊藤ノヱ(後のペンネーム・伊藤野枝。演じるのは吉高由里子)は、生まれ故郷の福岡で無理矢理結婚させられそうになる。「家にあっては父に従い、嫁しては夫に従い、夫が死んだ後は子に従う」という男尊女卑の文化が当たり前であった大正時代にあって伊藤野枝はそれに反発。上野高等女学校の教師だった辻潤(稲垣吾郎)に文才を見出され、平塚らいてうの主宰する青鞜社に就職し、女性の地位向上を唱えるが、青鞜社が傾くようになり、平塚らいてうから雑誌「青鞜」を受け継ぎ、編集をこなすが、結果的には「青鞜」は廃刊になってしまう。一方、辻と結婚した野枝であるが、辻は自堕落な生活を送るようになる。そんな中、野枝は無政府主義者の大杉栄(永山瑛太)と出会い……。

伊藤野枝という人が極めて行動的で積極的な人柄であることが分かるような描き方がなされている。率先して「青鞜」を受け継ぎ、憧れの存在であった辻潤や大杉栄とも対等に渡り合う。

大河ドラマ「光る君へ」に紫式部役で主演している吉高由里子。彼女の個性である甘ったるい声はやはり気になるが、不自由な時代を全力で駆け抜ける勇ましさが出ていた。永山瑛太の存在感、アンニュイな男を演じさせたらピカイチの稲垣吾郎の魅力も十分に発揮されていたように思う。

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2024年2月19日 (月)

これまでに観た映画より(321) 「カラオケ行こ!」

2024年2月5日 MOVIX京都にて

MOVIX京都で日本映画「カラオケ行こ!」を観る。和山やまのマンガが原作。ヤクザと男子中学生の音楽を通した不思議な友情を描いた作品である。脚本は、「逃げるは恥だが役に立つ」の野木亜紀子。出演:綾野剛、齋藤潤、芳根京子、橋本じゅん、やべきょうすけ、坂井真紀、宮崎吐夢、ヒコロヒー、加藤雅也(友情出演)、北村一輝ほか。音楽:世武裕子、監督は、「リンダ リンダ リンダ」の山下敦弘。

大阪が舞台。大阪の合唱コンクール中学校の部が行われた日に、ヤクザの成田狂児(綾野剛)は、大会で3位に入った中学校の部長でボーイソプラノを務める岡聡実(齋藤潤)に、「カラオケ行こ!」と誘う。成田が加わっている四代目祭林組の組長(北村一輝)はカラオケにうるさく、カラオケ大会を開いては「歌下手王」になった部下に入れ墨を彫るのを習慣としている。しかし組長には絵心がなく、入れ墨を入れられるものは大変な屈辱を受けるという。成田は「歌下手王」」になるのを避けるために、岡にカラオケのレッスンを頼むのであった。最初のうちは困惑していた岡だったが、自身が変声期でボーイソプラノとしては限界に来ているということもあり、成田の声質にあった曲を選ぶなど次第に打ち解けていく。

岡が通う学校の合唱コンクールと、祭林組のカラオケ大会が行われるのがちょうど同じ日になる。岡はボーイソプラノに自信がなく、行くのを渋っていたが、出掛けることにする。その途中、成田と岡がいつもカラオケを楽しんでいる店の前で事故が起こっているのを目にする。成田の車は大破していた。成田のことが気が気でない岡は合唱コンクールの会場から飛び出す。


一応、任侠ものなのだが、綾野剛演じる成田狂児が優しいということもあり、全体的に温かい感じの物語となっている。岡が通う中学校の様子も描かれ、青春映画としての要素も加わった親しみやすい作品に仕上がっていた。

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2024年2月 5日 (月)

これまでに観た映画より(320) 「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」

2024年1月11日 MOVIX京都にて

MOVIX京都で日本映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」を観る。原作:汐見夏衛。監督・脚本:成田洋一。出演:福原遥、水上恒司、中嶋朋子、伊藤健太郎、島﨑斗亜、上川周作、小野塚勇人、出口夏希、坪倉由幸、松坂慶子ほか。主題歌:福山雅治「想望」

タイムスリップが加わる戦時下ドラマで、昭和20年6月にタイムスリップした女子高生が、特攻隊員の早大生とほのかな恋に落ちるという恋愛ドラマである。


加納百合(福原遥)は成績優秀で、高校の進路相談で担任教師(坪倉由幸)から大学への進学を勧められるが、百合本人は就職を希望していた。百合は父親を早くに事故で亡くした母子家庭で育っており、母親の幸恵(中嶋朋子)は魚屋とコンビニでの仕事を掛け持ちしており、そのことが百合が進学をためらう一因となっていた。
進路相談を終えた日。百合は幸恵と喧嘩して家を飛び出し、かつての防空壕跡に泊まり込むが、目が覚めると外は昭和20年6月となっており……。

現代の女子高生である百合が、若くして散ることが決まっている特攻隊員の佐久間彰(水上恒司)とほのかな恋に落ちることで成長していくという教養小説的な部分もある映画である。早稲田大学で教師を目指していた彰に感化された百合は、大学に進学して教師を目指すようになる。

出来としては可もなく不可もなくといったところだが、出演者はみな好演であり、空爆の悲惨さや、特攻隊員の暗いだけではない青春も描かれていて、異色の青春映画として一定の評価の出来る作品に仕上がっている。

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2024年2月 2日 (金)

これまでに観た映画より(319) 「PERFECT DAYS」

2024年1月17日 京都シネマにて

京都シネマで、ヴィム・ヴェンダース監督作品「PERFECT DAYS」を観る。主演の役所広司がカンヌ映画祭で最優秀男優賞を受賞した作品。出演は役所広司のほかに、田中泯、中野有紗、柄本時生、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、三浦友和ほか。

平山(役所広司)は、渋谷区の公衆トイレ(デザイナーズトイレ)の清掃員をしている。朝早く起き、身支度を整え、自宅アパート前の自動販売機で缶コーヒーを買い、運転する車の中で洋楽のカセットテープを流し、いくつものトイレを丹念に磨く日々。仕事帰りには銭湯に入り、浅草の地下で食を味わい、浅草の居酒屋で一杯やる。仕事から帰ってからは自転車で移動し、古本屋に立ち寄って本を買い、夜にはその本を読むという毎日。
昼食は神社の境内でサンドウィッチを食べ、同じく境内で食事をしているOLと挨拶をする。無口で不器用な男である。

仕事の部下というか同僚であるタカシ(柄本時生)がアイという女性(アオイヤマダ)と恋仲になる。アイが働くガールズバーでデートをしたいタカシは金がないことを嘆き、平山はタカシに金を貸すのだが、やがてタカシは仕事を辞めてしまい……。

一方、平山の姪(妹の娘)であるニコ(中野有紗)が、母親(麻生祐未)と喧嘩をして平山のアパートを訪ねてくる。

淡々とした日常の中に起こるちょっとした出来事が丁寧に描かれているという印象を受ける作品。平山の日常はほとんど毎日変わらないのだが、周囲の人々が少しずつ変わっていく。仕事を辞めたタカシ、突然訪ねてくるニコ、浅草の居酒屋のママ(石川さゆり)の元夫で癌を患っている友山(三浦友和)。平山の周囲を様々な人々が駆け抜けていく。そんな些細な日常の変化を上手く捉えた作品といっていいだろう。決して派手な映画ではなく、むしろ地味な作品に分類されると思われるが、ラストで説明される木漏れ日のようにたゆたう日常が不思議な浮遊感を伴って観る者の胸をとらえる。

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